デキストラナーゼ配合の歯磨き粉は3分以上作用させないと効果を発揮しません。
デキストラナーゼは虫歯菌が作り出す粘着性物質「グルカン」を分解する酵素です。虫歯菌であるミュータンス菌は、砂糖からグルカンという多糖類を生成し、それが歯の表面に強固に付着することで歯垢(プラーク)を形成します。この歯垢の中で虫歯菌は酸を産生し、歯を溶かしていくのです。
グルカンはグルコースが長く結合した構造を持っています。デキストラナーゼはこの結合の一部、特にα-1,6グルコシド結合を切断することで、歯垢の粘着性を低下させます。粘着性が弱まった歯垢は歯面から剥がれやすくなり、ブラッシングでの除去効率が格段に向上するわけです。
つまり酵素が働くということですね。
この酵素は日本で唯一、歯磨剤に配合が認められた歯垢分解成分として、2023年10月時点でライオン社が独占的に販売実績を持っています。ハブラシが届きにくい歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目、奥歯の噛み合わせ部分にも酵素が浸透し、物理的なブラッシングでは除去困難な部位の歯垢にもアプローチできる点が、従来の研磨剤主体の歯磨き粉とは異なる特徴です。
デキストラナーゼの作用には時間が必要です。セミナー報告によると、デキストラナーゼが歯垢を溶解する効果を発揮するには3分間以上の作用時間が必要とされています。患者指導では、歯磨き粉を口腔内に行き渡らせた後、すぐにすすがずに一定時間保持することの重要性を伝えることが、効果を最大化する鍵となります。
歯垢分解には時間が必要です。
デキストラナーゼを配合した製品は主にライオン社のクリニカシリーズに集約されています。代表的な製品としては「クリニカアドバンテージ」「クリニカPRO オールインワン」「クリニカPRO Plus」などがあり、それぞれフッ素濃度や付加機能が異なります。
クリニカアドバンテージは高濃度フッ素1450ppmを配合し、フッ素が長く留まる「高密着フッ素処方」を採用しています。さらにLSS(ラウロイルサルコシンナトリウム)という殺菌成分も含まれており、虫歯と口臭の両方を予防します。価格は130gで350円前後と、高機能ながら手頃な価格設定が特徴です。この価格で高濃度フッ素とデキストラナーゼの両方が得られるコストパフォーマンスは、患者に推奨しやすい要素となります。
コスパが重要な判断基準です。
クリニカPROシリーズはより包括的な口腔ケアを目指した製品です。「クリニカPRO オールインワン」は虫歯、歯垢、歯周病、知覚過敏症状、口臭、着色、歯石沈着という7大リスクに対応しています。デキストラナーゼに加えて、硝酸カリウム(知覚過敏対策)、TDS(テトラデセンスルホン酸ナトリウム・歯垢分散成分)なども配合されており、複数の口腔トラブルを抱える患者に適しています。
「クリニカPRO Plus 歯周バリア」は歯周病予防に特化した製品で、デキストラナーゼによる歯垢分解と同時に、酵素が歯面に留まることで歯垢の再付着を予防する「歯周バリア」機能を持ちます。歯周病リスクの高い患者、特に40代以降の成人患者への指導に有効です。
製品選択は患者のリスクで決まります。
患者指導では、まず患者の主訴とリスク評価を行います。虫歯リスクが高い若年層にはクリニカアドバンテージ、複合的な問題を抱える中高年にはクリニカPROシリーズというように、個別化した推奨が効果的です。また、味の好みも重要で、クリニカアドバンテージにはソフトミント、シトラスミント、クールミントの3種類があり、患者の清涼感の好みに応じて選択できる点も、継続使用を促す上で重要な要素です。
デキストラナーゼとフッ素は互いに補完的な作用メカニズムを持ち、併用することで虫歯予防効果が相乗的に高まります。デキストラナーゼが歯垢を分解・除去することで、フッ素が歯面に効率的に接触し、再石灰化促進作用を発揮しやすくなるのです。
フッ素には3つの主要な虫歯予防効果があります。
第一に再石灰化の促進です。
初期虫歯では歯の表面からカルシウムやリンが溶け出す脱灰が起こりますが、フッ素はこれらのミネラルを歯に取り込む再石灰化を促進します。
第二に歯質強化です。
フッ素は歯の結晶構造をより安定したフルオロアパタイトに変換し、酸に溶けにくい強い歯を作ります。
第三に酸産生の抑制です。
フッ素は虫歯菌の代謝酵素を阻害し、酸の産生量を減少させます。
再石灰化が虫歯予防の核心です。
しかし、フッ素が効果を発揮するためには、歯面が清潔であることが前提条件です。厚い歯垢が付着していると、フッ素は歯垢の表層にのみ作用し、歯面まで到達しません。
ここにデキストラナーゼの価値があります。
デキストラナーゼが歯垢を分解することで、フッ素の浸透経路が確保され、歯面への直接的な作用が可能になるのです。
実際の使用方法として、クリニカアドバンテージのような製品では、デキストラナーゼとフッ素1450ppmが同一製剤に配合されています。ブラッシング時にデキストラナーゼが歯垢を分解し、同時にフッ素が歯面をコーティングするという二段構えの予防効果が得られます。さらに「高密着フッ素処方」により、フッ素が長時間口腔内に留まり、持続的な予防効果を発揮します。
歯科研究では、1450ppm高濃度フッ素配合歯磨剤の使用により、歯の根元の虫歯を67%抑制できるという報告があります。東京ドーム約5個分の面積に相当する広範囲な疫学調査の結果です。この抑制率は、デキストラナーゼによる歯垢除去とフッ素による歯質強化が組み合わさることで、さらに向上する可能性があります。
67%の抑制率は臨床的に有意です。
患者指導では、すすぎの方法が重要です。フッ素の効果を最大化するには、ブラッシング後のすすぎは少量の水で1回、5秒程度に留めることが推奨されます。大量の水で何度もすすぐと、フッ素が洗い流されてしまい、再石灰化促進効果が減弱するからです。デキストラナーゼとフッ素を配合した歯磨き粉を使用する場合も、この原則は同様に適用されます。
ライオン株式会社のフッ素ケア解説ページでは、フッ素を長く残す習慣について詳しく説明されています
デキストラナーゼ配合歯磨き粉の効果を最大化するには、適正な使用量とブラッシング方法の指導が不可欠です。日本歯磨工業会や4学会合同のフッ化物配合歯磨剤推奨利用方法によると、年齢別の推奨使用量が明確に定められています。
6歳以上の学齢期から成人では、歯ブラシの毛先全体に歯磨き粉をのせる量、約1.5cmから2cm程度が推奨されます。
これは約0.5gに相当します。
3歳から5歳の幼児期では5mm程度、約0.25gです。歯が生えてから2歳までは米粒大、切った爪程度の少量で十分です。
使用量は年齢で異なります。
多くの患者は歯磨き粉を少量しか使用していない傾向があります。特に「歯磨き粉は少量で十分」という古い情報を信じている患者も多く、結果として有効成分が不足し、予防効果が減弱しています。歯科医院での指導では、実際に歯ブラシに適正量をのせて見せることで、視覚的に理解してもらうことが効果的です。
ブラッシング時間も重要な要素です。デキストラナーゼが歯垢を分解するには3分以上の作用時間が必要とされています。しかし、多くの人の実際のブラッシング時間は1分から1分半程度に過ぎません。患者指導では、タイマーやスマートフォンのアプリを活用し、最低3分間のブラッシングを習慣化することを推奨します。
3分以上が効果の分岐点です。
ダブルブラッシング法も有効な指導技法です。1回目のブラッシングでは歯磨き粉を使わず、歯ブラシのみで物理的に歯垢を除去します。
その後、たっぷりの水でしっかりすすぎます。
2回目のブラッシングでは、デキストラナーゼ配合歯磨き粉を適正量使用し、3分間かけて丁寧に磨きます。
最後に少量の水で軽く1回だけすすぎます。
この方法により、物理的清掃と化学的作用の両方を最大化できます。
ブラッシング圧も指導のポイントです。強すぎる圧力は歯や歯肉を傷つけるだけでなく、デキストラナーゼが歯垢に浸透する前に物理的に押し潰してしまう可能性があります。150gから200g程度の軽い力、歯ブラシの毛先が広がらない程度の圧力で、小刻みに動かすことが理想です。
患者が自宅で継続できる指導が重要です。
複雑すぎる方法は継続率を下げます。
まずは適正量の使用と3分間のブラッシング習慣を確立し、それが定着してからダブルブラッシング法などの応用技術を導入するという段階的アプローチが、長期的な口腔健康の維持につながります。
歯科医師として患者に製品を推奨する際、臨床的効果だけでなくコストパフォーマンスも重要な考慮事項です。患者の経済的負担が大きい製品は、いかに効果が高くても継続使用されず、結果的に予防効果を得られないからです。
クリニカアドバンテージは130gで約350円という価格設定です。1日2回、1回あたり1.5cmの使用量とすると、約1か月から1か月半使用できます。月額換算で約230円から350円程度となり、缶コーヒー1本から2本分程度のコストです。この価格で高濃度フッ素1450ppmとデキストラナーゼの両方が得られることは、患者にとって大きなメリットです。
月額300円で予防ができます。
比較対象として、歯科医院専売の高価格帯製品を見てみましょう。チェックアップスタンダードは90gで約500円から600円です。グラム単価で比較すると、クリニカアドバンテージが約2.7円/gに対し、チェックアップは約5.6円/gから6.7円/gとなり、2倍以上の価格差があります。チェックアップにはデキストラナーゼは配合されておらず、主な有効成分はフッ素のみです。
コンクールジェルコートFは90gで約1000円と更に高価です。グラム単価は約11円/gとなり、クリニカアドバンテージの約4倍です。コンクールはジェルタイプで研磨剤無配合という特徴がありますが、デキストラナーゼは含まれていません。
価格差は2倍から4倍です。
クリニカPROシリーズは95gで約400円から500円程度とやや高価ですが、7大リスクケアという包括的機能を考慮すると、複数の製品を使い分ける必要がなくなる点でコストメリットがあります。例えば、知覚過敏用歯磨き粉と虫歯予防用歯磨き粉を別々に購入する場合、合計コストは700円から1000円程度になりますが、クリニカPRO オールインワン1本で両方の機能が得られます。
患者層によるコストパフォーマンスの評価も重要です。若年層や経済的に余裕のない患者には、まずクリニカアドバンテージから開始することを推奨します。月額300円程度なら継続しやすく、デキストラナーゼによる歯垢除去効果も得られます。一方、複合的な口腔トラブルを抱える中高年患者で、経済的余裕がある場合は、クリニカPROシリーズの包括的ケアがより適しています。
継続性がコスト評価の核心です。
定期的な歯科受診と組み合わせることで、さらにコストパフォーマンスが向上します。3か月から6か月ごとの定期検診で虫歯や歯周病の早期発見・早期治療ができれば、将来的な高額治療費を回避できます。月額300円の歯磨き粉投資と、年2回から4回の定期検診費用は、抜歯・インプラント・義歯などの費用と比較すれば、はるかに経済的です。1本のインプラント治療費は30万円から50万円程度ですから、予防投資の価値は極めて高いと言えます。
本八幡の歯科医院による虫歯予防歯磨き粉ランキングでは、コストパフォーマンスの観点からもクリニカアドバンテージが高評価を得ています
患者の年齢、虫歯リスク、全身状態に応じた個別化推奨が、デキストラナーゼ配合歯磨き粉の効果を最大化します。画一的な指導ではなく、患者ごとのリスク評価に基づいた戦略的アプローチが必要です。
小児患者への適用では、年齢と発達段階を考慮します。6歳以上であれば、1450ppm高濃度フッ素配合のクリニカアドバンテージを推奨できます。ただし、使用量は歯ブラシの幅の半分程度、約5mmから1cm程度に留めます。6歳未満の場合は、フッ素濃度の規制により1450ppm製品は使用できないため、低濃度フッ素配合のクリニカKid'sシリーズなど、年齢に適した製品を選択します。
年齢制限を厳守することが基本です。
思春期から成人前期の患者は、虫歯リスクが高い時期です。この年代は間食や糖質摂取量が多く、ブラッシングが不十分になりがちです。デキストラナーゼの歯垢分解効果は、ブラッシング技術が未熟な患者にとって特に有用です。クリニカアドバンテージを適正量使用し、3分間のブラッシングを習慣化することで、この年代の高い虫歯罹患率を低減できます。
妊娠中の患者には特別な配慮が必要です。妊娠期はホルモン変化により歯肉炎が起こりやすく、つわりによるブラッシング困難、嘔吐による口腔内酸性化など、複合的なリスクがあります。デキストラナーゼとフッ素を配合した製品を使用することで、限られたブラッシング機会でも効率的に歯垢を除去できます。つわりがある場合は、香味の刺激が少ないソフトミント系を推奨します。
妊婦には低刺激タイプを推奨します。
中高年患者では歯周病リスクが虫歯リスクを上回ります。この年代にはクリニカPRO Plus 歯周バリアが適しています。デキストラナーゼによる歯垢分解と、酵素が歯面に留まることによる歯垢再付着防止の「歯周バリア」機能が、歯周病予防に効果的です。また、加齢により歯肉退縮が起こると、セメント質が露出し根面虫歯のリスクが高まるため、高濃度フッ素による歯質強化も重要になります。
高齢者や要介護者への指導では、使用の簡便性が重視されます。握力低下や巧緻性の低下により、長時間のブラッシングが困難な場合があります。このような患者には、デキストラナーゼ配合の洗口液を併用する方法も有効です。ブラッシング後に洗口液を使用することで、ブラッシングで除去しきれなかった歯垢にも酵素が作用し、補完的な清掃効果が得られます。
簡便性が継続の鍵になります。
矯正治療中の患者は、ブラケットやワイヤーの周囲に歯垢が蓄積しやすく、虫歯リスクが著しく上昇します。物理的清掃が困難な部位にもデキストラナーゼが浸透するため、矯正患者への推奨は特に有効です。矯正治療期間中は毎回の来院時にデキストラナーゼ配合製品の使用状況を確認し、必要に応じて指導を強化します。
ライオンの生活情報サイトLideaでは、酵素入りハミガキによる歯垢除去のメカニズムが詳しく解説されており、患者説明の参考資料として活用できます
全身疾患を持つ患者では、口腔健康と全身健康の関連を説明することが重要です。糖尿病患者では歯周病が血糖コントロールを悪化させ、逆に歯周病が糖尿病を悪化させるという双方向の関係があります。デキストラナーゼによる歯垢除去と歯周病予防は、全身健康の維持にも寄与することを患者に理解してもらうことで、動機づけが向上します。

【Amazon.co.jp限定】NONIO(ノニオ) プラス ホワイトニング [医薬部外品] ハミガキ 130g×2個+フロス付き 歯磨き粉 高濃度フッ素 (1450ppm配合) 口臭