埋伏歯親知らず保険適用で費用負担軽減の仕組み

埋伏した親知らずの抜歯は保険適用されるのでしょうか?診療報酬点数や民間保険の給付金、自費診療になるケースなど、歯科医療従事者が押さえるべき費用と保険の知識を詳しく解説します。

埋伏歯親知らず保険の仕組み

矯正目的の親知らず抜歯は全額自己負担になります。


📋 埋伏歯親知らず保険の3ポイント
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健康保険の適用範囲

治療目的の埋伏歯抜歯は保険適用で3割負担。埋伏歯は1,080点(約3,240円)で算定される。

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民間保険の給付金条件

顎骨に及ぶ埋伏歯抜歯は手術給付金の対象となる場合がある。 通常の抜歯は給付対象外。

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保険適用外になるケース

歯列矯正目的や予防的抜歯は自費診療。静脈内鎮静法も保険適用外で数万円の追加費用。


埋伏歯親知らずの保険適用条件


埋伏歯の親知らず抜歯では、健康保険が適用されるケースと適用外になるケースが明確に分かれています。保険適用の基本原則は「治療が必要な医学的理由がある場合」です。


完全に骨の中に埋まっている埋伏歯であっても、痛みや炎症がある場合、虫歯になっている場合、周囲の歯に悪影響を及ぼしている場合には、健康保険が適用されます。


つまり保険適用です。


診療報酬点数表では、埋伏歯の抜歯は1,080点と設定されており、3割負担の患者では約3,240円の自己負担となります。さらに下顎の完全埋伏智歯(骨性)または下顎水平埋伏智歯の場合には、130点が加算され、合計1,210点(約3,630円)となる仕組みです。


この点数には基本的な抜歯手術の費用が含まれていますが、実際の治療では初診料や再診料、パノラマレントゲンやCT撮影などの画像診断料、投薬料なども別途必要になります。CT撮影は保険適用で3,000円から4,000円程度(3割負担時)、パノラマレントゲンは1,000円から2,000円程度が一般的な相場です。


骨を削除したり歯冠を分割したりする難抜歯の場合には、難抜歯加算として230点(約690円)が追加されます。これらを合計すると、埋伏歯の抜歯では1本あたり5,000円から10,000円程度の自己負担が発生することが多いといえます。


患者負担を軽減するため、高額療養費制度の活用も検討できます。ただし親知らず抜歯単独では高額療養費の対象になることは稀で、入院を伴う場合や他の治療と組み合わせた場合に該当する可能性があります。


今日の臨床サポート:K404 抜歯手術の診療報酬点数詳細


埋伏歯抜歯で民間保険が適用されるケース

民間の医療保険では、通常の抜歯は手術給付金の対象外とされていますが、埋伏歯の抜歯は例外的に給付対象になる場合があります。


保険会社によって判断基準が異なりますが、一般的には「公的医療保険制度における医科診療報酬点数表または歯科診療報酬点数表で埋伏歯の抜歯として算定される手術」が支払対象とされることが多いです。具体的には、抜歯の操作が顎骨に及ぶ場合が該当します。


県民共済では、埋伏歯の骨削りを伴う抜歯や入院時の抜歯については「口腔外科手術」として給付金が支払われる場合があります。手術給付金の倍率は保険商品によって異なりますが、10倍から20倍程度が一般的です。


全身麻酔下での入院抜歯の場合、入院給付金と手術給付金の両方が支給される可能性が高くなります。入院期間は通常1泊2日程度で、この場合は日額5,000円の入院給付金であれば10,000円、手術給付金が10万円といった給付を受けられることがあります。


ただし、明治安田生命などの保険会社では「埋伏歯(親知らずなど)の摘出、また、虫歯・歯周病治療による抜歯などの抜歯術のみは、手術給付金のお支払い対象になりません」と明記されているケースもあり、各保険会社の約款を確認することが重要です。


患者に民間保険の適用を案内する際は、保険証券や約款を確認するよう促し、必要に応じて診断書や手術記録の提供が必要になることを伝えましょう。診断書作成には通常3,000円から5,000円程度の文書料が発生します。


ひまわり生命:口腔外科での抜歯術と手術給付金の支払い基準


埋伏歯親知らずで自費診療になる場合

保険適用の原則は治療目的ですが、美容目的や予防目的の場合は自費診療となります。最も典型的なのが歯列矯正を目的とした親知らずの抜歯です。


歯列矯正治療の一環として親知らずを抜く場合、その抜歯は矯正治療の一部と見なされるため保険適用外となります。自費診療では1本あたり5,000円から15,000円程度が相場で、難抜歯の場合はさらに高額になることもあります。


現在症状がなく、将来的なリスク回避のためだけに行う予防的抜歯も、原則として自費診療です。ただし実際には「智歯周囲炎の既往あり」などの病名を付けることで保険請求されるケースも存在しますが、これは査定リスクがあります。


社会保険診療報酬支払基金の審査では「原則として、智歯周囲炎(Perico)病名で埋伏歯抜歯の算定は認めない」とされており、明確な医学的根拠が必要です。


静脈内鎮静法を選択した場合も、多くのケースで自費扱いになります。静脈内鎮静法は治療中の快適性を高めることが主目的と見なされるため、麻酔法そのものは保険適用外で、5万円から10万円程度の追加費用が発生します。ただし抜歯手術自体は保険適用となることがあります。


保険証を持参しなかった場合、10割負担の自費診療となり、1回あたり1万円以上の費用がかかります。後日保険証を提示して差額の返金を受けることは可能ですが、手続きに時間がかかります。


自費診療の場合、治療内容や費用が医院ごとに自由に設定されるため、事前に見積もりを提示して患者の同意を得ることが重要です。インフォームドコンセントの徹底が医療訴訟のリスクを減らします。


埋伏歯親知らず抜歯の難易度別費用

埋伏歯の親知らず抜歯は、生え方や埋伏の程度によって難易度が大きく異なり、それに応じて診療報酬点数も変わります。


最もシンプルなのは、歯冠の一部が歯肉から露出している半埋伏歯で、周囲の軟組織を切開するだけで抜歯できる場合です。このケースでは臼歯の抜歯として270点(約810円)で算定され、難抜歯加算230点を加えても合計500点(約1,500円)程度です。


完全に骨の中に埋まっている完全埋伏歯では、歯肉を切開・剥離し、歯を覆っている骨をドリルで削除する必要があります。骨の削除量が多いほど術後の腫れや痛みも強くなります。この場合は埋伏歯として1,080点が算定されます。


最も難易度が高いのは、下顎の水平埋伏智歯で、歯が完全に横向きに倒れ込んで隣の歯を押している状態です。この場合、骨削除に加えて歯冠と歯根を分割して取り出す必要があり、手術時間も30分から60分程度かかります。下顎埋伏智歯加算130点が加わり、合計1,210点(約3,630円)となります。


さらに、歯根が湾曲していたり、下顎管(神経や血管が通る管)に近接している場合は、神経損傷のリスクが高まるため、CT撮影による詳細な術前評価が不可欠です。CT撮影費用は保険適用で3,500円から4,000円程度です。


歯根が骨と癒着している場合、通常の脱臼操作では抜けないため、周囲の骨をさらに広範囲に削除したり、歯根自体を細かく分割する必要があります。このような超難抜歯では、手術時間が1時間以上に及ぶこともあり、術後の腫れも強くなります。


札幌医科大学などの一部の施設では、難易度の高い埋伏智歯に対して「2回法」を採用しています。1回目の手術で歯冠部分のみを抜去し、数カ月後に残した歯根が移動してから抜去する方法で、神経損傷のリスクを大幅に減らせます。


札幌医科大学:親知らず抜歯の2回法について


埋伏歯親知らずの抜歯でCT撮影が必要な理由

埋伏智歯の抜歯前には、画像診断が必須です。通常のパノラマレントゲンでは2次元の情報しか得られませんが、CT撮影では3次元的な位置関係を正確に把握できます。


特に重要なのが下顎管との位置関係です。下顎管は下顎骨の中を走る神経と血管の通り道で、ここを損傷すると下唇や顎のしびれ(知覚麻痺)が生じます。このしびれは数カ月から数年続くこともあり、場合によっては永続的な後遺症になることがあります。


CT撮影により、埋伏智歯の歯根と下顎管の距離が2mm以下の場合、神経損傷のリスクが高いと判断されます。このような場合、抜歯のタイミングを再検討したり、前述の2回法を選択したり、あるいは大学病院などの専門施設への紹介を検討します。


CT撮影のもう一つの利点は、歯根の形態や本数を正確に把握できることです。親知らずの歯根は通常2本ですが、3本や4本に分かれていたり、逆に1本に癒合していたり、湾曲や屈曲が強い場合もあります。術前にこれを把握しておくことで、手術計画を立てやすくなります。


保険診療におけるCT撮影の算定には、明確な医学的必要性が求められます。「難抜歯が予想される埋伏智歯で、下顎管との位置関係を確認する必要がある」といった具体的な理由をカルテに記載することが、査定を避けるポイントです。


CT撮影の費用は、撮影範囲によって異なります。部分的な撮影(埋伏智歯周囲のみ)であれば3,500円程度、全顎撮影では4,000円から4,500円程度(いずれも3割負担時)が相場です。


患者への説明では、CT撮影の必要性だけでなく、被曝量についても言及すると信頼を得やすくなります。歯科用CTの被曝量は医科用CTの約10分の1で、パノラマレントゲンの数倍程度です。


健康への影響は極めて小さいといえます。


埋伏歯親知らず抜歯で入院が必要になるケース

通常の埋伏智歯抜歯は外来で日帰り手術として行われますが、特定の条件下では入院が必要になることがあります。入院が必要な場合でも、健康保険が適用されます。


最も多い入院理由は、4本の埋伏智歯を全身麻酔下で一度に抜歯する場合です。全身麻酔を使用すると、患者は完全に意識がない状態で手術を受けられるため、治療への恐怖心が強い患者や、嘔吐反射が強くて局所麻酔での処置が困難な患者に適しています。


全身麻酔下での抜歯は保険適用で、麻酔費用は3割負担で約24,000円(血液検査料込み)程度です。これに抜歯費用が加算され、入院費用は1泊あたり1万円から2万円程度が相場です。合計すると1泊2日の入院で7万円から13万円程度の自己負担になります。


全身状態に問題がある患者も入院抜歯の対象になります。心疾患や糖尿病などの基礎疾患があり、外来での抜歯でリスクが高いと判断される場合、入院下でのモニタリングが推奨されます。


深く埋まった埋伏智歯で、下顎管損傷のリスクが高い場合や、術中の大量出血が予想される場合も、入院設備のある施設での抜歯が望ましいです。万が一の合併症に迅速に対応できる環境が重要です。


入院期間は通常1泊2日から2泊3日程度ですが、術後の経過によっては延長されることもあります。入院中は抗生剤の点滴投与や、痛みのコントロール、食事摂取状況の確認などが行われます。


民間の医療保険では、入院を伴う埋伏智歯抜歯は入院給付金と手術給付金の両方が支給される可能性が高いです。外来での抜歯では給付対象外でも、入院すれば給付されるケースがあるため、患者には事前に保険会社への確認を促すとよいでしょう。


デンタル・オーラルサージェリー:全身麻酔での親知らず抜歯の詳細




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