亜鉛を補充しても、味覚低下の患者の約9割には別の主因が隠れています。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/hdnj/59708)
舌の表面には「味蕾(みらい)」と呼ばれるセンサー細胞が約1万個存在しており、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つの基本味を感知します。 この味蕾の細胞は約10日周期でターンオーバー(新陳代謝)を繰り返しており、細胞の再生には亜鉛が不可欠です。 teiaen.nobelpark(https://teiaen.nobelpark.jp/mikaku/commentary/)
亜鉛が体内で不足すると、味細胞のターンオーバーが延長・機能低下し、結果として味覚低下が引き起こされます。 これが「味覚低下=亜鉛不足」という認識が広まった理由です。 teiaen.nobelpark(https://teiaen.nobelpark.jp/mikaku/commentary/)
ただし、亜鉛が原因の場合でも、単純な食事不足ではなく「薬剤とのキレート形成による吸収障害」が多くを占めます。 亜鉛だけが原因、とは言い切れません。 jsoms.or(https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/kouku/mikakusyougai/)
兵庫医科大学耳鼻咽喉科の1,943例の分析では、原因の上位は特発性・心因性・薬剤性・亜鉛欠乏性の順でした。 亜鉛欠乏は必ずしも1位ではないのです。 teiaen.nobelpark(https://teiaen.nobelpark.jp/mikaku/commentary/)
歯科受診患者に限定した別の調査では、亜鉛欠乏が主因のケースは10.2%にとどまり、心因性35.1%・口腔疾患19.9%が上位を占めていたとも報告されています。 つまり亜鉛欠乏に絞った治療だけでは不十分なことが多いということですね。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/hdnj/59708)
参考:味覚障害と亜鉛欠乏の関係・味蕾のメカニズムについて詳細に解説されています。
薬剤性味覚障害は、全味覚障害の約23%を占めるとされています。 歯科医が見落としやすい原因の筆頭です。 yamanouchi-dc(https://yamanouchi-dc.com/column/oral-0334/)
メカニズムは大きく2つあります。1つは、薬剤が亜鉛とキレートを形成することで亜鉛の腸管吸収を妨げるもの。 もう1つは、薬剤が唾液分泌を低下させたり、味蕾や味覚神経に直接作用するものです。 jsoms.or(https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/kouku/mikakusyougai/)
代表的な薬剤としては、降圧薬(ACE阻害薬)、利尿薬、抗生剤、抗うつ薬、抗がん剤などが挙げられます。 複数の薬を服用している高齢患者では、複合的に作用している場合もあります。 midori-hp.or(https://midori-hp.or.jp/pharmacy-blog/web19_5_03/)
| 薬剤の種類 | 主なメカニズム | 対象患者のイメージ |
|---|---|---|
| ACE阻害薬・降圧薬 | 亜鉛キレート形成による吸収障害 | 高血圧の高齢患者 |
| 抗がん剤 | 唾液腺障害・舌乳頭萎縮 | がん治療中の患者 |
| 抗生剤(長期) | 口腔カンジダ増殖・味覚受容体への影響 | 慢性感染症の患者 |
| 抗うつ薬・精神薬 | 唾液分泌低下・口腔乾燥 | メンタル系疾患の患者 |
患者が「最近、味がしにくい」と訴えた際、服用中の薬のリストを確認することが初動として重要です。 これは対策の確認が1ステップで完結します。 midori-hp.or(https://midori-hp.or.jp/pharmacy-blog/web19_5_03/)
参考:薬の副作用による味覚障害のメカニズムと具体的な薬剤名の一覧が記載されています。
薬の副作用からくる味覚障害があるのをご存知ですか?|みどり病院
唾液は、食物中の味物質を溶解して味蕾まで運ぶ「溶媒」の役割を担っています。 唾液が少なければ、どれほど味蕾が正常でも味が届きません。 gori-shika(https://www.gori-shika.com/blogs/archives/1420)
口腔乾燥症(ドライマウス)は、加齢・薬剤・シェーグレン症候群・放射線治療後など多様な原因で起こります。 歯科臨床で出会う頻度は決して低くありません。 hidekazu-shika(https://hidekazu-shika.jp/medical/medical04.html)
また、歯周病患者が口臭を気にして舌を過剰に磨くケースも見られます。舌磨きのしすぎは、舌乳頭を傷つけて味覚低下を引き起こします。 これは歯科ならではの視点です。 musashikoganei-haisya(https://www.musashikoganei-haisya.com/%E3%80%90%E6%AD%A6%E8%94%B5%E5%B0%8F%E9%87%91%E4%BA%95%E3%81%AE%E6%AD%AF%E5%8C%BB%E8%80%85%E3%80%91%E6%AD%AF%E5%91%A8%E7%97%85%E3%81%8C%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E3%81%A7%E7%99%BA%E7%97%87%E3%81%99%E3%82%8B/)
ドライマウスへの対応として、院内では唾液腺マッサージの指導や保湿ジェルの使用案内が有効です。重症例ではシェーグレン症候群など全身疾患の可能性もあるため、内科・耳鼻咽喉科との連携が必要になる場面もあります。 gori-shika(https://www.gori-shika.com/blogs/archives/1420)
唾液減少が絡む味覚低下は、亜鉛補充だけでは改善しません。ドライマウスの評価を先に行うのが原則です。
参考:だ液の減少と味覚障害の関係・歯科でできるケアについて詳しく解説されています。
抜歯・インプラント・口腔外科処置などの歯科医療行為そのものが、味覚神経を傷つけて味覚低下を引き起こすことがあります。 患者にとっては「治療後から味がおかしくなった」という訴えになります。 oncology-assist(https://oncology-assist.jp/patient/taste-disorder/td01.php?certification=1)
下顎の抜歯(特に下顎第三大臼歯)の際に鼓索神経が損傷されると、舌前方2/3の味覚に障害が生じます。 発生頻度は低いものの、術前のインフォームドコンセントに含めておくべき情報です。 ajioka-dc(https://ajioka-dc.jp/blog/tooth/121/)
義歯(入れ歯)の装着も、味覚低下の一因となることがあります。 特に上顎全部床義歯は口蓋を広く覆うため、硬口蓋の感覚が遮断され、食べ物のテクスチャーや温度感覚が変わり、風味障害として感じられることがあります。 ajioka-dc(https://ajioka-dc.jp/blog/tooth/121/)
これは意外ですね。
不潔な義歯が口腔カンジダ症を引き起こし、それが舌炎→味覚低下へとつながるケースも存在します。 義歯の清潔管理の指導は、口腔ケアとしてだけでなく味覚保護の観点からも意味があります。 hirahata-clinic.or(https://www.hirahata-clinic.or.jp/telemedicine/20200623)
患者から「義歯を入れてから味が変わった」という申告があった場合、適合確認と同時にカンジダ感染のチェックも行うことが推奨されます。 hidekazu-shika(https://hidekazu-shika.jp/medical/medical04.html)
心因性の味覚低下は、歯科受診患者の中で最も割合が高く35.1%を占めるとされています。 しかし「気のせいでは?」と流してしまうと、患者の信頼を失います。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/hdnj/59708)
心因性の場合、うつ病・不安障害・心身症のような背景疾患が存在することが多く、精神科・心療内科との連携が必要です。 歯科単独での対応には限界があります。 yamanouchi-dc(https://yamanouchi-dc.com/column/oral-0334/)
糖尿病・慢性腎臓病・肝硬変・甲状腺疾患なども、味覚低下の全身疾患性原因として知られています。 これらは亜鉛の代謝異常を介して味覚障害を引き起こします。 do-yukai(https://www.do-yukai.com/medical/136.html)
日本の味覚障害患者は年間約24万人と報告されており(2003年全国調査)、女性に多く高齢者に多い傾向があります。 歯科は高齢患者と接触する頻度が高い診療科であることを考えると、全身疾患との接点として機能できる立場にあります。 do-yukai(https://www.do-yukai.com/medical/136.html)
問診票に「最近、食べ物の味がわかりにくい」という項目を追加するだけで、早期発見のきっかけをつくれます。 これは使えそうです。 gori-shika(https://www.gori-shika.com/blogs/archives/1420)
全身疾患が疑われる場合は、かかりつけ医や専門科への紹介という形でつなぐことが、歯科従事者としての適切な対応です。 多職種連携が患者にとっての最善につながります。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/hdnj/59708)
参考:歯科における味覚障害患者の主因分析(心因性・口腔疾患・亜鉛欠乏の割合)が詳しく報告されています。
味覚異常の2割は口腔疾患が主因で半数強に亜鉛以外の治療が必要|CareNet