超音波エラストグラフィー算定で歯科が得する正しい知識

超音波エラストグラフィーの算定ルールを歯科従事者向けに解説。200点の算定条件・制限・併算定不可の組み合わせなど、知らないと損する保険請求のポイントを詳しく紹介します。正しく理解して適切な算定はできていますか?

超音波エラストグラフィーの算定を歯科従事者が正しく理解する

脂肪肝の患者に算定しても、審査で全額返戻される可能性があります。


超音波エラストグラフィー算定 3つのポイント
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算定点数は200点

D215-3 超音波エラストグラフィーの所定点数は200点。肝硬度測定(D215-2)と同時算定はできません。

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原則3ヶ月に1回の制限

同一患者への算定は原則3月に1回のみ。2回以上算定する場合は診療報酬明細書の摘要欄に理由の記載が必須です。

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対象疾患に注意

肝硬変(疑いを含む)が対象。脂肪肝のみの病名では算定が原則認められないため、傷病名の記載に要注意です。


超音波エラストグラフィーの算定基本ルールと点数の仕組み

超音波エラストグラフィー(D215-3)の所定点数は200点です。 これはおおよそ2,000円相当の診療報酬に相当し、3割負担の患者では600円の自己負担となります。 shirobon(https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r06_ika/r06i_ch2/r06i2_pa3/r06i23_sec3/r06i233_cls2/r06i2332_D215_3.html)


算定の前提として、この検査は「汎用超音波画像診断装置のうち、肝臓の硬さを非侵襲的に計測するものとして薬事承認または認証を得ているもの」を使用した場合に限られます。 つまり、機器の薬機法上の承認区分が算定要件に直結しています。これは見落とされがちな条件です。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_3_3_2%2Fd215-3.html)


対象は肝硬変の患者(疑いを含む)であり、肝臓の線維化の程度を非侵襲的に評価した場合に算定できます。 「肝硬変疑い」も含まれるため、確定診断前でも算定可能な点は覚えておいて損はありません。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_3_3_2%2Fd215-3.html)


算定回数は原則として3月に1回が上限です。 3ヶ月というのは約90日で、カレンダーで言えば1四半期分のスパンです。医学的な必要性から2回以上算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に理由と医学的根拠を詳細に記載する必要があります。摘要記載が漏れると審査で否認されるリスクがあります。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_3_3_2%2Fd215-3.html)


項目 内容
区分番号 D215-3
点数 200点
算定上限 原則3月に1回
対象疾患 肝硬変(疑い含む)
使用機器要件 肝硬さ計測の薬機法承認機器


超音波エラストグラフィーの算定で併算定できない検査の組み合わせ

注意が必要なのがD215-2(肝硬度測定)との関係です。肝硬度測定を算定する患者については、超音波エラストグラフィーの費用は別に算定できません。 同じ患者に両方行っても、一方の点数しか請求できないということです。これは痛いですね。 shirobon(https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r06_ika/r06i_ch2/r06i2_pa3/r06i23_sec3/r06i233_cls2/r06i2332_D215_3.html)


さらに、D215-4(超音波減衰法検査)も同様です。 超音波減衰法検査の算定患者には、肝硬度測定または超音波エラストグラフィーの費用は別に算定できないとされています。3つの検査は相互に排他的な関係にあります。 shirobon(https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r06_ika/r06i_ch2/r06i2_pa3/r06i23_sec3/r06i233_cls2/r06i2332_D215_4.html)


同一患者の検査実施日より3月以内に行われた肝硬度測定の費用は、超音波エラストグラフィーの所定点数に含まれます。 つまり、3ヶ月以内に両方の検査を実施していた場合、後からの算定は認められないと考えてください。別に算定が必要な場合は、やはり摘要欄への詳細な理由記載が必要です。 saka1029.github(https://saka1029.github.io/s/04/i/D215-4.html)


令和4年度改定でMRエラストグラフィ(肝硬変・門脈圧亢進症対象)が新たに保険収載されましたが、こちらは600点と点数が異なります。 適応疾患と点数が異なるため、混同しないよう区別して理解しておく必要があります。 jsph.gr(https://jsph.gr.jp/news/2022-04-01/)


超音波エラストグラフィーが算定できる傷病名の正確な範囲

算定できる傷病名は「肝硬変(疑い含む)」が基本です。しかし実は、以下の疾患名でも算定が原則として認められると支払基金が明示しています。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_219.pdf)


- アルコール性肝炎
- 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
- B型肝炎
- C型肝炎


これらは線維化進展リスクの高い疾患として、肝臓の硬さ評価の医学的妥当性が認められています。これは使えそうです。


一方で、脂肪肝単独の傷病名では原則として算定は認められません。 「脂肪肝に対するD215-3超音波エラストグラフィーの算定は、原則として認められないと判断した」と支払基金は明確に示しています。脂肪肝の病名のみで請求すると返戻の対象となるため、傷病名の記載は慎重に行ってください。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_94.pdf)


傷病名の記載が1文字違うだけで算定の可否が変わる——これが算定実務の難しさです。病名管理の精度が、そのまま収益の安定性に直結します。


参考:支払基金による審査の取り扱い(超音波エラストグラフィーの算定可否)
支払基金:超音波エラストグラフィー(アルコール性肝炎等)の算定について(PDF)


参考:脂肪肝に対する肝硬度測定・超音波エラストグラフィーの算定可否
支払基金:脂肪肝に対する肝硬度測定等の算定について(PDF)


超音波エラストグラフィーの算定で必要な摘要欄への記載ルール

摘要欄への記載は、算定の可否を左右する重要な作業です。原則ルールの例外として算定する場合(3ヶ月に2回以上など)は、「その理由及び医学的根拠を詳細に記載すること」が求められます。 記載が不十分だと審査で削除される可能性があります。 shimane-kokuho.or(https://www.shimane-kokuho.or.jp/files/original/20250909114008632764a9609.pdf)


具体的に摘要欄に書くべき内容は以下のとおりです。


- 2回目以上の算定理由(例:治療変更後のモニタリングのため)
- 医学的根拠(例:前回検査から肝機能値が著明に悪化したため再評価が必要)
- 使用した機器の承認番号(確認が求められるケースがあります)


摘要欄は原則として「読んだ審査委員が医学的判断を下せる内容」にする必要があります。記載が曖昧だと「理由の記載あり」とはみなされません。記載内容の精度が条件です。


電子カルテシステムによっては摘要コードを選択する形式のものもあります。その場合も、フリーテキストで根拠を補足することを推奨します。返戻対応にかかる事務コストを考えると、最初から丁寧な記載をしておくほうが効率的です。


歯科従事者が知っておくべき超音波エラストグラフィーの歯科領域への応用可能性

超音波エラストグラフィーは、現在の診療報酬では肝臓の評価に限定されています。これは厳しいところですね。


しかし、歯科・口腔外科領域の研究では、この技術の応用が進んでいます。東京歯科大学では超音波エラストグラフィーを用いた舌の硬さの評価に関する研究が行われており、安静時と水保持時の舌の弾性を計測する取り組みが報告されています。 摂食嚥下リハビリテーションへの応用が期待される分野です。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390564227323512064)


また、顎骨疾患の評価においても、エラストグラフィによる軟組織の硬さの間接的・非侵襲的な計測が研究されています。 歯科口腔外科領域では、腫瘍の良悪性鑑別や組織型推定への活用が研究レベルで進んでいます。 ir.tdc.ac(https://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/5502/1/121_91.pdf)


現時点では歯科用の診療報酬区分として独立した算定はありませんが、医科と連携する口腔外科や病院歯科では、医科の区分(D215-3)としての算定が行われるケースがあります。歯科従事者として、この区分の算定ルールを知っておくことは、医科歯科連携を推進するうえでも実践的な知識となります。


将来的な歯科診療報酬への収載を見据えた知識として、今から理解を深めておくことに損はありません。研究の進展と診療報酬改定のサイクルは連動することが多いため、学術情報にも目を向けておくことをおすすめします。


参考:東京歯科大学による超音波エラストグラフィーを用いた舌の硬さ評価の研究
CiNii:超音波エラストグラフィを用いた安静時と水保持時の舌の硬さの検討


参考:顎骨疾患における超音波エラストグラフィーの活用事例(東京歯科大学)
東京歯科大学学術機関リポジトリ:超音波エラストグラフィー関連論文(PDF)