かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所への移行と口管強の要点

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)は2024年に口管強へ改変。施設基準・算定メリット・届出方法を歯科従事者向けに解説。あなたの医院は対応できていますか?

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所を理解し口管強へ対応する

訪問診療を自院で1件もやっていなくても、口管強の施設基準を満たせる場合があります。


この記事の3つのポイント
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か強診は2024年6月に口管強へ改変

「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」という施設基準は廃止され、「口腔管理体制強化加算(口管強)」へと名称・内容が変更されました。既存の届出医院には経過措置があります。

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届出で歯周病安定期治療(SPT)を毎月算定できる

一般歯科では3か月に1回しか算定できないSPTが、口管強届出医院では毎月1回算定可能で、かつ1回あたり最大120点の加算が上乗せされます。

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11項目の施設基準をすべて満たす必要がある

AED・酸素供給装置の整備から地域ケア会議への参加実績まで、多岐にわたる要件を確認し、地方厚生局への届出書類を準備することが必要です。


かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)の成り立ちと口管強への改変


「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」、通称「か強診(かきょうしん)」は、平成28年(2016年)4月の診療報酬改定で新設された施設基準です。むし歯や歯周病の重症化を未然に防ぎ、患者が生涯にわたって口腔の健康を維持できる体制を持つ歯科診療所を、国が評価・推奨するための制度として生まれました。従来の「治療中心型」から「予防・管理型」へのシフトを促すのが、その根本にある考え方です。


しかしながら、令和6年(2024年)6月の診療報酬改定において、このか強診という区分は廃止されました。代わりに新設されたのが「口腔管理体制強化加算(口管強:こうかんきょう)」です。名称変更の理由は主に2点あります。一つは、患者が想像する「かかりつけ歯科医」のイメージと、実際のか強診の役割にギャップがあり、制度の趣旨が伝わりにくかったこと。もう一つは、か強診の施設基準に「小児への対応」が明示されておらず、「乳幼児期から高齢期までのライフコースを通じた口腔管理」という国の方針との整合性が取れていなかったことです。


つまり口管強は、か強診の発展形に位置づけられます。理念や方向性は引き継ぎながら、より幅広い世代への対応力と、地域連携への積極的な関与を求めるよう、要件が拡充された制度です。歯科医療従事者にとっては「名前が変わっただけ」と受け取りがちですが、施設基準の中身は以前より多岐にわたっており、対応が必要な項目も増えています。


なお、令和6年5月31日時点でか強診の届出を済ませていた医療機関については、令和7年5月31日までの間、口管強の算定が可能な「みなし口管強」として扱われます。ただし令和7年6月以降も継続して算定したい場合は、改めて口管強の施設基準を満たしたうえで再届出が必要です。これは期限を意識せずにいると、突然算定不可となるリスクがあるため要注意です。


令和6年8月1日時点で、口管強の届出件数は全国で14,498件(中医協データより)となっており、令和4年の11,795件から着実に増加しています。ただし全国の歯科診療所総数(約6万6千施設)と比べれば、まだ約22%にとどまっている状況です。


参考:厚生労働省による令和6年度診療報酬改定の概要(歯科分野)の公式資料です。か強診から口管強への移行内容、算定要件の変更点が詳述されています。


令和6年度診療報酬改定の概要【歯科】(厚生労働省)


かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所に求められた施設基準と口管強の11要件

口管強の施設基準は全部で11項目あり、そのすべてを満たしたうえで地方厚生局へ届け出る必要があります。項目の多さと複合的な要件が、届出率が全体の2割程度にとどまっている大きな原因ともなっています。各項目を順番に確認しましょう。


まず人員配置(要件1)として、歯科医師が複数名配置されているか、または歯科医師と歯科衛生士がそれぞれ1名以上配置されていることが求められます。歯科医師1人のみで歯科衛生士がいない体制では、この時点で届出ができません。


診療実績(要件2)では、過去1年間に歯周病安定期治療(SPT)または歯周病重症化予防治療を合計30回以上算定していること、さらにエナメル質初期う蝕管理料または根面う蝕管理料を合計12回以上算定していることが必要です。予防・管理型の診療をどれだけ実践してきたかを、数字で問われます。


口腔機能管理の実績(要件3)は、口管強から新たに加わった要件の一つです。口腔機能発達不全症口腔機能低下症の管理を目的とした各種管理料を、過去1年間に合計12回以上算定していることが求められます。小児や高齢者の口腔機能に対応してきた実績が必要ということですね。


訪問診療体制(要件4)については、後述しますが、自院での実施だけでなく他院への依頼でも要件を満たせる選択肢があります。


医療連携実績(要件5)では、診療情報提供料または診療情報等連携共有料を過去1年間に合計5回以上算定していることが求められます。医科との連携など、院外へ情報発信してきた実績が評価されます。


研修要件(要件6)では、歯科疾患の重症化予防に関する継続管理、高齢者および小児の心身特性、緊急時対応に関する適切な研修を修了した歯科医師が1名以上在籍している必要があります。口管強の研修は届出日から3年以内に受講したものが有効とされています。


緊急時の連携体制(要件7)は、偶発症等の緊急時に備え、別の保険医療機関とあらかじめ連携体制を確保することを求めています。医科歯科併設の診療所は、院内の医科診療科との連携でも可とされています。


訪問診療の患者対応体制(要件8)では、訪問診療を担う歯科医師を事前に指定し、担当医名・診療可能日・緊急時の注意事項等を文書で患者または家族に提供することが義務づけられています。


地域連携活動(要件9)は、12の選択肢(居宅療養管理指導の実施、地域ケア会議への年1回以上の参加、介護認定審査会委員の経験など)のうち、3つ以上を満たすことが条件です。地域の介護・医療との接点をどれだけ持っているかが評価軸になっています。


口腔衛生環境の確保(要件10)として、歯科用吸引装置により、歯科ユニットごとに飛散物を吸引できる環境の確保が求められます。


最後に緊急時対応設備(要件11)として、AED(自動体外式除細動器)、パルスオキシメーター、酸素供給装置、血圧計、救急蘇生セット、歯科用吸引装置の6点をすべて備えていることが必要です。AEDに関しては院内掲示も推奨されています。


| 要件 | 主な内容 | ポイント |
|------|---------|---------|
| (1) 人員配置 | 歯科医師複数名または歯科医師+歯科衛生士各1名以上 | 歯科衛生士なしはNG |
| (2) 診療実績 | SPT等30回以上・エナメル質初期う蝕等12回以上/年 | 予防型診療の実績が必要 |
| (3) 口腔機能管理 | 口腔機能関連管理料12回以上/年 | 口管強から新設 |
| (4) 訪問診療体制 | 自院5回以上 or 他院依頼5回以上 or 連携体制確保 | 選択肢が複数ある |
| (5) 医療連携実績 | 診療情報提供料等5回以上/年 | 医科連携が鍵 |
| (6) 研修 | 必要研修を修了した歯科医師1名以上(3年以内) | 小児研修が追加 |
| (7) 緊急時連携 | 別医療機関との連携体制確保 | 文書化が望ましい |
| (8) 訪問担当医指定 | 担当医名・可能日等を患者に文書提供 | 書式整備が必要 |
| (9) 地域連携活動 | 12項目中3つ以上に該当 | 幅広い選択肢あり |
| (10) 口腔衛生環境 | 歯科ユニットごとの吸引装置設置 | ユニット単位で確認 |
| (11) 緊急設備 | AED・酸素供給装置・血圧計等6点 | 全点必須 |


参考:口管強の施設基準11項目の詳細と疑義解釈をまとめた専門情報です。届出前の確認に役立ちます。


「口腔管理体制強化加算(口管強)」の特徴と活用法(IOCiL)


かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の届出で得られる診療報酬上のメリット

口管強を届け出ることで最も大きな実務的メリットとなるのが、診療報酬の算定点数と算定間隔の両面での優遇です。これを把握していない歯科医療従事者は、届出をしないことで確実に損をしています。


算定点数の面では、歯周病安定期治療(SPT)において1回あたり120点の加算が上乗せされます。例えば20歯以上の患者にSPTを行う場合、一般歯科では350点ですが、口管強届出医院では350点+120点で470点となります。エナメル質初期う蝕管理料や根面う蝕管理料でも1回あたり48点の加算が生じます。


さらに大きいのは、算定間隔が短縮される点です。一般の歯科診療所では、SPTの算定は原則3か月に1回しかできません。しかし口管強の届出があれば、毎月1回算定が可能になります。仮に月2人のSPT患者が毎月来院するとすると、3か月に1回の算定から毎月の算定に切り替わることで、単純計算で年間の算定回数が3倍になり得ます。これは収益に直結する、見逃せない差です。


機械的歯面清掃処置も同様で、エナメル質初期う蝕管理料の患者には毎月1回の算定が可能になります(一般は2か月に1回)。


訪問診療においても、歯科訪問診療移行加算が口管強届出で150点となり(一般は100点)、歯科訪問診療補助加算も同一建物居住者以外で115点(一般は90点)に増加します。


これらのメリットをまとめると、要件を満たせる医院にとって口管強の届出は「する・しない」の選択ではなく、届出しないことで毎月損をしている状態ともいえます。


なお、患者にとっては一部負担金が増加するというデメリットも生じます。突然の負担増はクレームにつながりやすいため、口管強届出医院であることをホームページや院内ポスターで事前に周知しておくことが重要です。


参考:口管強と一般歯科の算定点数・算定間隔を比較した詳細データが確認できます。


口腔管理体制強化加算(口管強)の点数や算定要件(3tei.jp)


訪問診療の実績なしでも口管強の届出ができる意外な条件とは

「訪問診療をほとんどやっていないから口管強は無理だ」と思い込んでいる歯科医療従事者は少なくありません。しかし、それは古い情報に基づく誤解の可能性があります。


口管強の施設基準(要件4)には、訪問診療に関して以下の3つの選択肢があります。


- 🏠 ア:過去1年間の歯科訪問診療(1・2・3)の算定回数が合計5回以上
- 🤝 イ:連携する在宅療養支援歯科診療所等に依頼した訪問診療が5回以上
- 📞 ウ:連携する別の医療機関や地域の在宅医療窓口とあらかじめ協議し、訪問診療に係る十分な体制が確保されていること


アは自院で訪問診療を実施するケースですが、イは自院では訪問診療を行わずに他院へ患者を紹介・依頼した件数でもカウントできます。5件の紹介実績があれば条件をクリアできるということです。これは意外と知られていないポイントです。


さらにウは、訪問診療の実績件数がゼロであっても、連携体制を書面等で整えることで要件を満たせるという、非常に間口の広い選択肢です。


か強診の時代には「訪問診療を自院で実施すること」が実質的に求められていましたが、口管強では訪問体制の確保という形で大幅に選択肢が広がりました。地域の在宅療養支援歯科診療所と連携覚書を交わすだけで、この要件をクリアできるケースもあります。


同様に、地域連携活動(要件9)の12項目も見ると、学校歯科医への就任や、自治体が実施する事業への協力、認知症研修の受講といった幅広い活動が対象になっています。すでに実践していながら、施設基準の届出に結びつけていない歯科医師も多いと考えられます。つまり要件が思ったより身近なところで満たされているケースもあります。


届出を検討している医院は、まず要件ごとの現状を棚卸しすることから始めましょう。研修が未受講、あるいは3年以上前の受講で有効期限切れになっている場合は、日本歯科医師会や各都道府県歯科医師会が主催する「歯科施設基準研修会」(オンライン受講可能なものもあります)を活用できます。


参考:届出前の確認事項や疑義解釈について解説されています。施設基準の満たし方で迷ったときに参照できます。


「口管強」(口腔管理体制強化加算)の疑義解釈をみてみよう!(IOCiL)


地域包括ケアと口管強:歯科医院が果たすかかりつけ機能の本質

口管強の制度的な背景には、国が推進する「地域包括ケアシステム」への歯科の参画という大きな文脈があります。単なる診療報酬の話ではありません。


地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく生活を続けられるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される体制のことです。2025年を目途に整備が進められてきましたが、その中に歯科医療の機能が明確に位置づけられています。


特に注目されているのが、口腔機能と全身健康の関係です。口腔の状態が悪化すると、誤嚥性肺炎のリスクが高まるだけでなく、低栄養や認知症の進行にも影響を与えることが複数の研究で示されています。逆に言えば、歯科医師・歯科衛生士が早い段階から患者の口腔を継続管理することは、全身疾患の予防にも貢献できる可能性があるということです。


口管強の施設基準(要件9)で地域ケア会議への参加や多職種連携が明示されているのは、こうした背景があるからです。介護認定審査会への参加、居宅療養管理指導の提供、嚥下訓練などの多職種連携活動は、医療報酬として評価されるだけでなく、地域での歯科医院の存在感を高める活動でもあります。これは使えそうです。


実際、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)においても、医科医療機関への歯科訪問診療等の実施割合は約30%にのぼっており(厚生労働省データ)、在宅での口腔管理が歯科の新たな役割として定着しつつあります。


口管強の届出を単なる保険点数の問題として捉えるのではなく、「自院がどういうかかりつけ機能を地域に提供するか」という経営・理念レベルの問いと向き合うきっかけにしていくことが、長期的に選ばれる歯科医院につながります。令和6年8月時点で口管強の届出件数が前年比で約14%増加している事実は、業界全体がこの方向へ動いていることを示しています。


参考:厚生労働省が示す地域包括ケアシステムにおける歯科保健医療の役割について詳述した公式資料です。


地域包括ケアシステムにおける歯科保健医療の役割について(厚生労働省)


かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の届出手順と注意すべき落とし穴

口管強の届出を実際に行うには、以下の書類を準備して所轄の地方厚生局へ提出します。基本的には郵送での提出が一般的です。


- 📄 【別添2】特掲診療料の施設基準に係る届出書
- 📄 【様式17の2】口腔管理体制強化加算の施設基準に係る届出書添付書類
- 📄 研修修了を証明する文書(修了証のコピー、または氏名・実施機関・修了日を記載した一覧表)


届出書の様式は各地方厚生局(北海道・東北・関東信越・東海北陸・近畿・中国四国・四国・九州)のウェブサイトから入手できます。書式は地域によって微妙に異なるため、必ず自院が属する地方厚生局のものを使用してください。


落とし穴1:研修の有効期限切れ


口管強の研修要件は、届出日から遡って3年以内に受講した研修が有効です。か強診の時代に研修を受けた歯科医師が、そのまま使い回せると思い込むケースが散見されます。研修日を確認するのが先決です。なお、過去の研修が要件の一部を満たす場合は、不足分のみを補足する研修を追加受講することで差し支えありません。


落とし穴2:算定実績の集計ミス


経過措置期間中(令和7年5月31日まで)は、令和6年5月31日以前の算定回数と、令和6年6月1日以降の算定回数を合算して計算できます。これを知らずに「令和6年6月以降の実績だけで12回に届かない」と諦めてしまうケースがあります。合算が可能な要件(要件2のイ・エ、要件4のア、要件5、要件9のオ・シ)を必ず確認しておきましょう。


落とし穴3:届出後の維持管理を忘れる


届出は一度行えばそれで終わりではありません。施設基準を継続して満たしていることが前提であり、個別指導や適時調査の際には、実績の記録や研修修了証の保管が確認されます。算定実績は日常のレセプト管理の中で蓄積されていきますが、地域ケア会議の出席記録や多職種連携の証跡は別途保管しておく必要があります。


落とし穴4:患者への告知不足


口管強の届出後、一部の処置で患者負担が増加します。事前告知なしに請求が増えると、クレームやトラブルに発展するリスクがあります。ホームページへの記載、受付付近へのポスター掲示、初診時の口頭説明など、複数の手段で周知するのが理想的です。一つの段落に情報が集中しないよう、スタッフ間でも告知のフローを共有しておきましょう。


届出を検討しているが研修がまだ済んでいない場合は、日本・アジア口腔保健支援機構(JAOS)が主催する歯科施設基準研修会(オンライン受講可)が修了証発行に対応しており、口管強の届出に必要な研修要件をカバーしています。受講後に修了証を取得し、速やかに届出書類と合わせて提出することで、算定開始までのリードタイムを短縮できます。


参考:口管強の届出に必要な手続きの流れ、研修要件、経過措置についての詳細情報はこちらをご参照ください。


か強診が口腔管理体制強化加算(口管強)に変更!施設基準や届出方法(JMアカデミー)






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