縮合型は印象後1時間以内に石膏注入しないと模型精度が落ちます
縮合型シリコーン印象材は、ジメチルポリシロキサンとアルキルシリケートを主成分とし、有機金属化合物のカプリル酸スズを触媒として反応する印象材です。この材料の最大の特徴は、室温で縮重合反応が進行する点にあります。
硬化機構を詳しく見ると、ベースペーストとキャタリストペーストを混合することで化学反応が開始され、架橋構造を持つゴム状弾性体へと変化していきます。この過程で副産物としてエチルアルコールが生成され、これが揮発することで印象体に収縮が生じるのです。つまり硬化が完了した後も材料内部からアルコールが抜け続けるということですね。
反応速度は温度に大きく影響を受けます。口腔内温度である37度前後では約3分から5分で硬化がシャープに進行し、触診で硬化を確認できる状態になります。
硬化が速いということです。
一方で、作業時間を確保したい場合は材料を冷蔵庫で冷やしておくことで硬化時間を遅らせることが可能です。この温度調整によって臨床現場の状況に応じた時間管理ができます。
ジーシーの歯科材料ハンドブックでは印象材の硬化機構と特性について詳しい解説があります
縮合型の最も重要な課題が寸法安定性の問題です。硬化時に放出されるエチルアルコールは印象体から継続的に揮発し、その分だけ材料が収縮していきます。研究データによると、印象採得後24時間放置した場合、自由収縮で約0.5%から1%程度の寸法変化が生じることが報告されています。
例えば全顎印象で考えると、幅50mmの印象体では24時間後に0.25mmから0.5mm程度縮む計算になります。これはクラウンやブリッジの適合精度に直接影響する数値ですね。
厳しいところですね。
このリスクを最小限にするため、印象採得後は可能な限り早期に石膏を注入することが推奨されます。理想的には採得後30分以内、遅くとも1時間以内に石膏注入を完了させるべきです。
1時間以内が条件です。
ただし、パテタイプを使用して表面に露出している連合印象の場合は注意が必要です。硬化反応時に発生する水素ガスの影響で石膏模型表面に気泡が生じる可能性があるため、この場合は逆に60分程度経過してから石膏注入を行います。材料の種類によって対応が変わるということです。
保管する場合は湿度100%の環境が望ましく、湿らせたガーゼに包んで密閉容器に入れることで一時的な保管が可能ですが、それでも経時的な変化は避けられません。
縮合型と付加型の最大の違いは硬化時の副産物の有無です。付加型はビニルシリコーンとヒドロシランの付加重合反応で硬化するため、副産物がほとんど発生せず、重合収縮が極めて少ないという特徴があります。
寸法精度を比較すると、付加型の寸法変化は0.1%以下であるのに対し、縮合型は前述の通り0.5%から1%程度です。
数値的には付加型が圧倒的に優れています。
精密印象には付加型が適しているということですね。
しかし縮合型にもメリットがあります。まず価格が付加型の約半分から3分の1程度で、コストパフォーマンスに優れています。また硬化がシャープで細部再現性が良好なため、複模型製作や義歯の印象採得では現在でも広く使用されています。
操作性の良さも評価されています。
もう一つの違いは硬化阻害要因です。付加型はラテックスグローブやユージノール系材料、局所麻酔剤のスプレーなどに接触すると硬化遅延や面あれが生じますが、縮合型はこれらの影響を受けにくい特性があります。
意外ですね。
温度の影響についても差があり、付加型は縮合型よりも温度の影響を強く受けます。つまり夏場と冬場で硬化時間の変動が大きいのは付加型の方なのです。
臨床では用途に応じた使い分けが重要です。クラウンやブリッジなど高精度が求められる補綴物には付加型を、複模型や義歯床など相対的に精度要求が緩やかな用途には縮合型を選択するという判断基準があります。
オーラルスタジオの歯科辞書では付加型シリコーンゴム印象材の特性について詳しい情報があります
歯科技工分野では縮合型シリコーン印象材がパテタイプの複模型用材料として重要な役割を果たしています。技工用に開発された製品は良好な再現性と操作性を備え、練和後4分程度の作業猶予時間が確保されているものが多く見られます。
複模型製作における縮合型の利点は、寸法精度が0.01%レベルで管理されている製品もあり、作業模型の複製として十分な精度を持つ点です。例えば幅50mmの模型で誤差0.005mm程度、つまり5ミクロン程度に抑えられます。
これは髪の毛の太さの約10分の1程度です。
流動性が高いため気泡が入りにくく、細部再現性に優れている特性も技工作業に適しています。石膏模型の表面性状を正確に再現でき、クラウンやインレーの適合確認用副模型として活用できます。技工作業の効率化に貢献するということですね。
操作方法としては、A液とB液を1対1の割合で30秒程度練和し、原模型に塗布または盛り上げて使用します。特別な機械や器具を必要とせず、初心者でも簡単に精密な複模型を製作できる点が評価されています。
硬度はShoreA硬度で22程度の製品が多く、適度な硬さと弾性回復性を持つため、アンダーカットのある模型からも容易に撤去できます。また耐熱性に優れているため、熱重合レジンの重合時にも変形しにくい特性があります。
鋳造床義歯の製作においても縮合型シリコーンは有用です。レジンコアの採得に使用することで、正確なコアが短時間で得られ、収縮による変形も少ないため技工精度が向上します。
縮合型シリコーン印象材を使用する際、トレーとの接着は印象精度に直接影響する重要な要素です。印象体がトレーから剥がれたり変形したりすると、せっかく採得した印象が台無しになってしまいます。
こうしたリスクを回避する必要があります。
トレーアドヒーシブ(接着剤)の使用が推奨されます。縮合型専用または汎用タイプのアドヒーシブをトレー内面に一層塗布し、所定の時間(通常3分から5分程度)乾燥させてから印象材を注入します。接着剤の乾燥が不十分だと接着強度が低下するため、時間管理が重要です。
トレーの材質によって接着性が異なる点にも注意が必要です。レジン製個人トレーやプラスチックトレーには良好に接着しますが、金属トレーの場合は表面処理や専用アドヒーシブの選択が求められます。
材質に合わせた対応が必要ということです。
塗布範囲もポイントで、トレー内面だけでなく外縁5mm程度の位置まで塗布することで剥がれ防止効果が確実になります。この一手間が印象の成否を分けることがあるのです。
練和時の注意点として、パテタイプを使用する場合は添付のプラスチックグローブまたはポリエチレン製グローブを使用してください。ラテックス製グローブに接触すると硬化遅延が生じる可能性があります。これは付加型ほど顕著ではありませんが、念のため避けるべきです。
また気泡の混入を防ぐため、ベースとキャタリストを均一に混合することが重要です。練和不足や練和過多はいずれも印象精度に悪影響を及ぼします。30秒から1分程度、ラバーボウル内で押し付けるように練和するのが基本です。
消毒処理については、印象採得後に流水下で洗浄し、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液に15分から30分間浸漬するか、2%グルタラール溶液に30分から60分間浸漬する方法が推奨されます。縮合型は比較的薬液への耐性があるため、適切な感染管理が可能です。
クインテッセンス出版のキーワード検索ではトレーアドヒーシブの使用法について詳しい解説があります
保管中の印象材自体の管理も忘れてはいけません。未使用の製品は直射日光を避け、冷暗所に保管します。開封後は空気との接触で徐々に劣化するため、キャップをしっかり閉めて早めに使い切ることが望ましいでしょう。
使用期限の確認も基本です。