class ii / 陰性(nilm)の診断基準と臨床的な判断のポイント

口腔細胞診でclass ii / 陰性(nilm)と判定されたとき、本当に安心してよいのでしょうか?その意味と臨床的な落とし穴、フォローアップ方法を詳しく解説します。

class ii / 陰性(nilm)の診断基準と臨床での対応ポイント

「NILM=完全に問題なし」と思い込むと、見落としが起きることがあります。


🦷 この記事の3つのポイント
🔬
Class II / NILMとは何か

従来のクラス分類とベセスダシステムの対応関係、それぞれの定義と限界を整理します。

⚠️
見逃しリスクと再検査のタイミング

NILMと判定されても口腔癌が1例見つかったデータも存在します。判定限界と対応策を解説。

📋
歯科臨床でのフォローアップ戦略

再検査間隔の設定方法、組織診との使い分け、記録管理の実務的な注意点を説明します。


class ii / 陰性(nilm)の定義:従来分類との対応関係



口腔細胞診では、長年にわたって「クラス分類(ClassⅠ〜Ⅴ)」が使われてきました。 その中でClass IIは「異型細胞は認めるが、悪性ではない良性変化」を示すカテゴリーです。 一方、近年の細胞診報告様式ではベセスダシステムが推奨されるようになり、Class IおよびClass IIに相当する所見は「NILM(Negative for Intraepithelial Lesion or Malignancy)=陰性」と表記されます。 cda.or(https://www.cda.or.jp/wp-content/uploads2/2022/02/%E3%80%90%E9%85%8D%E5%B8%83%E8%B3%87%E6%96%99%E3%80%91%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%A8%BA%E3%81%AE%E5%AE%9F%E9%9A%9B%E5%8D%83%E8%91%89%E7%9C%8C%E6%AD%AF%E7%A7%91%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E4%BC%9A2021.1.21.pdf)


NILMという略語は「上皮内病変または悪性腫瘍を示唆する所見なし」という意味であり、子宮頸がん検診で広く使われてきた国際標準分類です。 口腔細胞診においても、従来のクラス分類の曖昧さを解消する目的で同様の概念が導入されています。 つまり「Class II = NILM(陰性)」は同等の意味として扱われます。 mymc(https://mymc.jp/clinicblog/293250/)


以下の表で、クラス分類とベセスダシステムの対応を整理します。


クラス分類 ベセスダシステム 臨床的意味
Class I NILM 正常細胞のみ
Class II NILM 良性変化・炎症など
Class IIIa ASC-US / LSIL 軽度異形成疑い
Class IIIb ASC-H / HSIL 高度異形成疑い
Class IV HSIL / SCC 悪性の可能性が高い
Class V SCC / Malignant 悪性腫瘍


Class IIには「炎症性変化」「修復反応」「カンジダ感染」「機械的刺激による反応性変化」など、幅広い良性所見が含まれます。 これが後述するフォローアップ上の注意点につながります。 ctjsc(https://www.ctjsc.com/ctjsc_cms/assets/uploads/2024/11/%E5%8F%A3%E8%85%94%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%A8%BA%E3%81%AE%E4%BB%8A%E3%83%BB%E5%89%8D%E7%B7%A8.pdf)


class ii / 陰性(nilm)の限界:「陰性=安全」ではない理由

ここが最も重要な臨床的ポイントです。短くまとめると、NILMは「今回の検体から悪性を示す細胞が検出されなかった」という意味であり、「病変がない」という証明ではありません。


松本歯科大学病院の報告では、口内炎などの症例において細胞診でClass IIIが3例、Class IIが12例、Class Iが8例、NILMが4例と判定されたケースのうち、生検を施行した8例の中に上皮内癌が1例含まれていました。 この1例の細胞診結果はClass IIIでしたが、NILMやClass IIと判定された病変でも組織診との乖離が生じうることを示しています。 oralcancer(https://www.oralcancer.jp/images/nagano_symp2018-02.pdf)


細胞診の限界として以下が挙げられます。


  • 🔬 サンプリングエラー:病変部位から細胞が十分に採取されない場合がある
  • 🦠 炎症の影響:カンジダや炎症細胞が混在すると、NILMとLSILの鑑別が難しくなる
  • ctjsc(https://www.ctjsc.com/ctjsc_cms/assets/uploads/2024/11/%E5%8F%A3%E8%85%94%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%A8%BA%E3%81%AE%E4%BB%8A%E3%83%BB%E5%89%8D%E7%B7%A8.pdf)

  • 📐 観察者間差:Class IIには解釈の幅があり、施設や担当者によって判定が異なることがある
  • ⏱️ 時間的変化:採取時点でNILMでも、その後病変が進行・出現する場合がある


特に口腔では、義歯の慢性刺激、喫煙、アルコール摂取などのリスク因子がある患者において、NILMと判定されても安心せず、定期的な再評価が推奨されます。 これが基本原則です。 cda.or(https://www.cda.or.jp/wp-content/uploads2/2022/02/%E3%80%90%E9%85%8D%E5%B8%83%E8%B3%87%E6%96%99%E3%80%91%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%A8%BA%E3%81%AE%E5%AE%9F%E9%9A%9B%E5%8D%83%E8%91%89%E7%9C%8C%E6%AD%AF%E7%A7%91%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E4%BC%9A2021.1.21.pdf)


参考資料として、日本歯科医師会による細胞診の配布資料が公開されています。


口腔細胞診の判定区分と臨床対応についての詳細資料(日本歯科医師会)。
https://www.cda.or.jp/wp-content/uploads2/2022/02/


class ii / 陰性(nilm)と口腔癌リスク:臨床的に見逃せないポイント

口腔癌は日本国内で年間約7,000件以上が新規診断される疾患であり、5年生存率は全体で約50〜60%とされています。 早期発見が予後を大きく左右するため、NILMという判定結果を「問題なし」と即断することは危険です。 ctjsc(https://www.ctjsc.com/ctjsc_cms/assets/uploads/2024/11/%E5%8F%A3%E8%85%94%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%A8%BA%E3%81%AE%E4%BB%8A%E3%83%BB%E5%89%8D%E7%B7%A8.pdf)


NILMと判定されながらも注意が必要なケースには、以下のような特徴があります。


  • 🚬 喫煙歴・飲酒歴がある患者(特に両方該当する場合は口腔癌リスクが顕著に上昇)
  • 👅 白板症紅板症などの前癌病変が既往または現在認められる
  • 📅 6か月以上治癒しない潰瘍が存在する
  • 🦷 義歯・不良補綴物による慢性刺激が継続している
  • 🧬 HPV感染歴がある(特に口腔・咽頭領域では HPV-16が関与)


こうしたハイリスク症例では、NILMであっても3か月以内の再細胞診、または積極的に組織生検を検討することが望まれます。 細胞診と組織診の併用が最も確実な確認手段です。 oralcancer(https://www.oralcancer.jp/images/nagano_symp2018-02.pdf)


ロシュ・ダイアグノスティクスが公開している口腔細胞診の診断ポイント資料も参考になります。


口腔細胞診の診断ポイント(ロシュ・ダイアグノスティクス)。
https://diagnostics.roche.com/content/dam/diagnostics/jp/pdf/pathology/expert/document/mc-jp-06529.pdf


class ii / 陰性(nilm)に対するフォローアップの実際

Class II / NILMと判定された場合の標準的な対応は、一般的に「6か月後の再細胞診」とされています。 ただしこれはあくまでリスクのない症例の基準です。フォローアップ間隔は患者ごとのリスク層別化に基づいて設定する必要があります。 falco.co(https://www.falco.co.jp/rinsyo/contents/pdf/252801.pdf)


実際の臨床では次のような指針が参考になります。


  • 低リスク患者(喫煙なし・リスク因子なし・異常所見なし):1年後の定期検査を継続
  • ⚠️ 中リスク患者(軽度炎症・局所刺激・喫煙あり):3〜6か月後に再細胞診
  • 🔴 高リスク患者(前癌病変疑い・慢性潰瘍・複数リスク因子):3か月以内に再評価または組織生検を検討


フォローアップ時の記録管理についても注意が必要です。単に「NILM」と記録するだけでなく、採取部位・範囲・肉眼的所見・患者の自覚症状を合わせて記録することで、次回診察時との比較が容易になります。これは診断精度の向上だけでなく、万が一の紛争時の証拠としても機能します。


細胞診結果の経時的な変化を記録するフォーマットは、日本臨床細胞学会のガイドラインを参考に院内で整備することが推奨されます。 記録の整備が基本です。 ir.tdc.ac(https://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/5809/1/14_35.pdf)


日本臨床細胞学会のJournal(口腔細胞診関連論文)。


class ii / 陰性(nilm):歯科特有の落とし穴と独自の対応視点

ここでは検索上位記事には少ない、歯科臨床ならではの視点を取り上げます。


口腔細胞診が対象とする部位には、舌・頬粘膜・口底・歯肉・口蓋・口唇など多様な部位があります。部位によって正常細胞の形態が異なるため、同じNILMという判定でも解釈のニュアンスが変わります。たとえば口底や舌腹は比較的上皮が薄く、採取できる細胞数が少ないため、サンプリングの質が判定結果に大きく影響します。 diagnostics.roche(https://diagnostics.roche.com/content/dam/diagnostics/jp/pdf/pathology/expert/document/mc-jp-06529.pdf)


また、義歯装着患者では義歯辺縁による慢性刺激性の変化が細胞に現れやすく、NILMの中に反応性変化が含まれやすい傾向があります。これをNILMと正しく判定できるか、またはLSILやASC-USに近い変化として評価すべきかは、採取医と判定医の連携が不可欠です。


さらに、口腔では抗菌薬・ステロイド・免疫抑制剤を使用している患者も多く、これらが細胞形態に変化をもたらすことが知られています。薬剤使用歴を細胞診依頼伝票に記載することは非常に重要ですが、実際には省略されるケースが少なくありません。 伝票への薬剤情報の記載は必須事項として認識してください。 ctjsc(https://www.ctjsc.com/ctjsc_cms/assets/uploads/2024/11/%E5%8F%A3%E8%85%94%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%A8%BA%E3%81%AE%E4%BB%8A%E3%83%BB%E5%89%8D%E7%B7%A8.pdf)


以下のような場合は、たとえNILMであっても追加検査を強く推奨します。


  • 💊 免疫抑制剤・抗がん剤使用中の患者
  • 🦷 2週間以上改善しない難治性口腔粘膜病変
  • 📍 複数部位に同時に非特異的変化が見られる場合
  • 🔁 過去に悪性または前悪性病変の治療歴がある場合


総合的に判断すると、Class II / NILMという結果は「一時的な安心」であって「永続的な保証」ではないということです。臨床では「陰性が出たから終わり」ではなく、「次のアクションへのスタートライン」として捉える姿勢が求められます。


| クラス | 名称 | 特徴 |
| -------------- | ------------------------ | ------------------------- |
| MAL/1(Class 1) | Neutroclusion | 顎の長さは正常・個別歯の位置異常 |
| MAL/2(Class 2) | Mandibular distocclusion | 下顎が後方位・上顎犬歯が口蓋を外傷することが多い |
| MAL/3(Class 3) | Mandibular mesiocclusion | 下顎が前方位・上顎切歯が口腔底を外傷するリスクあり |






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