毎月歯石を取っているだけでは、歯周病は絶対に治りません。
「ペリオチップ」とは、超音波スケーラーの先端に装着して使用する専用の交換式チップのことです。「ペリオ」は歯周病を意味する英語「Periodontal disease(ペリオドンタル・ディジーズ)」の略称であり、歯周治療専用に設計されたチップという意味合いを持ちます。
超音波スケーラー本体は、1秒間に25,000〜40,000回という非常に高い周波数で振動し、チップ先端を微細に動かすことで歯面に付着した歯石やバイオフィルムを粉砕・除去します。振動の周波数は、ちょうど人間の耳に聞こえない帯域であるため、患者は「キーン」という響きを感じつつも、その振動の細かさは実感しにくいものです。
ペリオチップが一般的な汎用チップと大きく異なる点は、その細さにあります。チップの作業部が非常に細く設計されているため、歯と歯ぐきの境目(歯肉縁下)よりも奥に広がる歯周ポケットへアクセスしやすいのが最大の特徴です。歯周ポケットとは、健康な状態では1〜2mm程度の深さしかありませんが、歯周病が進行すると4mm・5mm・7mm以上と深くなっていきます。
つまりペリオチップが必要です。深いポケットに太いチップは挿入できないため、治療効率が大きく下がります。
日本人の約80%が何らかの歯周病に罹患しているというデータがあります(日本歯周病学会)。これは成人のほぼ大多数が歯周治療に関わる可能性を持つということであり、ペリオチップが歯科臨床において果たす役割の大きさを示しています。
日本歯周病学会「歯周治療のガイドライン2022」:歯周病の診断基準・治療方針の根拠が記載されています
ペリオチップには多彩な形状・素材のバリエーションが存在し、用途・部位・歯石の状態によって使い分けることが治療の質を大きく左右します。形状の違いを理解することが基本です。
代表的な形状分類を整理すると、以下のようになります。
市販されているペリオチップの数は、メーカーによっては30種類以上になるものもあります。これは患者ごとに口腔内の形態・歯石の状態・ポケットの深さが異なるためであり、それだけ「一本のチップで全部対応できない」ということを示しています。意外ですね。
また、素材の観点では「メタル製(金属製)」と「プラスチック製」の2種類があります。メタル製は耐久性・歯石除去力が高い反面、インプラントや補綴物への使用は禁忌です。プラスチック製はその逆で、ソフトな素材ゆえにインプラント周囲の繊細なケアに適しています。これが条件です。
白水貿易「専用チップ ペリオ関連」:キュレットタイプ・ソフトタイプなど各種ペリオチップのラインナップと仕様が確認できます
ペリオチップを使用する超音波スケーラーには「ピエゾ式」と「マグネット式(磁歪式)」の2種類があり、それぞれチップの動き方が根本的に異なります。この違いを理解しないまま操作すると、治療効果を十分に引き出せません。
ピエゾ式では、チップ先端が「直線的な振動(リニアストローク)」を行います。一方、マグネット式では「楕円状の振動(エプティカルストローク)」を描きます。ピエゾ式の場合、チップの側面1面だけが作業面になるため、角度管理が非常に重要です。歯面に対して0〜15度の角度を保ちながら操作するのが基本とされています。
力のかけ方は「フェザータッチ(羽で触れるような軽い力加減)」が原則です。超音波スケーラーは振動で歯石を粉砕するものであり、手の力で歯石をはじくハンドスケーラーとはまったく異なる操作感が求められます。強く押しつけると振動が吸収されてしまい、逆に除去効率が落ちます。
チップは常に動かし続けることが必須です。同じ箇所に4秒以上チップを止め続けると、振動による発熱が起き、患者に痛みや不快感を与える可能性があります。1〜2秒ごとに位置をずらすリズムを意識することが、安全な操作の基本です。
超音波スケーラーにはパワーモードの切り替え機能があり、P(ペリオ)モード・E(エンドドンティクス)モード・S(スタンダード)モードなどが用意されています。縁下の繊細な処置には弱めのパワー設定、つまりペリオモードで使用することが推奨されています。実はキュレットタイプのチップが開発された本来の目的も、「弱いパワーで縁下にアプローチできるようにする」という点にありました。弱いパワーで歯石が取れることが条件です。
操作前には必ず注水(冷却水)が出ていることを確認してからチップを歯面に当てる必要があります。水が出ていない状態でチップを当てると摩擦熱が発生し、患者への痛みだけでなく歯の損傷にもつながります。
超音波スケーラーとペリオチップには、使用を避けるべき禁忌ケースが明確に存在します。これを見落とすと、治療が患者の身体に悪影響を及ぼす可能性があります。厳しいところですね。
禁忌のなかでも特に注意が必要なのが、心臓ペースメーカーを装着している患者への使用です。米国歯周病学会(AAP)は、磁歪式(マグネット式)の超音波スケーラーについてペースメーカー装着者への使用を明確に禁止するよう勧告しています。一方でピエゾ式については機能干渉のリスクは低いとされていますが、いずれのタイプも禁忌として扱う医療機関が多く、事前問診での確認が絶対に欠かせません。
インプラント部位への対応も重要な注意点です。チタン製インプラントに金属製ペリオチップを使用すると、インプラント表面に微細な傷がつき、そこにバイオフィルムが形成されやすくなるリスクがあります。インプラントへのメンテナンスには必ず専用のプラスチック製チップを使用することが原則です。これが原則です。
その他にも禁忌ケースは複数あります。
禁忌を事前に把握しておけば問題ありません。初診時の問診票や口腔内診査で、これらのリスク因子を必ず確認する習慣が、安全な歯科治療の土台となります。
デンタルダイヤモンド社「超音波スケーラーの使用目的・禁忌例の解説」:禁忌ケースの詳細とマグネット式・ピエゾ式の違いが丁寧にまとめられています
歯周治療の現場では、ペリオチップ(超音波スケーラー)と手用スケーラー(キュレットスケーラーなど)を組み合わせて使うのが最も効果的な方法とされています。「どちらか一方で十分」という考え方は現代の歯周病学ではすでに否定されています。
超音波スケーラーが優れているのは、まず治療効率の高さです。歯石が多量に沈着しているケースでも、手用スケーラーよりはるかに短時間で除去できます。さらに、キャビテーション効果(気泡が弾ける際の衝撃波)とアコースティックマイクロストリーミング効果(チップ周囲の渦巻き水流)により、チップが物理的に届かない場所のバイオフィルムまで破壊・洗浄できるという特徴があります。これは使えそうです。
一方で手用スケーラーが得意なのは、縁下の細かな根面形態への適合と、触覚フィードバックを活用した精密な操作です。術者の指先にかかる抵抗感から、歯石の残存を確認しながら仕上げていくことができます。
SRP(スケーリング・ルートプレーニング)の流れを整理すると、「超音波スケーラー(ペリオチップ使用)で大まかな歯石を除去 → 手用スケーラーで根面を滑沢に仕上げる」という順序が一般的です。歯周ポケットが4mm以上のケースでは特にこの組み合わせが推奨されており、ポケットが6〜7mm以上の重度歯周炎では、細径のペリオチップによる縁下へのアクセスなしに治療効果を高めることが困難とされています。
超音波スケーラーのみの使用では、歯根面を平滑・硬化させる「ルートプレーニング」が不十分になるリスクがあります。歯根面のざらついた部分が残ると、そこに細菌が再付着しやすくなり、ポケットの再悪化につながります。つまり組み合わせが重要です。
また、SRP後の患者自身のプラークコントロールが不十分な場合、ポケット内細菌が再増殖しやすいことがエビデンスとして示されています。歯科医院での処置だけで歯周病が治るわけではなく、患者自身の毎日のブラッシングが治療の成否を大きく左右します。歯科医院と患者の両輪が条件です。
定期的なSPT(サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー)への移行が治療完了後の理想的な流れです。歯周ポケットが安定した後も、3か月〜6か月に一度のペリオチップによるメンテナンスを継続することで、再発リスクを大幅に下げることができます。
日本歯科保存学会「歯肉縁下バイオフィルムコントロールの効果に関する科学的根拠」:SRPの臨床的有効性とプラークコントロールの重要性を解説した学術論文です

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