令和2年3月までのレセプトは請求し忘れると3年で消滅します。
歯科医療機関におけるレセプト請求の提出期限は、診療を行った月の翌月10日までと全国一律で定められています。たとえば、2月に行った診療のレセプトは3月10日までに社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会に提出する必要があります。この期限を過ぎてしまうと、当該月の請求に含めることができず、翌月以降の「月遅れ請求」として扱われることになります。
10日が土曜日、日曜日、祝日にあたる場合の取り扱いは、請求方法によって異なります。紙レセプトや電子媒体での請求の場合、多くの審査支払機関では10日が休日でも窓口を開所し受け付けを行っています。一方、オンライン請求では休日を含めて10日の24時まで送信が可能です。オンライン請求は5日から7日までが8時から21時まで、8日から10日までが8時から24時まで利用できるため、紙媒体よりも時間的な余裕があります。
提出期限を守ることは歯科医院の経営に直結します。期限内に提出できなかった場合、診療報酬の入金が1ヶ月遅れることになり、キャッシュフローに深刻な影響を与えます。診療実施から入金まで通常2~3ヶ月を要するため、さらに1ヶ月の遅延が加わると、人件費や材料費の支払いに支障をきたす可能性があります。
月末から翌月10日までの期間は他の業務も重なることが多く、提出作業が後回しになりがちです。カレンダーやリマインダーを活用し、提出期限を常に意識できる環境を整えることが大切です。特に連休が絡む月は通常のスケジュール感覚が狂いやすいため、早めの準備が望ましいといえます。
診療報酬請求権の時効期間は、令和2年4月1日の民法改正により大きく変更されました。それまでは3年間とされていた時効期間が、改正後は原則5年間に延長されています。この変更により、令和2年4月以降に行った診療については5年間、令和2年3月以前に行った診療については従来通り3年間が時効期間となります。
時効の起算日は診療月の翌月1日と定められています。たとえば、令和2年4月に行った診療の場合、起算日は令和2年5月1日となり、請求権の時効は令和7年5月1日に成立します。この起算日の考え方は、増減点連絡等による再審査請求をする場合も同様です。
時効期間の延長は歯科医療機関にとって有利な変更といえます。返戻レセプトの再請求や、保険証の後日提示による請求など、通常の請求から遅れるケースでも、5年以内であれば請求権が消滅することはありません。ただし、介護保険制度におけるレセプト請求の時効は、介護保険法第200条に基づき2年間のままとなっているため注意が必要です。医療保険と介護保険で時効期間が異なる点は覚えておきましょう。
実務上は、時効期間が5年あるからといって安心せず、できるだけ早期に請求を完了させることが重要です。請求が遅れるほどキャッシュフローへの影響が大きくなり、また過去の診療内容の確認作業も煩雑になります。レセプトの保存期間は法律上3年間ですが、請求権の時効を考慮して実務上は10年間の保存が推奨されています。
レセプト請求のオンライン化は、2024年9月末を期限として原則義務化されました。これまで紙レセプトや光ディスクで請求を行っていた歯科医療機関も、オンライン請求への対応が必須となっています。2024年2月時点では、オンライン請求への移行が完了した歯科医院の割合はまだ高くなく、多くの医院が移行作業に取り組んでいる状況です。
オンライン請求には複数のメリットがあります。紙レセプトと同様に毎月9日までは土曜日・日曜日・祝日を除いた17時30分まで、10日は17時30分までの受付としていた従来の方法に比べ、オンライン請求では休日を含めて毎月5日から7日は8時から21時まで、8日から10日は8時から24時まで請求が可能となります。期限ギリギリでも深夜まで送信できるため、時間的な余裕が生まれます。
また、オンライン請求では返戻レセプトの受け取りも電子化されており、直近3ヶ月分のデータをダウンロードできます。令和6年9月末には審査支払機関からの紙返戻の送付が終了し、10月以降はオンラインによる返戻のみとなりました。返戻再請求についても、令和5年4月以降は診療・調剤年月にかかわらず、原則オンラインにより請求することとされています。
オンライン請求への移行には初期費用や設備投資が必要ですが、長期的には事務作業の効率化やコスト削減につながります。郵送費用や持ち込みの手間がかからず、送信結果もすぐに確認できるため、提出漏れのリスクも減少します。まだ移行していない歯科医院は、早急に準備を進めることが求められます。
提出期限である毎月10日を過ぎてしまった場合でも、諦めずに対応することが大切です。まずは速やかに審査支払機関に連絡し、遅延の事実と理由を報告します。システム障害や人的ミスなど、具体的な原因を説明し、再発防止策を提示することで、信頼関係を維持できます。
迅速な再提出の意志を示すことも重要です。
月遅れ請求の手続きは、オンライン請求と紙レセプト請求で異なります。オンライン請求の場合、まずオンライン請求システムにアクセスし、該当するレセプトデータを確認します。データをダウンロードしてレセプトコンピュータに取り込み、必要な修正を行います。カルテを参照しながら正確に修正を加えることが重要です。修正が完了したレセプトデータを再度オンライン請求システムにアップロードし、通常は当月分のレセプトと合わせて提出します。
紙レセプトの場合は、郵送などで返戻された紙レセプトを受け取った後、返戻理由を確認して該当箇所を手書きで修正します。修正内容が多い場合は、新たにレセプトを作成し直すこともあります。修正済みのレセプトには「再請求」や「月遅れ」といったスタンプを押し、再請求用の封筒にまとめて所定の提出先に郵送または持参します。なお、紙レセプトでの再請求は手間がかかるため、オンライン請求への移行が推奨されています。
月遅れ請求が続くと、入金遅延によるキャッシュフロー悪化や業務負担増につながり、歯科医院経営に深刻な影響を与えます。初回のレセプト提出から再請求までの期間はおおよそ2ヶ月かかるため、できるだけ月遅れを発生させない体制作りが必要です。スケジュール管理を徹底し、提出期限を厳守する仕組みを構築しましょう。
レセプト返戻とは、審査支払機関や保険者が提出されたレセプトの内容に疑義があると判断した場合に、医療機関にレセプトを差し戻すことを指します。返戻されたレセプトは放置してしまうと請求そのものが成立しないため、報酬が入りません。
早急に修正対応する必要があります。
返戻レセプトの再請求にも期限があります。医療保険の場合、令和2年3月診療分までは3年間、令和2年4月診療分以降は原則5年間が提出期限です。介護保険の場合は、サービス提供月の翌月1日から起算して2年以内が期限となります。この期限を過ぎると請求権が時効により消滅するため、注意が必要です。
レセプト返戻が通知される期限については、社会保険の場合、原則20日が受付締め日となっています。その後、社会保険診療報酬支払基金から翌月初旬に医療機関等にレセプトが返戻されます。国民健康保険の場合も同様のスケジュールで返戻通知が届きます。返戻がある場合、レセプト請求した翌月の5~6日頃に届くことが一般的です。
返戻の原因としては、点数算定ルールの誤り、診療行為・薬剤の記入漏れ、保険証情報の誤入力などが挙げられます。これらの返戻を防ぐためには、レセプト提出前のダブルチェック体制が有効です。医療事務スタッフのスキルアップや、レセプト作成システムのチェック機能活用も重要です。返戻が発生してしまった場合は、返戻理由を分析し、同じミスを繰り返さないための対策を講じることが求められます。
社会保険診療報酬支払基金の請求支払に関するQ&Aでは、診療報酬請求権の時効や返戻レセプトの再請求期限について詳しく解説されています。
実務で疑問が生じた際の参考になります。
患者が保険証を忘れて受診した場合、医療機関によっては後日同月内に保険証を提示すれば自己負担額以外を返金してもらえる場合があります。しかし、医療機関からの返金が無く10割負担で支払った場合は、患者自身が保険者に償還払いの申請を行う必要があります。この償還払いを受ける期限は2年間とされています。
一方、医療機関側の対応としては、保険証の提示を受けて保険診療を行ったものの、請求を保留しているレセプトの請求期限は5年間です。つまり、後日保険証が提示された場合、医療機関は5年以内であれば保険請求が可能ということになります。
保険証の後日提示に関しては、診療報酬の請求権の時効が民法の規定により5年とされています。一方で健康保険法193条では「保険給付を受ける権利」は2年で時効となるとされており、立場によって時効期間が異なる点に注意が必要です。医療機関が請求を保留しているレセプトの請求期限は5年、一旦自費で支払った後に患者が償還払いを受ける期限は2年と整理されています。
実務上は、保険証を忘れた患者に対して、同月内に保険証を提示してもらうよう案内することが望ましいといえます。月をまたいでしまうと事務処理が煩雑になり、レセプト請求のタイミングも遅れてしまいます。患者にとっても、払い戻しの有効期限が医療費を支払った日の翌日から2年間であることや、有効期限を過ぎると一切払い戻しされない旨を伝えることが親切です。
レセプト請求期限の遅延は、歯科医院の経営に多大な影響を及ぼします。最も直接的な影響はキャッシュフローの悪化です。診療実施から入金まで通常2~3ヶ月を要するところ、月遅れ請求が発生するとさらに1~2ヶ月の遅延が加わります。たとえば、2月の診療分を3月10日までに請求できなかった場合、4月請求扱いとなり、入金は6月になります。通常より1ヶ月遅れることで、人件費や材料費の支払いに支障をきたす可能性があります。
月遅れ請求が続くと、事務負担も大幅に増加します。当月分のレセプト作成と並行して、過去の月遅れ分の処理も行う必要があるため、医療事務スタッフの業務量が増えます。残業時間の増加や、本来の業務に集中できない状況が生まれ、さらなるミスの原因にもなりかねません。
請求漏れが発生して時効期間を過ぎてしまった場合、その診療報酬は永久に回収できなくなります。令和2年3月以前の診療分であれば3年、令和2年4月以降の診療分でも5年を過ぎると請求権が消滅します。1件あたりの金額は小さくても、積み重なると無視できない損失になります。
審査支払機関や保険者との信頼関係にも影響が及びます。月遅れ請求が頻繁に発生する医療機関は、請求管理体制に問題があると見なされる可能性があります。極端な場合、保険医療機関としての適切な運営が疑われることもあり得ます。このような事態を避けるためにも、レセプト請求期限の厳守は必須といえるでしょう。
月遅れ請求の対処法に関する詳細情報では、提出期限を過ぎた際の具体的な対応方法が解説されています。経営への影響を最小限に抑えるための参考になります。