ファーケーションプローブ使用部位と正確な根分岐部検査の手順

ファーケーションプローブの使用部位を正しく理解していますか?上顎・下顎・小臼歯それぞれの挿入方向から、Glickman・Lindhe分類の使い分けまで、臨床で即使える知識をまとめました。見落としていた部位はありませんか?

ファーケーションプローブの使用部位と根分岐部検査の手順

上顎大臼歯の根分岐部は、頬側からだけでは見落としが起き、3方向すべての検査を怠ると根分岐部病変の見逃しにつながります。


この記事のポイント
🦷
使用部位は歯種によって異なる

下顎大臼歯は頬・舌の2方向、上顎大臼歯は3方向、上顎小臼歯は近遠心2方向と、歯種ごとに挿入方向が決まっています。

📊
根分岐部病変を見逃すと歯の喪失リスクが跳ね上がる

3度の根分岐部病変が残存すると、歯の喪失リスクは約4.79倍になるという報告があります。早期発見が歯の寿命を大きく左右します。

🔍
2種類のプローブの形状と使い分け

カットニー型(半円状)とネーバース型(牛角状・三次元湾曲)の違いを理解し、部位と目的に応じて選ぶことが正確な検査の第一歩です。


ファーケーションプローブとは何か:種類と形状の基本


ファーケーションプローブとは、複根歯(根が2本以上に分かれている歯)の根分岐部病変を診査するために設計された専用のプローブです。通常の歯周プローブ歯周ポケットの「垂直的な深さ」を測るのに対して、ファーケーションプローブは根分岐部への「水平的な進入度」を確認するために使われます。用途がまったく異なる点が重要です。


このプローブの作用部は湾曲した形状になっており、根が分かれている部分の複雑な形態に沿って挿入しやすいよう設計されています。先端が曲がっているため、歯肉の下の根分岐部へ無理なくアプローチできます。


形状は主に2種類に分類されます。


- カットニー型プローブ:先端が半円状に湾曲しているタイプ。比較的シンプルな形状で、初学者にも扱いやすいとされています。


- ネーバース型プローブ:牛角状に三次元的に湾曲しているタイプ。上顎大臼歯の口蓋側など、複雑な角度が求められる部位への到達性が高く評価されています。


臨床現場では、YDM製の「分岐部用プローブ」やGC製の「アメリカンイーグルインスツルメント プローブ N2B」などが代表的な製品として使われています。形状の違いを理解したうえで、部位ごとに適切な種類を選ぶことが精度の高い検査につながります。これが基本です。


ファーケーションプローブはSRP(スケーリングルートプレーニング)の前後どちらでも使用価値があります。SRP前には病変の範囲と根分岐の位置を把握し、SRP後には処置による改善度を評価するという、2段階の役割を担っています。


出典:OralStudio歯科辞書「ファーケーションプローブ」- プローブの種類(カットニー型・ネーバース型)と作用部の特徴について詳しく解説されています。


ファーケーションプローブの使用部位:下顎大臼歯の検査方法

下顎大臼歯(特に下顎第一大臼歯・下顎第二大臼歯)は、2根(近心根・遠心根)を持つ代表的な複根歯です。根分岐部は歯の長軸方向に向かって、頬側と舌側の計2ヵ所に存在しています。そのため、ファーケーションプローブの挿入も頬側中央部と舌側中央部の2方向から行うのが原則です。


頬側からアプローチする際は、歯の頬側中央の歯周ポケット内にプローブを挿入し、根分岐部に向けてプローブの先端を水平方向に進めていきます。舌側も同様に、舌側中央部からアプローチします。この2方向の検査結果を照合することで、根分岐部病変の水平的な進行度を正しく評価できます。


注意が必要なのは、下顎臼歯部のコンタクト直下へのアプローチです。プローブを歯軸に対して垂直に真っ直ぐ挿入しようとすると、コンタクトポイントに阻まれて根分岐部まで到達できないことがあります。この場合は、プローブをやや傾け、斜めのアングルでアプローチする工夫が必要です。


また、舌圧が強い患者では下顎7番(第二大臼歯)の舌側へのアプローチが難しくなる場合があります。臨床経験から有効とされているのは、ミラーを「強く押しつけて排除しようとするのではなく、軽く添える程度に置く」方法です。ミラーを軽く入れると、ミラー越しに術野への採光が確保でき、かつ舌の反発が起きにくくなるというメリットがあります。強く排除しようとすると舌が反発して視野が確保しにくくなります。














歯種 根の本数 挿入方向
下顎大臼歯 2根(近心根・遠心根) 頬側・舌側の2方向


参考:Dental Life Design「プロービングの当て方や動かし方を詳しく解説」- 下顎臼歯部でのコンタクト直下へのアプローチ方法やミラーの使い方について詳しく解説されています。


ファーケーションプローブの使用部位:上顎大臼歯の3方向アプローチ

上顎大臼歯(上顎第一大臼歯・第二大臼歯)は、近心頬側根・遠心頬側根・口蓋根の3根構造が基本です。これは下顎大臼歯の2根とは構造が根本的に異なります。根分岐部も3ヵ所(頬側・口蓋側近心・口蓋側遠心)に存在するため、ファーケーションプローブの挿入も3方向から行う必要があります。つまり上顎が条件です。


頬側からは、頬側中央部にプローブを当て、近心頬側根と遠心頬側根の間の分岐部へアプローチします。頬側の2根の間が対象なので、プローブは頬側中央あたりに沿わせるようにします。


口蓋側近心の根分岐部へは、近心口蓋側(口蓋側の近心寄り)からアプローチします。口蓋側遠心の根分岐部は、遠心部のちょうど中央付近からプローブを沿わせるように挿入します。この3方向を確実に検査しないと、見落としが発生します。


多くの歯科従事者が見落としやすいのが、口蓋側の2つの根分岐部への検査です。頬側だけを確認して「問題なし」と判断してしまうと、口蓋側で進行中の根分岐部病変を発見できない危険があります。これは見逃しになりません。


上顎大臼歯の根分岐部病変は、X線写真では平面的にしか確認できず、口蓋側の病変は特に写真上で読み取りにくい傾向があります。そのため、ファーケーションプローブによる触診的な診査とX線検査を必ず組み合わせることが、正確な評価には欠かせません。














歯種 根の本数 挿入方向
上顎大臼歯 3根(近心頬側根・遠心頬側根・口蓋根) 頬側・口蓋側近心・口蓋側遠心の3方向


参考:GC「大臼歯の健康状態の把握は、正確な検査から」- 上顎大臼歯の根分岐部3方向へのプローブ挿入について図解を交えて詳しく説明されています。


ファーケーションプローブの使用部位:見落とされやすい上顎第一小臼歯

ファーケーションプローブが必要な部位として、多くの歯科従事者が見落としがちなのが上顎第一小臼歯です。「小臼歯には根分岐部がない」と思い込んでいる方もいますが、上顎第一小臼歯は約50%が2根(頬側根・口蓋根)を持っており、根分岐部病変が発生します。意外ですね。


上顎第一小臼歯の根分岐部は、近心面遠心面の2方向からプローブを挿入して検査します。ここが上顎大臼歯(頬・口蓋近心・口蓋遠心の3方向)や下顎大臼歯(頬・舌の2方向)とは挿入方向の特性が異なる点です。


重要な臨床データとして、上顎第一小臼歯のルートトランク(歯肉から根の分岐部までの長さ)の平均値は約7mmとされています。これは奥歯と比較してかなり長く、歯周ポケットが7mm以上に達している場合は根分岐部病変の存在を強く疑う必要があります。ポケット深さを確認したら根分岐部も必ずチェックが条件です。


一方で上顎第二小臼歯は1根のことが多く、根分岐部病変は基本的に対象外となります。歯科衛生士国家試験でも「ファーケーションプローブを使用する部位はどれか」という問題では、下顎第一大臼歯が正答例として頻出します。ただし臨床では、大臼歯に限らず上顎第一小臼歯も対象になることを必ず覚えておきましょう。



















歯種 備考 挿入方向
上顎第一小臼歯 約50%が2根。ルートトランク平均約7mm 近心・遠心の2方向
上顎第二小臼歯 1根が多い(基本的に対象外)


参考:クインテッセンス出版「歯科臨床検査事典 根分岐部診査」- 上顎小臼歯を含む各歯種における根分岐部用探針の挿入方向が詳しく記載されています。


根分岐部病変の分類と、ファーケーションプローブの読み取り方

ファーケーションプローブで根分岐部を検査した後は、その結果をどの分類に基づいて記録・評価するかが重要です。現在の臨床で広く使われている分類は主に2つあります。


Lindhe&Nymanの分類(水平的な骨吸収の程度で評価)は以下の通りです。


- 1度:根分岐部へのプローブ進入が歯の幅の1/3以内
- 2度:歯の幅の1/3以上進入するが、貫通はしない
- 3度:根分岐部を貫通する(through-and-through)


Glickmanの分類(根分岐部の露出程度で評価)は以下の通りです。


- 1級:歯根膜に炎症あるが、肉眼・X線上で骨欠損なし
- 2級:根分岐部の一部で骨破壊あるが、貫通しない
- 3級:骨が頬舌的あるいは近遠心的に貫通できる状態、ただし歯肉で覆われている
- 4級:根分岐部が口腔内に露出し、プローブが何の抵抗もなく貫通する


2つの分類は対応関係があり、Lindheの1度はGlickmanの1・2級に近く、Lindheの2度はGlickmanの2・3級、Lindheの3度はGlickmanの4級に対応します。これだけ覚えておけばOKです。


この分類の記録が臨床的に重要な理由は、歯の予後と直結するためです。根分岐部病変の2度が残存した場合、歯の喪失リスクは約2.80倍に上昇し、3度では約4.79倍にまで増加するという報告があります(仙台市宮城インプラントセンター等の臨床データより)。東京ドーム2~5棟分のスケールで考えると、病変の重症度の差がいかに大きいかが伝わります。正確な分類記録は、治療方針の選択と患者説明の両方に欠かせません。


参考:FUMI's Dental Office「診査 - 根分岐部病変」- LindheとNymanの分類・Glickmanの分類の概要と、2つの分類の対応関係について分かりやすく解説されています。


参考:日本歯周病学会「歯周治療のガイドライン2022」- 根分岐部病変の分類方法について学術的な基準と診査方法が記載されており、臨床基準として参考になります。




Cata-MEDICA デンタルプローブ 歯石取り 自宅 での 歯石 ヤニとり 除去 ステンレス