歯科治療中にラテックス手袋を装着した瞬間、乳幼児がアナフィラキシーショックを起こすケースが実際に報告されています。

食物アレルギーとは、特定の食べ物を摂取した後に免疫系が過剰反応を起こす疾患です。体内に入った食物タンパク質をIgE抗体が「異物」と判断し、マスト細胞や好塩基球からヒスタミンなどが放出されることで症状が現れます。
赤ちゃんの症状は皮膚に集中する印象が強いですが、実際には多臓器にわたります。皮膚症状(じんましん・湿疹)が最多で、次いで呼吸器症状、粘膜症状(口・唇の腫れ)、消化器症状(嘔吐・下痢)の順に現れます。 ショック症状は全症例の約10.8%で認められており、決して稀ではありません。 jspaci(https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_5.html)
症状は摂取後2時間以内に起こることが多く、即時型と呼ばれます。 特に0歳台の乳児は免疫システムが未成熟なため、初回摂取でも強い反応を示すことがあります。これが問題の深刻さを増しています。 foodallergy(https://www.foodallergy.jp/wp-content/uploads/2024/04/FAmanual2023.pdf)
| 症状の種類 | 具体的な症状 | 歯科での注目ポイント |
|---|---|---|
| 皮膚症状 | じんましん・湿疹・発赤 | 治療椅子での体位変化後に現れることあり |
| 粘膜症状 | 口唇・口腔内の腫れ・かゆみ | 口腔内操作中に直接観察可能 |
| 呼吸器症状 | 喘鳴・息苦しさ・咳 | アナフィラキシーの前駆症状として重要 |
| 消化器症状 | 嘔吐・下痢・腹痛 | 緊急対応の判断基準に使用 |
| ショック症状 | 血圧低下・意識消失 | エピペン使用の適応となる重篤状態 |
0歳児の原因食物は鶏卵(34.7%)・牛乳(22.0%)・小麦(10.6%)が上位3つを占め、この3品目だけで全体の67.2%を占めます。 東京ドーム1つ分の球場が満員だとしたら、その3分の2以上が卵・乳・麦に関連するイメージです。 jspaci(https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_5.html)
つまり「赤ちゃん=鶏卵・牛乳・小麦の三択で疑え」が基本です。
ただし年齢とともに原因食物は変化します。1〜2歳では魚卵・木の実類が台頭し、3〜6歳では木の実・ピーナッツが増え、7歳以上になると果物・甲殻類が中心になります。 歯科来院時の問診では「今の年齢で何が主な原因か」を確認することが重要です。 jspaci(https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_5.html)
また近年注目されているのがナッツ類(くるみ・カシューナッツ等)アレルギーの増加です。幼児期の木の実類アレルギーは近年急増しており、保護者も把握していないケースがあります。 問診票の項目を最新の傾向に合わせて更新することをお勧めします。 jspaci(https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_5.html)
参考:食物アレルギーの年齢別原因食物と疫学データ(日本アレルギー学会ガイドライン2021)
https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_5.html
歯科従事者が特に注意すべきなのは、ラテックス・フルーツ症候群との関連です。天然ゴム(ラテックス)のタンパク質と、バナナ・アボカド・キウイ・クリなどの食物タンパク質に交差反応性があることが確認されています。 これをラテックス・フルーツ症候群と呼びます。 blanc-dental(https://blanc-dental.jp/column/latex/)
歯科医師のラテックスアレルギー発症率は13.7%と、一般人(0.8%)と比べて約17倍高い。 これは手袋を毎日使う職業リスクですが、患者側にも同様のリスクがあります。 omochi-shika(https://omochi-shika.com/blog/2024.05.01.286/)
乳幼児の場合、おしゃぶりや哺乳瓶の乳首などのゴム製品によって早期にラテックスへ感作される可能性があります。 その感作が成立した後に歯科でゴム手袋に触れると、アナフィラキシーショックを引き起こすリスクがあります。実際に「5歳男児がラバーダムシートで口唇の腫れとアナフィラキシーショックを発症」した事例が報告されています。 www5.famille.ne(http://www5.famille.ne.jp/~ekimae/sub7-185-1.html)
これは見過ごせない事実ですね。
対策として、食物アレルギー既往歴がある乳幼児の来院時は必ずラテックスフリーの手袋・器具を使用します。ポリイソプレン系・ポリクロロプレン系などの合成ゴム手袋への切り替えが推奨されます。 材料の切り替えだけでなく、スタッフへの情報共有と、アレルギー発症時の対応手順の整備も同時に行ってください。 www5.famille.ne(http://www5.famille.ne.jp/~ekimae/sub7-185-1.html)
参考:歯科医院でのラテックスアレルギー対応について(品川勝島おもち歯科)
https://omochi-shika.com/blog/2024.05.01.286/
参考:ラテックスアレルギーの事例と歯科材料(横浜・中川駅前歯科)
http://www5.famille.ne.jp/~ekimae/sub7-185-1.html
アナフィラキシーは食物アレルギー症状の中で最も重篤な状態です。乳幼児期のアナフィラキシーは食物アレルギーに起因するものが多く、歯科診療中にも発生しうる緊急事態です。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000476878.pdf)
症状の現れ方には特徴があります。まず皮膚症状(蕁麻疹・発赤)が先行し、その後呼吸器症状(喘鳴・息苦しさ)が続き、最終的に血圧低下・意識消失に至るパターンが多いです。初期症状を見逃さないことが命取りになります。
歯科医院での準備事項を整理すると。
特に重要なのは問診です。重要な情報が得られます。
エピペンは体重15kg以上(概ね6歳以上)を対象とした0.3mg製剤と、体重15kg未満の小児用0.15mg製剤があります。乳幼児の場合は体重確認が必要です。院内にどちらの規格を備えるべきかを検討してください。呼吸困難や血圧低下の兆候があれば、エピペン使用と同時に119番通報を迷わず行うことが原則です。 omochi-shika(https://omochi-shika.com/blog/2024.05.01.286/)
食物アレルギーを持つ赤ちゃんへの歯科的介入は、通常の乳幼児と異なる配慮が必要です。この観点はあまり語られていませんが、実践的な差異は大きいです。
まず除去食が口腔内環境に影響を与える点を知っておく必要があります。たとえば卵・乳を除去している乳幼児では、カルシウムやビタミンDの摂取不足が起きやすく、歯の石灰化や骨格形成に影響する可能性があります。これが条件です。
歯磨き粉・フッ素塗布剤にも注意が必要です。一部の歯科用フッ素剤には賦形剤として乳タンパク由来成分が含まれる場合があります。牛乳アレルギーの乳幼児に使用する際は、成分表を確認するかアレルゲンフリーの製剤を選択してください。 nagoya-mirai-dc(https://nagoya-mirai-dc.com/topics/2025/05/21/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E5%85%90%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%AD%AF%E7%A7%91%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E3%81%A8%E4%BA%88%E9%98%B2%E3%82%B1%E3%82%A2/)
また、哺乳瓶・おしゃぶりのゴム素材についても、保護者への情報提供が求められます。天然ゴム製のおしゃぶりはラテックス感作のリスクになるため、シリコン製への切り替えを指導する機会を持てるのは歯科の強みです。
さらに、むし歯予防の観点から糖分摂取の指導を行う際も、アレルギー除去食品の中に果汁ジュースや砂糖添加のアレルゲンフリー菓子が多い点に留意します。代替食品を選ぶ際の糖質リスクについて保護者に伝える一言が、歯科従事者としての信頼構築につながります。
参考:アレルギー児への歯科治療対応(名古屋みらいDC)
https://nagoya-mirai-dc.com/topics/2025/05/21/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E5%85%90%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%AD%AF%E7%A7%91%E6%B2%BB%E7%99%82/
参考:日本アレルギー学会「食物アレルギー Q&A」
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=8