ガム・デンタルリンスを「歯磨き後」に使っていると、殺菌効果が半分以下になります。
歯科情報
歯科従事者であれば、患者から「デンタルリンスってどうやって使えばいいですか?」という質問を受けたことが一度はあるはずです。この質問に的確に答えるうえで、まず確認しておきたいのが製品カテゴリの違いです。
GUMブランドが展開するデンタルリンス系製品には、大きく分けて2種類あります。「液体ハミガキ(ガム・デンタルリンス)」と「洗口液(ガム・ナイトケアリンス)」です。どちらも液体でボトルの見た目が似ているため、患者はもちろん一部の医療従事者でも混同しているケースが少なくありません。
つまり名前だけでなく、使うタイミングがまったく逆になるということです。
液体ハミガキ(ガム・デンタルリンス)は、ペースト状の歯磨き粉を液体にした製品です。約10ml(キャップ1杯)を口に含んで20秒ほど口全体に行き渡らせた後、吐き出してからブラッシングする、という順番になります。ブラッシング前に使うことで、液体成分が歯と歯肉の境目・歯間・奥歯の裏側など、ブラシだけでは届きにくい場所に先行して薬用成分を届けるのが狙いです。
一方、洗口液(ガム・ナイトケアリンス)はブラッシング後に使用します。歯磨きで物理的に歯垢を除去した後、仕上げとして殺菌成分を口腔内に行き渡らせる製品です。就寝前に使用することで就寝中の菌の増殖を抑制し、翌朝の口臭やネバつきを防ぎます。
パッケージ裏面に「液体ハミガキ」と記載があれば歯磨き前、「洗口液」と記載があれば歯磨き後が正解です。
| 製品名 | 分類 | 使うタイミング | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| ガム・デンタルリンス | 液体ハミガキ | 🦷 歯磨き前 | 歯周病・口臭予防、殺菌 |
| ガム・ナイトケアリンス | 洗口液 | 🌙 歯磨き後 | 就寝中の菌増殖抑制 |
ガム・デンタルリンスの正しい使い方を、改めて手順として整理しておきましょう。サンスター公式が示している使用法をベースに解説します。
まず、使用量は約10ml(付属のキャップ1杯分)が目安です。コップ半分ほどの量で、多すぎても少なすぎても効果に影響があります。これをそのまま口に含み、20秒ほどブクブクと口腔内全体に行き渡らせます。奥歯の裏側や歯と歯肉の境目にまで液体が届くように、頬を膨らませたり、口を左右に動かしたりしながらすすぐと効果的です。
吐き出した後はハブラシに何もつけずにブラッシングします。液体ハミガキは研磨剤を含まないため、この時点でペースト状の歯磨き粉との併用は基本的に不要です。ただし、着色汚れ(コーヒー・タバコのヤニなど)が気になる患者には、研磨剤配合の練り歯磨き粉との組み合わせを個別に検討します。
すすぎ後は水でうがいをする必要はありません。これが意外なポイントです。
GUMデンタルリンスの殺菌成分CPC(塩化セチルピリジニウム)は、口腔内で歯面に滞留し、時間をかけて殺菌効果を発揮する特性を持っています。使用後に水で口をゆすぐと、歯面に残った殺菌成分も一緒に流れ出てしまうため、長時間の殺菌効果が損なわれる可能性があります。サンスター公式も「使用後、水ですすぐ必要はありません」と明示しています。
どうしても香味が気になる場合は軽くすすいでも問題ありませんが、習慣として「必ず水ですすぐ」患者には、使用後のうがいをなるべく控えるよう指導するのが望ましいです。
参考:ガム・デンタルリンスの使い方・FAQ(サンスター公式)
https://jp.sunstar.com/inquiry/frequentqa/qa_013.html
ガム・デンタルリンスが他の口腔ケア製品と差別化されている点のひとつは、殺菌成分CPC(塩化セチルピリジニウム)の使い方にあります。CPCは1989年のGUM発売当初から採用されてきた有効成分で、歯周病菌に対する高い殺菌力が確認されています。
ここで注目すべきは、CPCが「殺菌するだけ」ではない点です。
歯周病菌(P.g.菌など)は死滅した後でも、その残骸であるLPS(リポ多糖)が歯肉細胞に作用し、炎症反応を引き起こし続けることが知られています。LPSはいわば「死んでもなお毒を吐く物質」で、歯周組織の慢性炎症に関与しています。
GUMデンタルリンスに配合されたCPCは、歯周病菌そのものを殺菌するだけでなく、殺菌後に残るLPSを吸着・不活性化する機能も持っています。これが従来の殺菌剤との大きな違いです。さらに、GK2(グリチルリチン酸ジカリウム)が歯肉の炎症を直接抑える抗炎症作用を発揮するため、殺菌+LPS除去+抗炎症という多角的なアプローチが可能になっています。
また2024年のリニューアルでは、新たに分散剤クエン酸Naが処方に加わりました。歯周病菌は通常バイオフィルム(菌のかたまり)を形成して殺菌剤への耐性を高めています。クエン酸Naはこのバイオフィルムの分散をサポートし、CPCが菌に直接アクセスしやすくする機能を持ちます。つまり、菌が固まってバリアを作る前に先手を打つ設計になっています。
参考:GUM・デンタルリンスの成分・特長(サンスター公式)
https://jp.sunstargum.com/lineup/rinseeconde/dentalrinse/
歯科従事者として患者に説明する際は、「殺菌するだけでなく、死んだ菌の毒素まで除去する成分が入っている」という点を伝えると、製品の価値が伝わりやすくなります。これは使えそうです。
2022年に登場した「ガム・プラス デンタルリンス」は、従来のデンタルリンスシリーズからさらに一歩踏み込んだ設計になっています。歯科従事者として最新情報を把握しておくことで、患者への適切な製品推奨が可能になります。
従来のGUMシリーズは、主要な歯周病菌であるP.g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)の殺菌を中心に設計されていました。しかしガム・プラスシリーズでは、F.n.菌(フゾバクテリウム・ヌクレアタム)という菌に着目しています。
F.n.菌は歯周病菌の"黒幕"です。
F.n.菌はそれ自体が重篤な歯周病を引き起こすわけではありませんが、P.g.菌などの歯周病菌を集めて増殖を促進する性質を持っています。橋渡し役として機能するため、F.n.菌を抑制することで歯周病菌全体の増殖を根本から断つことができます。サンスターの40年以上にわたる研究の結果、CPC+CAE(ヤシ油脂肪酸アシルアルギニンエチル・DL-PCA塩)という独自の殺菌処方によってF.n.菌の増殖が約68%抑制されることが確認されています。
患者への製品選択の目安としては、以下のように考えると整理しやすいです。
アルコール過敏症・ドライマウス・妊婦・口内炎がある患者にはノンアルコールタイプを選ぶことが基本です。
参考:ガム・プラスシリーズの開発背景(PR TIMES STORY)
https://prtimes.jp/story/detail/Gx02EPtPMVb
デンタルリンスを正しく使えば大きな口腔ケア効果が得られます。しかし、「良いものをたくさん使えばより効果が上がる」という誤解が、実は思わぬリスクを生むことがあります。歯科従事者として知っておくべき注意点です。
まず取り上げたいのが、菌交代現象による口腔カンジダ症のリスクです。
デンタルリンスには殺菌成分が含まれており、歯周病菌や細菌の多くを殺菌・弱体化します。口腔内には800種以上の常在菌が存在しており、通常は互いにバランスを保っています。デンタルリンスを過剰使用すると、本来は無害なカンジダ菌(Candida albicans)の競合相手となる細菌が過度に減少し、カンジダ菌が異常増殖するいわゆる「菌交代現象」が起きることがあります。
免疫力が低下している患者は要注意です。
口腔カンジダ症が発症すると、舌や口腔粘膜に白いコケ状の苔(偽膜性カンジダ症)や、粘膜の赤みと委縮(紅斑性カンジダ症)が現れます。重症化すると痛み・味覚異常・嚥下困難が生じ、誤嚥性肺炎のリスクにもつながるため、治療が必要になります。健康な人では発症することは稀ですが、高齢者・ステロイド使用中・糖尿病・放射線治療後の患者では特に注意が必要です。
もう一つ見落とされやすいのが、アルコール配合タイプの使いすぎによる口腔乾燥です。アルコールには揮発性があるため、頻繁に使用すると口腔内の水分が蒸発しやすくなり、ドライマウスを招く可能性があります。唾液が減少すると細菌の自浄作用が低下し、逆に虫歯・歯周病・口臭が悪化するという本末転倒な結果になりかねません。
患者への指導では次の確認を習慣化することが有効です。
「デンタルリンスを毎日3回以上使っている」という患者がいれば、一度ライフスタイルや健康状態を確認し、使用頻度の見直しを勧めることが患者の健康を守ることにつながります。
参考:デンタルリンスの使用時の注意点(宮前平林歯科医院)
https://miyamaedaira-dental-hayashi.com/blog/デンタルリンスを上手に活用しよう!特徴と使用/