旧JISの図面をそのまま使うと、スポット溶接の個数を誤読して加工ミスが起きます。
スポット溶接の記号は、2010年および2016年の改正を経て大幅に変わりました。これが意外と現場に浸透していないのが実情です。
旧JISでは、スポット溶接を示す基本記号として「*(米印)」が使われていました。しかし、新JIS(JIS Z 3021:2016)では国際規格ISO 2553:2013のSystem Bに整合させる形で、「○(丸印)」に変更されています。この変更は単なるデザイン上の話ではありません。
なぜ変更が必要だったのでしょうか?
ISO 2553が2013年に第4版として改訂された際、これまで各国がバラバラに使っていた規格を「System A(欧州系)」と「System B(環太平洋系)」の2系統に統一する方針がとられました。日本はSystem Bをベースにしつつ、技術的内容を一部変更した形でJISに落とし込んでいます。これにより、国際的な製造委託や図面共有の際にも、同じ記号体系で意思疎通が可能になったわけです。
歯科医療機器の製造・発注においても、国内外の加工業者とやりとりする場面は少なくありません。特に歯科用スポット溶接機(スポットウェルダー)を使用するクラスプ製作やバンド加工の場面では、図面の溶接記号が正確に伝わるかどうかが品質に直結します。
つまり旧JISということですね。
旧規格図面が社内に残っている場合、米印(*)と丸印(○)が混在していると、接合点数の誤認が生じるリスクが高まります。改訂の背景を理解しておくことは、現場での誤読を防ぐ第一歩です。
JIS Z 3021:2016 溶接記号の規格全文(kikakurui.com)- スポット溶接の基本記号番号12・13の定義と寸法表記ルールを参照できます
溶接記号全体の構造を把握していないと、スポット溶接の指示を正しく読み取ることはできません。これは基本です。
溶接記号は「矢(リーダ線)」「基線(水平線)」「基本記号」「寸法」「補助記号」「尾(テール)」の要素で構成されます。基線の下側に記号を書いた場合は矢が指す側(矢側)の溶接を意味し、基線の上側に書いた場合は反対側の溶接を意味します。この原則はすみ肉溶接や開先溶接と共通です。
スポット溶接の場合は少し特殊で、溶接箇所を示す位置に基線の中心点に対して記号を置きます。
新JISにおけるスポット溶接(抵抗スポット溶接)の基本記号は「○(丸印)」です。これが基線に接して配置されます。そして重要なのが、記号の左側に書かれる寸法情報です。
| 記号の位置 | 書く内容 | 意味 |
|---|---|---|
| 記号の左側(S) | ナゲット径または強さ | 溶接部の断面寸法(例:d=6なら直径6mm) |
| 記号の右側 | n(個数)・P(ピッチ) | 断続する点数とその中心間距離 |
| 記号の尾 | 溶接方法の補足など | 特定溶接方法の指示が必要な場合のみ |
たとえば、ナゲット径6mm・ピッチ50mm・3点溶接の場合、記号左に「d6」、右に「3(50)」と書き、○記号を添えた形で表現します。これが標準的な書き方です。
意外ですね。
旧JISでは「n(点数)」を括弧付きで記号の左側に書くケースもありましたが、新JISではnとPはいずれも記号の右側に位置するよう整理されました。旧規格に慣れた方が新規格図面を読む際、この位置の違いで数値の意味を取り違えやすい点に注意が必要です。
溶接記号の見方・書き方・種類(ミスミ meviy)- スポット溶接の記号例と実際の図面を写真入りで解説しています
記号が読めても、寸法の書き方が曖昧だと加工指示として機能しません。寸法は正確さが条件です。
スポット溶接で最も重要な寸法は「ナゲット径(d)」です。ナゲットとは、2枚の板が溶け合って固まった部分を指し、このナゲットの直径が溶接強度を決定する核心的な数値です。一般的に板厚(t)に対して、ナゲット径の目安は「4√t〜6√t mm」程度とされています。
たとえば板厚1mmの薄板であれば、ナゲット径は4〜6mm程度が目安です。1mm板を10枚並べると1cm、ちょうど消しゴムの短辺ほどの薄さの金属板です。歯科機器の金属部品では0.5〜2mm程度の薄板を扱うことが多く、この範囲内でナゲット径を管理することになります。
図面上での寸法指示は以下の形式で記載します。
これは使えそうです。
ただし、スポット径やピッチの記載がない場合は「一般的な要領で施工」と解釈されます。品質基準が明確に求められる場面では、必ずナゲット径を数値で明示することが重要です。歯科機器向けの加工図面では、要求品質を満たすために溶接点数と位置を省略せずに記入する習慣をつけましょう。
また、電極のフラットな面が矢側か反対側かを区別する必要がある場合は、記号の配置位置で表現します。基線の下側に記号を置けば矢側にフラット面を使う指示、上側に置けば反対側という意味になります。
同じ「スポット溶接」という名称でも、JIS規格では記号が異なる2種類が存在します。これを知らないと、図面の読み違えが起きる可能性があります。
新JIS(JIS Z 3021:2016)では、スポット溶接に関して2つの基本記号を設けています。
| 種類 | 記号(新JIS) | 主な用途 |
|---|---|---|
| 抵抗スポット溶接 | ○(丸印) | 電極で挟み通電する一般的なスポット溶接 |
| 溶融スポット溶接 | ●(黒塗り丸) | レーザー・TIGなどによる溶融型の点接合 |
歯科技工の現場で日常的に使われるのは「抵抗スポット溶接」です。電極(チップ)で金属を挟み、電流を流してジュール熱で接合する方式で、歯科技工用スポットウェルダーがまさにこの仕組みで動作しています。
一方の「溶融スポット溶接」は、レーザーやTIG溶接を点状に施した場合に使う記号です。歯科分野でもレーザー溶接機が普及しており、主にCAD/CAM由来の金属フレームやインプラント部品の補修・連結に活用されます。
厳しいところですね。
この2つは記号が「○」と「●」で似ているにもかかわらず、まったく異なる溶接プロセスを意味します。特に古い図面と新しい図面が混在する環境では、どちらの規格に基づくかを確認してから読み始めることが不可欠です。
溶接記号におけるスポット溶接の完全ガイド(stainless-weldingworks.com)- 抵抗スポット溶接・溶融スポット溶接の違いと使用例を詳しく解説
旧JISの記号が残った図面が今も現場に存在します。これが品質トラブルの温床になっています。
JIS Z 3021は1955年に制定されて以来、8回の改正を経ています。特に2010年版と2016年版で記号の体系が大きく変わりました。旧JISではスポット溶接の記号として「米印(*)」が使われており、線の中心に向かって4方向に線が伸びる形状でした。これに対し、現行の新JIS記号は「○(丸印)」です。
| 比較項目 | 旧JIS(〜2010年版以前) | 新JIS(2016年版) |
|---|---|---|
| スポット溶接記号 | *(米印) | ○(丸印) |
| 点数の記載位置 | 記号の左側に括弧付きで記載 | 記号の右側に記載 |
| ピッチ表記 | ピッチ記載に関する表現が曖昧 | n(P)形式で右側に統一 |
| ISO整合性 | 低い(国内独自基準が多い) | 高い(ISO 2553:2013 System B準拠) |
問題になるのは、社内に旧JISで書かれた図面と新JIS図面が混在しているケースです。たとえば「*(3)」と書いてあれば旧JISで「3点のスポット溶接」ですが、新JISの感覚で読んだ場合に「○の記号の左に3?」と読み方を混乱することがあります。
旧JISと新JISの判別に注意すれば大丈夫です。
社内の図面管理において重要なのは、図面に使用規格を明記することです。図面の表題欄や注記欄に「JIS Z 3021:2016に準拠」などを明示する運用が推奨されます。特に外部業者への発注図面では、規格の記載がないと担当者の世代によって解釈が変わるリスクがあります。
CADソフト(例:SOLIDWORKS、AutoCAD Mechanicalなど)では、2022年版以降に新旧両JIS規格の溶接記号ライブラリが整備されており、規格選択機能を活用することで誤記入を防ぐことができます。
歯科医療機器の図面を正しく読み書きするためには、溶接記号の知識は「あると便利」ではなく必須のスキルです。
歯科分野では、スポット溶接を使う場面が明確に存在します。代表的なものとして、部分床義歯(パーシャルデンチャー)のクラスプ製作、矯正用バンドや保定装置の連結、金属冠フレームの補修、インプラント用アバットメントの接合などが挙げられます。
これらの部品は概して板厚0.5〜1.5mmの薄板金属を使用しており、スポット溶接の「4大条件」すなわち①電流②加圧③通電時間④電極(チップ)の管理が品質を左右します。ナゲット径が小さすぎると接合強度が不足し、逆に過大な電流を流すと表面くぼみや素材焼けが生じます。
歯科技工用スポットウェルダーを使う場合、機器の設定(電流値・通電時間)と図面上のナゲット径の指示は連動させる必要があります。たとえばナゲット径4mmを目標とする場合、電流と通電時間を「I=k×t^0.5(Iは電流、tは板厚、kは係数)」の計算式に基づいて設定する方法が実務では広く使われています。
結論は図面指示と機器設定の一致が原則です。
また、歯科技工所や歯科医院で外部業者に加工を依頼する場合、発行する図面には以下の情報を明記することで、加工ミスのリスクを大幅に減らせます。
歯科分野で使用されるコバルトクロム合金やチタンは、一般的な軟鋼板とは溶接条件が大きく異なります。チタンは電気抵抗が比較的高く通電による発熱が起きやすい一方、酸化しやすいため不活性ガス雰囲気下での溶接が必要な場合があります。図面上の記号指示に加えて、材質と溶接プロセスを組み合わせた指示設計が、歯科機器の品質確保に直結します。
JIS規格にもとづく溶接記号一覧|図面での読み方と実務での使い方(protrude.com)- 図面確認から施工管理まで一連のプロセスを体系的に解説しています

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