口腔細胞診の分類を正しく理解して活用する診療実践ガイド

口腔細胞診の分類はパパニコロウ分類からベセスダシステムへ移行しつつありますが、現場での混乱も少なくありません。正確な判定区分と臨床対応を理解できていますか?

口腔細胞診の分類と判定区分・臨床対応の全解説

細胞診が「陰性」でも、臨床所見が悪化していれば即日生検が必要です。 med.oita-u.ac(http://www.med.oita-u.ac.jp/oralsurg/%E7%AC%AC3%E5%9B%9E%E3%80%80%E6%97%A9%E6%9C%9F%E5%8F%A3%E8%85%94%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%8C%E7%96%91%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%8F%A3%E8%85%94%E7%B2%98%E8%86%9C%E7%97%85%E5%A4%89%E3%81%AE%E6%A4%9C%E6%9F%BB%EF%BC%9A%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%A8%BA%E3%81%A8%E7%94%9F%E6%A4%9C.pdf)


🔬 この記事の3ポイント要約
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パパニコロウ分類からベセスダへの移行

2015年の口腔細胞診ガイドライン改訂により、従来のClass Ⅰ〜Ⅴの5段階分類から、世界標準のベセスダシステムへの移行が完成。NILM・OLSIL・OHSIL・SCCの判定区分が新基準となった。

⚠️
分類ごとの臨床対応の違い

NILMは経過観察、OLSILは生検または厳重経過観察、OHSIL・SCCは高次医療機関での精査・加療が原則。分類を誤ると適切な紹介タイミングを逃す危険がある。

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細胞診の限界と補完検査

細胞診はあくまでスクリーニング検査。確定診断は組織診断(生検)が必須。細胞診結果が臨床所見と食い違う場合は、数週間後の再検査か即時の組織診を検討する。


口腔細胞診の分類が2段階で存在する理由と歴史的背景


口腔細胞診の現場では、「パパニコロウ分類」と「ベセスダシステム」という2種類の分類体系が今なお混在しています。これを整理しないまま診療を続けると、紹介のタイミングを誤るリスクが生じます。


パパニコロウ分類(Papanicolaou分類)は、もともとは子宮頸がんの細胞診から発展した世界共通の古典的分類法です。 Class Ⅰ(正常)からClass Ⅴ(悪性確定)まで5段階で評価し、日本の口腔領域でも長年使われてきました。直感的にわかりやすい一方で、前がん病変の詳細な区別がしにくいという弱点がありました。 asakusa4182(https://www.asakusa4182.com/%E5%8F%A3%E8%85%94%E3%81%8C%E3%82%93%E6%A4%9C%E8%A8%BA/)


一方、ベセスダシステム(Bethesda System) は子宮頸部細胞診で国際標準として確立されたのち、2015年に日本口腔腫瘍学会の口腔細胞診ガイドラインで口腔領域に正式に採用されました。 これが大きな転換点です。 sasappa.co(https://www.sasappa.co.jp/online/abstract/jjdp/1/038/html/09103802136.html)


パパニコロウ分類 ベセスダシステム(口腔版) おおまかな意味
Class Ⅰ NILM 陰性・正常範囲内
Class Ⅱ NILM / OLSIL 良性異型または軽度扁平上皮内病変
Class Ⅲ OLSIL / OHSIL 低〜高度扁平上皮内病変
Class Ⅳ OHSIL 高度扁平上皮内病変(強い悪性疑い)
Class Ⅴ SCC 扁平上皮癌


2015年のガイドライン改訂で、病変を「良性・中間的・悪性」と大まかに推定するだけだったパパニコロウ分類に比べ、前がん病変を含む早期がんの基準が画一化されました。 つまり、より細かく「どの段階か」を示せるようになったということです。 mdu.ac(https://www.mdu.ac.jp/graduate/docs/2024seminar433.pdf)


ベセスダへの移行が重要です。


口腔細胞診の分類(NILM・OLSIL・OHSIL・SCC)の判定基準と鑑別ポイント

ベセスダシステムの各判定区分は、それぞれ細胞所見の特徴が異なります。正確に理解しておくことが、患者への説明や適切な紹介に直結します。


🟢 NILM(Negative for Intraepithelial Lesion or Malignancy)
陰性、つまり上皮内病変や悪性所見なしを意味します。 核の大きさや染色性が正常範囲内で、核小体の肥大化もない状態です。ただし、炎症や修復反応による反応性変化がある細胞も含まれるため、「完全に問題ない」と断言するのは慎重さが必要です。NILMなら問題ありません——ただし臨床所見と常に照合することが原則です。 gifukenshi.or(https://www.gifukenshi.or.jp/column/detail/34)


🟡 OLSIL(Oral Low-grade Squamous Intraepithelial Lesion)
口腔低度扁平上皮内病変。核の軽度〜中等度の腫大や核クロマチンの増量が認められますが、高度の構造異型は伴いません。 パパニコロウ分類のClass Ⅱ〜Class Ⅲに相当することが多い段階です。この段階が特に臨床上重要で、「経過観察でよいか」「生検すべきか」の判断が求められます。 cda.or(https://www.cda.or.jp/wp-content/uploads2/2022/02/%E3%80%90%E9%85%8D%E5%B8%83%E8%B3%87%E6%96%99%E3%80%91%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%A8%BA%E3%81%AE%E5%AE%9F%E9%9A%9B%E5%8D%83%E8%91%89%E7%9C%8C%E6%AD%AF%E7%A7%91%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E4%BC%9A2021.1.21.pdf)


🔴 OHSIL(Oral High-grade Squamous Intraepithelial Lesion)
口腔高度扁平上皮内病変。核の著しい腫大、クロマチンの粗大化、核形の不整が顕著で、核細胞質比(N/C比)が高い状態です。 高次医療機関への精査・加療が強く推奨される段階であり、放置は許されません。これは必須です。 sasappa.co(https://www.sasappa.co.jp/online/abstract/jjdp/1/038/html/09103802136.html)


🔴🔴 SCC(Squamous Cell Carcinoma)
扁平上皮癌の細胞像。異型核が明らかで、角化像や腫瘍真珠様構造が認められる場合もあります。同日または翌日中の口腔外科専門医への紹介が望まれます。 gifukenshi.or(https://www.gifukenshi.or.jp/column/detail/34)


加えて、ベセスダシステムでは「真菌(カンジダ)」や「HSV感染」など感染症所見も記載できる点も優れています。 免疫力が低下した高齢患者の白色病変が、口腔カンジダ症なのか、前がん病変なのかを細胞診1枚で大まかに鑑別できる場合があります。これは使えそうです。 gifukenshi.or(https://www.gifukenshi.or.jp/column/detail/34)


口腔細胞診の分類と組織診断の違い——確定診断に必要な手順

細胞診と組織診断(生検)の違いを混同している患者、さらには医療従事者の間でも誤解があることは少なくありません。整理しておきます。


細胞診は、病巣表面を専用ブラシや綿棒でこすり取ったバラバラの細胞を顕微鏡で観察する検査です。 局所麻酔が不要で出血もほとんどなく、患者負担が極めて低い「低侵襲性」が最大の特長です。 スクリーニングとしての優秀さは産婦人科や皮膚科での普及が証明しています。 koukuugan(https://www.koukuugan.jp/gun7_inspection.html)


一方、組織診断(生検)は、病変の一部を組織として切除し、細胞間の構造や配列まで含めて病理医が診断する検査です。 浸潤の深さ、脈管侵襲の有無、切除断端の評価まで可能であり、がんの確定診断はこちらによってのみ行われます。 asakusa4182(https://www.asakusa4182.com/%E5%8F%A3%E8%85%94%E3%81%8C%E3%82%93%E6%A4%9C%E8%A8%BA/)


⚠️ 重要な落とし穴:細胞診陰性(NILM)でも、臨床所見が怪しければ迷わず生検へ。


細胞診の感度(真のがんをがんと判定できる率)は検体の採取技術に大きく左右されます。 表面が壊死組織や炎症で覆われている病変では、がん細胞が擦過細胞に混入しないことがあります。こういう時こそ、組織診との使い分けが問われます。 med.oita-u.ac(http://www.med.oita-u.ac.jp/oralsurg/%E7%AC%AC3%E5%9B%9E%E3%80%80%E6%97%A9%E6%9C%9F%E5%8F%A3%E8%85%94%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%8C%E7%96%91%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%8F%A3%E8%85%94%E7%B2%98%E8%86%9C%E7%97%85%E5%A4%89%E3%81%AE%E6%A4%9C%E6%9F%BB%EF%BC%9A%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%A8%BA%E3%81%A8%E7%94%9F%E6%A4%9C.pdf)


  • 🔍 擦過細胞診:口腔内に露出した病変(舌・頬粘膜・歯肉など)に適用
  • 💉 穿刺吸引細胞診(FNA)唾液腺腫瘍など粘膜下の腫瘍に適用
  • ✂️ 生検(組織診):確定診断・浸潤評価・感受性試験まで対応


口腔がんの大部分を占める扁平上皮癌には擦過細胞診が多用されますが、唾液腺由来の腫瘍には穿刺吸引細胞診が選ばれます。 病変の種類によって使い分けが必要です。 koukuugan(https://www.koukuugan.jp/gun7_inspection.html)


口腔細胞診の分類が変わると臨床対応はどう変わるか——OLSIL判定時の具体的フロー

OLSILという判定結果が返ってきたとき、実際どのように動けばよいかを確認します。迷いが起きやすい段階だからこそ、フローを整理しておくことが重要です。


まず、OLSILが返ってきたからといって「悪性の確定」ではありません。 パパニコロウ分類でいうClass Ⅱ〜Ⅲ相当に位置し、「経過観察」か「生検」かを臨床的に判断する分岐点です。 cda.or(https://www.cda.or.jp/wp-content/uploads2/2022/02/%E3%80%90%E9%85%8D%E5%B8%83%E8%B3%87%E6%96%99%E3%80%91%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%A8%BA%E3%81%AE%E5%AE%9F%E9%9A%9B%E5%8D%83%E8%91%89%E7%9C%8C%E6%AD%AF%E7%A7%91%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E4%BC%9A2021.1.21.pdf)


  • 🗓️ 病変が3週間以上持続している場合は生検を優先
  • 👁️ 白斑症・紅板症・びらんを伴う場合は早期に口腔外科専門医へ紹介
  • 🔁 臨床所見が軽微で短期のものは2〜4週後に再度細胞診で確認
  • 🚬 喫煙・飲酒・義歯刺激などのリスク因子がある場合は積極的に生検


特に重要なのは、OLSILであっても生検で高度異形成(CIN3相当)が検出されるケースが存在することです。 細胞診の段階分類は、あくまで採取した細胞の情報に基づいており、組織全体の構造異型は反映されません。厳しいところですね。 sasappa.co(https://www.sasappa.co.jp/online/abstract/jjdp/1/038/html/09103802136.html)


実際に松本歯科大学病院の10年間データを見ると、Class Ⅲ(現行のOLSIL〜OHSILに相当)が全細胞診件数の14%を占めており、この14%の中に相当数の前がん病変・早期がんが潜んでいることが示されています。 14%の中に見落としが潜む可能性があります。 ir.tdc.ac(https://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/5809/1/14_35.pdf)


口腔細胞診ガイドライン(日本臨床細胞学会)では、OLSIL/OHSIL/SCCの判定区分で高次医療機関での精査・加療が推奨されています。 OLSILは「要生検か厳重経過観察」が原則です。 mdu.ac(https://www.mdu.ac.jp/graduate/docs/2024seminar433.pdf)


参考リンク(ベセスダシステムの判定区分と鑑別ポイントについて詳しく解説)。
口腔細胞診のベセスダシステム NILM, LSIL(OLSIL), HSIL(OHSIL), SCCの鑑別ポイント(日本歯科病理学会誌)


口腔細胞診の分類を見落とさないための採取技術と検体不適正の回避

「判定区分を知っていても、検体の質が悪ければ意味がない」——これが見落とされがちな事実です。


細胞診の精度は、医師や歯科医師の採取技術に大きく依存します。 塗抹不良・乾燥固定・細胞数不足などは「判定不能(検体不適正)」となり、再採取が必要になります。 判定不能は珍しくありません。 tcpl.co(https://www.tcpl.co.jp/wp-content/uploads/2019/04/kensaannai2024.pdf)


採取時に押さえるべきポイントは以下のとおりです。


  • 🖌️ 専用ブラシを使用し、病変中央部から周辺にかけて均等に擦過する(綿棒は採取細胞数が不足しやすい)
  • 💧 スライドガラスへの塗抹は素早く行い、乾燥固定を防ぐ(10秒以内が目安)
  • 🧪 液状化細胞診(LBC法)を採用すると、乾燥アーチファクトを防ぎ安定した検体質を確保できる
  • 📍 壊死組織・痂皮が付着している部位は表面を軽くふき取ってから擦過する
  • 📝 採取部位・臨床所見を検体ラベルに必ず記載する(病理医への情報提供が診断精度に影響)


松本歯科大学の報告によれば、Cell Prepという液状化処理システムを用いたLBC法での検体作成により、従来法と比較して判定精度が向上したとされています。 LBC法は今後の標準化が期待されています。 ir.tdc.ac(https://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/5809/1/14_35.pdf)


参考リンク(液状化細胞診と新報告様式の活用について)。


歯科医が知っておきたい口腔細胞診の分類活用——早期がん発見率を高める視点

細胞診の分類を「結果を受け取るだけ」のものと捉えていると、早期がん発見の機会を逃しかねません。分類を「次の行動を決める指標」として活用することが重要です。


日本における口腔がんの罹患数は増加傾向にあり、著名人の情報発信もあって患者側の関心も高まっています。 この流れをとらえると、一般歯科でも細胞診を積極的に活用できる体制を整えることが求められます。 gifukenshi.or(https://www.gifukenshi.or.jp/column/detail/34)


特に注目すべき点として、口腔の細胞診はもともと産婦人科や皮膚科で先行普及した技術ですが、口腔領域特有のリスク因子(喫煙・飲酒・HPV・慢性機械的刺激)に対応するスクリーニング体制がまだ十分ではありません。 これが早期発見を妨げている現実の一つです。 asakusa4182(https://www.asakusa4182.com/%E5%8F%A3%E8%85%94%E3%81%8C%E3%82%93%E6%A4%9C%E8%A8%BA/)


  • 🦷 義歯や金属冠の慢性刺激部位は白色・紅色病変が生じやすく、細胞診のスクリーニングが特に有効
  • 🚬 喫煙者・飲酒歴のある患者は定期健診時に積極的に細胞診を提案
  • 👶 HPV陽性の若年層は咽頭・口腔底に発生する扁平上皮癌リスクが高い
  • 🧓 高齢者の口腔カンジダ症類似病変は細胞診で真菌と前がん病変を速やかに鑑別


VELscopeなどの蛍光観察装置は視診の補助ツールとして有用ですが、あくまで異常部位のあたりをつける補助的役割であり、確定的な分類判定には細胞診・組織診が必須です。 これだけは覚えておけばOKです。 koukuugan(https://www.koukuugan.jp/gun7_inspection.html)


定期的なスクリーニングとして細胞診を行っている施設では、患者の不安を軽減しながら口腔がんの早期発見に貢献できます。 局所麻酔不要・出血なし・数分で完了という患者への説明ポイントを押さえておくと、受診率の向上につながります。 gifukenshi.or(https://www.gifukenshi.or.jp/column/detail/34)


参考リンク(口腔内擦過細胞診の実際と検査結果の見方について)。
「口腔内擦過細胞診」という検査をご存じですか?(岐阜県歯科医師会)






【中古】 口腔がん早期発見のための口腔細胞診入門 歯科医院で取り組むLBC/田沼順一(編著)