薬剤総合評価調整加算は、入院基本料等に上乗せされる入院時ポリファーマシー対策の評価で、2016年度の診療報酬改定で新設された加算です。 2024年度改定でも見直しが行われ、依然として高齢者の多剤併用対策の中心的なインセンティブとして位置づけられています。 この加算は退院時1回限り100点(1点10円換算なら1,000円)で、薬剤調整加算150点と組み合わせれば合計250点、1件あたり2,500円相当の評価となります。 100床規模で年間100件算定できれば25万円、400床規模で年間400件なら100万円規模の収入差となるため、決して小さくありません。 shirobon(https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r06_ika/r06i_ch1/r06i1_pa2/r06i12_sec2/r06i122_A250.html)
加算の要件でまず押さえるべきなのは、入院前の内服薬が「6種類以上」であることです。 この「6種類」は、高齢者によく処方される錠剤・カプセル・散剤・顆粒剤・液剤を1銘柄1種類としてカウントし、頓服薬や服用開始4週間以内の薬剤は除外するというルールになっています。 例えば、高血圧薬2剤、糖尿病薬2剤、脂質異常症薬1剤、睡眠薬1剤で合計6種類、ここに胃薬や便秘薬が加わると簡単に8~9剤になる状況です。つまり、歯科治療でよく遭遇する「生活習慣病フルセット」の高齢者は、病院入院時にはかなりの割合で算定対象になり得るということですね。 yakuyomi(https://yakuyomi.jp/career_skillup/skillup/02_154/)
算定の核心は、退院時までに薬剤評価を行い、医師や薬剤師を中心としたチームで多剤併用の是非を検討したうえで、処方内容を見直す点にあります。 ポリファーマシーは「単に薬剤数が多い状態」ではなく、「薬物有害事象のリスク増加、服薬誤り、アドヒアランス低下につながる状態」と定義されており、症状を悪化させる薬の組み合わせや不要薬を見つけて調整することが求められます。 ここで重要なのは、減薬そのものより「評価と調整のプロセス」に点数がついているという視点です。結論はプロセスの評価です。 amn.astellas(https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/medical-information/management/pdfs/medicalmesa/2024/mesa_2024_August.pdf)
ところが、実際の算定率を見るとギャップが浮き彫りになります。ある調査では、薬剤総合評価調整加算の算定率が10%を下回る病院が全体の95%に達しており、多くの医療機関でポリファーマシー対策が診療報酬上は十分に評価されていない現状が報告されています。 つまり、ポリファーマシーの問題意識は共有されていても、手順書の整備や多職種連携、退院時の薬剤情報連携まで含めた「算定できる形」で運用できている病院は少数派ということです。 これは大きなロスです。 med.ts-pharma(https://www.med.ts-pharma.com/di-net/ts-pharma/pickup/pickup90.pdf)
2024年度の改定では、従来必須とされていた「ポリファーマシー対策に関するカンファレンスの実施」が要件から外れ、日常業務のなかで多職種連携と情報共有を行い薬剤調整を実施した場合も算定可能になりました。 これにより、病棟薬剤師が主導しつつ医師・看護師・歯科医師・歯科衛生士などが日常的に情報共有していれば、形式的なカンファレンスを無理に設定しなくてもよい方向にシフトしています。 つまり柔軟化が基本です。 jshp.or(https://www.jshp.or.jp/activity/guideline/20240214-1.html)
薬剤総合評価調整加算に上乗せできる薬剤調整加算は、退院時に内服薬の種類を2種類以上減らした場合に150点が加算される仕組みです。 元の100点と合わせると1回250点で、1点10円の医科診療報酬で2,500円に相当します。 例えば年間200件のポリファーマシー症例があり、そのうち半数で2剤以上の減薬ができれば、年間25万円の収入差になる計算です。数字で見ると現場のモチベーションも変わりますね。 shirobon(https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r06_ika/r06i_ch1/r06i1_pa2/r06i12_sec2/r06i122_A250.html)
この「2剤以上減薬」の要件は、単なる数合わせではなく、有害事象リスクや服薬アドヒアランスを意識した減薬を意味します。 例えば、ベンゾジアゼピン系睡眠薬と抗コリン作用の強い抗アレルギー薬を併用している高齢者では、ふらつきや転倒リスクが高まり、骨折→入院→ADL低下という負の連鎖につながります。 ここで睡眠薬を1剤に絞り、抗コリン薬を中止するだけでも薬剤数は2つ減り、同時に転倒リスクを大きく下げることができます。 結論は「薬を減らすほど転倒が減る」です。 jpma.or(https://www.jpma.or.jp/information/industrial_policy/proper_use/lofurc0000003wdk-att/kaiin.pdf)
経済的な観点でも、平均的な高齢者の処方薬1剤あたりの月額薬剤費が数百円~千円程度とすると、2剤減らせば月1,000~2,000円、年間で1万2,000~2万4,000円の薬剤費削減につながります。これは患者さん個人の負担にとどまらず、保険者側の支出にも影響するため、診療報酬上の加算として評価されている理由でもあります。 いいことですね。 jpma.or(https://www.jpma.or.jp/information/industrial_policy/proper_use/lofurc0000003wdk-att/kaiin.pdf)
実際の運用では、減薬候補を見つけるために「4週間以上継続している薬剤」「漫然投与されている薬剤」を一覧化し、それぞれの適応と有害事象リスクを洗い直すステップが欠かせません。 歯科領域でいえば、整形外科や内科で処方され続けているNSAIDsやロキソプロフェンの長期内服が、口腔内出血傾向や消化性潰瘍リスクとして跳ね返ってくるケースがあります。 「抜歯前だから一時中止」ではなく、「そもそもこの慢性投与は必要か」という視点に立つと、減薬候補として病院側にフィードバックすることができます。 saishi-kokuho(https://saishi-kokuho.com/polypharmacy/)
こうした場面で役立つのが、減薬候補のリストアップを支援する電子カルテのアラート機能や、ポリファーマシーチェックリストです。 リスク→狙い→候補という順番で考えると、「転倒リスクを減らしたい→抗コリン薬とベンゾ系を見直す→具体的な剤数調整を医師と相談する」という流れが自然になります。 つまり構造化して考えるのが基本です。 med.ts-pharma(https://www.med.ts-pharma.com/di-net/ts-pharma/pickup/pickup90.pdf)
病院におけるポリファーマシー加算の算定では、入院前の処方状況の把握が不可欠であり、持参薬やお薬手帳の確認とともに、かかりつけ医・歯科医からの情報が重要な役割を果たします。 特に、抗凝固薬や抗血小板薬、ビスホスホネート製剤など、歯科処置に直結する薬剤は、病院側でも抜歯・口腔外科手術時のリスク評価に直結します。 ここで、歯科側が処置内容・予定手術・出血リスクを明記した紹介状を送ることで、病院での薬剤調整方針が変わるケースは少なくありません。 saishi-kokuho(https://saishi-kokuho.com/polypharmacy/)
歯科医従事者が実務的にできることとしては、まず患者さんの持参薬とお薬手帳を歯科受診時点で確認し、「6剤以上」の高リスク群を意識してピックアップすることが挙げられます。 そのうえで、「最近入院予定はありませんか」「かかりつけ病院はどこですか」といったヒアリングを行い、近く入院予定がある場合には、病院宛ての情報提供書に口腔内の状態とともに、服薬状況に関する所見も簡潔に添えると連携の質が上がります。 つまり事前共有が条件です。 saishi-kokuho(https://saishi-kokuho.com/polypharmacy/)
また、日本病院薬剤師会が公表している「ポリファーマシー対策の進め方(Ver 2.0)」では、多職種連携の一員として歯科医師・歯科衛生士がカンファレンスに参加することも想定されています。 2024年度改定でカンファレンス実施が必須要件ではなくなったとはいえ、病棟や地域連携カンファレンスの場で、口腔機能低下や嚥下機能の視点から薬剤調整の必要性を提起できれば、実質的なポリファーマシー対策の質は高まります。 「眠気の強い薬を減らせば誤嚥が減り、誤嚥性肺炎入院が減る」というストーリーは、歯科側からも語りやすいポイントです。 amn.astellas(https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/medical-information/management/pdfs/medicalmesa/2024/mesa_2024_August.pdf)
さらに、埼玉県歯科医師国民健康保険組合などが発信している啓発資料では、ポリファーマシーが高齢者の転倒・認知機能低下・低栄養などに直結することが紹介されており、歯科診療で日常的に目にする「フレイル」の背景として多剤併用があることが強調されています。 歯科衛生士が口腔機能向上の指導をする際に、「飲み合わせ」「眠気」「立ちくらみ」といったキーワードで薬の影響に触れ、「薬の数が多くて気になるようなら、主治医やかかりつけの病院で相談してみてください」と促すだけでも、病院側でのポリファーマシー加算算定につながるきっかけになります。 つまり小さな一言がトリガーです。 jpma.or(https://www.jpma.or.jp/information/industrial_policy/proper_use/lofurc0000003wdk-att/kaiin.pdf)
多くの病院で薬剤総合評価調整加算の算定率が10%未満にとどまっている背景には、「対象患者の抽出ができていない」「評価プロセスの記録が不十分」「退院時処方の見直しが形式的」といった課題があります。 そこで有効なのが、入院時から退院時までの一連の流れをチェックリスト化し、特に高齢者多剤併用患者を見逃さないワークフローを整備することです。 つまり見える化が原則です。 jshp.or(https://www.jshp.or.jp/activity/guideline/20240214-1.html)
例えば、入院時の看護師アセスメントシートに「内服薬6剤以上」のチェック欄を設け、そのフラグが立った患者情報が薬剤部と医師に自動的に共有されるように電子カルテを設定します。 薬剤師は入院後早期に持参薬を確認し、適応・重複・有害事象リスクを評価したうえで、減薬や切り替えの候補を医師に提案します。 歯科的な観点では、口腔乾燥を悪化させる抗コリン薬や、顎骨壊死リスクのあるビスホスホネート製剤、抜歯時の出血リスクを高める抗凝固薬などがリストアップの対象になり得ます。 yakuyomi(https://yakuyomi.jp/career_skillup/skillup/02_154/)
退院時には、薬剤総合評価調整加算および薬剤調整加算の要件(6剤以上→評価→2剤以上減薬)を満たしているかを確認するチェック欄を設け、「満たしているのに算定していない」ケースをゼロに近づけることが重要です。 具体的には、退院処方オーダー画面に「減薬前後の薬剤数」「減薬数」「加算算定可否」の自動表示を組み込むと、医師の意識付けになります。 それでも現場が忙しいと見落としがちなので、週1回程度、薬剤部側で加算算定漏れをレビューし、問題のあった症例をカンファレンスや部署会議でフィードバックする運用も有効です。 つまり仕組みで拾うということですね。 shirobon(https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r06_ika/r06i_ch1/r06i1_pa2/r06i12_sec2/r06i122_A250.html)
歯科医従事者の立場としては、病院内に歯科部門や口腔外科がある場合、入院患者の口腔内診察時に「多剤併用+嚥下機能低下+誤嚥性肺炎リスク」といった組み合わせを見つけたら、病棟薬剤師や主治医にポリファーマシーの観点での評価を提案することが算定率向上に寄与します。 例えば、「夜間せん妄が続いている患者で、睡眠薬・抗不安薬・抗ヒスタミン薬が重なっていないか」「口腔乾燥が強く義歯不適合になっている患者で、抗コリン薬が複数処方されていないか」といった視点です。 これらは歯科診療の場で気づきやすいサインです。 amn.astellas(https://amn.astellas.jp/content/dam/jp/amn/jp/ja/medical-information/management/pdfs/medicalmesa/2024/mesa_2024_August.pdf)
検索上位の記事では、ポリファーマシー加算の制度説明や医科入院患者の一般論が中心で、歯科特有のハイリスク薬への踏み込みは十分ではない印象があります。 しかし実務レベルでみると、歯科領域で頻繁に遭遇する薬剤は、ポリファーマシー加算の対象となる高齢者の安全性に直結しており、病院側の評価と密接に関係します。 ここでは、歯科視点でのハイリスク薬と加算を絡めた実践例を整理します。つまり歯科ならではの視点です。 med.ts-pharma(https://www.med.ts-pharma.com/di-net/ts-pharma/pickup/pickup90.pdf)
第一に、ビスホスホネート製剤やデノスマブなど、骨吸収抑制薬は顎骨壊死リスクが問題となります。 高齢の女性患者では、骨粗鬆症治療薬としてこれらが長期投与されていることが多く、同時にNSAIDsやステロイド、PPIなどが複数併用されているケースも少なくありません。 こうした多剤併用の中で顎骨壊死が発生すると、抜歯やインプラント治療が著しく制限され、入院治療や長期の通院が必要になります。 「この骨粗鬆症薬+他剤併用が本当に必要か」という問いを、歯科側から病院に投げかけることは、ポリファーマシー評価の一部になり得ます。 saishi-kokuho(https://saishi-kokuho.com/polypharmacy/)
第二に、抗凝固薬・抗血小板薬の併用は、抜歯や口腔外科手術の出血リスクだけでなく、高齢者の転倒・出血性合併症とも深く関わっています。 ワルファリンにDOAC、アスピリン、クロピドグレルが重なっているような患者を前にすると、術前の対応をどうするか悩む場面があるはずです。ここで「最近のエビデンスでは単剤で十分なケースではないか」「血管内治療後何年経過しているか」といった情報を病院循環器内科に確認し、減薬の可能性を探ること自体が、ポリファーマシー対策に合致します。 どういうことでしょうか?と自分に問いかけてみてください。 jpma.or(https://www.jpma.or.jp/information/industrial_policy/proper_use/lofurc0000003wdk-att/kaiin.pdf)
第三に、向精神薬や睡眠薬の多剤併用は、歯科診療におけるコミュニケーション・摂食嚥下・口腔ケアの質に大きく影響します。 ベンゾジアゼピン系・非ベンゾ系・抗うつ薬・抗精神病薬が同時に数種類処方されている高齢者では、日中の傾眠、口腔内の清掃不良、義歯管理の困難さなどが顕著になることがあります。 歯科衛生士が訪問口腔ケアの現場でこうした状態を観察した場合、「薬の数がかなり多いようですが、主治医の先生に相談されましたか」といった声かけを行い、必要に応じて主治医や病院に情報提供することで、退院時や外来でのポリファーマシー評価につながります。 saishi-kokuho(https://saishi-kokuho.com/polypharmacy/)
こうしたハイリスク薬の整理には、日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」や厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」が有用で、病院でのポリファーマシー加算要件にもこれらのガイドラインを踏まえた評価が含まれています。 歯科医療者がこれらのガイドラインに目を通しておけば、「この薬は高齢者には慎重投与」「口腔機能を悪化させやすい薬」といった感度が高まり、病院との連携の質が変わります。 つまりガイドラインに注意すれば大丈夫です。 yakuyomi(https://yakuyomi.jp/career_skillup/skillup/02_154/)
ポリファーマシー | 埼玉県歯科医師国民健康保険組合(歯科向けのポリファーマシー解説と高齢者への影響の整理に関する参考リンク)
https://saishi-kokuho.com/polypharmacy/
薬剤総合評価調整加算・薬剤調整加算とは?(加算要件・点数・2024年度改定内容の詳細解説に関する参考リンク)
https://yakuyomi.jp/career_skillup/skillup/02_154/
病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方(ポリファーマシー対策手順書・ワークフロー構築の参考になる厚労省資料)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66092.html