あなたが安い本体を選ぶと検査費が跳ねます。
次世代シーケンサーの価格比較で最初に見られがちなのは本体価格ですが、実務ではそこだけで決めると失敗しやすいです。なぜなら、装置本体は「要問い合わせ」が多く、実際の負担差は試薬代、1ランの出力量、相乗りのしやすさで大きく開くからです。つまり総額で見るべきです。
日本の公開情報でも、この傾向はかなりはっきりしています。たとえば名古屋大学のNextSeq 550受託では、1ランの試薬価格がMid Output Kit v2.5(150 Cycles)で237,710円、High Output Kit v2.5(150cycles)で623,000円、High Output Kit v2.5(300cycles)で999,000円と示されています。ここだけでも、同じNextSeq系でも使うキットで数十万円単位の差が出ることが分かります。 gene.nagoya-u.ac(https://www.gene.nagoya-u.ac.jp/sequence_02_02.html)
一方で、北海道大学の共通機器料金表では、Illumina iSeq100が300 cyclesで70,000円/回、MiSeqがV3-600 cyclesで230,000円/回、NextSeq1000がP1-300 cyclesで150,000円/回、P1-600 cyclesで230,000円/回と整理されています。小規模サンプルでiSeq100を回すのか、中規模以上でNextSeq1000を使うのかで、同じ「NGSを1回やる」でも費用感はまったく違います。結論は用途別です。 czc.hokudai.ac(https://www.czc.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2024/12/7.-%E3%80%90%E5%88%A5%E8%A1%A82%E3%80%91%E5%85%B1%E9%80%9A%E6%A9%9F%E5%99%A8%E5%88%A9%E7%94%A8%E6%96%99%E9%87%91%E8%A1%A8.pdf)
歯科医従事者が口腔細菌叢や16S解析を想定しているなら、深く読まなくてよいランに高出力機を当てるとコストが過剰になります。逆に、複数症例をまとめて比較したいのに低出力機を選ぶと再ランや追加外注の可能性が上がります。高出力が正義ではありません。
機種差を見るときは、「いくらで買えるか」より「どれだけ読めるか」を横に置いて比べるのがコツです。北海道大学の例では、iSeq100は1.2Gb・PE150で70,000円/回、MiSeqは15Gb・PE300で230,000円/回、NextSeq1000 P1-300は30Gb・PE150で150,000円/回です。数字で並べると、単純な安さより得意領域の違いが見えてきます。 czc.hokudai.ac(https://www.czc.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2024/12/7.-%E3%80%90%E5%88%A5%E8%A1%A82%E3%80%91%E5%85%B1%E9%80%9A%E6%A9%9F%E5%99%A8%E5%88%A9%E7%94%A8%E6%96%99%E9%87%91%E8%A1%A8.pdf)
歯科領域で多いアンプリコン解析や口腔内細菌叢の初期検討なら、毎回30Gb級の出力は過剰になりやすいです。少数症例の試験導入ではiSeq100や共有ランのほうが手堅く、症例数が増える段階でMiSeqやNextSeq系を再検討する流れが現実的です。小回りが重要です。
公開されている受託サービスでも、その差は価格に反映されています。ファスマックではMiSeq i100 Plusの共有解析が9万円、MiSeqが10万円、従来MiSeqが15万円、専有解析はMiSeq i100 Plusで36万円、MiSeq i100 Plus表記の別枠で40万円、MiSeqで45万円と案内されています。新機種が「本体は高そう」でも、実務の共有ラン価格は下がることがあるわけです。 fasmac.co(https://fasmac.co.jp/category_info/20837)
ここが意外な点です。古い装置や小さな装置のほうが安いと思い込むと、歯科医院や歯学部の研究室では逆に損をしやすいです。共有しやすい新機種のほうが、1検体当たりの支払いを抑えられる場面があります。新しいほど高いとは限りません。
歯科でNGSを使う場面は、装置購入より先に外注の比較から始まることが多いです。とくに口腔細菌叢、歯周病関連の微生物解析、インプラント周囲炎の菌叢比較では、院内に専任のバイオインフォ担当を置かずに進めたいケースが少なくありません。外注前提が基本です。
この点で参考になるのが、口腔常在微生物叢解析センターを起点にしたゲノムリードの案内です。同社は谷口歯科医院の口腔常在微生物叢解析センターとして2014年から受託を行ってきた背景を示し、メタ16S解析はFastq納品で7,000円(税込7,700円)からとしています。歯科に近い現場発の価格情報として、かなりイメージしやすい数字です。 genome-lead.co(https://genome-lead.co.jp)
ただし、ここで7,700円だけを見て判断するのは危険です。Fastq納品は生データ受け取りなので、解析結果の解釈、統計処理、図表化、臨床説明資料の作成は別工程になることが多いです。ここに時間差が出ます。
たとえば、歯周病患者群と健常群の菌叢比較をしたいのに、納品後の処理を研究室内で回せないと、結果説明まで数週間止まることがあります。外注費が安くても、院内会議や共同研究の進行が遅れれば人件費の損失は大きいです。解析範囲の確認が条件です。
そのため、見積もりでは「抽出後サンプルを渡すのか」「ライブラリ作製込みか」「Fastqのみか」「多様性解析やPCA図まで含むか」を1行ずつ確認したほうが安全です。リスクは追加費用です。追加費用を避ける狙いなら、最初に納品物一覧をメモする候補が有効です。
ランコストは、歯科の現場で最も見落とされやすい項目です。装置の比較表を見ても、本体価格は「お問い合わせ」としか書かれていないことが多く、代わりに実際の差を作るのは消耗品と試薬です。ここが原則です。
名古屋大学の公開料金では、解析のみの場合で約1000万リードのシングル81bpが11,600円、ペアエンド81bpが21,700円、約4000万リードのペアエンド150bpが131,000円となっています。読み方の違いだけで、1検体の負担感が大きく変わるのが分かります。 gene.nagoya-u.ac(https://www.gene.nagoya-u.ac.jp/sequence_02_02.html)
さらに同ページには、最短2週間以内、遅くとも1か月以内を目安に返却するとあります。院内の研究発表や学会抄録の締切が近いとき、この2週間と1か月の幅はかなり重いです。納期確認は必須です。 gene.nagoya-u.ac(https://www.gene.nagoya-u.ac.jp/sequence_02_02.html)
歯科領域の16S解析では、必ずしも最大リード数が必要ではありません。少数症例の予備検討で過剰な出力量を買うと、1症例あたりの単価が上がるだけで、臨床的な意思決定に必要な差が増えないこともあります。深ければ良いわけではありません。
ここで使える考え方があります。症例数が少ない、まず傾向を見たい、学会前の試験解析という場面なら、共有ランや小容量プランを優先する。逆に、経時変化を追う、複数群を比較する、共同研究で再解析まで見込むなら、最初から余裕のある出力量を選ぶ。この整理だけ覚えておけばOKです。
検索上位の記事は、本体価格や代表機種の一覧で終わることが多いです。ですが歯科医従事者にとって本当に差が出るのは、「1回の検査説明に使える結果まで、何日で、いくらで届くか」です。ここが独自視点です。
たとえば、外注費が1検体7,700円からでも、解析解釈が別、再現性確認で追加ラン、共同研究先とのフォーマット調整が必要となれば、実務上のコストはすぐ数倍になります。 逆に、共有解析が9万円でも、16サンプルをまとめて走らせ、図表まで一気に揃えば、1症例あたりの説明準備時間は大きく下がります。 genome-lead.co(https://genome-lead.co.jp)
この差は、数字以上に「診療外時間」を削るかどうかで効きます。たとえば抄録締切前の1週間は、歯科医師や歯科衛生士にとってチェアサイドの数時間分に相当する重さです。時間損失もコストです。
だから比較軸は4つで十分です。
・本体または外注の初期費用
・1ランまたは1検体の実費
・納期
・納品物の範囲
この4つで見れば、安いはずの選択肢が高くつく理由が見えてきます。意外ですね。
次世代シーケンサーを院内導入するか、外注で回すかを迷う場面では、サンプル数が月に何本かを先に決めると判断しやすいです。月数本なら外注優位、月数十本で継続運用と解析人材が確保できるなら導入検討、という考え方が現実的です。件数基準が基本です。
歯科の研究や自費診療の新サービス化では、まず小規模外注でワークフローを固め、その後に装置や提携先を見直す順番が失敗しにくいです。いきなり本体価格で比較し始めるより、結果説明までの全工程を先に描いたほうが、結果的に安く、速く、続けやすくなります。あなたが確認すべきは総費用です。
参考になる公開料金の比較部分です。
名古屋大学遺伝子実験施設 NextSeq550受託解析サービス
機種ごとの1回利用料金を把握しやすい資料です。
北海道大学 共通機器利用料金表
歯科に近い口腔常在微生物叢解析の受託背景と価格目安の参考です。
ゲノムリード株式会社
MiSeq i100 Plusと共有解析価格の比較に使える参考です。
ファスマック MiSeq i100 Plus導入案内