心電図モニタリングを実施していながら、保険請求していない歯科医院が大学・開業医を中心に多数存在します。

心電図モニタリングとは、心臓の電気的活動をリアルタイムに連続計測・表示する医療技術のことです 。心臓は収縮するたびに微弱な電気信号を発しており、その信号を皮膚に貼り付けた電極で拾い、波形として画面に映し出します。これにより心拍数の変動、不整脈の出現、心筋への血流不足を視覚的に確認できます 。 ja.wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%83%E9%9B%BB%E5%9B%B3%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%BF)
モニター心電図の主な目的は2つあります。1つ目は「心拍数と不整脈の連続監視」、2つ目は「ST-T波変化による心筋虚血の監視」です 。つまり、心臓のリズム異常と血流の問題を同時に見張れるということですね。 gakkenshoin.co(http://www.gakkenshoin.co.jp/book/ISBN978-4-7624-2679-7/01.pdf)
通常の12誘導心電図検査と異なり、モニター心電図は数秒間のスナップショットではなく、処置の開始から終了まで途切れなく記録し続けます 。歯科治療のような「緊張・痛み・局所麻酔の投与」が組み合わさる場面では、この連続性が特に重要です。波形の変化を見逃さずに対応できる体制を整えることが基本です。 msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/06-%E5%BF%83%E8%87%93%E3%81%A8%E8%A1%80%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E5%BF%83%E8%87%93%E3%81%A8%E8%A1%80%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97%E3%81%AE%E8%A8%BA%E6%96%AD/%E6%90%BA%E5%B8%AF%E5%9E%8B%E5%BF%83%E9%9B%BB%E5%9B%B3%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0)
| 項目 | 12誘導心電図 | モニター心電図 |
|---|---|---|
| 記録時間 | 数秒〜数分(静止) | 治療中ずっと連続記録 |
| 主な目的 | 精密な波形診断 | 不整脈・心拍数のリアルタイム監視 |
| 電極数 | 10個(12誘導) | 3〜5個(簡易電極) |
| 歯科での用途 | 術前スクリーニング | 術中のバイタル管理 |
「普段は問題ない」と言っている患者でも、歯科治療中に危険な状態になることがあります。これは意外ですね。
特に注意が必要なのは、高血圧性疾患・虚血性心疾患・不整脈・心不全・脳血管障害をもつ患者です 。これらは歯科治療総合医療管理料(Ⅱ)の算定対象疾患でもあり、モニタリングが医療管理として正式に位置づけられています。 hhk(https://www.hhk.jp/member/hoken-seikyu-qa/shika/161115-070000.php)
コロナ禍の影響で健康診断を3〜4年受けていない患者が増えており、「未診断の不整脈」を抱えたまま来院するケースも少なくありません 。患者本人が「心臓は問題ない」と思っている状態でも、実際には治療開始後に不整脈が出ることがあります。歯科のモニタリング実施率を見ると、大学病院では全症例に近い実施率がある一方、開業医では心電図・パルスオキシメーターともに「実施していない」と答えた割合が「2〜3割実施」より多いという調査結果があります 。 yuseikai.or(https://yuseikai.or.jp/topic/%E6%AD%AF%E7%A7%91%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AE%E9%87%8D%E8%A6%81%E6%80%A7/)
以下の患者は特にリスクが高く、心電図モニタリングの導入を強く検討すべきです。
- 🫀 心疾患(不整脈・狭心症・心筋梗塞の既往)のある患者
- 🩺 ペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)装着者
- 💉 局所麻酔薬に血管収縮薬(エピネフリン)が含まれる場合
- 🦷 インプラント手術・難抜歯・侵襲の大きな歯周外科を予定している患者
装着方法は非常にシンプルです。胸部に専用電極パッドを貼り付け、血圧測定用カフを腕に巻き、パルスオキシメーターのプローブを指に挟むだけです 。セット全体で数分あれば準備完了です。 tamagaki(http://www.tamagaki.com/ecg.php)
心電図の波形は「P波・QRS波・T波」の3つの山で構成されています 。 kubota-specialcaredental(https://kubota-specialcaredental.jp/blog/%E5%BF%83%E9%9B%BB%E5%9B%B3%E3%82%92%E8%A6%9A%E3%81%88%E3%82%88%E3%81%86%E3%80%82/)
- P波(小さくなだらか):心房が収縮するときの電気信号
- QRS波(鋭く高い):心室が収縮する際の強い電気信号
- T波(ゆるやかにやや大きい):心室が元の状態に戻る際の信号
歯科従事者が術中に押さえるべきポイントは「リズムの規則性」と「QRS波の形の急変」です。波形が突然乱れる・QRS波の形が変わる・極端に心拍数が増減するといった変化が起きたら、術者にすぐ伝えることが原則です。精密な12誘導診断は循環器専門医の領域ですが、「異常なリズム変化を見落とさない」という一点に集中すれば問題ありません。
参考として、不整脈の診断とリスク評価に関する日本循環器学会の最新ガイドラインも確認しておくと、患者説明や緊急時対応の裏付けになります。
日本循環器学会「不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン2022年版」(PDF)
モニタリングを実施しているのに保険請求をしていない歯科医院が多い、という現実があります。これは痛いですね。
歯科治療総合医療管理料は、対象疾患(高血圧性疾患・虚血性心疾患・不整脈・心不全・脳血管障害・喘息・慢性気管支炎・糖尿病など)を持つ患者に対して、血圧・脈拍・経皮的酸素飽和度を経時的に監視した場合に算定できます 。令和6年度診療報酬改定では対象疾患が追加され、算定できる場面がさらに広がりました 。 sedent.co(https://www.sedent.co.jp/pdf/ikan01.pdf)
算定のポイントは以下の通りです。
- ✅ 歯科医師2名、または歯科医師1名+歯科衛生士1名の体制が必要(パターンA・B) sedent.co(https://www.sedent.co.jp/pdf/ikan01.pdf)
- ✅ う蝕処置・抜歯・歯冠形成・インレー修復形成・印象採得など通常診療の多くで算定可能 sedent.co(https://www.sedent.co.jp/pdf/ikan01.pdf)
- ✅ 管理内容と患者の全身状態の要点を診療録に記載する義務がある wic-net(https://www.wic-net.com/material/document/13627/51)
- ❌ 全身麻酔下で行うものは算定対象外
モニタリングを実施する機器としては、血圧・脈拍・SpO₂・心電図の4項目を計測できる「バイタルモニタ S-RS」のような機器があります 。SpO₂のみ対応の簡易型もありますが、心電図まで測定できる機器を導入すると不整脈への対応力が格段に高まります。 sedent.co(https://www.sedent.co.jp/pdf/ikan01.pdf)
機器導入の検討に際しては、大阪府の「歯科医院における生体情報モニターの活用」資料が実務的な参考になります。
歯周病と不整脈には見落とされがちな深いつながりがあります。これは使えそうです。
広島大学の研究では、心房細動は脳卒中・脳梗塞のリスクが5倍に上昇する疾患であり、歯周病治療との関連が注目されています 。心房細動を持つ患者が歯科治療を受ける際、無処置で局所麻酔を行うと状態が悪化するリスクがあるため、事前の心電図確認と術中モニタリングが不可欠です。 hiroshima-u.ac(https://www.hiroshima-u.ac.jp/hosp/news/85133)
実際の歯科クリニックでは、「血圧はコントロールされて問題ない」とされている患者であっても、歯科治療時にモニタリングを行うと収縮期血圧が急上昇するケースが報告されています 。緊張・痛みへの反応で交感神経が活性化し、洞性頻脈(心拍数100〜150回/分)が誘発されることも珍しくありません 。 shinshu-u.ac(http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/i-shika/until%202003%20HP/yuubyou4.html)
不整脈の種類と歯科での対応方針の関係を整理すると、以下のようになります。
- 🟡 洞性頻脈:緊張・痛み・局所麻酔薬のエピネフリンが原因のことが多い。治療継続しながら経過観察。
- 🔴 心室性期外収縮(連発):術者に即報告。治療中断を検討する。
- 🔴 心房細動の急性発症:速やかに術者へ。救急対応の準備を整える。
- ⚪ 洞性徐脈(安静時の正常範囲内):個人差が大きく、患者の普段の脈拍を事前確認しておくことが大切 。 asakusa4182(https://asakusa4182.com/%E6%AD%AF%E7%A7%91%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E6%99%82%E3%81%AB%E6%B3%A8%E6%84%8F%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E7%97%85%E6%B0%97%E3%83%BB%E7%97%87%E7%8A%B6-%E4%B8%8D%E6%95%B4%E8%84%88/)
歯科治療中は患者が口を開けたまま話せない状況のため、言葉による自覚症状の訴えが遅れます。心電図モニタリングが「患者の代わりに語る装置」として機能するということですね。特に高齢患者や全身疾患を持つ患者への対応では、波形の変化を見逃さない体制が安全管理の要です。
不整脈と歯科治療の関係を詳しく学びたい場合は、以下の資料が理解を深める上で役立ちます。
OralOne「不整脈の理解と歯科臨床における注意点」(歯科医師・歯科衛生士向け解説)
ペースメーカー装着患者の歯科治療では、通電型の歯科用機器が誤作動を誘発する可能性が研究で示唆されています 。この事実は多くの歯科従事者には知られていません。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-24592879/24592879seika.pdf)
現時点では「通電型の歯科用機器は心臓植え込み型機器装着者への使用は禁忌」とされており、電動歯ブラシや超音波スケーラー、電気メスなどの機器を使用する際には事前の確認が必須です 。心電図モニタリングを行いながら処置することで、万一ペースメーカーが誤作動した際にも波形の異常として即座に検知できます。これが条件です。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-24592879/24592879seika.pdf)
術前の問診で「ペースメーカーをつけています」と申告しない患者も一定数います。問診票の質問項目を見直すとともに、胸元に手術痕がある高齢患者を見かけたら積極的に確認するのが実務上の安全策です。以下のポイントを心がけましょう。
- 📋 問診票に「心臓植え込み型機器の有無」を明記した項目を設ける
- 🔌 使用予定の歯科用機器がEMI(電磁干渉)のリスクを持つか事前に確認する
- 🖥️ モニタリング中に突然波形が乱れた場合は、ペースメーカー誤作動も鑑別に入れる
- 📞 カーディオロジスト(循環器専門医)への紹介・連携ルートを持っておく
ペースメーカー装着患者対応の詳細は、関連する科研費研究報告書にも具体的なデータがまとめられています。
科研費研究報告書「歯科用機器による心臓植え込み型機器への影響」(PDF)

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