冠動脈疾患一覧と種類・症状・歯周病との関連を解説

冠動脈疾患にはどのような種類があるのか、歯科治療との関連は何か、歯周病が心臓にどう影響するのかなど、歯科医従事者が知るべき情報を一覧で解説します。歯周病が冠動脈疾患のリスクを高めるメカニズムとは何でしょうか?

冠動脈疾患一覧

未治療の根尖性歯周炎がある患者は急性冠症候群の発症率が2.7倍になります


この記事の3ポイント要約
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冠動脈疾患の種類

狭心症、心筋梗塞、急性冠症候群など、血流障害の程度と発症形態で分類される複数の病態が存在

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歯周病と冠動脈疾患の関連

歯周病菌が血流に入り動脈硬化を促進、重症歯周病患者は心血管死リスクが2.48倍に上昇

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歯科治療時の注意点

抗血小板薬や抗凝固薬を服用中の患者への対応と、服用継続下での処置が基本原則


冠動脈疾患の主な種類と分類

冠動脈疾患は心臓の血管である冠動脈が狭窄または閉塞することで心筋への血流が障害される病態の総称です。日本では年間約3万人が冠動脈疾患で亡くなっており、代表的な生活習慣病として知られています。 doctorblackjack(https://doctorblackjack.net/heart/heart_05.html)


主な冠動脈疾患の種類には以下があります。


- 狭心症:冠動脈が狭くなり一時的に血流不足が生じる状態で、心筋の障害はない、またはあっても少ない ubie(https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/pz3x18duygh)
- 心筋梗塞:冠動脈が完全に閉塞し心筋が壊死を起こす重篤な状態で、命に関わることもある hospital.asahi.chiba(https://www.hospital.asahi.chiba.jp/section/consultation/interna_medicine/circulation/file-007.html)
- 急性冠症候群(ACS):不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)を包括する緊急性の高い疾患概念 msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/04-%E5%BF%83%E8%A1%80%E7%AE%A1%E7%96%BE%E6%82%A3/%E5%86%A0%E5%8B%95%E8%84%88%E7%96%BE%E6%82%A3/%E6%80%A5%E6%80%A7%E5%86%A0%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4-acs-%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81)


狭心症はさらに安定狭心症、不安定狭心症、無症候性虚血、変異型(プリンツメタル)狭心症に細分されます。安定狭心症は労作時に症状が出るのに対し、変異型狭心症は冠動脈のけいれんによって安静時や夜間に発症するのが特徴です。 sakraworldhospital(https://www.sakraworldhospital.com/ja/blogs/coronary-artery-disease/460)


つまり血流障害の程度と発症形態で分類されるということですね。


冠動脈疾患の症状と病態の違い

狭心症と心筋梗塞では症状の持続時間と重症度に明確な違いがあります。狭心症の胸痛は通常数分間で収束しますが、心筋梗塞では強い胸痛が20分以上続き、放散痛、吐き気、息切れを伴います。 mei-clinic(https://mei-clinic.jp/blog/%E7%8B%AD%E5%BF%83%E7%97%87%E3%81%A8%E5%BF%83%E7%AD%8B%E6%A2%97%E5%A1%9E/)


病態の本質的な違いは心筋の障害の有無です。狭心症では酸素需要と供給のバランスが一過性に崩れるだけですが、心筋梗塞では血栓による完全閉塞が持続し心筋が壊死します。これは例えるなら、水道管が詰まりかけている状態(狭心症)と完全に詰まって水が流れなくなった状態(心筋梗塞)の違いに似ています。 kumadai-junnai(https://kumadai-junnai.com/archives/360)


狭心症を放置すると、ある確率で冠動脈の閉塞を起こし心筋梗塞へ進行します。心筋梗塞では確実に心筋が障害されるため、早期の対応が生命予後を大きく左右します。 hospital.asahi.chiba(https://www.hospital.asahi.chiba.jp/section/consultation/interna_medicine/circulation/file-007.html)


心筋の障害があるかないかが決定的な違いです。


冠動脈疾患のまれな原因と特殊病態

動脈硬化が大半の原因ですが、まれに冠動脈のけいれん、先天異常、川崎病などのウイルス感染症、冠動脈の塞栓症、解離、動脈瘤、血管炎(全身性エリテマトーデス、梅毒など)が原因となることもあります。 msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/04-%E5%BF%83%E8%A1%80%E7%AE%A1%E7%96%BE%E6%82%A3/%E5%86%A0%E5%8B%95%E8%84%88%E7%96%BE%E6%82%A3/%E5%86%A0%E5%8B%95%E8%84%88%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81)


川崎病は小児に多い疾患ですが、冠動脈に動脈瘤を形成し長期的な冠動脈疾患のリスクとなります。先天性冠動脈異常には冠動脈起始部位と走行形態の異常、冠動脈開口部の狭窄・閉鎖、冠動脈血管自体の異常、冠動脈終末端の異常の4種類が存在します。 jpccs(https://jpccs.jp/10.9794/jspccs.32.95/data/index.html)


複雑な冠動脈疾患として左冠動脈の閉塞、冠動脈の完全閉塞、重度の冠動脈石灰化、分岐閉塞などがあり、診断された症例のうち30%が複雑な病態とされています。高齢や脳卒中などの併存疾患も複雑性を高める要因です。 medparkhospital(https://www.medparkhospital.com/ja-JP/disease-and-treatment/complex-coronary-artery-disease)


これらは稀ですが見逃せない病態です。


冠動脈疾患と歯周病の関連性

歯周病患者は心筋梗塞などの心臓血管疾患にかかる確率が高いという研究結果が複数報告されています。4つのコントロールスタディの分析では、歯周炎のある人はない人に比べて心臓血管疾患を発症するリスクが20~180%高くなっています。 kokusai-dc(https://kokusai-dc.com/wp/pyorrhea_under/cardiovascular-diseases/)


60歳未満で重症な歯周病による骨吸収がある人は、そうでない人と比べて心血管死が2.48倍発症しやすいというデータもあります。また、根管治療を要する未治療の歯がある患者では急性冠症候群の発症率が2.7倍になることも明らかになっています。 ichiba-dc(https://www.ichiba-dc.com/blog/post-12/)


これは東京ドーム1個分のリスク(通常)が2.7個分(未治療あり)になるようなイメージです。


歯周病による炎症が心臓血管系に波及し、動脈硬化を進展させることが発症リスクを高めるメカニズムと考えられています。口腔内に3mm以上のアタッチメントロスが60%以上ある人は、明らかに心臓血管疾患に罹患するリスクが高いことが示されています。 tanidashika(https://www.tanidashika.jp/blog/2023/03/16/118770/)


歯周病の重症度と心疾患リスクは比例関係にあります。


冠動脈疾患発症における歯周病菌のメカニズム

歯周病菌は歯周ポケットの毛細血管から血管内に侵入します。血流に入った歯周病菌の刺激により動脈硬化を誘導する物質が産生され、血管内にアテローム性プラークと呼ばれる粥状の脂肪性沈着物が形成されます。 asakusa4182(https://www.asakusa4182.com/%E7%8B%AD%E5%BF%83%E7%97%87%E3%81%A8%E5%BF%83%E7%AD%8B%E6%A2%97%E5%A1%9E/)


これが血液の通り道を狭め、冠動脈を硬化させるのです。長年歯周病を放置すると、歯周病菌が入り込んだ血小板が体内で増加し全身の血管をめぐり、最終的に心臓に到達します。動脈硬化が進行していた部位に血栓が次々と付着し血管を完全に塞ぎ、心筋梗塞を引き起こすと考えられています。 8020(https://8020.clinic/perio04)


炎症反応時に放出される炎症物質が血管に作用することも、動脈硬化や冠状動脈疾患のリスクを高める要因です。細菌性心内膜炎で亡くなった方の心臓から歯周病菌が検出された事例もあり、心内膜炎は血栓を作りやすく脳梗塞・心筋梗塞の原因にもなります。 asakusa4182(https://www.asakusa4182.com/%E7%8B%AD%E5%BF%83%E7%97%87%E3%81%A8%E5%BF%83%E7%AD%8B%E6%A2%97%E5%A1%9E/)


歯周病の予防と早期治療が心疾患の予防につながるということですね。


公益財団法人日本心臓財団|歯と心臓の関係についての詳細情報


冠動脈疾患患者への歯科治療における抗血栓薬の対応

冠動脈疾患患者の多くは抗血栓薬を服用しており、歯科治療時には特別な配慮が必要です。抗血栓薬には抗血小板薬と抗凝固薬の2種類があります。 sato-dental-clinicasa(https://www.sato-dental-clinicasa.com/blog/%E8%96%AC%E3%81%A8%E6%AD%AF%E7%A7%91%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E9%96%A2%E4%BF%82%E6%80%A7-%E8%A1%80%E3%81%8C%E6%AD%A2%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%81%AB%E3%81%8F%E3%81%84%E8%96%AC%E3%82%92%E6%9C%8D%E7%94%A8/)


抗血小板薬は狭心症や脳梗塞の予防、冠動脈ステントへの血栓付着防止のために処方されます。代表的な薬剤にはバイアスピリンパナルジンプラビックスプレタールがあります。抗凝固薬にはワーファリンやDOAC(プラザキサエリキュースイグザレルトリクシアナ)があります。 toranomon.kkr.or(https://toranomon.kkr.or.jp/cms/departments/dentistry/antithrombotic.html)


現在の診療ガイドラインでは、抜歯などの観血的処置は抗血小板薬の内服継続下での施行が望ましいとされています。ワーファリンも原疾患に対する至適治療域にコントロールした上で、内服継続下での施行が推奨されています。 ohnishi-dc(https://ohnishi-dc.com/%E6%8A%9C%E6%AD%AF%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%86%E3%81%A8%E3%81%8D%E3%81%AB%E6%B3%A8%E6%84%8F%E3%82%92%E8%A6%81%E3%81%99%E3%82%8B%E5%86%85%E7%A7%91%E7%9A%84%E8%96%AC%E5%89%A4)


これは服用中断による血栓イベントのリスクが出血リスクを上回るためです。


患者が抗血栓薬を服用している場合は、歯科受診時に必ず申し出るよう指導し、決して自己判断で服用を中断しないよう伝えることが重要です。出血リスクのある処置前には、止血対策(局所止血剤の準備、縫合、圧迫止血の徹底など)を十分に講じる必要があります。 toranomon.kkr.or(https://toranomon.kkr.or.jp/cms/departments/dentistry/antithrombotic.html)


内服継続が原則ということを覚えておけばOKです。


虎の門病院歯科|抗血栓療法中の歯科治療ガイドライン


冠動脈疾患患者の歯科治療におけるリスク管理

心臓疾患を持つ患者への歯科治療では、治療中の急変リスクを常に念頭に置く必要があります。特に歯周病や虫歯を放置すると心臓に負担をかけたり、命に関わる病気のリスクを高めたりします。 homma-dc(https://www.homma-dc.com/news/post-315/)


治療前に患者の全身状態、服用薬、既往歴を詳細に聴取することが基本です。狭心症の既往がある患者では、ニトログリセリンなどの救急薬を常に携帯しているか確認します。治療中の血圧・脈拍のモニタリング、酸素飽和度の測定も重要な管理項目です。


ストレスや痛みが狭心症発作の誘因となるため、十分な局所麻酔による疼痛管理と不安軽減のための丁寧な説明が求められます。長時間の処置は避け、複数回に分けて治療を進める配慮も必要です。


糖尿病や腎臓病などの併存疾患がある場合、歯周病はこれらの病気の大きな悪化因子となるため、歯周病治療も並行して進める必要があります。動脈硬化のリスク因子である高血圧脂質異常症、喫煙、肥満などの改善も含めた総合的なアプローチが望ましいとされています。 asakusa4182(https://www.asakusa4182.com/%E7%8B%AD%E5%BF%83%E7%97%87%E3%81%A8%E5%BF%83%E7%AD%8B%E6%A2%97%E5%A1%9E/)


治療の安全性確保には全身管理の視点が欠かせません。