歯周病分類グレードとステージの正しい診断と臨床活用法

歯周病分類のグレード・ステージをどう診断に活かせばよいか悩んでいませんか?2018年の新分類が示すリスク評価の考え方と、臨床での具体的な判断基準を徹底解説します。

歯周病分類グレードとステージを診断・治療計画に活かす方法

禁煙して3年経っても、歯周病グレードはまだCになることがあります。


🦷 この記事の3つのポイント
📊
ステージ=「今の状態」を示す

ステージI〜IVの4段階で、CALや骨吸収量・歯の喪失数・複雑度をもとに「今どれだけ壊れているか」を評価します。

グレード=「これからのリスク」を示す

グレードA〜Cの3段階で、骨吸収の進行スピードや喫煙・糖尿病などのリスクファクターを加味した「今後の進行予測」を評価します。

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グレードはSPT計画の根拠になる

グレード分類を正しく把握することで、リコール間隔・禁煙支援・医科連携など、患者ごとの個別対応に根拠が生まれます。


歯周病分類の新分類が2018年に変わった背景と概要


2018年6月、アメリカ歯周病学会(AAP)とヨーロッパ歯周病連盟(EFP)が共同で、歯周病の新しい分類基準を公表しました。それ以前の分類体系は、1999年のArmitage分類をベースにしており、「慢性歯周炎」と「侵襲性歯周炎」という2分類が20年近くにわたって使われてきました。


旧来の分類には一つの大きな課題がありました。それは、**過去と現在の状態しか反映できず、「今後どのように進行するか」という将来予測の視点が抜け落ちていた**点です。歯周治療のゴールは単に炎症を抑えることにとどまらず、長期的に歯を保持し、患者の口腔機能を守り続けることにあります。そのためには、現在の重症度だけでなく、進行リスクの評価が不可欠です。


2017年11月、米国シカゴで世界各国から100名を超す専門家が集まり、「World Workshop on the Classification of Periodontal and Peri-Implant Diseases and Conditions」が開催されました。ここでの議論をもとに策定された新分類が、現在私たちが用いている**ステージ(Stage)とグレード(Grade)**の枠組みです。


日本歯周病学会はこの新分類を受け、2021年度から本格実施を開始しました。それまでは旧分類との併記が認められていましたが、現在は認定医・専門医・認定歯科衛生士の申請においても新分類が必須とされています。つまり、新分類の理解は今や資格維持にも直結する話なのです。


新分類では、歯周炎を大きく2軸で評価します。歯周炎の重症度・複雑度を示す**ステージ(I〜IV)**と、進行リスクを示す**グレード(A〜C)**です。ステージは「今の状態」を、グレードは「これからどうなるか」を表すと理解すると、2つの概念を混同せずにすみます。


ちなみに旧分類で言う「侵襲性歯周炎」と「慢性歯周炎」は廃止されたわけではなく、日本では経過措置として旧分類を併記することになっています。たとえば「広汎型慢性歯周炎 ステージIII グレードB」のように記載することが現在も推奨されています。これは長年蓄積されてきた臨床・研究データを継続的に活用できるようにするための配慮です。


日本歯周病学会 公式 歯周病の新分類への対応(ステージ・グレード分類表 日本語訳)


歯周病分類のステージI〜IVの判断基準と臨床での見きわめ方

ステージ分類は「重症度」「複雑度」「範囲と分布」の3つの軸で構成されています。この3軸をしっかり押さえておけば、ステージの判断は格段にシンプルになります。


**重症度**の核となる指標はCAL(クリニカルアタッチメントロス)です。歯周炎が最も進行している部位の歯間部CALを基準に評価します。ステージIは1〜2mm、ステージIIは3〜4mm、ステージIII・IVはともに5mm以上です。X線上の骨吸収量も重要な参考指標で、骨吸収が歯根長の1/3未満であればステージI〜II、1/3以上であればステージIII・IVの候補となります。


| ステージ | CAL(歯間部) | X線骨吸収 | 歯周炎による歯の喪失 |
|---------|-------------|---------|-----------------|
| I | 1〜2mm | 歯根長1/3未満(<15%) | なし |
| II | 3〜4mm | 歯根長1/3未満(15〜33%) | 4本以内 |
| III | ≥5mm | 歯根長1/3を超える | 5本以上 |
| IV | ≥5mm | 歯根長1/3を超える | 5本以上+咬合崩壊 |


ここで見落としやすいのが「歯の喪失数のカウント方法」です。ただ欠損している歯を数えるのではなく、**歯周炎が原因で喪失した歯**のみを対象とします。う蝕や破折による抜歯は含みません。さらに重要なポイントとして、**現時点でまだ残存しているがホープレス(保存不可能)と診断された歯も、その本数に含める**という点があります。


なぜ抜く予定の歯も数に入れるのでしょうか? 旧分類では抜歯後に重症度が下がるという矛盾が生じていたためです。抜いて歯が減っても病態の深刻さは変わらない、という考え方が反映されています。


**複雑度**は誰がどのレベルの治療に介入すべきかの目安になります。ステージI・IIはプロービングデプス4mm以下・水平性骨吸収が中心で、一般開業医での基本治療が主体です。ステージIIIになると6mm以上のポケットや垂直性骨吸収・根分岐病変(2〜3度)が加わり、歯周外科が検討されます。ステージIVはそれに加えて咬合崩壊・動揺度2度以上・フレアアウトなどが重なり、補綴・矯正専門医との多職種連携が必要なケースです。


**範囲と分布**は、歯周炎に罹患した歯の割合で「限局型(30%未満)」「広汎型(30%以上)」に分けられます。日本固有の判断として、侵襲性歯周炎の場合は「大臼歯/切歯パターン」を記載します。ただし、慢性歯周炎の場合には大臼歯/切歯パターンの記載は不要です。これは混乱しやすい部分なので、注意が必要です。


診断に迷ったときの考え方として、ステージは「最も病態が進んでいる歯」の数値で決定する点を忘れないようにしましょう。最悪の部位で判断するのが原則です。


歯周病分類グレードA・B・Cの判定基準と見落とされやすい落とし穴

グレード分類は「進行スピードの予測」と「リスクファクターの評価」を組み合わせた指標です。グレードAが最も低リスク(遅い進行)、グレードCが最も高リスク(急速な進行)にあたります。


**グレード判定の第一歩は「経年変化の確認」**です。過去のX線写真や歯周組織検査記録と比較し、5年間でのCALや骨吸収の変化量を評価します。5年間で変化がなければグレードA、5年で2mm未満の変化ならグレードB、2mm以上の変化があればグレードCが目安です。過去の記録がない場合は、次に説明する「骨吸収率÷年齢」の計算で評価します。


$$\text{骨吸収率/年齢} = \frac{\text{骨吸収率(\%)}}{\text{年齢(歳)}}$$


この値が0.25未満ならグレードA、0.25〜1.0ならグレードB、1.0を超えればグレードCです。ここで多くの歯科従事者が気づいていない重要な事実があります。**若い患者ほど同じ骨吸収量でもグレードが高くなりやすい**のです。


たとえば30歳の患者が骨吸収20%だった場合、20÷30≒0.67でグレードBです。一方、60歳の患者が骨吸収20%だった場合、20÷60≒0.33でグレードBの低い側に位置します。骨吸収の絶対量は同じでも、若い年齢で骨が失われているという事実がリスク評価に直結します。「骨の状態が軽いから大丈夫」と思いがちなケースでも、年齢を考慮した計算を行うことが重要です。


3番目の判断材料は**「症例の表現型」**です。これはプラーク蓄積量に対して組織破壊がどの程度起きているかを観察するものです。プラークが少ないのに組織破壊が進んでいる場合はグレードCを示唆し、プラーク量に見合った破壊にとどまっているならグレードBが多いとされています。ただし、この評価は主観に左右されやすく、臨床経験の浅いうちは特に注意が必要な項目です。


グレード判定で最も誤解が多いのは**リスクファクターの扱い**です。喫煙と糖尿病の2つが現在の新分類に採用されており、これらの存在がグレードを一段階引き上げる「修飾因子」として機能します。1日10本以上喫煙する患者はグレードC、10本未満ならグレードBの方向にシフトします。


**糖尿病に関して注意が必要なのは、HbA1c≥7.0%だからといって自動的にグレードCにはならない**という点です。歯周組織への影響が見られない場合は、まずグレードBとして評価し、他の項目を加味したうえで最終判断を行います。HbA1c7.0%以上はグレードCの「修飾因子」ですが、それだけで機械的にCと確定するわけではないという点を、臨床判断のひとつとして押さえておくことが大切です。


日本臨床歯周病学会 新分類対応ガイドライン(記載例・ステージ・グレード表)


歯周病分類グレードを左右するリスクファクター:喫煙・糖尿病の正確な評価

グレード分類においてリスクファクターは「修飾因子」と呼ばれ、他の指標で一旦グレードを決定したあと、そのグレードを上方修正するかどうかを判断するために使用します。現在の新分類に明記されているリスクファクターは喫煙と糖尿病の2つのみです。将来的に項目が増える可能性は大いにありますが、現時点では、この2項目が評価の柱になります。


**喫煙のリスク評価**では、現在喫煙しているかどうかだけでなく、**禁煙後の経過年数**が重要な判断材料になります。喫煙の悪影響は禁煙後も10年以上続くことが研究で指摘されており、禁煙から10年未満の患者は喫煙の影響が残っている可能性として評価の対象とします。10年以上禁煙していて歯周組織への影響が見られない場合に初めて「非喫煙者」として扱い、グレードAの方向で評価できます。


「3年前に禁煙した」という患者に対して「もう禁煙したから問題ない」と判断するのは早計です。禁煙後の経過観察は10年以上のスパンで見る必要があります。日本臨床歯周病学会によると、1日10本以上の喫煙は歯周病リスクを5.4倍に、10年以上の喫煙歴は4.3倍に高めるというデータがあります。この数字を患者への説明に活用することも、禁煙支援の有効なアプローチです。


喫煙の評価を行う際には、現在の喫煙本数だけでなく、喫煙期間・禁煙歴・禁煙後の経過年数を医療面接で丁寧に収集することが必要です。禁煙支援の第一歩は情報の収集から始まります。


**糖尿病のリスク評価**では、HbA1cの数値が一つの目安になります。HbA1c7.0%未満の糖尿病患者はグレードBの方向、7.0%以上はグレードCの方向へ修飾されます。ただし前述のとおり、歯周組織への影響がなければ機械的にグレードCに確定させる必要はありません。


重要なのは、HbA1cの値と口腔内の所見を「両方見て」判断することです。血糖コントロールが良好であっても、リコール間隔を半年以上に延ばすことには慎重になる必要があります。糖尿病患者は潜在的なリスクを持ち続けているため、口腔内が良好な状態でも定期的なモニタリングを維持することが適切な管理です。


実際の糖尿病患者への対応では、担当医との医科歯科連携が欠かせません。HbA1cの直近値・服薬状況・合併症の有無などを問診で確認し、必要に応じて主治医へ情報共有を行う体制を整えることで、より安全で根拠のある歯周管理が実現できます。


Club Sunstar Pro:歯周病と糖尿病の関係・歯科衛生士にできること(HbA1cと問診のポイント解説)


歯周病分類グレードをSPT・治療計画に落とし込む独自視点:「グレードB確定でも油断できないケース」

グレード分類を正しく判定することは診断の完結ではなく、**治療方針とSPT設計への入り口**です。グレードが決まることで、リコール間隔・歯周外科の積極性・医科連携の必要性・生活習慣指導の優先度が論理的に決定できるようになります。


グレードAは進行リスクが低く、標準的なプラークコントロールと定期的なSPTが中心になります。グレードBは中等度リスクで、プラークコントロールの質を高めながら、3〜4ヶ月ごとのリコールを基本とした管理が適しています。グレードCは急速な進行が想定されるため、1〜3ヶ月という短いリコール間隔を設定し、場合によっては抗菌薬の併用や歯周外科、医科との連携も検討対象になります。


ここで注意しておきたいのが、「グレードBだからSPTは3ヶ月でいい」と単純に決めてしまう判断です。**グレードBの中にも、ステージIIIで根分岐病変があるケース、禁煙後5年のヘビースモーカーだったケースなど、より慎重な管理が必要な患者が混在しています。** グレードはあくまで一つの指標であり、ステージとの組み合わせで総合的に判断することが求められます。


たとえば「ステージII グレードB」と「ステージIV グレードB」ではリコール設計が大きく変わるはずです。グレードが同じでも、複雑度の高いステージIVの患者に6ヶ月間隔のリコールを設定するのは合理的ではありません。ステージとグレードを「セットで」評価することが原則です。


実際の臨床では、診断から治療計画立案までのステップを次のように整理すると使いやすくなります。


  • 📋 STEP1:ステージの確定 最悪部位のCAL・骨吸収量・歯の喪失本数・複雑度を確認して重症度を評価する。
  • STEP2:グレードの一次評価 経年変化(5年間のCAL・骨吸収変化)があれば直接証拠として使用。なければ骨吸収率÷年齢で計算する。
  • 🩺 STEP3:グレードの修飾 喫煙(本数・禁煙年数)・糖尿病(HbA1c・口腔内状態)を確認してグレードを上方修正するか判断する。
  • 📅 STEP4:治療計画とSPT設計 ステージ×グレードの組み合わせからリコール間隔・介入レベル・連携先を検討する。


グレードC且つステージIIIやIVの症例では、通常の非外科治療だけで安定させることが難しい場合があります。J-STAGEの論文でも「グレードCの歯周炎は通常の非外科治療に加えて抗菌薬の使用を考慮すべき」という見解が示されています。つまりグレードCの確定は、治療の深さを変えるトリガーにもなり得ます。


また、グレード分類を患者説明のツールとして活用することも有効です。「あなたの歯周病は今後も急速に進行するリスクがあるグレードCに該当します。だからこそ、喫煙をやめること、血糖コントロールを維持することが歯を守るうえで直接的な意味を持ちます」という説明は、患者の行動変容を引き出す根拠として非常に説得力を持ちます。数値と分類を根拠にした説明は、感覚的な指導よりも動機づけに効果的です。


J-STAGE:非外科治療の可能性を歯周病の新分類から考察する(グレードCへの抗菌薬適用の根拠)


歯周病分類グレード・ステージ 覚えておきたい早見表と記載例

臨床でスムーズに新分類を使いこなすために、よく参照されるパターンをまとめておきます。診断記録の記載例や、よくある迷いポイントの整理を合わせて押さえておきましょう。


**記載例の書き方**は以下の順が日本の基準です。


```
[範囲]型 [旧分類病名] ステージ[I〜IV] グレード[A〜C]
例:広汎型 慢性歯周炎 ステージIII グレードB
例:限局型 侵襲性歯周炎 ステージIV グレードC
```


「侵襲性歯周炎 → 大臼歯/切歯パターンを記載するケース」と「慢性歯周炎 → 大臼歯/切歯パターンは不要」という使い分けも忘れずに確認しておきましょう。


**グレード評価の早見チェックリスト**として、初診時に確認すべき情報を整理します。


  • 🗓️ 過去の記録 5年以内のX線写真・歯周組織検査結果の有無
  • 🦴 骨吸収率÷年齢 最重度部位のX線から骨吸収量を計測して計算
  • 🚬 喫煙歴 現在の喫煙本数 / 禁煙歴と禁煙後の経過年数(10年未満か否か)
  • 💉 糖尿病 診断の有無・HbA1c直近値・口腔内への影響の有無
  • 🦷 症例の表現型 プラーク量に対して組織破壊が「見合っているか・過剰か」


よく混乱するポイントとして「ステージとグレードの組み合わせはどれでもあり得る」という点があります。たとえば「ステージI グレードC」も「ステージIV グレードA」も理論上は存在します。ステージは現在の破壊の程度、グレードは将来の進行リスクであるため、2つの軸は独立して評価されます。現状が軽くても将来のリスクが高い患者、現状が重くても進行が非常にゆっくりな患者、いずれも存在します。この独立した2軸評価こそが、新分類の核心です。


新分類を使いこなすほど、患者ごとに「なぜこの治療を、なぜこの頻度で行うのか」が明確に言語化できるようになります。根拠のある説明が患者の信頼を高め、長期的なSPT継続率の向上にもつながります。新分類の習熟は、歯科衛生士・歯科医師いずれにとっても今の時代の臨床スタンダードです。


日本歯周病学会が出版している「歯周治療のガイドライン2022」には、新分類に基づいた治療手順や各ステージ・グレードへの対応方針が詳述されています。臨床的な判断に迷った際の一次参照資料として活用できます。


日本歯周病学会「歯周治療のガイドライン2022」(ステージ・グレード対応の治療手順収録)


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