胸腔鏡下手術術後の看護で合併症を防ぐポイント

胸腔鏡下手術(VATS)後の看護では、ドレーン管理や早期離床など多くの観察ポイントがあります。術後合併症を防ぐために看護師が押さえておくべき知識とは何でしょうか?

胸腔鏡下手術術後の看護で押さえる合併症予防の要点

術後4時間は安静に寝かせ続けるほど回復が遅れる場合があります。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.3101102118)


胸腔鏡下手術(VATS)術後看護の3つのポイント
🫁
ドレーン管理の観察を徹底する

エアリーク・呼吸性移動・排液の性状・量を継続的に確認し、異常の早期発見につなげます。

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早期離床で合併症リスクを下げる

術後翌日からの歩行開始が肺炎・深部静脈血栓(DVT)の予防に直結します。離床タイミングの見極めが重要です。

💊
疼痛コントロールで呼吸機能を守る

術後の痛みが強いと深呼吸ができず無気肺リスクが上がります。NRSを用いた適切な除痛が呼吸管理の土台になります。


胸腔鏡下手術(VATS)とは:術後看護が変わる理由

胸腔鏡下手術(Video-assisted Thoracic Surgery:VATS)は、数センチの小さな切開創から胸腔内にカメラと器具を挿入して行う低侵襲手術です。 従来の開胸手術と比べると、術後の入院期間は「開胸:約2週間」に対し「VATS:4〜5日」と大幅に短縮されます。 この「早く回復できる」という特性が、術後看護の方針や観察タイミングにも直接影響します。 medical-b(https://medical-b.jp/c01-01-031/book031-26/)


開胸手術では肋骨を大きく開いて固定するため筋肉や神経へのダメージが大きく、術後疼痛も長期間続きます。一方VATSは創が小さいぶん痛みが軽く、術後翌日〜2日目には離床が始まるケースが標準的です。 回復が速いということは、看護師が短い時間軸の中で合併症の兆候を見逃さない密度の高い観察を求められるということでもあります。 medical-b(https://medical-b.jp/c01-01-031/book031-26/)


つまり「侵襲が少ない=楽」ではなく「侵襲が少ない分、合併症サインも分かりにくい」という認識が基本です。


胸腔鏡下手術術後の胸腔ドレーン管理と観察ポイント

VATSでは術後に胸腔ドレーンが留置され、看護師が継続的に管理します。 観察すべき主要項目は次のとおりです。 j-depo(https://j-depo.com/news/post-859.html)


| 観察項目 | 正常 | 異常のサイン |
|---|---|---|
| 呼吸性移動 | 呼吸に合わせて水位が上下 j-depo(https://j-depo.com/news/post-859.html) | 変動消失 → ドレーン閉塞の疑い |
| 排液の性状・量 | 淡血性→淡黄色に変化 | 血性が持続・急増 → 術後出血の疑い knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/500099) |
| 挿入位置 | 身体より20cm以上低く設置 j-depo(https://j-depo.com/news/post-859.html) | 逆流・高さ不足 → 排液不良 |


エアリークの観察は特に重要です。 気胸を対象とした場合、挿入直後は連続したエアリークがみられ、肺が改善するにつれ断続的→消失へと変化します。 肺切除術では、血性排液が持続する場合は術後出血を疑い、速やかに医師へ報告が必要です。 knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/500099)


ドレーンの屈曲・閉塞・固定のゆるみは転倒や体位変換時に起きやすいポイントです。離床開始前に必ず確認する習慣をつけると安全です。


胸腔鏡下手術術後の早期離床と肺炎・DVT予防

術後に安静を続けすぎることで、むしろ合併症リスクが高まります。 術後は痰が増加し免疫が一時的に低下するため、肺炎が起きやすく重症化するリスクもあります。 予防の最大の武器は「早期離床」です。 hirobyo(https://hirobyo.jp/cms/wp-content/themes/ja/img/community-engagement/fureai-poster/poster_13.pdf)


深部静脈血栓(DVT)は術中・術後の動かない時間に足の静脈で血液が固まり、それが肺動脈に飛ぶと肺塞栓(エコノミークラス症候群)になります。 血栓のかたまりは長さ数センチ〜10cm(はがきの横幅ほど)になることもあり、小さくても命に関わります。 ncc.go(https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/thoracic_surgery/060/040/index.html)


早期離床を進めるための看護アプローチは以下の3ステップが基本です。


1. 術前から弾性ストッキングを着用してもらう
2. 安静中は下肢の自発的な足首運動を促す
3. 術後翌日には看護師付き添いで立位・歩行を開始する j-depo(https://j-depo.com/news/vats.html)


下肢の疼痛・腫脹や突然の呼吸苦が出た場合はDVT・肺塞栓の疑いとして即報告が原則です。 j-depo(https://j-depo.com/news/vats.html)


胸腔鏡下手術術後の疼痛管理と呼吸機能への影響

VATSは開胸と比べて痛みが少ないとはいえ、術後の創部痛は確実に存在します。 痛みが強いと患者は「深呼吸をしたくない」という状態になります。これが原因で無気肺・低酸素血症・肺炎へとつながる連鎖が起きやすい。 kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/8206/)


術後呼吸器合併症の主な種類は次のとおりです。


- 🫁 低酸素血症:動脈血酸素分圧(PaO₂)が60Torr以下の状態 knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/226241/)
- 🫁 無気肺:術後同一体位が続くと背側に出やすい。聴診での肺胞音減弱が手がかり knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/226241/)
- 🫁 肺炎:術後の免疫低下と痰の増加が重なる時期に発症しやすい ncc.go(https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/thoracic_surgery/060/040/index.html)


疼痛管理にはNRS(数値評価スケール:0〜10点)を使い、客観的に記録・共有することが重要です。 術後7日間は夜間も積極的に除痛を行うことがクリニカルパスに明示されているケースもあります。 gmhosp(https://gmhosp.jp/about/file/cp-kokyukigeka-haisetujyo2022.pdf)


鎮痛薬の効果が不十分な場合は頓服薬や硬膜外麻酔の活用について医師に相談・報告するのが適切な対応です。疼痛が抑えられた状態でこそ、深呼吸・咳嗽訓練・離床が安全に進みます。


胸腔鏡下手術術後に歯科医従事者が知っておくべき口腔管理の重要性

これは見落とされがちな視点です。 術後の口腔内細菌が肺炎リスクを高めることは、呼吸器外科との連携で注目されています。


全身麻酔下での胸腔鏡手術では、気管内挿管によって口腔内の細菌が下気道に移行するリスクがあります。術前・術後の口腔ケアが不十分だと誤嚥性肺炎や人工呼吸器関連肺炎(VAP)のリスクが上がることが研究で示されています。 歯科医や歯科衛生士が術前から介入する「周術期口腔機能管理」は2012年に診療報酬化され、現在では多くの急性期病院で標準的に行われています。


周術期口腔機能管理の主なポイントは以下のとおりです。


- 🦷 術前に口腔内の感染巣(う蝕歯周病)を処置して細菌数を下げる
- 🦷 挿管時の歯の破折リスクを事前評価し、補強・保護を行う
- 🦷 術後も口腔内の湿潤と清潔を保つケアを継続する


歯科医従事者にとって、胸腔鏡下手術後の看護は「自分の領域外」ではありません。 口腔ケアの質が術後合併症率に直結するデータを知っておくことは、チーム医療での発言力を高めます。


参考:周術期口腔機能管理の診療報酬と実施指針(日本歯科医師会


日本歯科医師会「周術期口腔機能管理に係る指針」(周術期の口腔管理の根拠・診療報酬の詳細が掲載)


参考:胸腔鏡手術(VATS)後の術後経過と合併症の詳細(国立がん研究センター)


国立がん研究センター中央病院「術後合併症について」(肺炎・肺塞栓・エアリークなど主要合併症の解説)


参考:胸腔ドレーンの看護管理の基本(看護roo!)


看護roo!「胸腔ドレナージ」(ドレーン管理の観察項目・エアリーク・呼吸性移動の見方を詳細解説)


胸腔鏡下手術術後の退院指導と患者教育の実践ポイント

VAT S術後の退院は術後3〜6日目が標準です。 退院が早いぶん、患者自身が自宅で自己管理できる知識を持って帰ることが重要になります。 nmc.kcho(https://nmc.kcho.jp/data/media/nmc-kcho/page/clinical/dpc/R5/data_R06/24040112_Kokyuukigeka.pdf)


退院指導で必ず伝えるべき内容は以下のとおりです。


- 🏃 術後3〜6か月で呼吸機能が術前の約80%以上に回復する見込みを説明する shikoku-cc.hosp.go(https://shikoku-cc.hosp.go.jp/hospital/support/clinical_path/lung_mediastinal/data/vats_busetu_kan_240705.pdf)
- 🚫 スポーツなど激しい運動は退院直後から数週間は禁止
- 🌡️ 発熱・呼吸苦・胸痛・下肢腫脹が出たら即受診するよう明確に説明する
- 🛌 軽いウォーキングは早期から推奨し、活動量を段階的に増やすよう指導する jikei.ac(http://www.jikei.ac.jp/hospital/daisan/sinryo/pdf/40_schedule_7.pdf)


退院後の患者が「どこまでやっていいか分からない」という不安を持つケースは多い。 入院中に一度「退院後の1日の流れ」を一緒にシミュレーションしておくと、患者の不安が下がり、緊急受診の不要な問い合わせも減ります。


残った肺は細胞数は増えませんが、大きく膨らむことで機能を補います。 この回復過程を患者に伝えると、「無理しないで少しずつ動く」という行動変容につながりやすくなります。患者教育は退院前日だけでなく、入院直後から段階的に行うことが原則です。 shikoku-cc.hosp.go(https://shikoku-cc.hosp.go.jp/hospital/support/clinical_path/lung_mediastinal/data/vats_busetu_kan_240705.pdf)