ステージ1で手術が成功しても、再発リスクはゼロではありません。
術後再発とは、手術によってがんを切除し、CTやMRIなどの画像検査でがんが確認できなくなった後に、再びがん細胞が発見される状態を指します。これは「転移」とは厳密に意味が異なります。転移は最初の診断時点ですでに他臓器へ広がっている状態であり、術後再発はあくまで「一度消えたように見えたがんが再び現れた」状態です。
がんのステージ(病期)は、T因子(がんの大きさ・広がり)、N因子(リンパ節転移の有無)、M因子(遠隔転移の有無)の3つを組み合わせて決定されます。ステージⅠは局所にとどまる早期段階、ステージⅡは周囲組織への進行、ステージⅢは近隣リンパ節転移あり、ステージⅣは遠隔転移ありの状態です。
つまり、手術時のステージはあくまで「そのとき発見されたがんの状態」を示しているにすぎません。早期ステージで手術に成功したとしても、肉眼や画像では確認できないほど微小ながん細胞が体内に残っている可能性があるのです。それが時間をかけて成長し、数年後に再発として発見されるケースが実際に起こっています。
大切なのは、術後再発が起きやすい時期を知ることです。大腸がんを例に挙げると、再発の約85%は手術後3年以内に発生し、95%以上は5年以内に確認されています(大腸癌研究会ガイドライン)。つまり術後5年間が最も注意すべき期間ということですね。
大腸がん術後の再発時期と補助化学療法に関する詳細:患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2022年版(大腸癌研究会)
「手術で取り切れたから安心」と考えている方は少なくありません。しかし、ステージが早期であっても再発のリスクは完全にはゼロになりません。代表的ながんのステージ別再発率を確認しておきましょう。
大腸がんの術後再発率は、ステージⅠで約5.7%、ステージⅡで約15%、ステージⅢで約31.8%とされています。全ステージの平均は約18.7%です(大腸癌治療ガイドライン2019年版)。ステージⅠでも「約17人に1人」は再発が起こっているということになります。
| がんの種類 | ステージⅠ再発率 | ステージⅢ再発率 |
|-----------|--------------|--------------|
| 大腸がん | 約5.7% | 約31.8% |
| 肺がん(非小細胞) | 約20〜30% | 約40〜60% |
| 食道がん(根治手術後) | 30〜50%(全体) | — |
| 乳がん(ER陽性) | 術後15年まで再発リスク継続 | — |
肺がんはとくに再発しやすいがんのひとつです。非小細胞肺がんのステージⅠであっても、術後再発率は約20〜30%にのぼります。再発のほとんどは治療後2年以内に起こるとされており、定期的な画像検査が非常に重要です。
乳がんはさらに注意が必要です。ER陽性(ホルモン受容体陽性)の乳がんは、術後5年以降も再発リスクが持続し、場合によっては術後15年以上経過してから再発するケースも報告されています。これは「晩期再発」と呼ばれており、他のがんとは異なる長期的な経過観察が求められます。
意外ですね。「5年生存率」という言葉は広く知られていますが、乳がんに関しては5年を無事に超えても終わりではないということです。
食道がんは根治手術後でも30〜50%の再発が報告されており(虎の門病院データ)、再発形式はリンパ節・局所再発が20〜70%、遠隔臓器転移が10〜50%とかなり幅があります。初回治療から1年以内に発見されるケースが最も多く、定期検査のスケジュールを守ることが直接的な生存率改善につながります。
食道がんの再発率・転移形式の詳細データ:虎の門病院 食道がん治療センター
術後再発が確認された場合、重要な疑問のひとつが「再発したらステージはどうなるのか」という点です。これは多くの患者さんや家族が混乱しやすいポイントです。
結論から言うと、術後再発後のステージは、初回手術時のステージがそのまま引き継がれるわけではありません。再発が確認された時点で、再発の部位・数・転移の有無を新たに評価し、治療方針が立てられます。
たとえば、ステージⅡで手術を受けた大腸がん患者が、術後2年後に肝臓に再発した場合、その状態は「遠隔転移あり」と判断され、治療上はステージⅣに相当する対応がとられることになります。ステージ2から他臓器に再発が見つかった場合、ステージ4相当の治療に切り替わるということです。
ただし、再発の中でも「局所再発」(元のがんがあった周辺に再発)と「遠隔転移再発」(肝臓・肺・骨などの離れた臓器に再発)では、治療の選択肢と予後が大きく異なります。
局所再発の場合、がんが一箇所に限られていれば再手術や放射線治療によって根治を目指せる場合があります。これが重要な点です。一方、遠隔転移再発では「がんの進行を抑える・症状を和らげる」という方針が中心となります。
再発後の治療方針を正確に把握するためには、再発確認後にセカンドオピニオンを受けることも選択肢のひとつとして検討できます。主治医以外の専門家の意見を聞くことで、治療の選択肢を広げることができます。
ステージ4または再発と診断された場合の治療方針について:国立がん研究センター 中央病院
術後補助療法とは、手術後に再発を予防する目的で行われる追加治療のことです。主な方法には薬物療法(補助化学療法)、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法があります。どの治療が選ばれるかは、がんの種類とステージによって異なります。
大腸がんでは、ステージⅢに対しては手術後6ヶ月間の補助化学療法が強く推奨されています。ステージⅡでは、再発リスクが高いと判断されるケースに限り補助化学療法が考慮されます。ステージⅠはリスクが低いと判断されることが多く、原則として補助化学療法は推奨されていません。
つまりステージⅠが原則です。手術後に何もしないで5年間の経過観察になるケースが多いのです。
肺がん(非小細胞肺がん)では、ステージⅡ〜Ⅲ期の患者さんに対して、シスプラチンを中心とした術後補助化学療法が推奨されており、手術単独と比べて5年生存率をⅡ期で約12%、Ⅲ期で約15%改善することが報告されています(日本肺癌学会ガイドライン)。数字で見ると小さく感じるかもしれませんが、これは非常に大きな意味を持ちます。
乳がんではHER2陽性の場合はトラスツズマブ(分子標的薬)を使った術後療法が行われ、ER陽性の場合はホルモン療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬など)が5〜10年にわたって継続されることもあります。
術後補助療法の副作用として、吐き気、疲労感、脱毛などが生じることがあります。副作用への不安から治療を中断してしまうと再発リスクが上がることになるため、担当医と十分に相談しながら進めることが重要です。
また、補助化学療法を行っても再発を完全に防ぐことはできません。微小ながん細胞が抗がん剤に耐性を持ってしまうケースもあることが報告されており、何度も治療を繰り返すと効果が弱まる可能性があります。これが術後再発治療を難しくしている側面のひとつです。
肺がんの術後補助化学療法の効果と適応条件について:日本肺癌学会 患者さんのための肺がんガイドブック
術後の再発リスクを下げるためにできることは、医療的な治療だけではありません。日常生活における取り組みも、再発予防に一定の効果があると研究で示されています。
米国対がん協会(ACS)が2012年に公表した「がんサバイバーのための栄養と運動のガイドライン」では、以下の生活習慣が再発予防に有効であると示されています。
体温を一定に保つことも免疫機能の維持に関係があると言われています。冷えやすい体質の方は、日常的な体温管理に意識を向けることがひとつのポイントになります。
栄養面では、ビタミンDの不足ががんリスクの増加と関連するという研究が複数報告されています。日光に当たる時間が少ない方は、サプリメントによる補充も選択肢になりますが、過剰摂取は逆効果になるため、医師への相談が前提です。
また、がんはそれ自体に自覚症状がないことも多く、定期的な検査が再発の早期発見に直結します。術後は3〜6ヶ月に1度の定期検査(血液検査・腫瘍マーカー・CT)を継続することが、再発の早期発見において最も効果的な方法です。これが基本です。
がんが再発したときの治療と生活についての情報:国立がん研究センター がん情報サービス「がんが再発したら」