「初心者向けの手術」のつもりで進めると、顔面神経を損傷して口角が永久に下がる後遺症が残ります。
皮膚切開の位置は、顔面神経下顎縁枝の走行保護において最初の関門です。下顎下縁から約2cm離した位置に横切開を入れるのが基本とされています。 dentaljuku(https://www.dentaljuku.net/oral-cancer/neck-dissection_basic)
広頸筋直下の層を意識して挙上することで、神経枝を深頸筋膜浅葉とともに上方に避けることができます。層の選択が後の操作すべてを左右します。
確認方法としては2つのアプローチがあります。
| 方法 | 概要 | メリット |
|---|---|---|
| 同定法 | 神経刺激器を使用して肉眼的に枝を追跡・剖出 | 確実に位置を把握できる |
| 非同定法 | 深頸筋膜浅葉とともに顎下腺被膜を一括挙上し神経を層ごと保護 | 神経を直接触れずに済む |
顔面動静脈を結紮・切断して顎下腺の浅部を下顎下縁から剥離します。これが摘出操作の中核です。 dentaljuku(https://www.dentaljuku.net/oral-cancer/neck-dissection_basic)
本幹を温存できると、顔面の血流が維持されるだけでなく、将来的に微小血管吻合や動注療法が必要になった際にも選択肢が広がります。これは使えそうです。
癒着が強い症例では、無理に一気に剥離しようとすると舌神経を引きちぎるリスクがあります。神経刺激器を併用した慎重な操作が原則です。
摘出後はドレーンを留置して閉創します。ドレーンは通常、術後1〜2日で抜去となりますが、出血量・滲出液の性状を観察しながら判断します。 nms.ac(https://www.nms.ac.jp/var/rev0/0055/5392/1248817440.pdf)
術後に確認すべき合併症のチェックリストを整理します。
| 合併症 | 原因構造 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 口角下垂・表情筋麻痺 | 顔面神経下顎縁枝損傷 | 口角の左右差を目視確認 |
| 舌の麻痺・感覚異常 | 舌神経損傷 | 舌の動き・感覚の左右差 |
| 舌運動障害 | 舌下神経損傷 | 舌の挺出・偏位を確認 |
| 術後出血・頸部腫脹 | 顔面動静脈の結紮不全 | ドレーン排液量・頸部視診 |
抗生剤は術後5日間の内服が標準的です。 痛みに対しては鎮痛剤の内服で対応し、抗凝固剤を服用中の患者では創部確認後に医師の指示で再開します。 med.miyazaki-u.ac(http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/clinicalpathway/files/2020/08/d142ac2f4e049409e952fbc3f7208892.pdf)
歯科口腔外科との連携においては、ワルトン管切断後に唾液うっ滞が口腔内症状(口腔底腫脹など)として現れる可能性も念頭に置くことが大切です。
手術解剖の詳細は以下の権威ある資料が参考になります。
▶ 顎下腺摘出術の臨床解剖に基づく安全・確実な手技(日本口腔咽頭科学会誌)
▶ 頸部郭清術における顎下部郭清の手順(新谷悟の歯科口腔外科塾)
https://www.dentaljuku.net/oral-cancer/neck-dissection_basic
▶ 顎下腺移行部唾石に対する口内法摘出術の検討(J-Stage)