縫合しても止血の算定が認められないケースがあります。これは多くの歯科スタッフが意識していない盲点です。
抜歯後の止血処置で「手術当日に縫合したから算定できる」と考えていたとしたら、それは大きなミスにつながります。
歯科診療報酬の取り扱いでは、手術当日に実施した外科後処置は手術の所定点数に含まれるとされており、原則として別途算定できません。 つまり抜歯当日にそのまま縫合止血を行っても、外科後処置として単独算定することは認められないのです。これが意外と知られていないポイントです。 shirobon(https://shirobon.net/medicalfee/latest/shika/r06_shika/r06s_ch2/r06s2_pa8/r06s28_sec1/r06s281_cls2/r06s2812_I009.html)
算定が認められるのは、後出血により患者が再度来院した場合に限られます。 再来院かつ圧迫等の簡単な処置では止血できない場合に初めて「創傷処理 4 筋肉・臓器に達しないもの(長径5センチメートル未満)」で算定できる扱いになります。長径5センチメートルというのは、ちょうど消しゴム1個ぶんの幅ほどです。つまり原則は「当日はNG、再来院ならOK」です。 shirobon(https://shirobon.net/medicalfee/latest/shika/r06_shika/r06s_ch2/r06s2_pa9/r06s29_sec1/r06s291_J084.html)
ただし例外があります。後出血により手術当日に再度来院した場合、すなわち一度帰宅した患者が再度来院したケースは、同日再診として算定して差し支えないとされています。 この場合はレセプトの摘要欄に「同日再診(1日2度来院)」と記載することが必須です。この一文がないだけで査定されるリスクがあります。注意が必要ですね。 showa-d-dousou(https://showa-d-dousou.jp/infomation/wp-content/uploads/2021/04/v24.pdf)
縫合止血の算定をする際、病名記載のルールを正確に把握しておくことが査定回避の第一歩です。
後出血処置を算定するには、レセプト上に「後出血」という病名が付いていることが大前提です。 病名がなければ処置の理由が証明できず、審査機関から返戻・査定の対象となります。「いつもやっているから大丈夫」という感覚は危険です。 xn--zqs94lz4l2ooqzu(https://xn--zqs94lz4l2ooqzu.com/shika-hoken81.html)
病名は「部位+後出血」の形式で記載するのが基本です。たとえば「右下8番後出血」「歯周外科手術後出血」のように、どの処置に起因する出血かが読み取れる形にします。 社会保険診療報酬支払基金(支払基金)の審査事例でも、後出血の病名があることが算定承認の条件として明示されています。病名と処置の整合性が条件です。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/smph/shinryohoshu/sinsa_jirei/teikyojirei/shika/shujutsu/s_jirei_220.html)
また、歯肉切除手術後の後出血についても「再来院した場合に限り」創傷処理4の算定が認められるという支払基金の事例が2021年に新規公示されています。 対象となる術式は抜歯・智歯歯肉弁切除等だけでなく、歯周外科手術後も含まれる点は見落としがちです。つまり適応術式の幅は想像より広いということですね。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/pressrelease/pressrelease_r03/press_030927_2.files/030927_20_shika.pdf)
外傷で歯が脱臼し、止血目的で縫合した場合、「後出血処置」と「口腔内縫合手術」のどちらで算定すればよいか迷う場面があります。これは現場で頻繁に起きる疑問です。 shirobon(http://shirobon.net/qabbs_detail.php?bbs_id=53863)
結論から言うと、止血を主目的とした縫合なのか、縫合それ自体を主目的とした手術なのかで区分が変わります。後出血を止めるための縫合処置は「創傷処理(後出血処置)」として算定し、口腔内の創部を閉鎖する目的の縫合は「口腔内縫合手術」で算定するのが原則です。同じ「縫合」でも目的が違えば算定区分が異なります。
創傷処理は「切・刺・割創または挫創の手術について切除・結紮または縫合を行う場合に限り算定する」と定義されています。 一方、止血シーネのように縫合を伴わない圧迫止血デバイスは、別途「口腔内装置(止血シーネ)」として算定するルートもあります。 処置の内容を正確に診療録に記録し、算定根拠を明確にしておくことが大切です。診療録の記録が算定の盾になります。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/smph/shinryohoshu/sinsa_jirei/teikyojirei/shika/shochi/s_jirei_33.html)
止血材を使ったら必ず別途算定できると思っていませんか。実は使用量によっては処置料に含まれてしまい、別途請求できないケースがあります。 ortc(https://ortc.jp/topics/dental-business/dental-surgicel-insurance-guide-2025)
吸収性局所止血材(スポンゼル・サージセルなど)の算定は、通常の抜歯で1枚程度使用した場合は処置料込みとみなされます。 別途算定が認められるのは、出血リスクが高い症例や歯科口腔外科手術など、医師が手術の一環として必要と判断した場合です。1枚あたりの加算点数は約30〜50点(約300〜500円)です。 積み重なれば大きな差になります。 ortc(https://ortc.jp/topics/dental-business/dental-surgicel-insurance-guide-2025)
スポンゼルに関しては、抜歯に限らず歯周外科処置後や出血が強い処置後の補助止血にも算定対象となります。 「抜歯後だけ算定するもの」と思い込んでいると、算定漏れが発生します。使用した際はその都度、目的・使用量・処置との関係を診療録に記載しておくのが安全です。これだけ覚えておけばOKです。 note(https://note.com/e_dental8020/n/n383b415199af)
止血材を算定漏れなく管理するには、抜歯・外科処置ごとに使用材料チェックリストを作成しておく方法が有効です。電子カルテのテンプレートに止血材の使用欄を設けるだけでも、記録と請求の漏れを大幅に減らせます。
算定の知識があっても、日常業務の中でミスが起きるのは「確認のタイミング」が標準化されていないからです。これは多くの歯科医院が見落としている組織的な問題です。
まず、後出血患者が来院した時点で受付・チェアサイドスタッフがすぐに「再来院か当日初回来院か」を確認するフローを決めておきます。当日2回目の来院であれば摘要欄記載が必要なため、受付段階でフラグを立てられるようにしておくだけで査定ゼロに近づきます。 仕組み化が大切ですね。 showa-d-dousou(https://showa-d-dousou.jp/infomation/wp-content/uploads/2021/04/v24.pdf)
次に、月次でレセプト点検をする際に「後出血処置を算定したレセプト」を抽出し、①病名記載の有無、②当日再来院の場合の摘要欄記載、③止血材の算定区分の整合性、の3点を必ずチェックする習慣をつけます。厚生労働省や支払基金が公示している審査情報提供事例は、算定可否の根拠として非常に有用です。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/smph/shinryohoshu/sinsa_jirei/teikyojirei/shika/shujutsu/s_jirei_220.html)
以下に、後出血処置・縫合止血算定のチェックポイントをまとめます。
| 確認項目 | OK条件 | NG・注意 |
|---|---|---|
| 来院タイミング | 後出血で再来院(当日2回目も含む) | 手術当日1回目の来院のみ |
| 圧迫止血の有無 | 圧迫等では止血できない場合 | 圧迫で止血できた場合は算定不可 |
| 病名記載 | 「部位+後出血」病名あり | 病名なし・傷病名が抜歯のみ |
| 摘要欄記載 | 当日再診の場合「同日再診(1日2度来院)」 | 記載なし |
| 止血材算定 | 出血リスク高・外科手術として必要と判断 | 通常抜歯1枚程度は処置料に含む |
支払基金が公開している審査情報提供事例(歯科)は、実際の算定可否の根拠として最も信頼できる一次情報です。定期的に確認する習慣をつけると安心です。
支払基金 審査情報提供事例(歯科)第220号:歯肉切除手術後の後出血処置として実施した創傷処理の算定可否について(歯科医院の算定根拠確認に活用できます)
しろぼんねっと 令和6年 J084 創傷処理(歯科):後出血処置の算定点数・留意事項の詳細確認に(H3「当日と再来院の扱い」の参考)