距離が2倍になっても、照射強度は半分にはならず、なんと4分の1まで一気に落ちます。
物理療法の分野の中でも、照射強度の計算問題は理学療法士国家試験に繰り返し登場してきたテーマです。第56回(令和3年)、第58回(令和5年)と連続で出題されており、今後も出題が予想される最重要トピックの一つです。
計算問題と聞くと拒否反応が出る人もいるかもしれません。でも、使う公式は2つだけです。
この2つとは「逆二乗の法則(距離の影響)」と「ランバートの余弦則(角度の影響)」で、この組み合わせさえ理解していれば、計算問題はむしろ安定した得点源に変えることができます。
照射強度の計算問題の対象は、主に「極超短波療法(マイクロウェーブ療法)」です。極超短波とは、周波数2,450MHz・波長約12.5cmの電波を用いた深部加熱を目的とした温熱療法のことで、電子レンジと同じ周波数帯域を活用した治療法です。病院・クリニックでホットパックと並んでよく用いられます。
照射強度の計算が出題される理由は明確で、「どのように導子を当てるか」が治療効果に直結するからです。距離が遠すぎれば効果が激減し、角度が傾いていれば狙った組織にエネルギーが届かない。理学療法士が現場で安全・的確に物理療法を提供するための、根拠となる知識なのです。
| 回数 | 問題番号 | 出題内容 |
|---|---|---|
| 第56回(R3)午後8 | PM-8 | 距離・角度の両方が絡む照射強度の計算 |
| 第58回(R5)午前6 | AM-6 | 距離2倍+角度30°でのcos使用計算 |
上の表のとおり、出題パターンは「距離と角度の2要素が同時に問われる」ケースが主流です。計算の手順を体系的に覚えることが大切です。
参考リンク(照射強度計算の基本的な解き方・第58回解説):
PT国家試験 第58回 午前6 照射強度の解き方をわかりやすく解説 | be-therapist
逆二乗の法則とは、「照射強度は発生源と対象との距離の二乗に反比例する」というものです。式で表すと次のようになります。
照射強度 ∝ 1 ÷ 距離²
「2乗」という部分が最大のポイントです。例えば照射距離が2倍になったとき、強度が単純に「半分(1/2)」になると思いがちですが、実際は「1/4」になります。これは、2の2乗が4だからです。つまり距離が倍になると強度は4分の1になり、3倍になると9分の1まで落ちます。
イメージとしては、懐中電灯を壁に向けて遠ざけるときの光の広がり方に近いです。離れるほど光は広い面積に分散し、単位面積あたりの明るさ(強度)は急激に落ちていく。それが「2乗に反比例する」という意味です。
具体的な数値で整理するとこうなります。
| 距離の変化 | 照射強度の変化 | 計算式 |
|---|---|---|
| 2倍 | 1/4(25%) | 1 ÷ 2² = 1/4 |
| 3倍 | 1/9(約11%) | 1 ÷ 3² = 1/9 |
| 1/2倍(半分) | 4倍 | 1 ÷ (1/2)² = 4 |
これだけ覚えておけばOKです。
国試問題では「aとbの距離の比を図から読み取る」作業が最初のステップになります。図を見て「aはbの何倍の距離か?」を確認し、その数値を2乗して逆数にする。この流れを身につけましょう。
一つ注意点があります。問題の図に示されている角度表記が、「照射角度の基準線(体表に対する垂直軸)」をどこに置いているかで計算方法が変わる場合があります。図を鵜呑みにせず、「cos値を乗じる角度が体表垂直軸からの角度かどうか」を必ず確認するクセをつけましょう。これが試験中の計算ミスを防ぐ最大のポイントです。
参考リンク(逆二乗の法則・ランバートの余弦則の解説):
【理学療法士国家試験】物理療法の問題で出てくる物理法則について | note(沖平理学療法士)
ランバートの余弦則(Lambert's cosine law)とは、「照射強度は体表垂直軸と照射方向のなす角θのコサイン(cos)に比例する」というものです。理学療法の試験問題では、以下の主要な値を押さえておけば十分です。
| 照射角度(θ) | cos値 | 照射強度の割合 |
|---|---|---|
| 0°(垂直) | cos0° = 1.000 | 100%(最大) |
| 30° | cos30° = 0.866 | 約86.6% |
| 45° | cos45° = 0.707 | 約70.7% |
| 60° | cos60° = 0.500 | 50% |
| 90°(平行) | cos90° = 0 | 0%(効果なし) |
この表から読み取れるのは「直角に当てることが最も効率よくエネルギーが伝わる」ということです。角度が体表に対して傾くほど、力が逃げていく。肩こりに指圧をするとき、真上から垂直に押した方が気持ちよく力が入るのと同じイメージです。
垂直に当てることが基本です。
国試でよく出るのはcos30°= 0.866という値です。第58回の問題でもこの値が問題文に明示されており、「0.866倍する」という操作を距離補正後の強度に対して行うことで答えが出ます。計算の流れをまとめると次のようになります。
① 距離の比を確認し、逆二乗で距離補正後の照射強度を求める
② 求めた値に照射角度のcos値を掛ける
第58回の問題では、距離が2倍なので1/4 = 25%になり、そこにcos30° = 0.866を掛けると25% × 0.866 = 21.65%、四捨五入して21.7%が正解でした。二段階計算の順番を間違えると答えが全く変わってしまいます。順番は厳守です。
参考リンク(角度と照射強度の実践的な解説・専門学校教員による国試解説):
専門学校教員が解説する【理学療法 国家試験解説】 | 麗澤瑞浪専門学校ブログ
照射強度の計算問題と並んで、極超短波療法の「禁忌」と「適応」も国試でよく問われます。計算問題だけ覚えて禁忌を飛ばすのは、ちょっと危険ですね。
極超短波療法の最大の特徴は「深部まで温熱効果が届く」点で、エネルギーが体内で半減する深さは3〜4cmとされています。これは筋肉や関節周囲の深在性組織への加熱を目的とした場合に有効な治療法です。一方で、金属にエネルギーが集中しやすいという物理的性質があるため、体内金属がある部位には絶対に照射してはなりません。
禁忌事項を以下に整理します。
「妊娠中の理学療法士が操作するのは避ける」という一文も過去問に登場しています。これは、術者自身が被曝リスクを負わないためです。患者だけでなく術者側の安全管理も問われる点は意外と見落としがちです。
適応としては、慢性腰痛・変形性関節症・筋筋膜性疼痛などの疼痛疾患が中心です。また、徒手療法や運動療法の前処置として用いることで、組織の柔軟性を高めてリハビリ効果を高める目的でも使われます。
禁忌と適応はセットで覚えることが条件です。
臨床ではさらに、照射前に「湿布・カイロ・金属アクセサリー」を取り外す確認が必須です。認知機能が低下している患者では毎回確認することが安全管理の基本とされています。
参考リンク(極超短波療法の適応・禁忌・使い方の詳細解説):
極超短波療法(マイクロ波)とは?効果・適応・禁忌を分かりやすく解説 | physio approach
照射強度の計算問題は、「選択肢の絞り込み」を上手く使うと、完璧な計算ができなくても正解できる場合があります。これは既存の解説記事ではあまり紹介されていない実践的な観点です。
まず、逆二乗の法則から「照射強度は基準点の何%以下になるか」を先に確認します。例えば距離が2倍なら強度は25%以下に確定します。選択肢の中に25%を超える値があれば、それは全て消去できます。第58回の場合、25%以上の選択肢(43.3%、86.6%、173.2%)を一発で排除でき、10.8%か21.7%の二択に絞れます。
二択に絞れれば勝率が大きく上がりますね。
次に角度の補正です。cos30° = 0.866は「約86.6%の割合」ですから、25%からほんの少しディスカウントした値になります。10.8%と21.7%を比べたとき、25%の86.6%相当は21.65%に近いので21.7%が正解だと分かります。計算が苦手な方でも「選択肢同士の距離感」で判断できるのです。
この戦略をまとめると以下の手順になります。
また、第56回の問題では「aに対するbの強度」という比較の方向が逆になっており、「どちらを基準にして計算するか」の読み取りミスが多発したとされています。問題文の主語と問われている方向を一字一句確認することが大切です。主語を取り違えると答えが逆転することも珍しくありません。
国試の物理療法問題でミスが出やすいポイントは以下の3つです。
この3つを意識するだけで、計算ミスの大半は防げます。物理が苦手な人にとっては、むしろ公式2つだけで完結する計算問題は、きちんと手順を覚えれば確実に点を取れる分野です。得点源にする意識で取り組んでみてください。
参考リンク(第56回・第58回の照射強度計算問題の比較解説):
第58回(R5)理学療法士国家試験 解説【午前問題6〜10】 | 明日へブログ

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