最新の診断法と治療戦略を学べる内容です。
口腔外科での対応を深掘りしませんか?
軽度の顎骨骨折の場合、あなたが思う以上に手術を避けられる確率が高いかもしれません。実際、転位がない単純骨折の約60~70%は、ワイヤーやゴムによる顎間固定のみで治癒します。
顎骨骨折の診断は、臨床検査と画像診断の組み合わせで進められます。まず患者の訴えを詳しく聞き、口の開閉時の痛み、咬み合わせの異常、腫れや出血の有無を確認することが重要です。視診と触診によって骨折箇所の推定を行い、その後X線撮影やCT画像で正確な診断を確定します。
特にCT画像は、単純X線では判別しにくい複雑な骨折や骨片の移動状況を立体的に評価できるため、治療計画の決定に欠かせません。3次元CT画像を用いることで、手術前の正確な診断と患者への説明がより詳細に可能になります。つまり、正確な診断が治療成功の鍵となるということです。
応急処置としては、出血が見られる場合には止血を行い、感染予防のために抗菌薬を投与し、痛みのコントロールのために消炎鎮痛薬を処方します。骨折部位がずれている場合や複数の骨折がある場合は、早期の整復と固定が腫脹や疼痛の増悪を防ぐために重要です。この段階での対応が、その後の治療経過を大きく左右します。
保存的治療(手術を行わない方法)は、骨折の程度が軽く、患者の協力が見込める場合に選択されます。軽微な転位と不正咬合であれば、整形外科装具のみで経過観察することも可能です。この場合、口の動きを最小限に制限しながら、軽い顎の運動療法を行うことで骨が癒合するのを待ちます。
最も一般的な保存的治療は顎間固定(IMF)という方法で、上下の歯にワイヤーやゴムを装着して正常な咬み合わせに誘導し、骨折部位を安静に保ちます。この方法のメリットは手術が不要という点で、患者の身体的負担が少なくなります。デメリットとしては、固定期間中に開口障害が生じることと、折れた骨片が完全に正確な位置に戻らない可能性があることが挙げられます。
保存的治療の固定期間は通常2~6週間で、骨折の部位と程度によって異なります。単純骨折で転位がない場合は4週間を基準として考えます。固定期間中は、患者は口を大きく開けることができず、硬い食べ物は摂取できないため、栄養管理が治療成功の重要な要素となります。
これが原則です。
骨折を保存的治療か外科的治療で行うかを判断する際には、複数の要素を考慮する必要があります。不正咬合の程度が大きい場合、脱臼を伴う骨折、粉砕骨折、複数の骨折箇所がある場合、または骨折が開放骨折(皮膚を貫通している)である場合は、外科的治療の適応となります。
下顎骨骨折の外科的治療は、通常1~2週間以内に実施することが推奨されています。この時間枠は、損傷部位の腫脹がある程度引いた後、かつ感染のリスクが高まる前という、治療のタイミングとして最適な期間を示しています。緊急手術が必要なのは、継続的な出血、激しい痛み、または他の重大な合併症がある場合に限定されます。
手術では、口の中(口腔内アプローチ)または顎の下(経皮的アプローチ)から切開を加え、折れた骨を元の位置に戻します(整復術)。その後、金属プレートやスクリューで固定することで、骨がずれないようにします(固定術)。最後に、顎間固定を行って、整復された骨が再度ずれることを防ぎます。注意すべき点は、手術後も約2週間の顎間固定が必要ということです。
顎間固定期間中の栄養管理は、骨折部の治癒速度と患者の全身的な回復を左右する重要な要素です。固定期間中は口が開かないため、通常の咀嚼が不可能となり、流動食への対応が必須となります。
栄養学的には、骨折の治癒には高品質なタンパク質(体重1kg当たり1.5g/日程度)、カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、そして十分なエネルギー摂取が必要です。これらの栄養素を含む高栄養価の液体食を患者に処方することが重要です。初期段階ではゼリー飲料やスポーツ飲料など、カロリーが取れる液体栄養剤を活用します。
段階的な食事進行も重要で、固定除去後約3週間での固形食への移行は一般的に安全とされています。ただし、慢性腎臓病や糖尿病を有する患者では、骨折部位への機械的ストレスに注意が必要です。つまり、患者の全身状態に合わせた栄養計画が不可欠ということですね。
固定期間中は歯の表面の一部しか磨くことができないため、マウスウォッシュを毎朝夕に使用してプラーク形成、感染、および口臭を管理することが必要です。
この口腔衛生管理が感染予防に直結します。
顎骨骨折治療後の合併症には、固定の喪失、不正咬合の残存、線維化による非治癒、感染、神経損傷(三叉神経や顔面神経)、そして傷跡の問題などが挙げられます。特に神経損傷は、感覚障害や運動機能障害をもたらす可能性があるため、手術中の神経保護が重要です。
治療後の後遺症としては、咀嚼機能障害(チューイング機能の低下)、言語機能への影響、審美的な問題(変形や非対称性)、および慢性的な痛みやしびれが報告されています。これらの後遺症を最小化するために、正確な診断、適切な治療選択、そして慎重な手術技術が重要です。
フォローアップは治療方法によって異なります。保存的に治療された場合は、最大で5~6週間、毎週チェックを実施します。術後のX線撮影は可能な限り早期に行い、骨折部の癒合状況を確認する必要があります。初回の再診は1週間後に縫合糸の除去と軟部組織の治癒評価のために行われます。
術後4週間では、スプリントによる開口トレーニングを開始し、切歯間(門歯と門歯の間の距離)40mm を目標に口を開ける運動を指導します。最終的な骨折部の癒合確認は、手術後6ヶ月時点でのX線撮影により行われます。段階的な回復過程を丁寧に追うことが大切です。
リサーチ結果から、歯科医向けの読者が持つ常識:「顔面骨骨折は必ず手術が必要」という思い込みに反する事実を探します。実際には、軽度の骨折は非観血的(手術しない)治療で対応でき、約90.5%は非観血的に処置されているという事実があります。

VETERINARY BOARD 2024 JUNE No.62 歯周病に関連した疾患 ~ 口腔鼻腔瘻・根尖周囲病巣・下顎骨骨折 ~