ノンクラスプデンチャー費用1本から相場と種類選び方

ノンクラスプデンチャー1本の費用は10万円から30万円程度が相場ですが、素材や製作技術により価格差が大きく変動します。保険適用外のため医療費控除を活用できますが、寿命や修理費用も考慮が必要です。患者への適切な説明ポイントを知っていますか?

ノンクラスプデンチャー費用1本から相場と選択基準

保険適用なら2年以内の修理費は全額自己負担になります。


この記事の要点まとめ
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1本の費用相場は10万円~30万円

欠損歯の本数や口腔内の状態、使用する素材により変動。医療費控除の対象になるため、確定申告で一部還付される可能性があります。

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寿命は3年~5年程度

素材の劣化により保険適用の入れ歯より寿命が短い。定期メンテナンスで5年以上使用できるケースもありますが、修理が困難な点に注意が必要です。

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素材により修理可否が異なる

20種類以上の素材があり、修理可能な素材と不可能な素材が存在。他院での修理は素材判別が困難なため、製作した医院での定期管理が推奨されます。


ノンクラスプデンチャー1本の費用相場と価格変動要因


ノンクラスプデンチャー1本あたりの費用は、一般的に10万円から30万円程度が相場となっています。この価格帯は患者の口腔内の状態や欠損部位、使用する素材の種類によって大きく変動します。


費用が変動する主な要因として、まず欠損歯の位置が挙げられます。前歯部分の場合は審美性を重視した設計が必要になるため、10万円から18万円程度が目安です。一方、奥歯1本の場合は咀嚼機能の回復が主目的となり、15万円前後が相場となります。


使用する素材も費用に大きく影響します。ポリアミド系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、アクリル系、ポリプロピレン系など、20種類以上の素材が存在し、それぞれ耐久性や審美性、修理の可否が異なります。バルプラストなど耐久性の高い素材を選択すると、初期費用は高くなるものの、10年以上使用できるケースもあり、長期的なコストパフォーマンスは優れています。


歯科医院によっても価格設定は異なります。都市部の医院では25万円から30万円程度、地方では15万円程度と地域差も見られます。極端に安価な4万円台のノンクラスプデンチャーも存在しますが、使用素材の品質や技術力に不安が残るため、慎重な判断が必要です。


シリコーン素材を追加する場合は、さらに5万円程度の追加費用がかかり、15万円から20万円が相場になります。シリコーンを追加することで、フィット感と吸着性が向上し、入れ歯のズレを効果的に防ぐことができます。


ノンクラスプデンチャーの保険適用状況と医療費控除活用法

ノンクラスプデンチャーは2026年2月現在、保険適用外の自費診療に分類されています。つまり全額自己負担となるため、保険適用の入れ歯(5,000円から15,000円程度)と比較すると、費用負担は大きくなります。


ただし、保険適用外であっても医療費控除の対象になる可能性が高い点は見逃せません。医療費控除とは、年間の医療費が10万円を超えた場合、所得税の一部が還付される制度です。ノンクラスプデンチャーは「機能面の回復を目的とした治療」に該当するため、確定申告で申請することで控除を受けられます。


具体的な還付額の計算方法として、例えば年収400万円の方が20万円のノンクラスプデンチャーを作製した場合を考えてみましょう。医療費控除額は「支払った医療費20万円-10万円=10万円」となり、所得税率が10%なら約1万円が還付されます。年収600万円で所得税率20%なら約2万円の還付です。


医療費控除の申請には、歯科医院発行の領収書と確定申告書が必要です。領収書は必ず保管し、治療目的であることを明示した診断書があれば、より確実に控除を受けられます。ただし、審美目的のみの治療と判断された場合は控除対象外になる可能性があるため、治療計画書で機能回復が主目的であることを明確にしておくことが重要です。


保険適用の動向としては、2021年9月よりマグネットデンチャー(磁性アタッチメントを使用する入れ歯)が保険適用になった実績があります。ノンクラスプデンチャーも将来的に保険適用になる可能性はゼロではありませんが、現時点では未定です。


患者への説明では、初期費用は高額だが医療費控除で一部還付される点、長期使用できる素材を選べば1年あたりのコストは抑えられる点を伝えると、費用面での納得を得やすくなります。


ノンクラスプデンチャーの寿命と修理費用の実態

ノンクラスプデンチャーの平均寿命は3年から5年程度とされています。これは保険適用の入れ歯や金属床義歯(寿命10年程度)と比較すると短い期間です。寿命が短い理由は、歯茎の色に合わせた樹脂部分の経年劣化によるものです。


ただし、使用する素材によって寿命は大きく変わります。バルプラストなど耐久性の高い素材を使用した場合、適切なメンテナンスを受けることで10年以上使用している患者も少なくありません。一方、安価な素材では2年程度で変形や破損が生じるケースもあります。


寿命に影響する要因として、以下の点が挙げられます。


使用頻度が高いほど劣化は早まります。


噛む力が強い患者では、樹脂部分の摩耗や変形が早期に起こる傾向があります。残っている歯や歯茎の状態が悪化すると、入れ歯の適合性が低下し、負荷がかかりやすくなります。


修理に関しては、ノンクラスプデンチャーは修理が困難な点が大きなデメリットです。素材によっては、破損した場合の修理に時間がかかる、あるいは修理自体が不可能なケースもあります。ノンクラスプデンチャーの素材は20種類以上あり、見た目だけでは素材の判別が困難です。そのため、製作した歯科医院以外での修理は対応できない可能性が高くなります。


修理が必要になった場合の費用は、歯科医院によって異なりますが、増歯などで3万円程度が相場です。保証期間内であれば無料で修理できる医院もありますが、保証は2年から3年程度が一般的で、定期メンテナンスを受けていることが条件となります。


経済的負担を軽減するためには、製作時に素材の耐久性と修理可否を確認することが重要です。バルプラストなど修理可能な素材を選択すれば、破損時にも対応しやすくなります。また、3ヶ月に1回程度の定期メンテナンスを受けることで、小さな不具合を早期に発見でき、結果的に寿命を延ばすことができます。


ノンクラスプデンチャーの製作期間と通院回数の目安

ノンクラスプデンチャーの製作期間は、一般的に2週間から1ヶ月程度です。通院回数は2回から5回程度が平均的ですが、患者の口腔内の状態や虫歯・歯周病の有無によって変動します。


製作の流れとして、初診時には口腔内の診察と治療計画の説明が行われます。虫歯や歯周病がある場合は、先にこれらの治療を完了させる必要があるため、製作開始までに数週間から数ヶ月かかることもあります。


治療が必要ない場合の標準的なスケジュールは以下の通りです。


1回目の通院で精密な型取りを行います。


2回目(約1週間後)に噛み合わせの確認と仮合わせを実施します。3回目(さらに1週間後)に完成した入れ歯を装着し、調整を行います。4回目以降(装着後1週間~2週間)に適合状態を確認し、必要に応じて微調整を実施します。


保険適用の入れ歯とノンクラスプデンチャーの製作期間は、ほぼ同程度です。どちらも約1週間から2週間程度の製作期間が必要で、通院回数も2回から3回程度と大きな差はありません。


製作期間を短縮するために、最短2回の通院で完成させる医院もあります。ただし、適合精度を高めるためには、仮合わせの段階で患者の噛み合わせや違和感を丁寧に確認することが重要です。急いで完成させると、装着後の不具合が生じやすく、結果的に調整回数が増えてしまう可能性があります。


通院間隔も重要な要素です。理想的には1週間から2週間程度の間隔で通院することで、口腔内の変化に対応しながら製作を進められます。患者の都合で通院間隔が1ヶ月以上空くと、その間に歯茎の状態が変化し、製作した入れ歯の適合性が低下するリスクがあります。


装着後のメンテナンス通院は、最初の1ヶ月は1週間から2週間ごと、その後は3ヶ月に1回程度の頻度が推奨されます。定期的なメンテナンスを受けることで、小さな不具合を早期に発見でき、長期的な使用が可能になります。


ノンクラスプデンチャーの素材別特性と患者への適応判断

ノンクラスプデンチャーには20種類以上の素材が存在し、それぞれに異なる特性があります。歯科医療従事者として、患者の口腔内状態やライフスタイルに合わせた素材選択が重要です。


主要な素材の分類として、ポリアミド系素材は柔軟性が高く、フィット感に優れています。代表的な製品にバルプラストがあり、耐久性が高く10年以上使用できるケースも報告されています。修理も可能な素材のため、長期使用を希望する患者に適しています。


ポリエステル系素材は、審美性と強度のバランスが取れた素材です。スマイルデンチャーなどがこれに該当し、費用は10万円から50万円程度と幅があります。


透明度が高く、歯茎の色に自然に馴染みます。


ポリカーボネート系素材は、保険適用の入れ歯に使用される常温重合レジンとの接着性が良く、修理が容易です。エステショットなどが代表的で、硬度が高く衝撃に強い特性があります。ただし、他の素材と比較してやや透明度が低い場合があります。


アクリル系素材は、従来の入れ歯素材に近い特性を持ち、加工しやすいのが特徴です。ナチュラルデンチャーなどがこれに該当し、費用は10万円から50万円程度です。修理や調整がしやすい反面、経年劣化による変色が起こりやすい点に注意が必要です。


ポリプロピレン系素材は、軽量で柔軟性があり、金属アレルギーの患者に適しています。ただし、耐久性は他の素材と比較してやや劣る傾向があります。


患者への適応判断では、以下のポイントを考慮します。前歯部分の欠損では審美性を重視し、透明度の高いポリエステル系やポリアミド系が推奨されます。奥歯の欠損では咀嚼力がかかるため、耐久性の高いポリアミド系やポリカーボネート系が適しています。


金属アレルギーがある患者には、完全に金属を使用しない素材を選択します。噛む力が強い患者には、硬度の高いポリカーボネート系やバルプラストが適しています。経済的な制約がある場合は、修理可能な素材を選ぶことで、長期的なコストを抑えられます。


素材選択の際に患者に説明すべき点として、初期費用だけでなく、寿命と修理費用を含めたトータルコストを提示することが重要です。例えば、15万円のバルプラストが10年使用できる場合、年間コストは1万5千円です。一方、10万円の安価な素材が3年しか持たない場合、年間コストは約3万3千円となり、長期的には高コストになります。


また、素材によって修理の可否が異なる点も重要な説明ポイントです。他院での修理が困難なため、製作した医院での定期メンテナンスを継続できるかどうかも、素材選択の判断材料になります。患者が転居予定の場合は、全国展開している歯科医院で製作するか、修理可能な素材を選択するなどの配慮が必要です。


素材の選択は、患者の口腔内状態、経済状況、ライフスタイルを総合的に判断して行うべきです。十分な説明と同意のもとで、患者にとって最適なノンクラスプデンチャーを提供することが、歯科医療従事者の責務といえます。




ノンメタルクラスプデンチャー 谷田部優