フロアブルレジンはライニングだけに使うものだと思っていませんか?実はチャームフィル フローは単独で臼歯咬合面にも使えるのに、ライニング専用と思って使い続けると、症例によっては適切な材料選択の機会を逃し続けることになります。
チャームフィル フローは、株式会社ビーエスエーサクライが国内で発売するデンキスト社製のナノハイブリッドフロアブルコンポジットレジンです。管理医療機器(クラスII)として承認番号228AKBZX00037000を取得しており、健康保険適用品である点が最大の特徴です。
コンポジットレジンの物性面での最大の注目点は、重合収縮率の低さにあります。チャームフィル フローの収縮率は2.3%であり、チャームフィル プラス(ペーストタイプ)の1.2%と並んで、一般的なコンポジットレジンの収縮率水準とされる1〜2%台に収まっています。収縮率が高いレジンほど重合後に辺縁部に微細な隙間が生じやすく、二次う蝕や辺縁着色のリスクが増します。つまり2.3%という数値は、フロアブルタイプとしては優秀な部類です。
| 製品名 | タイプ | 収縮率 | 主な用途 | シリンジ単価(税別) |
|---|---|---|---|---|
| チャームフィル フロー | フロアブル(低粘性) | 2.3% | 窩底ライニング・小窩洞充填 | 約850円/2gシリンジ1本 |
| チャームフィル フローHV | フロアブル(中〜高粘性) | 非公表 | 3・5級窩洞・形態付与が必要な部位 | 約850円/2gシリンジ1本 |
| チャームフィル プラス | ペーストタイプ | 1.2% | 1〜5級窩洞・臼歯大窩洞充填 | 約350円/4gシリンジ1本 |
フィラーには平均粒径0.4μm(400ナノメートル)の超微細な表面特殊処理無機フィラーを高密度に配合しており、従来のハイブリッドレジンを超える高い曲げ強度を実現しています。また、バリウムガラスフィラーの配合により、2mmアルミニウム板に対して160〜180%という高いX線造影性を示します。これは、修復後のX線診査において修復物の輪郭を鮮明に確認できることを意味し、二次う蝕の早期発見に有利です。つまり修復後の管理がしやすいということですね。
研磨性能も特筆すべき点の一つです。ナノフィラーテクノロジーにより研磨が容易で、短時間で滑沢なレジン面が得られます。さらに、摩耗しても超微細フィラーのためレジン面の凹凸が小さく、摩耗後も長期間ツヤを維持できます。これは従来型ハイブリッドレジンでは難しかった特性で、審美的な持続性の面で大きなアドバンテージです。
参考:チャームフィルシリーズの物性詳細について(ビーエスエーサクライ公式PDFカタログ)
https://www.bsa-sakurai.co.jp/wp/wp-content/uploads/2017/10/c2cf41ba2c66a9ad44159259944de3ce.pdf
チャームフィル フローシリーズには「フロー」と「フローHV(ヘビーボディー)」の2種類があり、この使い分けを理解することが臨床での満足度を大きく左右します。両者は同じ健保適用・同価格帯でありながら、粘性と適応症が明確に異なります。
チャームフィル フロー(低粘性タイプ)の特徴
- 流動性が高く、窩洞へのなじみが良好
- 凹凸のある窩底や細かい部位への充填に最適
- 浅い5級窩洞・臼歯窩底部のライニング材として使用できる
- チャームフィル プラスと組み合わせて積層充填する際の下層材として有効
- 低収縮性で積層が行いやすい
チャームフィル フローHV(中〜高粘性タイプ)の特徴
- 流動性とタレにくさのベストバランスを実現
- 3級・5級窩洞、ブラックトライアングルの充填、矯正用ブラケットへの接着に対応
- チャームフィル フローと同等の高い物性・審美性を保ちながら、思い通りの形態付与が行える
- 歯内療法時の隔壁としても応用できる
- 気泡の混入に注意が必要(1本目使用時は特に確認推奨)
現場の歯科医師のレビューでは「シェード選択不要と謳っているCRの中では断トツのコストパフォーマンス」という評価が上がっており、保険診療のメインCRとして活用するケースも増えています。これは使えそうですね。
一方、フローHVは「ナノフィラーが高密度に充填されているため、従来型臼歯部用CRを超える高い強度」という物性データを持ちます。HVのほうが形態付与がしやすいため、隔壁形成など少し力がかかる操作にも向いています。
ただし両者に共通する注意点として、積層充填は原則として1層あたり2mm以下で行い、各層ごとに適切な光照射を行うことが重要です。これが基本です。光照射が不足すると内部硬化不良が生じ、重合収縮応力が均一に分散されず、辺縁漏洩リスクが高まることがあります。
参考:フロアブルコンポジットレジンの種類と使い分けに関する解説(OralStudio)
https://www.oralstudio.net/products/detail/15045
2024年9月に追加発売された「チャームフィル フロー ユニバーサル」は、シェード選択が不要な色調適合技術「カメレオンエフェクト」を採用した新シェードです。価格は1ケース1,980円(税別)と、従来のシェード品(1,700円)よりやや高めの設定ですが、その分の価値は十分あります。
カメレオンエフェクトの仕組みは、天然歯と近似した「光透過性」「光拡散性」を持つフィラー配合にあります。この光学的特性により、充填材が周囲の歯質の色調に自然に馴染み、シェード選択の手間を省けます。
ただし、保険診療の現場での臨床評価では「オムニクロマやA・UNOと比較してやや研磨性に劣る(艶が出しにくい)気がする」との指摘もあります。また「他社製品と比較してカメレオン効果は遜色ないレベル」との評価もあり、価格帯を考慮すれば十分な性能とも言えます。前歯部など高い審美性が求められる部位では、透明度が高過ぎると感じる場合もあるため、症例に応じてA・UNOなどと組み合わせる使い方も有効です。
つまり「ユニバーサルで全部解決」ではなく、症例によってシェード品と使い分けることが条件です。
参考:ユニバーサルタイプCRの色調適合性に関する研究報告(日本歯科保存学会)
https://www.hozon.or.jp/member/publication/abstract/file/abstract_158/P1-56.pdf?20230613
チャームフィル フローを単なる「窩底に流し込む材料」として使っているなら、その使い方だけでは物性を十分に活かせていない可能性があります。ここでは現場での活用シーンを整理します。
ライニング材としての活用
チャームフィル プラスと組み合わせる積層充填が基本的な使い方です。窩底にフロアブルを1層流し込むことで、気泡の巻き込みを防ぎながら窩底を均一に整えられます。フロアブルの流動性が窩壁への適合性を高め、その上にペーストタイプのプラスを積層することで、強度と審美性を両立できます。
| ステップ | 使用材料 | ポイント |
|---|---|---|
| ①ボンディング処理 | ボンディング剤 | 確実な乾燥・照射 |
| ②窩底ライニング | チャームフィル フロー(約1mm) | 気泡混入に注意し、各層2mm以下 |
| ③光照射 | — | 10秒以上(メーカー指示に従う) |
| ④本体充填 | チャームフィル フローまたはプラス | 積層2mm以下を厳守 |
| ⑤最終光照射・研磨 | — | ナノフィラーで短時間研磨可 |
前歯部充填での注意点
前歯部においては、チャームフィル フロー ユニバーサルの透明度の高さを逆手に取る使い方が有効です。切縁部にあえてユニバーサルを使うことで、自然な透明感を演出できます。一方、象牙質色が強く出る部位やベース層には、A2〜A3.5などのシェード品を使いAUNOと組み合わせると、より自然な色調再現が可能になります。
矯正用ブラケット接着への応用(フローHV)
チャームフィル フローHVは矯正用ブラケットへの接着にも対応しています。フロアブルレジンをブラケット接着に使うことで、撤去時の歯面へのダメージが少なく、後処理がしやすいというメリットがあります。ただしこの用途はフローHVに限定されており、フローでは形態維持性が低いため適しません。フローHVが条件です。
現場からの声として、「最近はちゃんとライニングをするようにしています」という保険歯科医の実践報告も増えており、「象牙質保護・術後疼痛の軽減・接着の安定化・マージン適合性の向上・歯髄保護・CR収縮応力の緩和・封鎖性向上・操作性の改善」といった複合的なメリットがあることが認識されています。
参考:保険診療での実践的CR充填手順(田舎歯科医のひとり言 note記事)
https://note.com/deercountry1111/n/n73ee310204ee
歯科材料のコストが診療経営に与える影響は、見過ごされがちですが実は無視できません。チャームフィル フローは2gシリンジ2本入りで1,700円(税別)、つまり1本あたり850円という設定です。ユニバーサルシェードでも1ケース1,980円、1本あたり990円です。
他の代表的なシェードフリーCRと比べると、この差は積もれば大きなものになります。
価格差だけを単純比較すれば、チャームフィル フローはオムニクロマの約4分の1です。保険診療において1日あたり5〜10症例でフロアブルを使うとすれば、材料コストの差は月間で数千円から数万円規模になります。
もちろん価格だけで材料を選ぶべきではありませんが、「健保適用品でここまでの物性を持つ製品はなかなかない」という歯科医師の評価があることは事実です。コスパが条件です。
また、世界64カ国で年間150万本が使われているデンキストのベストセラー商品という実績は、グローバルな臨床データの蓄積という観点からも信頼性の根拠になります。保険診療において「コストを下げながらもクオリティを維持したい」というニーズに応える数少ない製品として、多くの保険歯科医が注目しているのは当然の流れです。
さらに在庫管理の観点でも、チャームフィルシリーズはフロー・フローHV・プラスの3タイプでペーストからフロアブルまでカバーできるため、複数メーカーの製品を揃えるコストと管理工数を削減できます。これは地味ながら重要な経営改善です。意外ですね。
なお、チャームフィルシリーズの購入は、信頼のある歯科ディーラーを通じて行うことが推奨されています。品質管理と保管条件(遮光・低温保管)が適切に保たれた流通ルートを選ぶことで、製品本来の物性を引き出せます。購入先の確認を、という点も忘れずに。
参考:BSAサクライのコンポジットレジン製品比較と評判について(1D)