線維性骨異形成症手術の適応と術式

線維性骨異形成症の手術治療について、適応基準から術式、再発リスク、薬物療法まで、歯科医療従事者が知っておくべき診断・治療のポイントを詳しく解説します。顎顔面領域での治療判断に迷っていませんか?

線維性骨異形成症の手術と治療

若年者の手術は5割以上が再発します。


この記事の3つのポイント
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手術適応の判断基準

病的骨折、変形進行、疼痛、神経圧迫症状がある場合に手術を検討。 単骨性病変で無症状なら経過観察が基本です。

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若年者・多骨性病変の再発リスク

若年者や多骨性病変では手術後の再発率が高く、成人まで待つことで病変が非活動性になり予後が改善される可能性があります。

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薬物療法と禁忌事項

ビスホスホネート製剤が疼痛緩和に有効。放射線治療は悪性転化リスクがあるため絶対禁忌とされています。


線維性骨異形成症の手術適応と判断基準

線維性骨異形成症の治療において、すべての症例が手術を必要とするわけではありません。単骨性病変で無症状の場合、経過観察が基本方針となります。この疾患は成人になると病変が非活動性になり、進行が停止することが多くの症例で認められているためです。


手術適応となるのは、主に以下のような状況です。病的骨折を起こす恐れがある場合、繰り返しの微小骨折による変形が進行している場合、疼痛を伴う大きな病変部がある場合、遷延治癒骨折や偽関節を形成している場合、神経圧迫症状が出現している場合などが該当します。


特に大腿骨頸部などの荷重部では、骨折リスクが高まるため注意が必要です。これらの部位では松葉杖や装具による安静指示が出されることもあります。歯科領域では、上顎骨や下顎骨に発生した場合、顔面非対称や咬合異常、鼻閉症状、整容面の問題が生じることがあり、これらが手術適応の判断材料となります。


ただし、若年者や多骨性病変では術後再発率が高いという事実があります。このため、掻爬・骨移植術などの手術の早期適応には慎重になるべきだとされています。成人まで待つことで病変が安定化する可能性を考慮する必要があるということですね。


顎顔面領域での手術を検討する際は、術後の機能障害や変形のリスクを十分に評価することが求められます。視野が限定される口腔内アプローチでは、ナビゲーションシステムの使用が有効であるとの報告もあります。


線維性骨異形成症の具体的な術式と方法

線維性骨異形成症に対する外科的治療には、いくつかの術式があります。矯正骨切り術、髄内釘・プレート固定、掻爬術、骨移植術などが代表的な方法です。


矯正骨切り術は、微小骨折を繰り返して変形が生じた症例に対して行われます。大腿骨近位部に見られる「羊飼いの杖変形(shepherd's crook deformity)」と呼ばれる特徴的な変形に対しては、角度付きブレードプレートを用いた治療で71%の無再手術成功率が報告されています。つまり約3例に2例は再手術なしで経過できるということですね。


掻爬術は、病変部の線維組織を掻き出す手術です。ただし、線維組織に置換された部位は非常に硬いため、ガイドワイヤーの挿入が難しく、リーミング操作に困難を伴うことがあります。


この点は術前に認識しておく必要があります。


骨移植術では、自家骨または人工骨(ハイドロキシアパタイトやチタン)が使用されます。骨移植材料の選択や固定方法によって長期成績が大きく異なることが明らかになっており、症例ごとの慎重な選択が求められます。


顎顔面領域では、ナビゲーションシステムを用いた骨削除術が推奨されています。線維性骨異形成症は最もナビゲーション手術が適した疾患とされており、口腔内アプローチの視野制限を補い、顔面の対称性を確実に獲得することが可能となります。上顎骨や頬骨に発生した症例では、病変部の切除と欠損部分の再建が行われることが一般的です。


手術時期については、成人になってから実施することで再発リスクを低減できます。早期の治療効果を期待して若年期に手術を行うと、病変の活動性が高いため再発する可能性が高まるからです。


線維性骨異形成症の再発リスクと予後

線維性骨異形成症の手術において、最も注意すべき点は再発リスクです。多骨性の場合や若年者では再発することが多いため、特に注意が必要とされています。


具体的な再発リスク因子として、年齢が挙げられます。10代までの若年者では、骨の成長期にあたり病変の活動性が高いため、手術を行っても再度病巣が拡大する可能性があります。これはGNAS遺伝子の変異による細胞レベルの異常が継続しているためです。


病変のタイプも重要な因子です。単骨性病変と比較して、多骨性病変では再発率が明らかに高いことが報告されています。多骨性の場合は全身性の病変であり、局所的な手術だけでは根本的な解決にならないためと考えられます。


骨の部位による違いもあります。大腿骨などの長管骨と比較して、頭蓋顔面骨は加齢とともに「嚢胞様の」外観を呈するようになり、病変の性質が変化していきます。この変化を考慮した治療計画が必要になってきますね。


成人になると病変が非活動性になり進行が停止する症例が多く認められます。つまり、急を要さない症例では成人まで待つことで、手術の必要性自体がなくなる可能性もあるということです。この自然経過を理解しておくことは、患者説明において非常に重要です。


再発を繰り返す症例では、ビスホスホネート製剤による薬物療法を併用することで、病変の進行を抑制できる可能性があります。手術のタイミングや術式の選択だけでなく、薬物療法との組み合わせを検討することが現代的なアプローチと言えるでしょう。


大阪国際がんセンターの線維性骨異形成症診療ガイドラインには、手術適応や術式選択についての詳細な情報が掲載されています。


線維性骨異形成症の画像診断と鑑別診断

線維性骨異形成症の診断において、画像検査は極めて重要な役割を果たします。CTが最も診断に有効とされ、単純X線撮影はスクリーニング検査として役立ちますが、確定診断にはCTが推奨されます。


CT画像の特徴的所見として、骨の肥厚とすりガラス状の変化が挙げられます。これは骨髄内に線維性組織と未熟な骨梁が混在していることを反映しています。骨硬化と低濃度の成分がまだらに存在する「パッチワーク状」の所見も典型的です。


重要なポイントは、骨皮質の破壊や骨膜反応を認めない点です。


これが悪性腫瘍との鑑別に役立ちます。


病変の辺縁にしばしば太い硬化像(rind sign:リンドサイン)を認めることも特徴的な所見の一つとされています。


MRI検査では、T1強調像で低信号あるいは中等度信号を示し、T2強調像では信号が不均一となります。病変の活動性によって信号強度が変化し、活動性が高い病変ではT2強調像で高信号を示すことがあります。


造影効果は不均一で著明なことが多いですね。


骨シンチグラフィ(Tc-99mMDP)では強い集積を認めます。これは多骨性病変の分布を知るために特に有用で、全身の病変をスクリーニングする際に活用されます。


鑑別診断として重要な疾患には、骨形成線維腫、骨Paget病、骨内高分化骨肉腫などがあります。骨形成線維腫は頭蓋顔面の線維性異形成病変より侵襲性が強く、外科的切除が必要になることが多いです。GNAS遺伝子変異の検出が鑑別に有用で、この遺伝子異常は線維性骨異形成症に極めて特異性が高いとされています。


また、嚢胞内に液面形成が認められる場合は、悪性化の可能性があると報告されているため、定期的な画像フォローが必須となります。無症状であれば小児症例では2年ごと、成人症例では5年ごとの画像フォローが推奨されているということです。


線維性骨異形成症の薬物療法と保存的治療

線維性骨異形成症の保存的治療において、薬物療法は重要な選択肢となっています。特にビスホスホネート製剤の有効性が注目されており、複数の臨床研究でその効果が報告されています。


ビスホスホネート製剤は破骨細胞の活性を阻害し、骨吸収を抑制する作用を持ちます。点滴によるビスホスホネート製剤の投与が、局所の疼痛に対して有効であることが示されています。具体的には、骨痛や生化学的マーカーの改善に効果的である一方、骨の構造的変形に対する効果は限定的であるという報告があります。


つまり、痛みは軽減できても骨の形は変わらないということですね。このため、ビスホスホネート療法は症状緩和を目的とした対症療法として位置づけられます。


経口のビスホスホネート製剤であるアレンドロン酸は、骨痛の治療には限定的効果しかないとされ、点滴製剤の方が推奨されています。投与は一定間隔ではなく、症状に従って行う必要があるという点も重要です。


その他の鎮痛薬として、アセトアミノフェンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、トラマドールなどが使用されます。これらは骨痛に対する初期治療として有効で、日常診療で処方しやすい薬剤です。


抗RANKL抗体製剤であるデノスマブの効果が期待されていますが、現時点で疼痛緩和や病勢の進行抑制に対する有効性は不明とされています。今後の研究結果が待たれる領域と言えるでしょう。


歯科領域で特に注意すべき点は、ビスホスホネート製剤による顎骨壊死(BRONJ)のリスクです。線維性骨異形成症で顎骨に病変がある患者にビスホスホネート製剤を投与する場合、抜歯などの侵襲的歯科処置を行う際には、顎骨壊死のリスクを考慮した対応が必要になります。休薬期間の設定や予防的な抗菌薬投与など、適切な周術期管理が求められますね。


放射線治療は絶対禁忌とされています。FDの病変部位の放射線被曝は、悪性転化のリスクが高まることが知られており、治療後に肉腫へ悪性転化する危険性が増すためです。悪性化の発生率は0.4~4%と報告されており、非常に低い頻度ですが、放射線治療を受けた既往のある部位では注意が必要です。


保存的治療の基本は、松葉杖や装具による荷重制限です。大腿骨頸部などで痛みが継続し病的骨折を起こす恐れがある場合、手術までの期間や手術を行わない場合の対応として、これらの補助具が活用されます。


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