一次癒合・二次癒合と骨折の治癒過程を理解して臨床に活かす

骨折治癒には「一次癒合」と「二次癒合」の2つの様式があります。それぞれの違いやメカニズムを正しく理解することが、顎顔面骨折の適切な処置判断につながります。あなたは2つの違いを正確に説明できますか?

一次癒合・二次癒合と骨折治癒のメカニズム

強固に圧迫固定した骨折では、仮骨をつくらずに治癒する「一次癒合」が起こると思われがちですが、実は一次癒合のほうが治癒速度は遅く、二次癒合のほうが骨癒合の完成が早いという事実が明らかになっています。 hoshino-cl(https://hoshino-cl.jp/blog/2025/01/25/fracture/)


一次癒合・二次癒合と骨折治癒:3つのポイント
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一次癒合とは?

骨折端が解剖学的に整復・圧迫固定された場合に、仮骨をほぼ形成せずにハバース管のリモデリングで直接癒合する形式。X線上でも仮骨像がみられない。

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二次癒合とは?

仮骨(骨痂)形成を経て癒合する形式。炎症期→修復期(6〜8週)→リモデリング期(数か月〜数年)の3段階で進む。自然治癒ではこちらが主体。

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歯科口腔外科での重要性

顎顔面骨骨折の治療では「咬合の回復」が大原則。プレート固定か顎間固定かで癒合様式が変わるため、治癒機序の理解が術式選択に直結する。


一次癒合(直接骨癒合)の骨折治癒メカニズム

一次癒合とは、骨折端が解剖学的に正確に整復され、かつ強固に圧迫固定された場合にのみ生じる治癒形式です。 仮骨をほとんど形成しないため、X線画像上では骨折線がそのまま残っているように見えることがあり、「治っていないのでは?」と誤解されることがあります。 note(https://note.com/finalmouse/n/n5a81ad13a4cb)


この形式での骨癒合は、骨のハバース管(オステオン)が骨折線を横断して新たに形成される「切削性リモデリング」によって成立します。つまり大工事です。骨芽細胞破骨細胞が協調して動き、新しい骨のトンネルを掘るように骨折断端を橋渡しします。 hitoninarutameni.hatenablog(https://hitoninarutameni.hatenablog.com/entry/2018/08/27/014411)


条件が厳格なため、実際の臨床では一次癒合が純粋に起こる状況は限られます。骨折端の間に0.01mmでも血腫が介在すれば、二次癒合へ移行します。 一次癒合には完璧な固定が条件です。 note(https://note.com/finalmouse/n/n5a81ad13a4cb)


項目 一次癒合(直接骨癒合) 二次癒合(間接骨癒合)
仮骨形成 なし(またはごくわずか) あり(軟骨仮骨→骨性仮骨)
癒合速度 遅い ⚠️ 速い ✅
必要条件 完全整復+強固な圧迫固定 特定の整復精度は不要
X線所見 仮骨像なし・骨折線残存 仮骨形成が確認できる
主な治療法 プレート固定、ラグスクリュー 副子・顎間固定・髄内釘


二次癒合(仮骨形成)の骨折治癒の3段階プロセス

各ステージの特徴は以下のとおりです。 hitoninarutameni.hatenablog(https://hitoninarutameni.hatenablog.com/entry/2018/08/27/014411)


  • 🔴 炎症期(骨折直後〜数日):骨折部に血腫が形成され、炎症性サイトカインが放出される。未分化間葉系細胞の増殖が始まる。
  • 🟡 修復期(6〜8週):軟骨細胞・骨芽細胞への分化が起こり、軟性仮骨→硬性仮骨が形成される。骨折断端が仮骨で橋渡しされる。
  • 🟢 リモデリング期(数か月〜数年):余分な仮骨が吸収され、力学的要請に応じた骨形態に再造形される。


なお、血腫は「悪いもの」ではなく、二次癒合の出発点として必須の存在です。 血腫があるから治る、といっても過言ではありません。 mutsumi-cl(https://mutsumi-cl.jp/column/1515/)


顎顔面骨折における一次癒合・二次癒合と治療法の選択

顔面骨骨折の治療には「観血的固定」と「非観血的固定(顎間固定)」の2つのアプローチがあります。 観血的固定(チタンミニプレートによる圧迫固定)では一次癒合を目指しますが、実際には半剛性固定(負荷分担型)によって適度な骨痂形成が促され、二次癒合的な要素も取り入れた形で癒合が進むとされています。 jsoms.or(https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_gaisyo/)


非観血的固定(顎間固定)の期間は骨折の状態によりますが、プレート使用の場合は約2週間、使用しない場合は約3週間程度が必要です。 顎間固定中は口が開けられないため、流動食や経管栄養が必要になります。食事管理の負担は患者にとって大きな問題です。 kyoto.hosp.go(https://kyoto.hosp.go.jp/html/guide/medicalinfo/dentalsurgery/description.html)


  • 🔩 チタンミニプレート固定:厚さ1mm程度のプレートで強固固定。早期社会復帰が可能だが、後日プレート除去術が必要になることがある
  • ritz-tokyo(https://www.ritz-tokyo.jp/concept/tech/plate/)

  • 🪢 吸収性プレート:二次手術不要だが、強度や長期信頼性でチタンに劣る場面がある
  • 💉 顎間固定:手術を避けたい症例に有効。ただし骨癒合まで3週間前後、咬合回復まで最長3か月のリハビリが必要
  • kyoto.hosp.go(https://kyoto.hosp.go.jp/html/guide/medicalinfo/dentalsurgery/description.html)


治療法の選択は骨折部位・転位の程度・全身状態によって異なります。 どの方法が「正解」かは患者ごとに違います。 jsoms.or(https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_gaisyo/)


参考:日本口腔外科学会による顎顔面外傷の解説(整復固定法の詳細が確認できます)
顎顔面の外傷|日本口腔外科学会


一次癒合・二次癒合に影響する骨折治癒の促進・阻害因子

骨癒合の速度や質は、固定法だけでなく全身的・局所的な複数の因子に左右されます。 知らないと見落とす因子がいくつかあります。 rarasukediary-blog(https://rarasukediary-blog.com/bone-healing/)


促進因子として代表的なものは以下のとおりです。


  • ✅ 十分な血流確保(骨膜・骨髄からの血管新生)
  • ✅ 適度な微小荷重(骨に適度な刺激が加わると骨芽細胞活性が上がる)
  • ✅ 栄養管理(カルシウム・ビタミンD・タンパク質の摂取)


阻害因子として見落とされがちなのは喫煙です。ニコチンが骨膜の血管収縮を引き起こし、二次癒合に必要な血腫の形成・器質化が遅延するとされています。 喫煙患者には術前から禁煙指導が必要です。 rarasukediary-blog(https://rarasukediary-blog.com/bone-healing/)


また、骨粗鬆症治療薬(ビスホスホネート製剤)を服用している患者では、骨のリモデリングが抑制されるため骨折治癒が著しく遅延するリスクがあります。 BPによる顎骨壊死(BRONJ)との鑑別も臨床では重要で、投薬中の患者への観血的処置には特に注意が必要です。これは見落とせない点です。 rarasukediary-blog(https://rarasukediary-blog.com/bone-healing/)


因子 作用 臨床での対応
喫煙 血管収縮→血腫形成遅延 術前禁煙指導(最低2週間前)
ビスホスホネート リモデリング抑制→治癒遅延・壊死リスク 投薬歴の確認、休薬検討
糖尿病(HbA1c高値) 免疫低下・血管障害→感染・治癒遅延 血糖コントロール確認
ステロイド長期投与 骨形成抑制・免疫抑制 骨粗鬆症評価+追加固定検討


歯科臨床でこそ知っておきたい一次癒合・二次癒合の独自視点:骨折治癒と歯根膜の関係

歯科・口腔外科領域において見落とされがちな点があります。顎骨骨折のラインが歯根近傍を走行する場合、骨折治癒のプロセスに歯根膜(PDL)が深く関与するという事実です。 ja-dt(https://www.ja-dt.org/file/guidline.pdf)


そのため「骨折線上の歯を抜くか残すか」という判断は、治癒様式の選択にも直結します。 抜歯によって一次癒合に必要な整復精度が上がる反面、二次癒合に有利な細胞供給源を失う可能性もあります。これは臨床での難しい判断です。 jsoms.or(https://www.jsoms.or.jp/pdf/trauma_2_20150501.pdf)


日本口腔外科学会の外傷診療ガイドラインでも骨折線上の歯の取り扱いは個別判断とされており、一律に抜歯が推奨されているわけではありません。 骨折線上の歯は残せる可能性があります。 jsoms.or(https://www.jsoms.or.jp/pdf/trauma_2_20150501.pdf)


参考:日本口腔外科学会による外傷診療ガイドライン(骨折線上の歯の取り扱いについて詳述)
外傷診療ガイドライン 第Ⅱ部|日本口腔外科学会(PDF)