エーカースクラスプを「二腕鉤」と呼ぶあなた、患者に説明する際に混乱を招いています。
部分床義歯を口腔内で安定させるための維持装置が「クラスプ(clasp)」です。残存歯(支台歯)に引っかけて固定する役割を担い、義歯が外れたりズレたりしないようサポートします。
日本語では「鉤(こう)」とも呼ばれますが、臨床現場では英語由来の「クラスプ」が一般的です。保険請求書類では「鋳造鉤」「線鉤」といった用語も使用されるため、複数の名称を正確に理解しておく必要があります。
クラスプは単なる「バネ」ではありません。維持・支持・把持という3つの機能を果たす精密な装置で、各部位に専門的な名称が付けられています。例えば、歯の咬合面に設置されるのが「レスト(rest)」、歯を抱え込む腕部分が「鉤腕(こうわん)」です。
これらの名称を正確に使い分けることで、歯科技工士との連携がスムーズになります。また患者説明でも、「金属のバネ」ではなく「クラスプという維持装置」と表現することで、より専門的で信頼感のある説明が可能になるでしょう。
クラスプの名称は階層的に整理されています。最上位の分類は、材質による「メタルクラスプ」と「ノンメタルクラスプ(レジンクラスプ)」の区分です。
メタルクラスプはさらに製造方法によって3種類に分けられます。鋳造によって作製する「キャストクラスプ(鋳造鉤)」、既成のワイヤーを屈曲して作る「ワイヤークラスプ(線鉤)」、そして両者を組み合わせた「コンビネーションクラスプ」です。
保険請求では点数が異なります。鋳造鉤は240点、線鉤は80点、コンビネーション鉤は246点です。
正確な名称使用が重要になりますね。
形状による分類も重要です。鉤腕が1本の「一腕鉤(単純鉤)」と、鉤腕が2本の「二腕鉤」に大別されます。ただし「二腕鉤」は一般名称であり、具体的には「エーカースクラスプ」などの固有名称で呼ぶのが適切です。エーカースクラスプは最もスタンダードな種類で、臼歯部の大部分に使用されています。
ノンメタルクラスプは素材名で呼ばれることが多く、ポリアミド系の「バルプラスト」、ポリエステル系の「エステショット」、ポリカーボネイト系の「ジェット・カーボ」など、商品名がそのまま分類名になっているケースもあります。
歯科医師国家試験では、これらの分類体系を正確に理解していることが問われます。臨床では保険適用可否と点数を即座に判断できるよう、名称と分類を紐づけて覚えておくべきです。
クラスプを構成する各部位には、それぞれ専門的な名称があります。咬合力を支台歯に伝達して義歯の沈下を防ぐ部分が「レスト(rest)」で、日本語では「鉤床(こうしょう)」とも呼ばれます。支台歯に設置するための窪みは「レストシート」です。
義歯の維持を担う鉤腕部分は、機能によって2つの名称を持ちます。アンダーカットに入り込んで義歯の脱離を防ぐのが「維持腕(リテンティブアーム:retentive arm)」、反対側から歯を把持して安定させるのが「拮抗腕(レシプロカルアーム:reciprocal arm)」または「把持腕」です。この二つの腕が協調して働くことで、義歯の安定性が実現されます。
維持腕の先端、最もアンダーカットに入り込む部分は「鉤尖(こうせん)」と呼ばれます。この鉤尖の位置と深さが、クラスプの維持力を左右する重要なポイントです。適切なアンダーカット量は通常0.25mm程度とされており、これより深いと着脱が困難になり、浅いと維持力が不足します。
鉤腕全体を支える本体部分は「鉤体(こうたい)」と呼ばれます。鉤体は剛性を持たせるため太く設計され、支持と把持の機能を担います。一方、維持腕は適度な弾性が必要なため、鉤体より細く設計されるのが一般的です。
これらの部位名称は、歯科技工士への作製指示や、クラスプ調整時の記録に必須の用語です。例えば「左上6番エーカースの頬側維持腕を0.5mm短縮」といった具体的な指示が可能になります。正確な部位名称を使うことで、技工指示書の精度が格段に向上するでしょう。
英語表記も併せて覚えておくと、海外文献の理解や学会発表で役立ちます。国際的なコミュニケーションでは、日本語名称よりも英語表記の方が通じやすい場合も多いのです。
臨床で頻繁に使用されるクラスプには、それぞれ固有の名称があります。最もスタンダードなのが「エーカースクラスプ(Akers clasp)」で、保険請求書類では「レスト付二腕鉤」と記載します。1本の歯に対して頬側と舌側から2本の鉤腕が走行する構造です。
エーカースクラスプは最も汎用性が高く、臼歯部の大部分に適用できます。ファーゾーン(歯冠の最大豊隆部より歯頚側)にアンダーカットがある場合に最適です。維持・把持・支持の3要素を効率よく発揮できるため、部分床義歯の基本設計として選ばれることが多いでしょう。
エーカースクラスプを2本の歯にかけるタイプが「ダブルエーカースクラスプ」または「双子鉤(そうしこう)」です。保険点数は双子鉤260点、二腕鉤240点と異なるため、レセプト作成時には正確な名称が必要になります。1つの金具で2本の歯にかかるため固定力が高まり、歯の負担も分散されますが、歯間離開のリスクがあるため適応症例の選択が重要です。
遊離端欠損に適した設計が「RPIクラスプ」です。R(mesial Rest:近心レスト)、P(Proximal plate:隣接面板)、I(I-bar:Iバー)の3要素から構成され、それぞれの頭文字を取った名称となっています。遊離端義歯では最後方支台歯への負担を軽減できる優れた設計です。近心レストによって義歯の回転沈下を防ぎ、プロキシマルプレートがガイドプレーンに適合することで義歯の着脱方向を規定します。
歯肉側から立ち上がる構造の「ローチクラスプ(Roach clasp)」は、鉤尖の形状によってT型・I型・L型に細分されます。I型を単独で「Iバー」と呼ぶこともあり、RPIクラスプのI要素として使用されます。鉤腕の大部分が歯冠と接触しないため、自浄性や審美性に優れていると考えられています。前歯部に近い小臼歯への適応が検討されることが多いでしょう。
上顎小臼歯に適用される「バックアクションクラスプ」は、鉤腕が前方から後方に向かって走行する特殊な設計です。「リバースバックアクションクラスプ」は下顎小臼歯に用いられ、バックアクションとは逆向きの走行をします。中央孤立歯に使用される「ハーフアンドハーフクラスプ」、最後方孤立歯を360度囲む「リングクラスプ」など、適応部位や欠損様式によって15種類以上の名称が存在します。
国家試験対策では、頻用されるエーカースクラスプとバークラスプの代表例であるRPIクラスプの細かい特徴を優先的に覚えるのが効率的です。その他のクラスプは、基本的な構造と適応部位を押さえておけば十分でしょう。
保険診療でクラスプを使用する際、レセプト記載では特定の用語を使う必要があります。「キャストクラスプ」は「鋳造鉤」、「ワイヤークラスプ」は「線鉤」と記載するのが正式です。これらの名称を混同すると、審査で指摘される可能性があります。
鋳造鉤は使用する歯の種類によって算定が変わります。大臼歯に使用する場合と小臼歯に使用する場合で材料料が異なるため、部位を明確に記載しなければなりません。双子鉤の場合も同様に、大・小臼歯の区分があります。例えば、上顎6番と7番に双子鉤を使用する場合は「大臼歯用」として算定します。
コンビネーション鉤は246点の算定ですが、実はレストのみをキャストした場合でもこの点数が認められています。頬側にワイヤークラスプを走行させ、舌側にキャストしたレストと拮抗腕を設計する形態が一般的です。保険治療で審美性を考慮する際に非常に使い勝手の良い選択肢となります。維持腕をワイヤーにすることで、金属の露出を最小限に抑えられるからです。
ノンクラスプデンチャーは審美性を重視した設計のため、健康保険の適用対象外です。患者説明では「ノンクラスプ」という名称から「クラスプがない」と誤解されがちですが、正確には「ノンメタルクラスプ」つまり金属以外の素材で作られたクラスプという意味です。この点を明確に説明しないと、「金具がないから快適」という誤った期待を持たせてしまい、後日トラブルの原因になります。
レセプト審査では、設計と名称の整合性がチェックされます。例えば遊離端欠損でないのにRPIクラスプを算定していると、査定される可能性があるでしょう。RPIクラスプは遊離端欠損専用の設計であるため、中間欠損や孤立歯欠損には適用できません。適応症例と名称を正確に紐づけた記載が必要です。
保険と自費の違いを患者に説明する際も、名称の正確な使用が信頼につながります。「保険では鋳造鉤を使いますが、自費ではノンメタルクラスプという審美的な選択肢もあります」といった具体的な表現が有効です。
日本補綴歯科学会の専門用語集PDFには、各クラスプの正式な定義と名称が掲載されています。レセプト作成や技工指示書作成の際に参照すると、用語の統一に役立ちます。保険請求で迷った際の確認資料として、クリニックに常備しておくことをおすすめします。

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