歯科医師・歯科衛生士が指示を出しても、薬局からケアマネへの報告書が1枚未提出なだけで算定がゼロに戻ります。
歯科情報
居宅療養管理指導は、定期的な通院が困難な患者に対して薬剤師などの専門職が自宅や介護施設を訪問し、薬学的な管理と指導をおこなうサービスです。財源は「介護保険」であり、医療保険とは別の制度として位置づけられています。
歯科医療に携わる方にとってなじみ深いのは、歯科医師や歯科衛生士が算定する「歯科医師が行う場合」や「歯科衛生士等が行う場合」の居宅療養管理指導ですが、薬局の薬剤師も独自の区分として算定できます。つまり介護報酬上の居宅療養管理指導には「医師」「歯科医師」「薬剤師」「管理栄養士」「歯科衛生士等」という複数の職種が、それぞれの専門性を活かして別々に算定できる構造になっています。
介護保険を利用したサービスであるため、対象者は「要介護1〜5の認定を受けた65歳以上の高齢者」または「特定疾病により40〜64歳で要介護認定を受けた方」に限られます。要介護認定がない方には医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導料」が適用される点は、制度の重要な分岐点です。
つまり、同じ訪問服薬指導でも保険の種類が異なるということです。
歯科医院で口腔ケアと服薬管理の両立支援が必要な患者を抱えている場合、薬局との連携は単なる業務協力ではなく、算定の根拠にも直結します。歯科医師が指示書を発行し、薬局が算定する流れをしっかり理解しておくことが、チーム全体の報酬管理においても重要です。
参考:居宅療養管理指導の制度全体の概要は厚生労働省が公式資料を公表しています。
「点数」と「単位」という言葉の使い分けについて、まず整理しておきましょう。調剤報酬では「点数」と呼び、介護報酬では「単位」と呼びます。どちらも1単位(1点)≒10円が基本ですが、介護報酬は地域区分によって単価が変動する仕組みです。
薬局薬剤師が行う居宅療養管理指導の単位数(2024年6月改定後)は以下の通りです。
| 区分 | 単位数(1回あたり) | 月の上限 |
|---|---|---|
| 単一建物居住者 1人 | 518単位 | 月4回 |
| 単一建物居住者 2〜9人 | 379単位 | |
| 単一建物居住者 10人以上 | 342単位 | |
| 情報通信機器を用いる場合 | 46単位 |
「単一建物居住者1人・518単位」をわかりやすく換算してみます。1単位=10円とすると1回あたり約5,180円、月4回算定した場合の総介護報酬は約20,720円になります。利用者の自己負担は原則1割なので、患者が支払う額は月4回で約2,072円です。
これは覚えておくとチーム内での説明がスムーズです。
病院・診療所の薬剤師と比較すると、病院薬剤師は「単一建物居住者1人:566単位」と薬局よりも高単位ですが、月の算定上限は「2回まで」に制限されています。薬局薬剤師は月4回まで算定できるため、月間の合計報酬では薬局の方が高くなるケースが多い点は意外と知られていません。
なお、2024年6月施行の改定で全区分が1単位ずつ引き上げられました。たった1単位の差ですが、月4回算定した場合は1回4単位分のプラスとなり、積み重なると年間の収益に影響します。改定の施行日が2024年4月ではなく「6月1日」である点も見落としがちです。訪問看護・訪問リハビリ・通所リハビリと同じタイミングで、診療報酬改定と足並みを揃えた施行となっています。
加算項目も2024年から新設されました。在宅で医療用麻薬の持続注射療法を受けている患者への薬学的管理には「医療用麻薬持続注射療法加算 250単位/回」、在宅中心静脈栄養法の患者への指導には「在宅中心静脈栄養法加算 150単位/回」が算定できます。いずれも麻薬小売業者の免許や高度管理医療機器販売業の許可といった施設要件があります。
参考:2024年度介護報酬改定の具体的な単位数変更一覧
【2024年(令和6年)度】居宅療養管理指導の介護報酬改定情報まとめ(カイポケ)
算定できる条件が重なっているということですね。
薬局が居宅療養管理指導費を算定するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
歯科医従事者として特に注意が必要な点は、「歯科医師の指示でも薬局は居宅療養管理指導を算定できる」という事実です。多くの方が「薬局の指示は内科・処方医から」と思い込みがちですが、歯科医師の指示に基づく場合も算定可能です。
もう一点。ケアマネジャーへの情報提供は算定の条件です。
「ケアプランに記載がなくても算定できる」という特殊ルールがある一方で、「ケアマネジャーが存在する場合は情報提供を行わなければ算定できない」というルールも存在します。つまり、ケアプランへの記載は不要ですが、ケアマネへの文書報告は必須というやや複雑な構造になっています。この区別を誤ると算定取り消し・返還のリスクがあります。
また、「他の医療機関または薬局の薬剤師がすでに居宅療養管理指導を行っている場合、二重算定は不可」という制限もあります。患者が複数の薬局を利用しているケースでは、どちらが算定するかをあらかじめ確認することが必要です。
みなし指定の扱いについても整理しておきましょう。保険薬局は介護保険法上、居宅サービス事業者の指定を受けたものとみなされるため、特別な届け出なく居宅療養管理指導の提供は開始できます。ただし、重要事項説明書や契約書、個人情報保護確認書などの書類は事前に整備しておく必要があります。依頼が来てから慌てないよう、書類一式を準備しておくのが原則です。
2024年改定でオンライン服薬指導のルールが大幅に見直されました。以前の制限と改定後を比較すると、変わりようがかなり大きいです。
| 項目 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 初回算定 | 対面訪問後でないと不可 | ✅ 初回からオンライン算定可 |
| 処方箋の種類 | 訪問診療による処方箋のみ | ✅ 外来・訪問診療いずれの処方箋も可 |
| 月の算定上限 | 月1回まで | ✅ 月4回まで |
| 実施場所 | 薬局内のみ | ✅ 制限なし(削除) |
| 服薬指導計画の作成 | 必須 | ✅ 削除(薬学的管理指導計画に包括) |
単位数も45単位から46単位に引き上げられています。
これは使えそうです。
特に大きいのは「初回からオンライン算定が可能」になった点です。改定前は最低1回以上の対面訪問を経てからでないとオンライン算定ができませんでした。移動が困難な超高齢の患者や、豪雪・離島など地理的に通院が難しい地域では、初回からオンラインで対応できるという選択肢が生まれたことになります。
ただしオンライン算定の場合、麻薬管理指導加算・特別地域加算・中山間地域等小規模事業所加算・中山間地域等居住者サービス提供加算は同時に算定できません。オンラインで手軽に算定できるようになった一方で、加算の組み合わせに制限があることは忘れずに確認しておきましょう。
歯科医療の現場では、口腔機能管理と薬剤管理が密接に絡み合う場面が多くあります。嚥下機能の低下した患者に対して、薬の剤形変更(粉砕・液剤化)を検討する必要がある場合、歯科医師が嚥下評価を行い、その情報を薬局薬剤師に共有することで、適切な服薬支援につなげることができます。
連携の流れが鍵です。
歯科医師が居宅療養管理指導の指示を出す場合、薬局との情報共有ルートを確保することで、患者のポリファーマシー(多剤服用)問題にも気づきやすくなります。高齢の在宅患者は平均で5〜7種類以上の薬を服用しているケースが珍しくなく、中には副作用として唾液分泌の低下や歯肉増殖を引き起こす薬剤が含まれていることもあります。
具体的な連携ポイントとして、以下のような場面では薬局への情報提供が有効です。
特に、ビスフォスフォネート製剤の服用患者への歯科処置は、顎骨壊死のリスクがあるため事前の休薬判断が重要です。薬局薬剤師が訪問で収集した「残薬状況・服薬コンプライアンス・服用開始からの年数」などの情報は、歯科治療の安全性評価においても価値があります。
また、歯科衛生士が行う居宅療養管理指導と薬局薬剤師が行う居宅療養管理指導は、同一月内に並行して算定することが可能です。同一患者に対して薬剤師が月4回、歯科衛生士が月4回(通常)それぞれ算定できます。これは「重複算定の禁止」ルールが職種を超えたものではなく、「同一職種・同一区分での二重算定」を禁じているためです。
この運用は、チームでの在宅ケアを設計する際の制度上の裏づけになります。
なお、居宅療養管理指導は介護保険の「区分支給限度基準額」の対象外です。利用者がすでに訪問介護や通所介護などで限度額いっぱいのサービスを利用していても、居宅療養管理指導は別枠で算定できます。これは「限度額オーバーで使えないサービスだ」と思い込んでいる患者・家族に対して説明できる重要な知識です。
参考:歯科訪問診療と薬局連携の詳細は日本訪問歯科協会のサイトが参考になります。
参考:薬局の在宅医療の始め方・届け出に関する全体の流れ
薬局の在宅医療(在宅の始め方/準備と全体の流れ)(管理薬剤師.com)