BP製剤のpo投与患者でも、抜歯後に顎骨壊死が発症した報告件数は年間数十件に上ります。
「po」とはラテン語の「per os(ペル・オス)」を略したもので、「口から」という意味です 。処方箋やカルテに「PO 500mg 1日3回」と書かれていれば、「500mgの薬剤を口から、1日3回服用させる」という指示になります。 iryou(https://iryou.click/others/what-does-po-stand-for-in-medical-terminology/)
日本の処方箋ではドイツ語由来の略語も混在しますが、アメリカ医療文化の影響で「po」はラテン語起源の標準略語として定着しています 。混同しやすい略語に「NPO(Nothing Per Os)」があり、こちらは経口摂取不可を意味します。poと逆の意味になるため、歯科麻酔・全身麻酔前の指示で特に注意が必要です 。 pharmd-club.cocolog-nifty(http://pharmd-club.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/post_6a5d.html)
つまり、po=経口投与、NPO=禁食(絶飲食指示)です。
| 略語 | 意味 | 語源 | 歯科場面での使用例 |
|---|---|---|---|
| po / PO | 経口投与(口から服用) | ラテン語 per os | 「アモキシシリン po 250mg 1日3回」 |
| NPO | 経口摂取不可・絶飲食 | Nothing Per Os | 全身麻酔前「術前6時間NPO」 |
| IV / iv | 静脈内投与 | intravenous | 局所麻酔薬の誤入血管時 |
| SL | 舌下投与 | sublingual | ニトログリセリン狭心症発作時 |
| SC / sc | 皮下投与 | subcutaneous | インスリン投与患者情報の共有 |
経口投与された薬剤は、口腔内→食道→胃→小腸という経路をたどり、主に小腸粘膜から吸収されます 。その後、門脈を経て肝臓を通過(初回通過効果)し、全身循環へ移行します。これが重要なポイントです。 ja.wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%8C%E5%8F%A3%E6%8A%95%E4%B8%8E)
初回通過効果とは、吸収された薬剤が全身に届く前に肝臓で一部代謝・分解される現象のことです 。例えるなら、100個の薬分子が吸収されても肝臓で40個が分解され、実際に血中を循環するのは60個だけ——という状況です。 note(https://note.com/kohakudo589/n/nc2d9e819b9c0)
この「吸収ロス」が経口投与の特徴です。
バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)が低い薬剤は、po投与では十分な血中濃度に達しない場合があります 。逆に言えば、po投与での処方量はそのロスを計算した上で設定されています。歯科で使用するアモキシシリンやセフェム系抗菌薬も、この初回通過効果を考慮した用法・用量が定められています。 note(https://note.com/kohakudo589/n/nc2d9e819b9c0)
投与経路の違いは、薬剤の効果発現速度・持続時間・バイオアベイラビリティに直結します 。歯科臨床で遭遇しやすい経路をまとめます。 blog.m-t-s(https://blog.m-t-s.jp/abbreviations/)
効果発現の速さは概ね「IV(静脈内) > IC(心臓内)> 腹腔内 > po(経口) > SC(皮下)」の順です 。poは最も簡便で安全性が高い反面、即効性は低く、食事の影響を受けるという特性があります 。 tohoku.repo.nii.ac(https://tohoku.repo.nii.ac.jp/record/23235/files/KJ00000094128.pdf)
特に舌下投与(SL)との違いは歯科で重要です。舌下投与は「舌の下に置いて溶かす」投与法で、錠剤を噛んだり飲み込んだりすると吸収部位が変わり、効果発現が遅れます 。歯科処置中に狭心症発作が起きた患者にニトログリセリンを渡す際、患者が誤って飲み込まないよう口頭で必ず説明することが必要です。 jin-aikai(https://jin-aikai.com/wp-content/uploads/2025/08/2db11c6c15a9511e923f202252c699a5.pdf)
これは命に関わる確認事項ですね。
骨粗しょう症治療薬であるビスフォスフォネート(BP)製剤の経口投与(po)患者でも、抜歯後の顎骨壊死(BRONJ/MRONJ)が発症するリスクがあります。発生率は注射剤で0.88〜1.15%に対し、経口剤では0.01〜0.04%ですが 、抜歯などの外科処置が加わると発症率は約10倍に増加するとされています 。 tda8020(https://tda8020.org/newsdigest/h20220516.html)
「経口剤だから安全」というのは危険な思い込みです。
po投与では投与後36か月(平均)で顎骨壊死が起こりうるとされており、注射剤(12〜24か月)より長期間服用後に発症することが多い傾向があります 。つまり、服用期間が長い高齢患者ほどリスクが高くなります。 tda8020(https://tda8020.org/newsdigest/h20220516.html)
顎骨壊死は一度発症すると非常に治りにくいため 、po投与であっても問診の際に「骨を強くする薬を飲んでいますか?」と具体的に質問する習慣をつけることが重要です。 tda8020(https://tda8020.org/newsdigest/h20220516.html)
参考情報:BP製剤と歯科治療の関連について詳しく解説されている歯科医師会の情報です。
東京都歯科医師会:骨粗しょう症治療薬を服用している方への歯科治療上の注意
po投与が「標準」とされる一方で、歯科臨床では経口投与が選択できない場面が意外と多いという現実があります。術後の開口困難、悪心・嘔吐、嚥下障害のある高齢患者——こうしたケースではpo投与が機能しません。
これが意外と見落とされがちなポイントです。
たとえば、顎骨骨折後の患者や全身麻酔後の患者に抗菌薬をpo投与しようとしても、開口や嚥下が困難であれば薬剤が正しく体内に届きません。こうした場合に備えて、IV投与や坐薬(直腸内投与)など代替ルートについての知識を持っておくことが、歯科医療従事者にとって実務的な価値を持ちます 。 quint-j.co(https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/terminology_basic/33680)
OD錠(口腔内崩壊錠)は水なしで服用できるpo剤の一形態で 、高齢の歯科患者や術後患者のコンプライアンス向上に大きく貢献します。処方時に剤形の選択肢を意識することで、治療の成否が変わることもあります。 oned(https://oned.jp/terminologies/353722b29fd3633a67393e93a6b2ca07)
参考情報:各投与経路の薬物動態上の特徴についてのまとめです。
参考情報:医療略語poの意味と誤用リスクについての解説です。