ワックスバイトより精度が高いはずのシリコンバイトでも、セット時の調整時間が従来の半分以下にならないなら使う意味がないです。
シリコンバイトは歯科医療において咬合採得用の付加型シリコーン印象材として広く使われています。主な用途は上下顎の咬合位を正確に記録し、技工所で製作する補綴物の咬合関係を再現することです。
クラウンやブリッジ、義歯などあらゆる補綴物の製作には咬合採得が必須です。従来はパラフィンワックスが主流でしたが、常温で容易に変形するため咬合位記録の再現性が低く、精度に乏しいという課題がありました。シリコンバイトはこの問題を解決するために開発された材料で、寸法変化が少なく、模型を咬合器にマウントする際の正確性が高いという特徴を持っています。
付加型シリコーンの収縮率は約0.1%以下です。これは従来のワックスと比較して圧倒的に低い数値です。
収縮が少ないということですね。
この寸法安定性により、採得した咬合位が技工操作中も維持され、補綴物のセット時に咬合調整が最小限で済むという大きなメリットが得られます。
シリコンバイトの主な用途は以下の通りです。
• クラウン・ブリッジの咬合採得 - 単冠から連結冠まで広範囲に対応
• 部分床義歯・全部床義歯の咬合記録 - 顎位を正確に再現
• インプラント補綴物の咬合関係記録 - コーピング法と併用
• 矯正治療における咬合状態の記録 - 治療経過の記録保管に活用
• 咬合接触状態の分析・保管 - 長期保管が可能で経過観察に最適
採得されたシリコンバイトは硬化後に高い硬度を持ち、トリミングや切削が容易です。ショアA硬度90程度の製品が多く、この硬さにより変形を防ぎながらも技工操作に必要な加工性を確保しています。
歯科診療の現場では診断用模型の咬合器マウントにも使用されます。精密な診断には正確な咬合関係の再現が不可欠で、シリコンバイトはこの要求に応える材料として位置づけられているのです。
トクヤマデンタルのリアルバイト製品情報では、付加型シリコーン印象材の技術的詳細と臨床応用について詳しく解説されています
シリコーンバイトとワックスバイトの最大の違いは精度と再現性です。実際の臨床データでは、ワックスバイトを使用した場合のセット時調整時間は平均15~20分かかるのに対し、シリコーンバイトでは5~10分に短縮されるという報告があります。
ワックスを使用した咬合採得では軟化作業が必要で、術者の技量によって精度に大きな差が出ます。水温管理、軟化時間、冷却タイミングなど多くの変数が精度に影響するため、経験の浅い歯科医師では安定した結果を得にくいのです。さらに常温下で容易に変形し、保管中や技工所への輸送中に咬合位がズレるリスクが高くなります。
この変形リスクは補綴物の適合不良につながります。セット時に予想以上の調整が必要になり、チェアタイムが延長し、患者さんの負担も増えてしまうわけです。ひどい場合は再製作が必要になることもあります。
シリコーンバイトは軟化作業が不要で、術者ごとの精度差が出にくいです。カートリッジから直接注出して咬合面に填入し、患者さんに咬んでもらうだけで完了します。
操作がシンプルだということですね。
また、硬化後の寸法変化が極めて小さく、長期保管も可能です。付加型シリコーンは硬化時に副産物を放出しないため、時間経過による収縮がほとんどありません。
コスト面ではワックスが圧倒的に安価です。材料費だけで比較すると、ワックスは数十円、シリコンバイトは200~1000円かかります。保険診療の咬合採得料は44点(440円)ですが、材料費を考慮すると経営的には厳しい側面があります。しかし、セット時の調整時間短縮による診療効率の向上、再製作率の低下を総合的に考えると、シリコンバイトの導入は長期的にメリットがあるという見方も可能です。
硬化時間の違いも重要な比較ポイントです。
| 材料タイプ | 操作時間 | 硬化時間 | 寸法精度 |
|-----------|---------|---------|---------|
| ワックスバイト | 軟化待ち含め1~2分 | 冷却に2~3分 | ★★☆ |
| シリコンバイト | 12~25秒 | 30~45秒 | ★★★ |
患者さんの負担という観点では、シリコンバイトの方が口腔内保持時間が短く快適です。
KaVoの技術資料では、パラフィンワックスとシリコンバイトの精度比較データが示されています
シリコンバイトには大きく分けて付加型と縮合型がありますが、歯科用途では付加型シリコーン印象材が主流です。付加型は硬化反応時に副産物を生成しないため、寸法安定性が極めて高いという特性を持っています。
付加型シリコーンの硬化反応は白金触媒による付加重合です。この反応では体積変化がほとんど起こらず、収縮率は0.1%以下に抑えられます。対照的に縮合型はアルコールなどの副産物を放出するため、硬化時および硬化後も徐々に収縮が進みます。
つまり付加型が基本です。
製品選択では硬化時間の違いに注目する必要があります。市販されているシリコンバイトには以下のようなタイプがあります。
• ファストタイプ - 操作時間12~15秒、口腔内硬化時間30~45秒
• レギュラータイプ - 操作時間20~25秒、口腔内硬化時間40~60秒
ファストタイプは全顎の咬合採得を短時間で完了させたい場合に適しています。操作余裕時間が短いため、填入を素早く行う必要がありますが、患者さんの口腔内保持時間が最小限で済み、特に嘔吐反射が強い患者さんに有効です。レギュラータイプは操作に余裕があり、部分的な咬合採得や複雑な症例に向いています。
硬度も選択基準の一つです。ショアA硬度85~95の範囲の製品が多く、この硬度帯は咬合採得に最適とされています。硬すぎると歯面への適合が悪くなり、柔らかすぎるとトリミング時に変形しやすくなります。高い硬度により寸法安定性を確保しているわけですね。
流動性も重要な特性です。適度な流動性があると歯面への填入がスムーズで、細かい咬合面形態も正確に記録できます。チキソトロピー性(揺変性)を持つ製品は、注出時は流動性が高く、静止すると粘度が上がるため、垂れにくく操作性に優れています。
症例に応じた選択ポイントを整理すると。
• 単冠・小範囲のクラウン → ファストタイプで十分
• ロングスパンのブリッジ → レギュラータイプで操作時間確保
• 全部床義歯 → 高流動性タイプで広範囲に均一に填入
• インプラント → 高精度タイプで微細な咬合関係を記録
冷蔵保管により硬化時間を遅らせることができます。使用前に冷蔵庫で冷やしておくと、操作時間を数秒延長できるため、広範囲の填入が必要な場合に活用できる方法です。
シリコンバイトの操作は基本的にシンプルですが、精度を確保するためにはいくつかの重要なポイントがあります。まず準備段階で、カートリッジをディスペンサーに装着し、ミキシングチップを取り付けます。この時、ミキシングチップの先端が確実に装着されているか確認してください。
填入前の口腔内準備が精度を左右します。唾液や血液が歯面に付着していると、親水性シリコーンであっても正確な記録ができません。エアーで十分に乾燥させ、必要に応じて綿球やガーゼで水分を除去します。
清潔な歯面が基本です。
操作手順は以下の通りです。
1. ディスペンサーを操作してミキシングチップ内でベースとキャタリストを均一に練和
2. 咬合面に薄く均一にペーストを注出(片側から反対側へ連続的に)
3. 患者さんに中心咬合位で咬合させる(力を入れすぎないよう指示)
4. 規定時間(30~60秒)保持
5. 硬化確認後に口腔内から取り出し
注出時のコツは、咬合面全体に薄く均一に広げることです。厚すぎると硬化時間が延長し、薄すぎると咬合接触部が穿孔してしまいます。理想的な厚みは2~3mm程度で、これは鉛筆の太さくらいです。
患者さんへの指示も重要なポイントです。「普段通りに軽く噛んでください」と伝え、強く咬みしめないよう注意します。過度な咬合力がかかると、シリコンバイトが過度に圧縮され、咬合高径が低く記録されてしまうのです。
セット時に早期接触が生じる原因になります。
硬化の確認方法は、余剰材料の硬化状態をチェックすることです。ミキシングチップ先端から出た余剰部分を指で触り、弾性を感じたら硬化完了の目安です。取り出し時は無理に引っ張らず、頬側から舌側へ揺らしながら外します。
失敗しやすい状況とその対策。
• 気泡の混入 → ミキシングチップを確実に装着し、最初の少量は捨てる
• 唾液の混入 → バキュームを適切に配置し、綿球で防湿
• 硬化前の咬合位ズレ → 硬化確認まで患者さんに動かないよう指示
• 過度な圧縮 → 患者さんへの咬合力指示を明確に
トリミングは技工操作時に行いますが、余剰部分が多い場合は診療室でも粗切削できます。シャープなメスやハサミで容易にカットできる硬度ですが、咬合接触部は絶対に削らないよう注意が必要です。
消毒処理も忘れてはいけません。シリコーン印象材は30秒以上の流水洗浄後、0.1~1.0%次亜塩素酸ナトリウム溶液で15~30分浸漬します。
これにより感染リスクを低減できます。
日本補綴歯科学会の感染対策指針では、シリコーン印象体の消毒方法が詳細に記載されています
クラウン・ブリッジ症例ではシリコンバイトの精度が補綴物の適合に直結します。支台歯形成後の咬合採得では、対合歯との接触関係を正確に記録することで、技工士が咬合面形態を適切に付与できます。特にロングスパンのブリッジでは、咬合器上での咬頭嵌合位の再現性が重要で、シリコンバイトを用いることで模型の浮き上がりを防ぎ、精度の高い修復物製作が可能になります。
全部床義歯の咬合採得では、無歯顎の顎位記録という特殊な状況に対応する必要があります。個人トレーに咬合堤を装着し、適切な咬合高径と水平的顎位を決定した後、シリコンバイトで記録します。流動性の高いタイプを選択すると、広範囲の咬合面に均一に填入でき、顎堤との適合も良好です。硬化後の変形が少ないため、技工所での作業模型マウントまで正確な顎位を維持できます。
部分床義歯では残存歯とのバランスが重要です。欠損部のレジン床と残存歯の咬合関係を同時に記録するため、適度な流動性と硬化後の高い硬度が求められます。シリコンバイトはこの両立を実現しており、義歯装着時の咬合調整量を大幅に削減できるのです。
インプラント症例における活用では、コーピング法との併用が一般的です。インプラント体にコーピングを装着し、シリコーン印象材で周囲組織と対合歯を同時に採得します。バイト材を併用することで咬合関係も同時に記録でき、技工物製作時の正確性が向上します。特に複数本のインプラント補綴では、各インプラント間の位置関係と咬合関係を正確に再現することが成功の鍵です。
矯正治療では治療経過の記録保管に活用できます。付加型シリコーンは寸法変化が少なく長期保管が可能で、治療前後の咬合接触状態を比較する際に有用です。咬合接触検査材と併用すれば、接触点の変化を視覚化し、数値化することもできます。
症例別の推奨製品タイプ。
| 症例タイプ | 推奨硬化時間 | 重視する特性 | 使用上のポイント |
|-----------|------------|------------|----------------|
| 単冠・小範囲ブリッジ | ファストタイプ | 操作の簡便性 | 素早い填入と咬合 |
| ロングスパンブリッジ | レギュラータイプ | 寸法精度 | 全顎に均一に填入 |
| 全部床義歯 | 高流動性タイプ | 広範囲への適合 | 咬合堤との一体化 |
| インプラント | 高精度タイプ | 微細構造の再現 | コーピング法併用 |
咬合崩壊症例では段階的な咬合採得が必要になることがあります。暫間被覆冠で咬合高径を回復させた後、シリコンバイトで最終的な咬合位を記録します。この場合、治療用義歯やプロビジョナルレストレーションと併用しながら、適切な顎位を探索する過程でシリコンバイトが重要な役割を果たすわけです。
複雑な症例では診断用ワックスアップと組み合わせる方法も有効です。理想的な咬合関係をワックスアップで検証し、それをシリコンバイトで記録することで、技工士との情報共有がより正確になります。
印象採得の基礎知識では、インプラント印象採得におけるシリコンバイトの特殊技術について解説されています
シリコンバイトの材料費は200~1000円と高額ですが、診療全体の効率を考えると投資価値があります。保険診療の咬合採得料は44点(440円)で、材料費を差し引くと採算が厳しい面もありますが、セット時の調整時間短縮による診療枠の有効活用、再製作率の低下による総コスト削減を考慮する必要があるのです。
ワックスバイトを使用した場合、セット時の平均調整時間は15~20分かかります。シリコーンバイトでは5~10分に短縮されるため、1日に複数のセットを行う歯科医院では、この時間差が大きな診療効率の違いを生みます。1回あたり10分の短縮なら、1日5件のセットで50分の余裕が生まれることになります。
再製作率の低下も重要な経済効果です。ワックスバイトでは変形により咬合不良が生じ、再製作になるケースが約5~10%あるという報告があります。シリコーンバイトではこの再製作率が2%以下に抑えられます。再製作には材料費だけでなく、技工料、患者説明の時間、信頼関係への影響など、目に見えないコストがかかるのです。
患者満足度の向上も見逃せません。セット時の調整時間が短いということは、患者さんの負担軽減に直結します。特に高齢者や長時間の開口が困難な患者さんにとって、スムーズなセットは大きなメリットです。患者満足度が高まれば、口コミによる新患増加や自費診療への移行率向上も期待できます。
自費診療では積極的に導入すべきです。セラミッククラウンやインプラント治療など、高額な治療では精度への期待も高く、シリコンバイトによる高品質な咬合採得は患者説明の材料にもなります。材料費を治療費に適切に反映させれば、経済的な問題は解消されます。
在庫管理の効率化も考慮点です。
• 使用期限の確認 - カートリッジタイプは開封後の劣化が少ない
• 冷蔵保管の活用 - 硬化時間の微調整が可能
• 複数タイプの常備 - 症例に応じた使い分けで無駄を削減
スタッフ教育への投資も重要です。シリコンバイトの操作は比較的簡単ですが、最初の指導で適切な手技を習得させることで、失敗率を低減できます。新人衛生士や歯科助手への教育時間も、ワックスバイトより短く済むというメリットがあります。
技工所との連携強化にも寄与します。精度の高い咬合採得により、技工士の作業効率が向上し、技工物の品質も安定します。結果として、歯科医院と技工所の信頼関係が強化され、難症例への対応力も高まるのです。
長期的な診療品質の向上につながります。
診療報酬の観点では、自費診療での単価設定にシリコンバイトのコストを明示することで、患者さんの理解も得やすくなります。「精密咬合採得料」として別途設定するクリニックもあり、透明性の高い料金体系が患者満足度を高める要因になっています。
時間単価の計算例を示すと、歯科医師の診療時間の経済価値を1分あたり500円と仮定した場合。
$$\text{ワックス調整時間コスト} = 15分 \times 500円 = 7,500円$$
$$\text{シリコン調整時間コスト} = 5分 \times 500円 = 2,500円$$
$$\text{時間価値の差額} = 7,500円 - 2,500円 = 5,000円$$
この差額5,000円から材料費差額(約500円)を引いても、1症例あたり4,500円の付加価値が生まれる計算です。

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