歯肉切除術 手順と適応症を解説

歯肉切除術は歯周病治療における重要な外科処置ですが、適切な手順を踏まなければ予期せぬトラブルにつながります。本記事では、術前準備から術後管理まで実践的な手順と注意点を網羅的に解説します。臨床で即活用できる知識を得られるでしょうか?

歯肉切除術 手順の基本

歯肉切除で骨削除せずに切除すると数ヶ月で後戻りします


この記事のポイント
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術前診査のポイント

ポケットマーカーによる印記とカークランドメスでの45度外斜切開が成功の鍵

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器具選択と切開技術

レーザー・電気メス・メスそれぞれの特性を理解し症例に応じた選択が必要

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術後管理の重要性

サージカルパックや適切な洗口剤使用で感染予防と治癒促進を図る


歯肉切除術の適応症と禁忌症を理解する


歯肉切除術は歯周病治療における切除療法の一つで、病的に肥厚した歯肉を外科的に除去することで歯周ポケットを改善する処置です。しかし、すべての症例に適用できるわけではなく、適応症と禁忌症を正確に見極めることが治療成功の第一歩となります。


適応症としては、仮性ポケット、浅い骨縁上ポケット(4mm程度まで)、線維性歯肉増殖症、薬物性歯肉増殖症、萌出不十分のため臨床的歯冠長を長くしたい場合などが挙げられます。これらの症例では歯肉切除術により良好な予後が期待できるのです。


一方で禁忌症も明確に存在します。ポケット底部が深く付着歯肉の幅が少ない、またはまったくない場合は歯肉切除術の対象外です。また強い急性炎症が認められる場合、骨縁下ポケットが存在する場合も避けなければなりません。さらに血液疾患で止血困難な患者、好中球減少症や白血病の患者、コントロール不良の糖尿病患者、口腔清掃が不良な患者も禁忌となります。


適応症と禁忌症の判断は単に教科書的な知識だけでなく、患者の全身状態、口腔衛生状態、治療への協力度など多角的な評価が必要です。特に付着歯肉の幅は2mm以上確保できることが望ましく、これが不足する場合は歯肉弁根尖側移動術など別の術式を検討します。


クインテッセンス出版の歯周病学辞典では歯肉切除術の適応症と禁忌症について詳細な解説があります


歯肉切除術で使用する器具と特性

歯肉切除術を成功させるには、適切な器具の選択と使い分けが不可欠です。臨床現場では主に3種類の切開方法が用いられており、それぞれに明確な特性とメリット・デメリットがあります。


従来法のメスによる切開では、カークランドメスが頻繁に使用されます。イチョウの葉の形をした三方に刃がついた特殊な形状で、歯肉切除に最適化された設計となっています。メスでの切開は触覚フィードバックが得られ、細かなコントロールが可能な点が長所です。ただし出血量が比較的多く、術者の技術により仕上がりに差が出やすいという側面もあります。


電気メスは止血効果が高く、術中の視野確保が容易です。体内熱作用により組織を切開するため、小血管は自動的に凝固され出血が最小限に抑えられます。これは術後の腫れや痛みの軽減にもつながるのです。電気メスによる切開では、従来のメスと比較して術後の不快感が少ないという報告が多数あります。


レーザーによる切開は近年注目を集めています。炭酸ガスレーザーやEr:YAGレーザーなどが使用され、電気刺激がない、組織への熱損傷が少ない、術後の疼痛が軽減されるといった利点があります。レーザーは患部に触れずに施術できるため、感染リスクも低減できます。ただし設備投資が必要で、保険適用外となる場合もあります。


器具の選択は症例の特性、患者の全身状態、術者の経験、医院の設備状況などを総合的に判断して決定します。


歯肉切除術の具体的な手順とポイント

歯肉切除術の手順は標準化されており、各ステップを確実に実施することが成功への道筋となります。術前準備から術後処置まで、臨床で即実践できる具体的な流れを解説します。


まず局所麻酔を確実に効かせることから始まります。浸潤麻酔が一般的ですが、広範囲の場合は伝達麻酔も併用します。麻酔が効いたことを確認したら、クレーン・カプランのポケットマーカーを使用してポケット底の位置を歯肉外面に印記します。ピンセットの一端をポケット底に挿入し、もう一端で歯肉表面を挟むことで出血点として印記するのです。


印記した出血点を目安として、カークランドメスまたは#15のメスを用いて外斜切開を行います。歯軸に対して約45度の角度で、歯肉外面からポケット底に向かって切開を入れることが重要です。この角度が適切でないと、術後の歯肉形態が不良となり審美性や機能性に問題が生じます。45度という角度は、術後に生理的な歯肉形態を獲得するために計算された最適値なのです。


切除した歯肉片を丁寧に除去し、残存する不良肉芽組織を鋭匙で搔爬します。続いて超音波スケーラーキュレットを使用して根面のスケーリングルートプレーニング(SRP)を徹底的に実施します。根面を滑沢にすることで、歯肉の再付着を促進し良好な治癒が得られるのです。


最後に歯肉整形を行い、生理的な形態に仕上げます。必要に応じてサージカルパック(歯周包帯)を装着し、創面を保護します。サージカルパックは術後の出血や疼痛を軽減し、感染予防にも寄与します。


装着期間は通常7日から10日程度です。


歯肉切除術における切開角度と深さの調整技術

歯肉切除術で最も技術が問われるのが切開角度と深さの調整です。この2つの要素が適切でないと、術後の歯肉形態が不良となり、審美的・機能的な問題を引き起こします。


外斜切開の角度は歯軸に対して30度から45度が標準とされていますが、部位や歯肉の厚みによって微調整が必要です。前歯部では審美性を重視し45度に近い角度で、臼歯部では機能性を優先しやや浅めの角度を選択することもあります。角度が急すぎると歯根が過度に露出し知覚過敏の原因となり、浅すぎると歯周ポケットの除去が不十分となります。


切開の深さはポケット底の印記を正確に行うことで決定されます。ポケットマーカーで印記した出血点に向かって切開を進めますが、骨頂から最低でも2mm以上の結合組織を残すことが重要です。これは生物学的幅径(バイオロジカルウィズ)を確保するためで、この距離が不足すると骨吸収が進行し、かえって歯周状態が悪化する可能性があります。


隣接面の処理も重要なポイントです。歯間乳頭部では歯肉の血流が豊富で治癒が良好なため、やや保守的な切除にとどめることが推奨されます。過度な切除は審美障害や食片圧入の原因となるため注意が必要です。


メスの持ち方と動かし方も仕上がりに影響します。ペングリップで軽く持ち、手首の回転を利用して滑らかに切開します。力を入れすぎると組織損傷が大きくなり、治癒が遅延します。


歯肉切除術後の管理とケアの実践

術後管理の質が歯肉切除術の最終的な成功を左右します。適切なケアにより感染を予防し、良好な治癒と長期的な予後を確保できるのです。


術直後は止血確認が最優先です。圧迫止血で対応しますが、出血が持続する場合はヘムコンデンタルドレッシングなどの止血材を使用します。ヘムコンはキトサン由来の止血材で、出血面に貼付後約2分で強固な血栓を形成し確実な止血が得られます。サージカルパックを装着する場合は、装着前に十分な止血を確認することが必須です。


患者への術後指導も重要な要素です。術当日は激しい運動、入浴、飲酒を避けるよう指示します。食事は麻酔が完全に切れてから摂取し、術後2〜3日間は柔らかく刺激の少ない食品を選択してもらいます。具体的にはおかゆ、スープ、豆腐、ヨーグルトなどです。熱い飲食物や香辛料の多い食品は創面を刺激するため避けます。


口腔清掃は術後の感染予防に直結します。術部は柔らかい歯ブラシで軽いタッチでブラッシングし、強い力を加えないよう指導します。サージカルパック装着部位は歯ブラシを当てず、洗口剤で清潔に保ちます。クロルヘキシジン含有洗口剤が推奨され、1日2〜3回使用することで細菌感染のリスクを大幅に低減できます。


術後2〜3日は疼痛のピークとなるため、処方された鎮痛剤を適切に服用してもらいます。痛みを我慢すると食事摂取量が減少し、治癒遅延につながります。また腫れは2〜3日続くことがあり、これは正常な反応です。しかし腫れが1週間以上続く、または増悪する場合は感染の可能性があるため再診が必要です。


抜糸は通常7〜10日後に行います。サージカルパックを装着している場合は同時に除去します。抜糸後は通常のブラッシングを再開できますが、術部は1〜2週間は丁寧なケアを継続します。


術後2週間から6週間で創部は完全に治癒し、最終的な歯肉形態が確定します。この期間の定期チェックで治癒状態を確認し、必要に応じて追加指導を行います。




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