非歯原性腫瘍分類と種類別診断治療

非歯原性腫瘍の分類体系と各腫瘍の特徴をわかりやすく解説。上皮性・非上皮性の違いや好発部位、画像診断のポイントまで、歯科医療従事者が押さえるべき鑑別診断の知識は十分でしょうか?

非歯原性腫瘍の分類と種類

良性の非歯原性腫瘍は確実に摘出すれば再発しない、そう思っていませんか?


この記事の3ポイント要約
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上皮性と非上皮性に大別される分類体系

非歯原性腫瘍は上皮性(乳頭腫)と非上皮性(血管腫、リンパ管腫、線維腫など)に分類され、発生部位や組織由来により治療法が異なります

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歯原性腫瘍との鑑別診断が重要

顎骨内発生の有無や画像所見、発生部位の違いから鑑別を行い、CT・MRI検査で正確な診断を確定します

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腫瘍の種類により治療法を選択

基本は外科的切除ですが、血管腫では硬化療法や凍結療法など非侵襲的治療も選択肢になります


非歯原性腫瘍の基本的な分類体系


非歯原性腫瘍は、歯の形成に関与しない組織から発生する腫瘍の総称です。身体の他の部位にも発生する一般的な腫瘍と同じ性質を持っており、口腔・顎・顔面領域にも多様な種類が発生します。


分類の基本は組織の由来によって決まります。上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍の2つに大別されるのが原則です。上皮性腫瘍の代表例は乳頭腫で、粘膜表面の上皮細胞から発生します。一方、非上皮性腫瘍には血管腫、リンパ管腫、筋腫、骨腫、軟骨腫、脂肪腫、線維腫、神経系腫瘍など、極めて多様な種類が含まれます。


これらの腫瘍は顎骨内以外の軟組織にできることが多いのが特徴です。舌、口底部、歯肉、頬粘膜など、比較的目視で確認しやすい場所に発生する傾向があります。このため、視診や触診での早期発見が可能なケースも少なくありません。


WHO分類では2017年に歯原性腫瘍の分類が改訂され、2022年にはさらに細分化されました。非歯原性腫瘍についても、この分類体系の中で明確に位置づけられています。日本臨床口腔病理学会が標準和名を定めており、診断時にはこれに準拠した病名を用いることが推奨されています。


つまり組織由来が基本です。


頻度としては乳頭腫と線維腫が最も多く、次いで血管腫が続きます。リンパ管腫、脂肪腫、化骨性線維腫なども臨床でしばしば遭遇する腫瘍です。それぞれに特徴的な臨床所見や画像所見があり、経験を積むことで鑑別診断の精度が向上します。


診断にあたっては、臨床所見だけでなく画像検査と病理組織検査の組み合わせが不可欠です。パノラマX線写真、CT、MRIなどの画像診断で腫瘍の位置、大きさ、周囲組織との関係を把握し、最終的には病理組織学的検査で確定診断を行います。


WHO分類(2017年版)疾患標準和名については日本口腔外科学会の資料が参考になります


非歯原性腫瘍の上皮性腫瘍の種類

上皮性の非歯原性腫瘍で最も代表的なものが乳頭腫です。口腔粘膜の表層上皮が乳頭状に増殖して形成される良性腫瘍で、表面に小さな突起が多数集まったような外観を呈します。


触れるとやや硬く、通常は痛みを伴いません。


乳頭腫は口腔内のさまざまな部位に発生しますが、特に軟口蓋、舌、頬粘膜に好発します。サイズは数ミリから1センチ程度のものが多く、通常は単発性です。色調は周囲粘膜とほぼ同じか、やや白っぽく見えることもあります。


発生原因については、慢性的な機械的刺激やヒトパピローマウイルス(HPV)の関与が指摘されています。特に義歯の不適合や尖った歯による持続的な刺激がある部位に発生しやすい傾向があります。中年以降の患者に多く見られますが、年齢を問わず発症する可能性があります。


診断は視診と触診で比較的容易ですが、悪性腫瘍との鑑別が重要です。表面が不整で出血しやすい場合や、急速に増大する場合は悪性の可能性も考慮する必要があります。確定診断には病理組織検査が必須で、摘出標本を顕微鏡で観察して良性であることを確認します。


良性と確認できればOKです。


治療は外科的切除が基本です。局所麻酔下で腫瘍を周囲の健常組織を含めて完全に切除します。切除後の再発はまれですが、刺激因子が残っている場合は再発のリスクがあります。義歯の調整や歯の研磨など、原因となる刺激を除去することも重要な予防策になります。


切除した組織は必ず病理組織検査に提出して、悪性所見がないことを確認します。まれに悪性転化の報告もあるため、良性と診断されても定期的な経過観察が推奨されます。


非歯原性腫瘍の血管性・リンパ管性腫瘍

血管腫は血管組織から構成される良性腫瘍で、口腔領域では舌に最も多く発生します。表面が青紫色や暗赤色を呈し、圧迫すると一時的に退色する特徴があります。この退色現象は血管腫の診断において重要な所見です。


血管腫には毛細血管腫、海綿状血管腫、動静脈性血管腫の3つのタイプがあります。毛細血管腫は表層の細い血管が増生したもので、比較的小さく境界明瞭です。海綿状血管腫は深部の太い血管が拡張したもので、柔らかく圧縮可能な腫瘤として触知されます。動静脈性血管腫は動脈と静脈が直接つながる異常で、拍動を触れることがあります。


乳児期に発見される血管腫は「乳児血管腫」と呼ばれ、自然退縮する可能性があります。生後数週間から数か月で急速に増大し、その後数年かけて自然に縮小することが多いため、経過観察が選択されることもあります。しかし成人の血管腫は自然退縮しないため、治療が必要になります。


治療法は血管腫のタイプとサイズによって異なります。


小さな血管腫では硬化療法が有効です。


これは血管腫内に硬化剤を注入して血管を閉塞させる方法で、比較的侵襲が少ない治療です。OK-432(ピシバニール)やエタノールなどが硬化剤として使用されます。


サイズが大きい場合は手術が必要です。


大きな血管腫や深部に及ぶものでは外科的切除が選択されます。ただし血管腫は出血のリスクが高いため、術前に塞栓療法を行って血流を遮断してから切除することもあります。レーザー治療や凍結療法も選択肢になりますが、深部病変には効果が限定的です。


リンパ管腫はリンパ管組織から構成される良性腫瘍で、頸部や舌に好発します。柔らかく波動を触れる腫瘤として認識され、透光性があるのが特徴です。感染を繰り返すと徐々に硬くなり、治療が困難になることがあります。


治療は外科的切除が基本ですが、周囲組織への浸潤傾向があるため完全切除が難しい場合もあります。不完全な切除では再発のリスクが高くなります。近年はOK-432による硬化療法も選択肢として確立されており、特に嚢胞性リンパ管腫では良好な成績が報告されています。


血管腫・血管奇形の詳細な診療ガイドライン2022年版が参考になります


非歯原性腫瘍の間葉系腫瘍の特徴

線維腫は線維性結合組織から構成される良性腫瘍で、口腔内では非常に頻度の高い腫瘍です。頬粘膜、歯肉、舌に好発し、表面が平滑で境界明瞭な硬い腫瘤として触知されます。色調は周囲粘膜と同じか、やや白っぽく見えることがあります。


慢性的な機械的刺激が原因と考えられており、義歯や不良補綴物、歯の鋭縁による持続的な刺激がある部位に発生しやすい傾向があります。咬合線に沿って発生する線維腫は「頬粘膜線維腫」と呼ばれ、特に頻度が高いものです。


成長は緩徐で、通常は痛みを伴いません。


歯肉に発生する線維性の増殖性病変は「エプーリス」と総称されます。エプーリスには線維性エプーリス、肉芽腫性エプーリス、骨性エプーリスなどの種類があり、それぞれ組織学的特徴が異なります。特に妊娠中の女性に発生する「妊娠性エプーリス」は、ホルモンの影響で急速に増大することがあります。


つまり刺激が原因です。


治療は外科的切除が基本です。局所麻酔下で腫瘍を基部から完全に切除します。刺激因子が残っていると再発のリスクがあるため、義歯の調整や不良補綴物の除去など、原因の除去も同時に行う必要があります。


切除後の再発率は低く、予後は良好です。


脂肪腫は脂肪組織から構成される柔らかい腫瘍で、頬粘膜や口底に好発します。黄色がかった色調を呈し、触診で柔らかく可動性があるのが特徴です。緩徐に増大しますが、一定のサイズで成長が停止することも多く、無症状であれば経過観察も選択肢になります。


骨腫は骨組織から構成される硬い腫瘍で、下顎や上顎の骨表面に発生します。外骨症とも呼ばれ、骨の表面に硬い隆起として触知されます。通常は無症状ですが、義歯の装着に支障をきたす場合や審美的な問題がある場合は切除を検討します。特にガードナー症候群という遺伝性疾患では多発性の骨腫が特徴的な所見です。


軟骨腫は軟骨組織から構成される腫瘍で、口腔領域では比較的まれです。硬口蓋や下顎に発生することがあり、硬い腫瘤として触知されます。画像検査で石灰化像が認められることが診断の手がかりになります。治療は外科的切除で、完全切除されれば再発はまれです。


非歯原性腫瘍と歯原性腫瘍の鑑別診断のポイント

鑑別診断の第一歩は発生部位の確認です。歯原性腫瘍は顎骨内に発生することが多いのに対し、非歯原性腫瘍は顎骨外の軟組織に発生する傾向があります。舌、口底、頬粘膜など目視可能な部位に腫瘤が認められる場合は、まず非歯原性腫瘍を疑います。


画像診断における所見の違いも重要です。パノラマX線写真で顎骨内に透過像や不透過像が認められる場合は歯原性腫瘍の可能性が高くなります。一方、顎骨に異常所見がなく軟組織のみに病変が限局している場合は非歯原性腫瘍が疑われます。


CT検査では骨との関係がより明確になります。歯原性腫瘍では顎骨の膨隆や破壊、皮質骨の菲薄化などが認められます。埋伏歯との関連や歯根吸収の有無も重要な所見です。非歯原性腫瘍では骨への影響が少なく、軟組織内に限局した病変として描出されます。


MRI検査は軟組織の評価に優れています。T1強調像、T2強調像での信号強度パターンから組織性状を推定できます。血管腫では血流が豊富なため造影効果が著明です。脂肪腫はT1強調像で高信号を呈し、脂肪抑制画像で信号が抑制されるため診断が比較的容易です。


骨への影響は決定的です。


臨床所見からの鑑別も可能です。非歯原性腫瘍は視診や触診で直接観察できることが多く、色調、表面性状、硬さ、可動性などの情報が得られます。血管腫の青紫色、脂肪腫の黄色がかった色調、線維腫の硬い感触など、各腫瘍に特徴的な所見があります。


歯との位置関係も鑑別のポイントです。歯原性腫瘍は埋伏歯と連続していることが多く、歯の位置異常や萌出障害を伴うことがあります。一方、非歯原性腫瘍は歯とは独立して存在し、歯の位置や萌出には影響を与えません。


病理組織学的検査は最終的な確定診断に不可欠です。歯原性腫瘍では歯原性上皮や歯原性間葉組織の増殖が認められますが、非歯原性腫瘍では一般的な結合組織、血管組織、脂肪組織などの増殖が主体です。組織型の同定により両者を明確に区別できます。


鑑別が困難な症例では、複数の専門医による検討が推奨されます。口腔外科医、放射線科医、病理医が連携して総合的に判断することで、診断精度が向上します。特に悪性腫瘍との鑑別が必要な場合は、慎重な評価が求められます。


日本口腔外科学会の良性腫瘍解説ページが臨床での鑑別診断に有用です




顔面頭蓋腫瘍アトラス: 歯原性および非歯原性腫瘍 D■SAK中央登録より