自院で折ったファイルでもRBIを算定すると、返戻どころか個別指導の対象になります。
根管内異物除去(略称:RBI)の所定点数は150点(1歯につき)です。保険請求上のコードはI021で、令和6年度改定後も点数は据え置かれています。自己負担3割の患者であれば、450円(150点×10円×30%)の窓口負担となります。
「異物」として認められるのは、根管内で破折しているため除去が著しく困難なものに限られます。代表的なのはリーマーやファイルといった根管治療用の金属製器具が折れて根管内に残ってしまったケースです。つまり「根管内に何かが残っているから算定できる」という単純な話ではありません。
たとえばガッタパーチャ(根管充填材)やシーラーが残存している状態は、ここでいう「異物」には原則として該当しません。あくまでも「破折した器具等で除去が著しく困難」という2つの要素が揃っていることが条件です。これが基本です。
実際の臨床では、患者が他院から転院してきて「前の歯医者で器具が折れたままだと言われた」というケースが典型的な算定場面となります。こうした他院起因の破折ファイルに対して除去を行った際にRBIを算定します。
しろぼんねっと|I021 根管内異物除去(1歯につき)令和6年度点数表の通知・留意事項全文
保険点数の算定で最も見落とされがちな落とし穴がこのルールです。診療報酬点数表の通知(3)に明記されています。
「当該保険医療機関における治療に基づく異物について除去を行った場合は、当該点数を算定できない」
これを噛み砕くと、自院での根管治療中にファイルが折れてしまい、その後同じ医療機関で除去した場合はRBIの150点を算定できないということです。
厚生労働省が公表している「保険診療確認事項リスト(歯科)令和7年度改訂版」には、個別指導でよく指摘される事例として次の内容が明示されています。
これらは個別指導で繰り返し指摘され、自主返還につながる典型的なパターンです。痛いですね。たとえ除去の難易度が高かったとしても、「自院で折った器具」であれば算定は認められません。感染根管処置などで対応するしかないという点をチーム内で共有しておくことが重要です。
厚生労働省|保険診療確認事項リスト(歯科)令和7年度改訂版 ver.2507(個別指導の指摘事項一覧)
なお、兵庫県保険医協会の保険請求Q&Aによれば、同一歯牙で他院での治療による根管内異物除去(RBI 150点)とFMC等の除去は併算定できます。これは意外に知られていない点で、正しく算定できている医院ばかりではないのが実情です。
兵庫県保険医協会|保険請求Q&A(歯科・除去)RBIと補綴物除去の併算定に関する実務的なQ&A
所定点数150点に加えて、条件を満たすと手術用顕微鏡加算として400点を加算できます。合計550点、患者3割負担で1,650円の処置です。これは使えそうです。
ただし、この加算を算定するためには以下の3つの条件がすべて揃っていなければなりません。
3つ目の「根尖側2分の1」という条件は特に注意が必要です。たとえ顕微鏡を使って除去を行ったとしても、残留異物が歯根の根尖側2分の1に達していなければ加算は算定できません。これが条件です。
ただし、通達の解釈として「残留異物の一部が根尖側2分の1以内に達している場合は算定できる」とされていることも覚えておきましょう。異物全体が根尖部に位置していなくても、一部でも根尖側1/2に到達していれば要件を満たします。
施設基準については、歯科用マイクロスコープ本体(ネクストビジョン等で約250万円〜)の導入コストに加え、届出手続きが必要です。届出を行っていない医療機関が顕微鏡を使ってRBIを実施しても、400点加算は算定できません。先に施設届出を行うことが前提となります。
さらに、加圧根管充填処置(I008-2)の手術用顕微鏡加算とRBIの手術用顕微鏡加算は同一歯に対して同月に併算定できないことにも注意が必要です。どちらかを選択する必要があります。
1D|歯科用マイクロスコープで算定できる「手術用顕微鏡加算」の施設基準・算定要件を詳細に解説した記事
算定そのものを正しく行っても、レセプト記載が不十分だと返戻の原因になります。ここでは実務的な記載ルールを整理します。
まず傷病名(病名)についてです。PulやPerといった歯髄・根尖系の病名がすでについている場合はフテキ病名を省略できますが、それ以外の場合は「不適切なもの(フテキ)」の病名を付与する必要があります。兵庫県保険医協会のQ&Aでも「Pul、Per病名以外はフテキ病名を付けてください」と明示されています。
摘要欄の記載については、部位とスクリューポストなど除去した種類を記載することが原則です。ただし「傷病名部位」欄の記載から除去した部位と種類が明らかに特定できる場合は、摘要欄への記載を省略できます。
手術用顕微鏡加算を算定する場合は、さらに追記が必要です。診療報酬明細書(摘要欄)への記載について、令和6年度改定後の「別表Ⅰ」では次の内容が求められています。
これは実際のカルテ記載にも反映させる必要があります。「マイクロスコープを使ったから加算を算定した」というだけでは不十分で、CBCTによる画像診断→残留部位の確認→除去という流れが診療録上で追跡できることが重要です。つまり診療録と請求内容の整合性が問われます。
また、RBIは1歯につき1回しか算定できません。同一歯に対して異なる日に複数回算定することは認められません。これが原則です。除去が複数回に及んだとしても算定は1回のみです。診療録にはその旨を明記しておくとよいでしょう。
根管内に残った破折ファイルの除去は、臨床的にきわめて難易度の高い処置です。マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)による拡大視野のもと、超音波チップを使って少しずつ振動を加えながら緩めていく作業が基本となります。1本の破折片を除去するだけで30分〜1時間以上かかることも珍しくありません。
保険算定で認められている点数を整理すると次のとおりです。
顕微鏡加算まで含めた処置点数は最大で550点、患者3割負担で約1,650円です。手間や技術的難易度と比較したとき、保険点数が見合わないと感じる歯科医師は少なくないでしょう。これは厳しいところですね。
自由診療で破折ファイル除去を行う場合、都市部では1歯あたり5万〜15万円程度が相場とされています。自由診療では費用対効果の観点から精密な対応が可能になる一方、患者の経済的負担が大きくなります。保険診療で対応するか自由診療を選択するかは、個々の症例の難易度・異物の位置・患者の希望などを踏まえて判断することが求められます。
なお、NIチタン(Ni-Ti)ファイルはステンレスよりも柔軟性が高い反面、破折の予兆なく突然折れるケースがあるため、特に注意が必要です。使用回数の管理と定期的な器具交換がリスク低減につながります。破折が起きてからではなく、日ごろの器具管理がそのまま算定リスクの回避にも直結します。
高井歯科医院|破折ファイルの除去基準と臨床的判断についての専門的解説(2025年12月更新)
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