前外側大腿皮弁(Anterolateral Thigh Flap:ALT)の主要な栄養血管は、外側大腿回旋動脈(lateral circumflex femoral artery)の下行枝です。 この下行枝は大腿動脈あるいは大腿深動脈から分岐し、大腿直筋と外側広筋の筋間中隔を下行しながら、複数の筋膜皮枝(穿通枝)を皮膚へ送ります。 動脈直径は2mm以上、血管茎(pedicle)の長さは8cm以上が一般的とされており、マイクロサージャリーにおいて十分な吻合操作が可能な血管径と長さを持ちます。 note(https://note.com/drtake/n/n7b68e2630bb3)
皮弁の最大サイズは20×15cmに及ぶという報告があり、大きな欠損部の再建にも対応できます。 つまり、組織量という点でALTは前腕皮弁と腹直筋皮弁のほぼ中間に位置する皮弁です。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679321278720)
口腔癌の切除後に生じた広範囲の粘膜・軟部組織欠損に対して、ALTは「薄くしなやか」という特性から特に口腔内再建との相性が高く評価されています。 採取部(ドナーサイト)の幅が8cm以内であれば一期的縫縮が可能で、大腿外側という比較的目立たない部位であることから整容面でも患者への負担が少ないです。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204837368192)
皮弁採取幅が8cmを超えると縫縮が難しくなる点は覚えておくべきです。
ある34例の臨床検討では、32皮島に含まれた穿通枝の総数は65本で、1皮島あたり平均2.0本でした。 そのうち外側広筋を貫くものが60本(92.3%)、筋間中隔を走行するものが5本(7.7%)という結果が報告されています。 ほとんどの症例で筋体内での穿通枝の剥離操作が必要ということです。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204837368192)
筋内穿通枝の剥離は技術的難度が高く、習熟が必要です。
筋肉内穿通枝を選択する際には、大腿直筋の剥離は避け、外側広筋を貫く穿通枝を確保することが重要とされています。 この操作を適切に行うためには、術前のカラードップラー検査や3D-CTアンギオグラフィー(3D-CTA)による穿通枝の位置確認が有効です。 術前評価を組み合わせることで、術中の想定外の事態を減らすことができます。 plaza.rakuten.co(https://plaza.rakuten.co.jp/shimpeichen77/diary/201010180001/)
外側大腿回旋動脈の下行枝は、一定の割合で欠損または低形成となる場合があります。報告によれば、34例中4例(11.8%)で下行枝の欠損が確認されています。 これは約10例に1例という決して稀ではない頻度です。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204837368192)
万が一ALTが挙上困難な場合、同一皮切で大腿筋膜張筋皮弁(TFL flap)への変更が可能という点も、術前計画に加えておきたい知識です。 zenniti(https://www.zenniti.com/im/727.html)
救済皮弁の準備が、リスク管理の基本です。
ALTは外側大腿回旋動脈を茎として用いることで、複数の組織を含む「連合皮弁」としての移植が可能です。 具体的には、腸骨・大腿筋膜張筋・外側広筋・大腿直筋・縫工筋を同時に移植できるため、複合的な欠損に対応できます。 note(https://note.com/drtake/n/n7b68e2630bb3)
頭頸部の一次再建に用いられる場合、外側大腿回旋動脈下行枝の血管茎長さは最大15cm程度に及ぶ報告もあります。 血管茎が長いほど、受容部血管(顔面動脈・上甲状腺動脈など)との吻合操作に余裕が生まれます。これは使えそうです。 plaza.rakuten.co(https://plaza.rakuten.co.jp/shimpeichen77/diary/201010180001/)
口腔外科・頭頸部外科領域においては、腫瘍切除後の広範な軟部組織欠損に対し、ALTによる遊離皮弁再建が標準的な選択肢の一つとして位置付けられています。 組織量・血管茎長・ドナー部の犠牲が少ない点が総合的な評価を高めています。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679321278720)
大腿筋膜を皮弁に含めることで、腹膜・硬膜・腱などの再建にも活用でき、皮弁の用途がさらに広がります。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204837368192)
口腔再建に関する詳細な術式と適応の考え方については、以下の論文が参考になります。
遊離前外側大腿皮弁による口腔再建術(日本口腔腫瘍学会誌):穿通枝皮弁としてのALTの適応・挙上手技・術前評価・成績について詳述されています。
ALTを安全に挙上するためには、術前の血管解剖評価が非常に重要です。具体的には3D-CTアンギオグラフィーやカラードップラー超音波による穿通枝の位置・数・走行ルートの確認が推奨されています。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679321278720)
術前評価なしで挙上を試みると、筋間中隔穿通枝がない場合に術中判断を迫られるリスクが高まります。実際に前述の34例では、全例で術前血管茎の画像検索なしに挙上を試みましたが、3例(8.8%)で術式または採取側の変更を余儀なくされています。 術前画像評価が「あれば安心」ではなく、「ないとリスク」という認識が大切です。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204837368192)
術前評価が1ステップ加わるだけで、手術計画の精度が大きく上がります。
手術の安全性向上のために、ハンドヘルドドップラーによる外来でのスクリーニングも有効な方法として知られています。皮弁中心点である上前腸骨棘と膝蓋骨外側縁の中点付近で穿通枝のドップラーシグナルを確認することで、挙上可能な穿通枝の有無を術前に把握できます。 plaza.rakuten.co(https://plaza.rakuten.co.jp/shimpeichen77/diary/201010180001/)
歯科口腔外科チームが再建外科チームと術前カンファレンスを行う際には、ALTの血管解剖破格に関するチェックリストを共有しておくと、手術全体の流れがよりスムーズになります。血管破格の有無・穿通枝タイプ(筋間中隔型か筋内型か)・血管茎長さの予測を事前に整理することが、連携医療の質を高めます。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679321278720)
前外側大腿皮弁を試みた34例の検討(日本マイクロサージャリー学会誌):穿通枝の剥離操作の実際・採取部幅・皮島面積・有茎皮弁の到達範囲について詳細なデータが掲載されています。