模型材 歯科の選び方と種類 用途別コスト比較

歯科治療で重要な模型材の種類と選び方を徹底解説。石膏・樹脂・シリコンの違い、コスト、精度、保管方法まで網羅しています。適切な模型材の選択で治療精度は変わるのでしょうか?

模型材 歯科の基礎知識と選び方

石膏模型は3年間保管しないと違法です


この記事の3ポイント
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模型材の種類と特性

石膏、樹脂、シリコンの3種類があり、用途によって使い分けが必要。超硬石膏は混水比0.25で精度が高く作業模型に最適、普通石膏は混水比0.5で研究模型向き。

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コストと保管の実態

石膏模型は1個あたり数百円程度だが、3年間の保管義務がありスペース確保が課題。3Dプリンター樹脂材は1個1000円前後で、データ保管によりスペース問題を解決。

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精度管理の重要ポイント

混水比を10%誤るだけで模型の強度が20%低下し、気泡混入が適合不良の原因に。真空練和器の使用と24時間以内の石膏注入が再製リスクを大幅に削減。


模型材 歯科における基本的な種類と特徴


模型材は歯科治療において患者の口腔内の形状を正確に再現するための材料です。主に石膏系、樹脂系、シリコン系の3種類に分類され、それぞれ異なる特性と用途を持っています。


石膏系模型材は歯科医療で最も広く使用されており、硫酸カルシウムを主成分とする鉱物由来の材料です。普通石膏、硬石膏、超硬石膏という3つのグレードに分かれ、結晶構造の違いにより性質が大きく異なります。普通石膏はβ石膏とも呼ばれ、粒子形状が不均一で多孔質なため混水比が0.5と大きく、主に研究用模型に使用されます。硬石膏と超硬石膏はα石膏を原料とし、粒子が緻密で規則的な形態をしているため混水比は0.25~0.3と低く抑えられます。


つまり製法が違うということですね。


超硬石膏は塩化カルシウム水溶液中で二水石膏を沸騰・脱水させる特殊な製法により作られ、硬化後の圧縮強度が35MPa以上、硬化膨張率は0.00~0.15%と非常に低い値を示します。この低膨張特性により、インプラントやクラウン、ブリッジなどの精密補綴物を製作する作業模型として最適な材料となっています。一方、硬石膏は黄色を呈し、義歯製作用の模型や対合歯列模型に使用されることが多く、コストと性能のバランスに優れています。


樹脂系模型材は主に3Dプリンターレジンとして近年急速に普及しています。光硬化性樹脂材料が代表的で、デジタルスキャンデータから直接造形できるため、従来の印象採得プロセスを省略できます。寸法精度はXY軸で±10~50μm程度と超硬石膏に匹敵する精度を持ち、マウスピース矯正用の模型製作では耐熱性も備えています。


シリコン系模型材は主に複模型製作や特殊なケースで使用されます。寸法精度が高く変形しにくい特性を持ち、印象採得後24時間経過しても精度がほとんど変わらないという優れた安定性があります。ただし、材料コストが高いため、通常の模型製作よりもインプラント治療などの高精度が要求される場面で選択されることが多い状況です。


模型材 歯科の用途別選択基準

模型材の選択は治療目的と製作物の種類によって慎重に判断する必要があります。適切な材料選択が最終的な補綴物の適合精度に直結するためです。


作業用模型は補綴物を実際に製作する模型であり、最も高い精度と強度が求められます。インレー、クラウン、ブリッジなどの精密補綴物を製作する場合、超硬石膏が第一選択となります。超硬石膏は混水比が0.24~0.25と低く、硬化後の表面が滑沢で加工しやすく、技工用バーでの調整も容易です。歯型部分の再現性が極めて高く、マージン部分の鮮明さが10マイクロン単位で再現できるため、適合精度の高い補綴物製作が可能になります。


研究用模型(スタディモデル、マルモ)は診断や治療計画立案、患者説明用に使用されます。この用途では作業模型ほどの精度は求められないため、普通石膏やコストパフォーマンスに優れた硬石膏が選択されます。普通石膏は混水比が0.5と高く練和が容易で、硬化時間も比較的短いため、診療の流れをスムーズにします。ただし、強度は作業模型用石膏より劣るため、長期保管時の破損リスクには注意が必要です。


義歯製作の模型では特殊な考慮が必要です。義歯床用のアクリルレジンは重合時に約0.5%収縮する性質があるため、この収縮を補償する目的で硬化膨張率が0.16~0.30%と高めの硬質石膏を使用します。製品によっては膨張率0.40~0.50%の高膨張タイプも存在し、総義歯の適合性向上に貢献しています。


レジンの収縮を見越すわけです。


矯正治療用模型では治療の各段階で複数の模型が必要になります。治療前、治療中の各ステージ、保定期間中、治療完了後と、患者一人あたり10個以上の模型が作製されることも珍しくありません。この用途では保管スペースの問題から、近年は3Dプリンター用樹脂材料への移行が進んでいます。口腔内スキャナーでデジタルデータを取得し、必要に応じて模型を造形する「オンデマンド製作」により、物理的な保管スペースを大幅に削減できます。


インプラント治療では埋入位置の正確な把握と術前シミュレーションが不可欠です。このため、シリコン系模型材やエポキシ樹脂を使用した高精度模型、あるいは3Dプリンターによる実物大モデルが選択されます。CT画像とデジタルデータを統合したサージカルガイド製作では、樹脂系3Dプリント材料が標準的な選択肢となっています。


模型材 歯科のコストと経済性の比較

模型材のコストは材料費だけでなく、作業時間、保管コスト、廃棄処理費用まで含めた総合的な評価が重要です。一見安価に見える材料でも、トータルコストでは高くつく場合があります。


石膏系模型材は材料単価が最も安価で、超硬石膏でも1kg あたり2,000~4,000円程度です。1個の模型に使用する石膏は平均100~150g程度なので、材料費は1個あたり200~600円程度に収まります。普通石膏ならさらに安価で、1個100~200円程度の材料費で済みます。ただし、石膏模型には隠れたコストが存在します。


それは保管コストです。


歯科医師法と厚生労働省の監査事例集により、研究用模型(スタディモデル)は治療終了日から3年間の保管義務があります。年間1,000人の患者を診療する歯科医院では、3年間で3,000個の模型が蓄積します。1個の模型が占めるスペースを10cm×10cm×5cm(0.005立方メートル)とすると、3,000個で15立方メートル、つまり畳約9畳分のスペースが必要になります。都心部の診療室で家賃が坪単価2万円の場合、模型保管だけで月額約10万円、年間120万円のコストが発生する計算です。


樹脂系3Dプリント材料は材料単価が高く、光硬化性レジン1リットルあたり2~5万円程度です。1個の模型製作に50~100ml使用するため、材料費は1個あたり1,000~5,000円と石膏の5~10倍になります。しかし、デジタルデータとして保管できるため物理的な保管スペースは不要です。必要な時に必要な数だけ造形する「オンデマンド生産」により、保管コストはゼロに近づきます。さらに、3年間の保管義務期間経過後も、再診時にデータから模型を再造形できる利点があります。


作業時間の観点では、石膏模型は印象採得後の石膏注入、硬化待ち(30分~2時間)、トリミング作業で技工士の作業時間が30~60分必要です。3Dプリント模型は造形に2~4時間かかりますが、無人運転が可能なため実質的な作業時間は10分程度のセットアップ時間のみです。


廃棄コストも見逃せません。石膏模型は産業廃棄物として処理が必要で、患者の血液や唾液が付着した印象由来の模型は感染性廃棄物として扱う場合もあります。産業廃棄物処理費用は1kgあたり50~100円程度で、年間1,000個廃棄すると5~10万円のコストになります。3Dプリント模型も廃棄時は産業廃棄物ですが、データ保管が主体なら廃棄量を大幅に削減できます。


トータルで考えることが大切です。


模型材 歯科における精度管理と品質保証

模型の精度は最終的な補綴物の適合性に直結するため、材料選択だけでなく取り扱い方法の標準化が極めて重要です。精度不良による再製は、患者の通院負担増加と医院の収益性低下を招きます。


混水比の管理は石膏模型の品質を左右する最重要因子です。超硬石膏の標準混水比は粉末100gに対して水24~25mlですが、この比率が10%変動すると模型の物性が大きく変化します。混水比を高くすると(水を多くすると)硬化時間は長くなり、強度が20~30%低下し、硬化膨張率も減少します。逆に混水比を低くすると強度は上がりますが、流動性が低下して気泡が混入しやすくなり、操作可能時間が短縮されます。


気泡の混入は模型精度の最大の敵です。特に支台歯のマージン部分に気泡があると、その部分の模型表面が不正確になり、製作した補綴物が適合しない原因となります。気泡混入を防ぐには、真空練和器の使用が効果的です。真空練和により練和時に巻き込まれる気泡を80~90%削減でき、より緻密で安定した模型が得られます。機械練和と真空練和を併用すると、手練和と比較して圧縮強度が10~15%向上することが報告されています。


印象採得から石膏注入までの時間管理も重要です。


シリコン印象材の場合、印象採得後24時間以内であれば寸法変化はほぼありませんが、アルジネート印象材は水分が主成分のため、放置すると水分蒸発により収縮し、水中保管では膨張します。アルジネート印象は採得後1時間以内に石膏注入することが推奨されており、遅くとも2時間以内に処理すべきです。1時間放置するだけで数十マイクロンの寸法変化が生じるため、複数の印象を採得する際は順番を考慮する必要があります。


石膏の硬化時間と模型の取り出しタイミングにも注意が必要です。石膏は注入後30分程度で初期硬化しますが、完全硬化には24時間かかります。シリコン印象材から模型を取り出す場合、石膏が完全硬化する前に外すとシリコン印象材が水素ガスを吸収し、模型表面が荒れる原因になります。理想的には注入後最低60分以上、可能であれば2~3時間経過してから印象体から模型を分離すべきです。


模型の保管環境も精度維持に影響します。石膏は吸湿性が高く、高温多湿環境では膨張し、乾燥環境では収縮します。保管時は密閉容器またはビニール袋に入れ、室温20~25度、湿度50~60%の環境が理想的です。特に作業模型は技工所に送付されるまでの期間、適切な保管が求められます。


模型材 歯科のデジタル化と今後の展望

歯科医療のデジタル化により、模型材の選択肢と使用方法が大きく変化しています。従来の印象採得・石膏模型作製というアナログワークフローから、口腔内スキャナーとCAD/CAM、3Dプリンターを組み合わせたデジタルワークフローへの移行が加速しています。


口腔内スキャナーの普及により、印象材と石膏を使わない「モデルレス」ワークフローが現実化しています。口腔内を直接デジタルスキャンし、そのデータをCADソフトで設計、ミリングマシンや3Dプリンターで直接補綴物を製作する方式です。この方式では印象材の変形や石膏注入時の気泡混入といったアナログ工程特有の誤差要因が排除され、理論上はより高精度な補綴物製作が可能になります。


ただし完全モデルレスにはまだ課題があります。


口腔内スキャナーの精度は単冠であれば十分ですが、全顎スキャンや軟組織の記録では従来の印象法に劣る場合があります。また、義歯製作では咬合採得や試適の過程で物理的な模型が必要なため、完全デジタル化は困難です。このため、当面は「ハイブリッドワークフロー」が主流になると予想されます。


3Dプリンター用模型材は急速に進化しています。第一世代の光硬化性レジンは硬化後に脆くなる問題がありましたが、最新世代の材料は石膏模型と同等以上の強度を持ち、耐熱性も向上しています。マウスピース矯正用の模型では、120度以上の加熱に耐える耐熱性レジンが開発され、バキュームフォーミング(熱成形)工程で変形しなくなりました。


材料コストの低下も進んでいます。3Dプリンター用レジンは2020年頃には1リットル5~8万円でしたが、2025年時点では2~4万円まで低下し、今後さらに下がる見込みです。造形速度も向上しており、1個の模型造形に4時間かかっていたものが、最新機種では1時間程度に短縮されています。


環境への配慮も重要なテーマです。石膏模型は廃棄時に産業廃棄物となり、大量の石膏廃材が発生します。年間1,000個の模型を作製・廃棄する歯科医院では、年間150kg程度の石膏廃材が出ます。一方、デジタルデータで保管し必要時のみ造形する方式では、廃棄物を80~90%削減できます。また、一部の3Dプリント材料はリサイクル可能な樹脂を使用しており、環境負荷軽減に貢献しています。


保管義務への対応も変化しています。厚生労働省はデジタルデータでの模型保管を認めており、物理的な石膏模型を3年間保管する代わりに、デジタルスキャンしたデータを保存する方式が可能です。データ保管なら保管スペースはほぼゼロで、必要時に何度でも模型を再造形できるため、長期的な患者管理において優位性があります。


AIとの統合も進んでいます。口腔内スキャンデータからAIが自動で補綴物を設計し、3Dプリンターで模型や補綴物を製作する完全自動化システムが研究されています。このシステムが実用化されれば、技工士の作業時間が大幅に削減され、夜間無人運転で翌朝には補綴物が完成しているという未来も現実味を帯びてきます。


模型材 歯科のトラブル対策と失敗回避

模型製作における失敗は補綴物の再製につながり、患者満足度の低下と医院の経営効率悪化を招きます。トラブルの大半は適切な知識と注意で予防可能です。


印象採得時のトラブルで最も多いのが気泡の混入です。特に支台歯のマージン部分やアンダーカット部に気泡が入ると、その部分の模型が不正確になります。気泡混入の原因は、印象材をトレーに盛る際の空気巻き込み、口腔内挿入時の圧接不足、印象材の流動性不足などです。対策としては、印象材練和時に真空練和器を使用する、口腔内挿入前に支台歯面を予めシリンジ法で印象材を塗布する、適切な圧接圧と時間を確保するなどが有効です。


石膏注入時のトラブルも頻繁に発生します。印象面が濡れすぎていると、その部分の石膏の混水比が局所的に高くなり、模型表面が荒れて脆くなります。逆に印象面が乾燥しすぎていると、石膏の付着不良や気泡残存の原因になります。印象体を消毒・水洗した後は、表面の水たまりをエアブローで除去しつつ、完全に乾燥させない状態を保つことが重要です。


模型の破損は保管と取り扱いの問題です。


石膏模型は圧縮強度は高いものの、衝撃には弱く落下させると簡単に破損します。特に歯型部分は薄いため、技工用ナイフでのトリミング時や咬合器装着時に破損しやすいポイントです。対策として、模型表面に硬化材を塗布する方法があります。石膏模型表面硬化材は模型表面に浸透し、表面強度を20~30%向上させ、摩耗や欠けを防ぎます。技工所に模型を送付する際も、専用の模型ケースに入れ、緩衝材で保護することで破損リスクを軽減できます。


印象材と模型材の組み合わせミスも問題になります。アルジネート印象には硬石膏または超硬石膏を、シリコン印象には超硬石膏を使用するのが原則です。これは印象材の収縮・膨張特性と石膏の膨張率のバランスを考慮した選択です。不適切な組み合わせでは、模型の寸法精度が低下し、補綴物の適合不良につながります。


模型のトリミング不良も見落とせません。模型基底面が平行でないと咬合器装着時に誤った咬合関係が記録されます。模型基底面は咬合平面に平行にトリミングする必要があり、専用の模型トリマーを使用して正確に調整します。手作業でのトリミングは技術と経験が必要で、新人技工士や歯科衛生士には難易度が高い作業です。


再製を防ぐシステム構築が重要です。印象採得から模型製作、技工所への送付までの各工程でチェックリストを作成し、ダブルチェック体制を整えることで、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。また、印象採得直後に印象体を目視確認し、気泡や不鮮明な部分があれば即座に再印象を行う判断基準を明確にしておくことも重要です。患者が診療台に座っている間に再印象を行えば、後日の再来院は不要になります。




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