2024年6月から4/5冠の単冠は補管対象外になり再装着料が無料ではない
4/5冠は、臼歯の歯冠5面のうち4面を金属で被覆する部分被覆冠です。具体的には咬合面、舌側面、近心面、遠心面の4面を覆い、頬側面だけは天然の歯質を残します。つまり「5分の4」という名称は、5つの面のうち4つを覆うという意味です。
臼歯を単純な四角柱として考えると、見えている面は全部で5面となります。この5面のうち、外から最も見える頬側面を残すことで、白い歯の部分が見えるため審美性が保たれます。銀歯の全部金属冠と比べると、口を開けたときに金属が目立ちにくいという利点があります。
主にブリッジの支台装置として使用されるほか、単冠や動揺歯の固定装置にも応用されます。ただし、通常は有髄歯(神経が生きている歯)に適用され、失活歯の場合は全部金属冠が選ばれることが一般的です。
適応部位は小臼歯が原則ですが、ブリッジ製作時に必要がある場合は、生活歯である大臼歯を支台として使用するケースもあります。前歯の場合は同様の考え方で「3/4冠(4分の3冠)」が用いられ、歯冠4面のうち3面を被覆する形態となります。
4/5冠は歯質の削除量が全部金属冠より少ないため、できるだけ自分の歯を残したいという保存的な治療方針に合致しています。
4/5冠の最も重要な用途は、ブリッジの支台装置としての役割です。歯が1本または数本欠損した際、両隣の歯を支台として橋渡しする補綴物がブリッジですが、その支台歯に4/5冠を装着することで、頬側の審美性を保ちながら補綴を行えます。
ブリッジ支台歯として4/5冠を形成する際は、生活歯歯冠形成として306点、失活歯歯冠形成として166点が算定されます。さらにブリッジ支台歯形成加算として20点が加算されるため、生活歯なら合計326点、失活歯なら186点となります。
形成は1回のみの算定です。
形成のポイントは、頬側面に天然歯質を残しながら、他の4面に十分な保持力と抵抗力を付与することです。咬合面は咬頭を削除し、舌側面と両隣接面には適切なテーパー角を設定します。マージン(辺縁)は歯肉縁上に設定することが多く、これにより適合性の確認が容易になります。
ただし、4/5冠は全部金属冠と比較すると外れやすい傾向があります。頬側面に金属がないため、周囲全体を金属で覆う全部金属冠よりも保持力が劣るのです。このため、形成時には縦溝の付与や適切な軸面の角度設定など、保持力を高める工夫が必要となります。
ブリッジの支台装置に用いられる代表的な補綴物には、4/5冠のほか、全部鋳造冠、3/4冠、接着冠などがあります。患者の口腔内状況、審美的要求、咬合力などを総合的に判断して選択されます。
4/5冠(小臼歯)の保険点数は、2024年6月の診療報酬改定で310点から312点に増点されました。1点10円なので、4/5冠本体は3,120円となり、患者の3割負担なら約936円です。これに形成料や装着料などが加わり、実際の治療費は数千円規模になります。
しかし、2024年改定で最も大きな変更点は、4/5冠の単冠がクラウン・ブリッジ維持管理料(補管)の対象から除外されたことです。補管とは、補綴物を装着した日から2年間、何らかの理由で再製作が必要になった場合、その費用を保険医療機関が負担する制度です。
つまり、2024年6月1日以降に装着した4/5冠の単冠は、2年以内に外れたり破損したりして再製作が必要になっても、患者は再び治療費を支払う必要があります。ブリッジの支台歯として使用する場合は引き続き補管の対象となりますが、単冠での使用は保証対象外です。
この変更により、医療機関は4/5冠単冠を選択する際、より慎重な適応判断と確実な形成技術が求められるようになりました。外れやすいというリスクを考慮し、患者に事前説明を十分に行うことが重要です。
なお、2024年5月31日までに補管を算定した4/5冠については、引き続き2年間の維持管理の対象となります。改定前後で取り扱いが異なるため、レセプト請求時には装着日の確認が必要です。
【参考】令和6年診療報酬改定における補綴物の変更点と補管対象の詳細について
4/5冠が頬側面の歯質を残す最大の理由は審美性の確保です。小臼歯は口を開けたときに見える範囲にあるため、金属が露出していると目立ちます。頬側に白い天然歯質が残っていれば、会話や笑顔の際にも自然な見た目を保てます。
加えて、頬側面を削らないことで歯質の削除量が最小限に抑えられ、歯の強度も維持されます。エナメル質は人体で最も硬い組織であり、できるだけ保存することが歯の長期予後に有利です。さらに、マージンを歯肉縁上に設定できるため、適合性の確認が容易で、二次う蝕のリスクも低減されます。
しかし、4/5冠には外れやすいというデメリットがあります。全部金属冠は歯の全周を覆うため強固な保持力が得られますが、4/5冠は頬側面に金属がないため、相対的に保持力が劣ります。特に咬合力が強い患者や、歯ぎしり・食いしばりの習慣がある場合は、脱離リスクが高まります。
この外れやすさに対する対策としては、形成時に保持溝を付与したり、軸面の角度を適切に設定したりする技術が重要です。また、接着性セメントを使用することで、機械的保持力に加えて化学的接着力を利用し、脱離を防ぐ工夫も行われます。
患者には治療前に、4/5冠は全部金属冠より外れやすい可能性があること、補管対象外であること、定期的なメンテナンスが重要であることを説明し、同意を得ることが求められます。外れた場合は速やかに受診してもらうよう指導し、再装着が可能かどうか診査することが大切です。
4/5冠と似た形態の補綴物に、前歯部に用いられる3/4冠があります。3/4冠は前歯の歯冠4面のうち3面(舌側面・両隣接面)を被覆し、唇側面を残す形態です。前歯は特に審美性が重視されるため、唇側に天然歯質を残すことで自然な見た目を実現します。
3/4冠の保険点数は372点で、4/5冠の312点より高く設定されています。前歯の形成は臼歯より難易度が高いこと、審美性への配慮が必要なことが反映されています。ただし、3/4冠も2024年改定で補管対象外となった点は4/5冠と同様です。
一方、近年の保険診療では、白い歯を希望する患者向けにCAD/CAM冠が普及しています。CAD/CAM冠はハイブリッドレジンやPEEK材料を使用し、歯の全周を白い材料で被覆する全部被覆冠です。小臼歯、大臼歯、前歯に適応が拡大されており、金属アレルギーの患者にも使用できます。
4/5冠とCAD/CAM冠の使い分けは、審美性の要求度、咬合力の大きさ、患者の希望によって判断されます。CAD/CAM冠は全体が白いため審美性に優れますが、強度は金属冠より劣り、特に奥歯では割れやすく外れやすいというデメリットがあります。4/5冠は頬側だけ白く見えますが、金属部分の強度は高く、ブリッジ支台としての信頼性があります。
また、失活歯で歯質の残存量が少ない場合は、4/5冠よりも全部金属冠の方が適している場合があります。歯の状態、欠損の有無、患者の希望を総合的に評価し、最適な補綴方法を選択することが臨床では求められます。
【参考】2024年歯科診療報酬改定におけるCAD/CAM冠の適用拡大と補綴物の変更点
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