ピーソーリーマー用途と使い分け

ピーソーリーマーの用途は根管治療だけではありません。根管口拡大、ポスト形成、再治療時のガッタパーチャ除去など、適切な使い分けをご存知ですか?

ピーソーリーマー用途と使い分け

高速回転でピーソーリーマーを使うと根管穿孔のリスクが3倍高まります。


この記事で分かる3つのポイント
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ピーソーリーマーの主要用途

根管口の漏斗状拡大、ポスト形成、ガッタパーチャ除去など、臨床での具体的な使用場面を解説

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回転数と安全な操作法

許容回転数800~1200rpmの守り方と、ネック部破折設計による安全機能を理解

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ゲーツドリルとの使い分け

ラルゴ型・ゲーツ型の形状差と、症例に応じた適切な器具選択の基準


ピーソーリーマーの根管口拡大における用途


ピーソーリーマーの最も一般的な用途は、根管口部の漏斗状拡大です。根管口は狭窄していることが多く、大臼歯では根管口に近接する窩壁の隆起により根管の彎曲が一層強くなる場合があります。このような解剖学的な制約を解消するために、ピーソーリーマーによる漏斗状形成(フレアー形成)が必要になるわけです。


根管口を漏斗状に拡大する目的は、主に3つあります。第一に、根管内への器具の挿入や操作を容易にすること。つまり手用ファイルやNiTiロータリーファイルが根管内でスムーズに動作できる環境を整えるということですね。第二に、根管洗浄液の流通を改善し、化学的清掃の効率を高めること。根管口が狭いままでは洗浄液が根尖まで十分に届きません。第三に、根管充填時の操作性を向上させ、緊密な充填を可能にすることです。


保存修復学・歯内療法学の教科書(至誠堂書店発行)には、根管口拡大の具体的手法と臨床的意義について詳細な記載があります


具体的な操作では、減速コントラアングルに装着したピーソーリーマーを根管口から根管の上部1/3から1/2程度まで挿入し、低速回転(800~1200rpm以下)で使用します。サイズは#1から#6まであり、通常は小さい番号から順に使用して段階的に拡大していきます。#1の直径は約0.5mm、#6は約1.3mm程度で、根管の太さに応じて適切なサイズを選択することが基本です。


ただし、根管口拡大時には注意すべきリスクもあります。過度な拡大は歯質の削除量を増やし、将来的な歯根破折(VRF:Vertical Root Fracture)のリスクを高める可能性があるのです。特に近心根の遠心根管口や遠心根の近心根管口など、デンジャーゾーンと呼ばれる歯質が薄い部位では穿孔のリスクが高まります。


必要最小限の拡大にとどめることが原則です。


ピーソーリーマーのポスト形成での用途

ピーソーリーマーの重要な用途の一つが、支台築造におけるポスト孔の形成です。失活歯の支台築造を行う際、根管充填材を部分的に除去してポストを植立するスペースを確保する必要があります。この時、ピーソーリーマーは根管形成バー(ポスト形成バー)と組み合わせて使用されることが一般的です。


ポスト形成の手順では、まずピーソーリーマーの#2または#3を使用して根管充填材(主にガッタパーチャポイント)の上部1/3程度を除去します。この段階でピーソーリーマーが果たす役割は、ガイドの形成です。つまり、後続の根管形成バーが正しい方向に進むための道筋を作るということですね。先端部にガイドが付いているピーソーリーマーの設計により、根管の方向性を保ちながら安全に拡大できるわけです。


松風のピーソーリーマー添付文書には、根管口の漏斗状形成および根管直線部分の拡大、ピン植立孔の形成についての使用方法が記載されています


ポスト形成時の重要な注意点として、ポストの長さは根尖封鎖を損なわないよう計画する必要があります。一般的には根尖部4~5mmの根管充填材を残すことが推奨されています。ピーソーリーマーで過度に除去すると根尖封鎖が不十分になり、根尖病変の再発リスクが高まるからです。


また、ファイバーポストを使用する場合、ポスト孔の形成サイズは最後に使用したピーソーリーマーまたは根管形成用ドリルより一回り小さなポストを選択することが推奨されています。これにより、ポストと根管壁の間に適切な厚みのレジンセメント層が形成され、接着強度と応力分散が最適化されます。ポスト孔が大きすぎると接着面積は増えますが、セメント層が厚くなりすぎて接着強度が低下する可能性があるのです。


ピーソーリーマーの再根管治療での用途

再根管治療において、ピーソーリーマーは既存の根管充填材であるガッタパーチャポイントの除去に重要な役割を果たします。感染根管治療を成功させるには、汚染された根管充填材を完全に除去することが不可欠です。根尖部に取り残しがあると感染源が除去されず、病変は治癒しません。


ガッタパーチャ除去の手順では、まずピーソーリーマーの#1または#2を使用して根管上部3分の1程度のガッタパーチャを除去します。ピーソーリーマーの回転運動により、ガッタパーチャは徐々に削り取られていくわけです。この時、コントラエンジンの回転数は800~1200rpm程度の低速に設定し、無理な力を加えずに慎重に操作することが基本です。


さらに効率的な除去を目指す場合、ゲーツグリッデンドリルとの併用も検討できます。ゲーツグリッデンドリルは刃部が短く、根管口直下の湾曲部に対してより安全に使用できる設計になっているため、ピーソーリーマーで上部を除去した後、中間部の除去に適しています。ただし、いずれの器具も根尖部への到達は困難なため、根尖付近のガッタパーチャは手用ファイルやHファイル、専用のガッタパーチャリムーバーで除去する必要があります。


ガッタパーチャが硬化している症例では、除去が困難になることがあります。この場合、超音波チップを併用してガッタパーチャを軟化させる方法が有効です。超音波の振動と発熱により、ガッタパーチャが軟らかくなり除去しやすくなるのです。また、溶剤(クロロホルムやユーカリ油など)を使用する方法もありますが、溶剤の使用には賛否両論があり、根管外への漏出リスクや組織刺激性を考慮する必要があります。


再根管治療時のリスクとして、根管壁の穿孔や器具の破折があります。特に既に根管形成されている部位を再度拡大する際、元の根管形態から逸脱しやすく、穿孔のリスクが初回治療よりも高まります。ピーソーリーマーの先端部ガイド設計は、このようなリスクを軽減する安全機能として機能するわけです。


ピーソーリーマーの回転数と安全な操作法

ピーソーリーマーを安全に使用するための最も重要な要素が、適切な回転数の設定です。許容回転数は製品によって若干異なりますが、一般的に800~1200rpm(回転/分)が推奨されています。この回転数を超えると、器具に過度な負荷がかかり破折リスクが高まるだけでなく、根管壁の切削速度が速くなりすぎて穿孔の危険性が増すのです。


なぜ低速回転が必要なのかという理由は、ピーソーリーマーの切削メカニズムにあります。ピーソーリーマーはタービンのような超高速回転(30~50万rpm)ではなく、マイクロモーターによる低速回転で使用する器具です。低速回転では切削力がトルク(回転力)によって生み出されるため、術者は器具にかかる抵抗を感じながら慎重に操作できます。これは感覚フィードバックという重要な安全機能なのです。


OralStudioの製品情報によると、マニー製ピーソーリーマーは許容回転数1200rpm以下と明記されており、安全設計としてネック基部から破折する構造を採用しています


ピーソーリーマーには、万が一過度な力がかかった場合の安全機構が組み込まれています。


それがネック部破折設計です。


切削中に無理な力が加わると、刃部とシャンク部の境界にあるネック基部から意図的に破折するよう設計されているのです。これにより、根管内深部での破折を防ぎ、破折片の除去を容易にする効果があります。つまり万が一の事故でも、被害を最小限に抑えるフェイルセーフ機構ということですね。


操作時の注意点として、ピーソーリーマーはタービンへの装着が禁忌です。タービンは30~50万rpmという超高速で回転するため、ピーソーリーマーの許容回転数を大幅に超えてしまいます。この状態で使用すると、器具の即座の破折や根管壁の急激な切削による穿孔のリスクが極めて高くなるのです。必ず減速コントラアングルまたはストレートハンドピースを使用し、マイクロモーターの回転数設定を確認してから操作を開始することが基本です。


滅菌に関しても重要なポイントがあります。ピーソーリーマーはステンレススチール製のため、オートクレーブ滅菌(高圧蒸気滅菌)が可能です。推奨される滅菌条件は121℃で30分、または134℃で3分です。薬液消毒のみでは十分な感染対策とは言えないため、使用前には必ず高圧蒸気滅菌を行う必要があります。


ピーソーリーマーとゲーツドリルの使い分け

ピーソーリーマーと混同されやすい器具に、ゲーツグリッデンドリル(ゲーツドリル)があります。両者は根管口拡大という共通の用途を持ちますが、形状と切削特性に重要な違いがあり、症例に応じた使い分けが必要です。


最も顕著な違いは刃部の長さです。ピーソーリーマーの刃部は比較的長く、根管の直線的な部分を広い範囲で拡大できる設計になっています。一方、ゲーツグリッデンドリルは刃部が短く、根管口直下の限定的な範囲を拡大するのに適しています。刃部が短いことで、湾曲根管や根管口直下に急なカーブがある症例でも、器具が根管壁に強く当たりにくく穿孔のリスクを低減できるのです。


またラルゴ型とゲーツ型という分類もあります。ラルゴ型は先端が丸く非切削で、根管壁に沿って自動的にガイドされる設計になっています。この特徴により、未熟な術者でも比較的安全に使用できる利点があります。一方、ゲーツ型は先端まで切削刃があり、より積極的な拡大が可能ですが、その分穿孔リスクも高まるため、熟練した術者向けと言えます。


Dental Youth Blogの歯内療法学記事では、フレアー形成の各器具の特性と使い分けについて、臨床的な観点から詳しく解説されています


使い分けの基準としては、根管の解剖学的特徴を考慮します。根管口が広く直線的なアプローチが容易な症例(前歯部や小臼歯部など)では、ピーソーリーマーの長い刃部を活かして効率的な拡大が可能です。一方、根管口直下に湾曲がある症例や、デンジャーゾーンに近い根管口では、ゲーツグリッデンドリルの短い刃部による慎重なアプローチが安全性を高めます。


両者の切削様式にも違いがあります。ピーソーリーマーはゲーツドリルよりも直線的に切削される傾向があり、根管の直線部分の形成に適しています。ゲーツグリッデンドリルは根管壁に沿った曲線的な切削が得意で、根管の自然な形態を保ちながら拡大できる利点があるのです。


実際の臨床では、両者を併用する方法も効果的です。まずゲーツグリッデンドリルで根管口部を慎重に拡大し、その後ピーソーリーマーで根管上部をさらに拡大するという段階的アプローチにより、安全性と効率性を両立できます。器具の特性を理解した上で、症例ごとに最適な選択と組み合わせを判断することが、熟練した歯内療法の実践には不可欠です。


ピーソーリーマー選択時の臨床的判断基準

ピーソーリーマーを実際の臨床で使用する際、適切な製品選択と使用判断には複数の要素を考慮する必要があります。この判断が治療の成否と患者の予後に直接影響するため、製品特性と臨床状況の両面から検討することが重要です。


まず考慮すべきは根管の解剖学的条件です。根管の太さ、長さ、湾曲度によって必要なピーソーリーマーのサイズと長さが変わります。製品には28mm、32mm、38mmという規格があり、臼歯部の長い根管には長いサイズ、前歯部には短いサイズが適しています。根管が太い症例では#4や#5といった大きめのサイズまで使用する場合もありますが、歯質の削除量とのバランスを常に意識する必要があります。


次に重要なのが、術者の技術レベルと院内の標準化です。ラルゴ型のピーソーリーマーは先端非切削設計により穿孔リスクを低減できるため、若手歯科医師や経験の浅いスタッフが使用する場合に適しています。一方、経験豊富な術者であれば、ゲーツ型の積極的な切削力を活かして効率的な治療を行えます。院内で使用する製品を統一することは、スタッフ教育や在庫管理の観点からも推奨されます。


1D(ワンディー)の歯科器材解説記事では、各メーカーのピーソーリーマーの特徴と、臨床での選択基準について実用的な情報が提供されています


コスト面での考慮も実践的には重要です。ピーソーリーマーは繰り返し使用可能な器具ですが、切削効率の低下や破損により定期的な交換が必要になります。使用頻度が高い医院では、価格と品質のバランスを考慮した製品選択が経営的にも重要になります。一般的に、6本入りのセットで数千円から1万円程度の価格帯が多く、メーカーや規格によって価格差があります。


破折リスクへの対処という観点では、安全設計の有無が重要な選択基準になります。ネック基部から破折する設計の製品は、万が一の破折時に根管内深部での破折を防ぎ、除去を容易にします。これは患者の安全と、トラブル発生時のリスク管理において重要な保険となるのです。


また、マイクロモーターとの適合性も確認が必要です。一部の高トルク型マイクロモーターでは、トルク制御機能により器具に過度な負荷がかかった時点で自動停止する機能があります。この機能を活用することで、破折や穿孔のリスクをさらに低減できます。使用するマイクロモーターの性能を理解し、適切な回転数とトルク設定を行うことが、安全で効率的なピーソーリーマー使用の前提条件となります。


臨床判断の最終的な基準は、患者の利益と治療の成功率です。歯質の保存、治療時間の短縮、合併症リスクの最小化、これらすべてのバランスを考慮した器具選択と使用法が、熟練した歯内療法医には求められるのです。




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