根尖孔外に溢出したレジン系シーラーは吸収されません。
レジン系シーラーは根管充填における封鎖性を大きく向上させる材料として、近年注目を集めています。この材料の最大の特徴は、根管象牙質壁に対する接着性能にあります。従来の酸化亜鉛ユージノール系シーラーは根管壁に「密着」することで封鎖を目指していましたが、レジン系シーラーは成分中のモノマーが象牙質に浸透重合することで接着層を形成します。
つまり根管封鎖が確実になるということですね。
レジン系シーラーの代表的な製品であるAHプラスは、エポキシレジンを主成分としており、多くの学術論文でコントロール群として使用されています。一方、4-META含有のメタシールSoftのような製品は、スーパーボンドと同系統の接着性モノマーを配合しており、次亜塩素酸ナトリウムを使用した根管でも前処理なしで接着できるセルフエッチング効果を持っています。
根管象牙質との接着界面では、モノマーが象牙細管内に浸透してレジンタグを形成し、樹脂含浸象牙質層を作り出します。この層の厚みは約数十μm程度で、ちょうど歯の神経が通っていた象牙細管の中に樹脂が入り込むイメージです。さらに、ガッタパーチャポイントとも化学的に接着するため、根管壁からガッタパーチャまでが一体化したモノブロック構造を形成します。
モノブロック構造が完成するわけです。
この接着性により、従来の根管充填で問題となっていた歯冠側からの漏洩(coronal leakage)を効果的に防ぐことができます。研究によると、従来のシーラーでは緊密な加圧根管充填を行っても、水や唾液は約3日で、口腔内細菌は約2ヵ月で根尖孔外へと漏洩することが知られています。しかしレジン系シーラーの接着性は、修復物の脱離や仮封の不備があった場合でも、より長期間の封鎖性を維持できる可能性があります。
根管内に残存する細菌の封じ込めという点でも効果的です。根管系は複雑な形態をしており、切削器具や有機質溶解剤ですべての細菌や壊死組織を除去することは困難です。感染根管では象牙細管内の数百μmの深さまで細菌が侵入しているため、完全な除去は不可能とされています。レジン系シーラーは象牙細管内に浸透重合することで、残存細菌を物理的・化学的に封じ込める効果が期待できます。
根管充填用接着性レジンシーラーの必要性について詳しく解説した学術記事(デンタルプラザ)
レジン系シーラーを使用する上で最も重要な注意点は、根尖孔外への溢出を絶対に避けなければならないということです。従来の酸化亜鉛ユージノール系シーラーは組織液と接触すると徐々に吸収される性質がありますが、レジン系シーラーは吸収されません。
これは非常に重要なポイントです。
根尖孔外に溢出したレジン系シーラーが残存すると、根尖歯周組織に対して長期的な刺激源となる可能性があります。特に「根尖が上顎洞底に近接あるいは突出した上顎臼歯」や「根尖が下歯槽管に近接あるいは突出した下顎臼歯」などの症例では、シーラーの溢出が重大な問題になるリスクがあります。上顎洞炎や下歯槽神経への圧迫といった合併症を引き起こす可能性があるためです。
溢出を防ぐためには、根管充填前にマスターポイントのタッグバックを必ず確認することが必須です。タッグバックとは、根尖部でガッタパーチャポイントが適合し、引っ張った時に抵抗を感じる状態のことです。この確認を怠ると、根管充填時にシーラーが根尖孔外に押し出されるリスクが高まります。
500g程度の軽い力での加圧が基本です。
従来の加圧根管充填では、シーラー層を薄くするために強い力でガッタパーチャを加圧していました。しかしレジン系シーラーの場合、接着性が高いため過度な加圧は必要ありません。むしろ強すぎる加圧は根管壁に微小な亀裂を生じさせ、垂直性歯根破折のリスクを高める可能性があります。適切な操作は、シーラーを根管壁に接触させる程度の軽度加圧にとどめることです。
また、レジン系シーラーの中でもMTA系シーラーについては、レジン成分を多く含む製品の場合、純粋なMTAセメントほどの生体親和性はないという報告もあります。製品選択時には成分を確認し、症例に応じた使い分けが重要になります。根尖孔が大きく開大している症例や、根尖病変が存在する症例では、より生体親和性の高いバイオセラミック系シーラーの選択も検討すべきです。
レジン系シーラーが特に有効性を発揮するのは、偏平根管や湾曲根管といった形態的に複雑な症例です。根尖性歯周炎の予後不良の原因の一つとして、湾曲根管を根管拡大形成時に直線化し、根尖孔の位置が変移して偏平になっている場合があります。このような根管では、従来の側方加圧根管充填法や垂直加圧根管充填法では十分な封鎖性を得ることが困難でした。
偏平な根管が問題になるわけです。
偏平根管とは、近遠心方向または頬舌方向に扁平な断面を持つ根管のことです。例えば下顎前歯や下顎第一小臼歯の遠心根などに多く見られます。このような根管では、円形のガッタパーチャポイントでは根管壁との間に大きな空隙が生じてしまい、シーラー層が極端に厚くなる部位が発生します。
接着性レジンシーラーを使用すれば、この問題に対応できます。シーラー自体が根管壁に接着し、ガッタパーチャとも接着するため、シーラー層が厚くなる部位があっても十分な封鎖性を確保できます。特にメタシールSoftのような製品は、ホイップクリームのような柔らかい性状を持ち、専用のエンドノズルで根管内に流し込むことができるため、複雑な根管形態にも適応しやすい特徴があります。
湾曲根管への対応も重要なポイントです。根管が大きく湾曲している場合、スプレッダーやプラガーといった加圧器具が根尖部まで到達しにくく、適切な加圧を行うことが技術的に困難です。特に犬歯のような歯根の長い歯では、この問題が顕著になります。歯根の長さが約25mm以上(ほぼハガキの長辺くらい)ある場合、器具が根尖の数mmまでしか届かないことも珍しくありません。
シングルポイント充填法が有効になります。
レジン系シーラーの封鎖性が高い特性を活かせば、マスターポイント1本での根管充填(シングルポイント法)も可能です。良好なタッグバックが得られる症例であれば、側方加圧や垂直加圧といった複雑な操作を省略できます。これにより、術者の技術的な負担が軽減され、治療時間も短縮できる可能性があります。
ただし、シングルポイント法を選択する場合でも、根管の機械的・化学的清掃、EDTAによるスミヤー層の除去、マスターポイントでの良好なタッグバックの確認といった基本的なステップは必須です。これらを怠ると、レジン系シーラーの優れた接着性能を十分に発揮できません。
レジン系シーラーの種類と根充方法が根尖封鎖性に及ぼす影響を検証した研究論文(北海道大学)
レジン系シーラーの使用を躊躇する理由の一つに、「再根管治療が必要になった時に除去が困難ではないか」という懸念があります。実際、従来のレジン系シーラー、特にエポキシレジン系のAHプラスやスーパーボンド根充シーラーは硬化後の硬度が高く、再治療時の除去に時間がかかることが指摘されていました。
日本の保険診療における根管治療では、統計的に50〜75%で再治療が必要になるという報告があります。つまり、根管充填材料を選択する際には、再治療の可能性を常に考慮しなければなりません。除去が容易な材料を選ぶことは、患者さんの将来的な負担を軽減することにつながります。
この問題に対応したのが新世代のレジン系シーラーです。
メタシールSoftなどの製品は、レジン系でありながら硬化後でもゴム状の柔軟性を持つという特異な性質があります。この柔軟性により、手用ファイルやピーソーリーマーなどの通常の根管拡大形成器具で削れるため、再根管治療での除去が可能です。硬化体の物性を調整することで、「接着性」と「除去性」という相反する性質のバランスを取っているわけです。
再治療時の具体的な除去方法としては、超音波チップとチタン製のリーマーを併用する方法が推奨されています。超音波の振動でシーラーとガッタパーチャを分離させながら、慎重に除去していきます。ただし、根管充填直後は根管内全体が硬化するまでに60分程度かかるため、ポスト腔の即日形成は避けるべきです。
再治療が容易になるということですね。
それでも除去には注意が必要です。レジン系シーラーは象牙細管内に数十μmまで浸透しているため、完全に除去することは困難です。特にスーパーボンド根充シーラーのような接着性の強い製品では、根管壁に形成された樹脂含浸象牙質層を完全に除去するには、健全な象牙質まで削らなければならない場合があります。これは根管壁の厚みを減少させ、治療後の歯根破折リスクを高める可能性があります。
再治療時のリスクを最小限にするための対策として、初回の根管治療で確実な封鎖を行うことが最も重要です。適切な根管形成、十分な化学的清掃、スミヤー層の除去、タッグバックの確認といった基本的なステップを丁寧に行うことで、再治療の必要性自体を減らすことができます。
レジン系シーラーは優れた性能を持つ一方で、すべての症例に適しているわけではありません。臨床では症例に応じて、レジン系、酸化亜鉛ユージノール系、バイオセラミック系などのシーラーを使い分けることが重要です。それぞれのシーラーには明確な特徴と適応症があります。
酸化亜鉛ユージノール系シーラーは、歴史が長く多くの臨床実績があります。主な特徴は、ユージノールによる消炎・鎮痛効果と、組織液による吸収性です。痛みのある歯や根尖病変が大きい症例では、この鎮静効果が有効に働きます。また、溢出しても徐々に吸収されるため、根尖孔外への溢出リスクが高い症例でも比較的安全に使用できます。
ただし欠点もあります。
ユージノールはレジン系材料の重合を阻害する性質があるため、根管充填後にファイバーポストをレジンセメントで接着する場合や、レジンコアを築造する場合には適していません。ユージノール残留によって接着不良が生じ、ポストの脱離や二次カリエスのリスクが高まります。このような症例では、非ユージノール系のシーラー選択が必須です。
バイオセラミック系シーラーは、近年注目されている新しいタイプのシーラーです。ケイ酸カルシウムを主成分とするMTA系材料で、pH12.5程度の強アルカリ性を示し、優れた抗菌作用を持ちます。さらに、硬化時に微膨張する性質があり、根管と補綴物との間の微小な隙間を埋める効果が期待できます。これは従来のレジン系シーラーの重合収縮やユージノール系シーラーの溶解性とは対照的な特性です。
生体親和性が非常に高いのが特徴です。
バイオセラミック系シーラーは組織に対する刺激が少なく、根尖孔外に溢出しても重大な問題になりにくいとされています。根尖病変が存在する症例や、根尖孔が大きく開大している症例では、この生体親和性の高さが大きなメリットになります。ただし、バイオセラミック系シーラーの中にはレジン成分を含む製品もあり、純粋なMTAセメントほどの生体親和性がない場合もあるため、製品の成分表示を確認することが重要です。
具体的な使い分けの基準としては、以下のような考え方があります。偏平根管や湾曲根管、歯根の長い症例では、接着性と封鎖性に優れるレジン系シーラーが第一選択となります。根尖病変が大きい症例や根尖孔が開大している症例では、生体親和性の高いバイオセラミック系シーラーが適しています。痛みが強い症例や急性症状のある症例では、鎮静効果のある酸化亜鉛ユージノール系シーラーを選択します。
ポスト支台築造を予定している症例では注意が必要です。ファイバーポストやレジンコアを使用する場合は、非ユージノール系のレジン系またはバイオセラミック系シーラーを選択します。メタルコアを使用する場合は、接着操作がないため、どのタイプのシーラーでも問題ありません。
保険診療と自費診療での使い分けも考慮すべき点です。日本の保険診療では、エポキシレジン系のAHプラスが広く使用されています。一方、自費診療ではバイオセラミック系シーラーの使用頻度が高まっています。メタシールSoftのような接着性レジンシーラーは、保険・自費を問わず、症例に応じて選択できる選択肢として位置づけられます。
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