居宅療養管理指導費の算定要件を薬局視点で完全解説

薬局が居宅療養管理指導費を算定する際の要件・単位数・注意点を徹底解説。2024年改定の新加算や月8回算定の条件まで、見落としがちなポイントを押さえていますか?

居宅療養管理指導費の算定要件を薬局が正しく理解するために

ケアマネへの報告書を出しても、それを「月ごとに」行わないと全回分が算定取り消しになる。


この記事の3つのポイント
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算定要件の全体像

薬局薬剤師が居宅療養管理指導費を算定するには、医師の指示・薬学的管理指導計画の策定・ケアマネへの情報提供という3つの柱を満たす必要があります。

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単位数と月の上限回数

薬局薬剤師は月4回・単一建物居住者1人で518単位が基本です。がん末期など特定患者は月8回まで拡大。2024年改定でオンライン服薬指導も月4回算定が可能になりました。

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算定できない落とし穴

「窓口での服薬指導」「他薬局で調剤した薬剤への指導」「通院が困難と認められない患者」など、意外に多い算定不可ケースを事前に把握しておくことが重要です。


居宅療養管理指導費とは何か・薬局が関わる制度の全体像

居宅療養管理指導とは、定期的な通院が困難な要介護・要支援の患者を対象に、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士などの専門職が自宅等を訪問し、療養上必要な管理や指導を行うサービスです。介護保険が財源となる点が特徴で、調剤報酬(医療保険)とは根本的に仕組みが異なります。


薬局薬剤師がこのサービスを行った場合に算定できる介護報酬が「居宅療養管理指導費」です。介護報酬における単位数は調剤報酬でいう「点数」に相当し、1単位=約10円(地域によって異なる)として計算されます。


つまり介護保険の枠組みです。


薬局は介護保険法上、居宅サービス事業者の指定があったとみなされる「みなし指定」の扱いになるため、別途指定申請を行わなくても、算定のための書類整備さえ整えれば居宅療養管理指導費の算定が可能です。ただし、重要事項説明書・契約書・個人情報保護に関する確認書などを事前に準備しておくことが必要で、依頼が来てから慌てて対応するのでは実際の算定に支障が出ます。


対象となる患者は、要介護1〜5に認定された65歳以上の高齢者が中心ですが、40〜64歳でも特定疾病(がん・パーキンソン病・脳血管疾患など16種)により要介護・要支援認定を受けた方も対象に含まれます。要支援の方は「介護予防居宅療養管理指導」という名称になりますが、内容はほぼ同様です。


参考:厚生労働省 居宅療養管理指導の概要資料(社会保障審議会介護給付費分科会 第220回 資料5)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001123921.pdf


居宅療養管理指導費の算定要件・薬局が必ず満たすべき3つの条件

薬局が居宅療養管理指導費を算定するには、大きく3つの条件を満たす必要があります。この3つが「柱」です。


① 医師の指示を受けること


薬剤師は自らの判断で居宅療養管理指導を開始することができません。必ず処方医からの指示が必要で、患者本人や家族が希望・同意しただけでは算定の根拠になりません。実務上は医師・ケアマネジャー・訪問看護師などから依頼を受けるケースが一般的ですが、薬剤師側から処方医に開始を提案することは可能です。


② 薬学的管理指導計画を策定し、患者宅で指導を実施すること


患者の状態・服用薬・療養環境などをもとに薬学的管理指導計画を作成し、それに基づいて定期的に訪問して服薬管理・服薬指導を行います。薬局の窓口での服薬指導は算定の根拠になりません。必ず患者の居宅を訪問することが前提です。


③ ケアマネジャーと医師に文書で報告すること


訪問後はなるべく速やかに、処方医とケアマネジャー双方に対して訪問結果を文書で情報提供することが義務づけられています。ケアマネジャーへの情報提供を行わなかった場合は算定できません。これが冒頭の驚きにつながる落とし穴です。


報告書の様式に決まった形式はありませんが、患者基本情報・服薬管理状況・残薬確認・副作用の有無・次回訪問予定日などを記載するのが一般的です。


ただし、介護支援専門員(ケアマネジャー)によるケアプラン作成が行われていない患者については、情報提供先がいないため算定は可能とされています。これは知っておくと便利です。


参考:薬局における在宅利用の現状〜多職種連携の視点から〜(IISEN研究会)
https://iisennet.jp/wp-content/uploads/2019/07/51e0749b6c43cd5736f7ce74df6a45b5.pdf


居宅療養管理指導費の単位数・2024年改定後の点数と月の上限回数

算定できる単位数は、薬局薬剤師か病院薬剤師かによって異なり、さらに「単一建物居住者数」によっても変わります。単一建物居住者数とは、同じ建物内でその薬局が同一月に居宅療養管理指導を実施している患者の人数のことです。


2024年(令和6年)6月施行の介護報酬改定により、基本報酬が全区分で1単位引き上げとなりました。改定後の単位数は以下のとおりです。


区分 単一建物1人 2〜9人 10人以上 オンライン服薬指導 月の上限
薬局薬剤師 518単位 379単位 342単位 46単位 4回
病院薬剤師 566単位 417単位 380単位 なし 2回


訪問間隔には制限があります。原則として1回の訪問から次の訪問まで6日以上空けなければなりません。間隔が不足していると算定が認められないため要注意です。


また、次に該当する患者については月8回(週2回)まで算定上限が拡大されます。


  • 末期の悪性腫瘍患者
  • 中心静脈栄養法を受けている患者
  • 注射による麻薬の投与を受けている患者(2024年改定で新たに追加)


月8回まで可能になるということです。


1単位を約10円として計算すると、薬局薬剤師が単一建物居住者1人に対して月4回訪問した場合、518単位×4回×10円=20,720円相当の介護報酬が発生します。これは患者の自己負担が1〜3割なので、薬局が受け取る報酬はそこから計算したものになります。


参考:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa0253&dataType=0&pageNo=1&mode=0


2024年介護報酬改定で新設された加算・薬局が取得できる上乗せ報酬

2024年6月の介護報酬改定では、基本報酬の引き上げに加えて新たな加算が2つ創設されました。これは使えそうです。


🔷 医療用麻薬持続注射療法加算(250単位/回)


在宅で医療用麻薬持続注射療法(注入ポンプによる持続投与)を行っている患者に対して、麻薬の投与状況・残液の確認・保管管理の指導・副作用確認などの薬学的管理指導を行った場合に算定します。


算定に際しては、①麻薬及び向精神薬取締法第3条の規定による麻薬小売業者の免許、②高度管理医療機器の販売業の許可、の両方が必要です。また、同月に「疼痛緩和のための特別な薬剤投薬への加算(100単位)」を算定している場合は併算定できないため注意が必要です。


🔷 在宅中心静脈栄養法加算(150単位/回)


在宅で中心静脈栄養法(IVH)を行っている患者に対して、輸液製剤の投与・保管方法・配合変化防止に関する指導を行った場合に算定します。算定要件として高度管理医療機器の販売業許可または管理医療機器の販売業届出が必要です。


これらの新加算は、在宅医療の専門性が高い患者への対応を評価するものです。薬局がこうした加算を算定するためには、設備面・免許面の準備と、処方医や訪問看護師との連携が前提になります。


2024年改定ではオンライン服薬指導のルールも大きく変わりました。改定前は「月1回・45単位」に限定されていましたが、改定後は「月4回・46単位」まで算定可能となり、初回からオンライン形式での実施も認められるようになっています。訪問診療処方箋以外の処方箋に基づくオンライン指導も算定できるようになったため、柔軟性が大幅に高まっています。


参考:令和6年度介護報酬改定における改定事項について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001213182.pdf


算定できない場合の具体例・薬局が陥りやすい落とし穴

居宅療養管理指導費は、要件を満たしていれば算定できる一方で、算定不可となるケースが複数あります。事前に把握しておくことで、返還リスクを防ぐことができます。


❌ 通院が困難と認められない患者への算定


居宅療養管理指導は「定期的に患者のもとに訪問して服薬管理と指導を行うこと」を評価するサービスです。独歩で来局できる患者や、継続的な管理が不要な患者に安易に算定することは認められていません。「少なくとも独歩で家族または介助者の助けを借りずに来局できる者」は算定対象外とされています。


❌ 薬局窓口での服薬指導を根拠にした算定


算定が認められるのは患者の居宅への訪問が前提です。これが基本です。薬局の調剤室や相談室での服薬指導は、どれだけ丁寧に行っても算定の根拠になりません。


❌ 他薬局・院内調剤の薬剤に対する指導


居宅療養管理指導費は「当該保険薬局で調剤した薬剤」の服用期間中に対して算定するものです。他薬局や病院の院内調剤による薬剤に対して指導を行っても算定できません。同一患者に複数の薬局が関わっている場合は注意が必要で、在宅患者訪問薬剤管理指導料(医療保険)も含め、1施設しか同一月に算定できません。


❌ 要介護認定を受けていない患者への居宅療養管理指導費の算定


介護認定がない患者への訪問指導については、居宅療養管理指導費は算定できません。この場合は医療保険を使った「在宅患者訪問薬剤管理指導料」を算定することになります。


❌ 介護老人福祉施設(特養)・介護老人保健施設(老健)への算定


医師または薬剤師の配置義務がある特養や老健では、居宅療養管理指導費は算定できません。これは見落とされやすい点です。グループホームや特定施設は一定条件のもと対象になりますが、施設の種別を必ず確認しましょう。


参考:居宅療養管理指導に関連した介護報酬に係るQ&A(厚生労働省発出・神奈川県国民健康保険団体連合会)
http://www.kanagawa-kokuho.or.jp/kaigo/pdf/kyufu/qa.pdf


処方箋1枚で複数回算定できる・見逃されがちな算定機会と多職種連携のポイント

居宅療養管理指導費には、意外と知られていない有利な特例があります。処方箋1枚につき算定は1回限りではありません。


処方薬の服用期間中であれば、訪問ごとに算定できます(間隔6日以上の条件を守る前提)。たとえば60日分の処方が出た場合、その服用期間中に4回訪問すれば4回分算定できるということです。月を超えてもその間は算定の根拠として有効です。


また、同居する同一世帯に対象患者が複数いる場合は、それぞれに対して「単一建物居住者1人」の区分で算定できます。たとえば夫婦2人が同じ家に住んでいてそれぞれ要介護認定を受けている場合、夫と妻それぞれに518単位を算定できるため、1件の訪問で2人分の算定が可能です。これは使えそうです。


多職種連携の実践については、単に報告書を送付するだけでなく、地域包括支援センターの交流会への参加や、かかりつけ医・ケアマネジャーとの関係構築が算定機会の拡大に直結します。薬剤師側から処方医に居宅療養管理指導の開始を提案できる立場であることを活用して、依頼を受けやすい環境を整えることが長期的に重要です。


2024年改定では「かかりつけ医連携薬剤調整加算」も見直されており、ポリファーマシー(多剤服用)解消への取り組みがさらに評価されるようになっています。改定後の加算区分は以下のとおりです。


  • かかりつけ医連携薬剤調整加算(I)イ:140単位/回
  • かかりつけ医連携薬剤調整加算(I)ロ:70単位/回


高齢患者の多剤服用は特養・在宅いずれの場面でも深刻な課題です。薬局薬剤師がこの加算を活用して医師と連携し、処方の適正化を提案することは、患者の安全にとっても大きな意義があります。


在宅業務の記録管理には、在宅対応可能な薬局向けの電子薬歴システムの活用が有効です。ケアマネジャーへの報告書の作成・保存・提出履歴の管理がシステム上で一元化できると、算定要件の充足確認や監査対応がスムーズになります。薬局向けの電子薬歴システムを選ぶ際は、在宅・居宅療養管理指導への対応機能があるか確認してみましょう。


参考:居宅療養管理指導とは?薬局での流れや算定要件について解説(薬読)
https://yakuyomi.jp/career_skillup/skillup/02_085/