ルフォーだけで咬合を完全に整えようとすると、術後に噛み合わせが崩れ、再手術リスクが跳ね上がります。

SSRO(Sagittal Split Ramus Osteotomy)は、日本語で「下顎枝矢状分割術」と呼ばれる手術です。下顎骨を矢状方向に分割し、理想的な位置へ移動させることで骨格の不調和を改善します。
主な適応は受け口(下顎前突)・しゃくれ・開咬・下顎後退・小下顎症・下顎の左右非対称(顎変形症)など、下顎に原因がある症例です。下顎を前後・上下・左右と3方向に動かせる自由度の高さが最大の特徴で、重度の症状にも対応できます。
骨片間の接触面積が広いため骨癒合が早く、術後の顎間固定期間を短縮できるメリットがあります。顎間固定中は口をまったく開けられないため、患者の負担は相当大きいですね。期間を短縮できる点は、患者QOLの向上に直結します。
一方で、手術中に下歯槽神経を損傷するリスクがあります。下歯槽神経は下唇・下顎皮膚・口腔粘膜の感覚を支配しており、損傷すると術後6ヶ月以上、知覚鈍麻や痺れが続くことがあります。また、術中・術後の不適切骨折が起こった場合は数週間にわたる顎間固定が必要となり、再入院を余儀なくされます。リスクを正確に把握することが原則です。
ルフォーⅠ型骨切り術(LeFort I Osteotomy)は、上顎骨と上歯槽骨の間で骨切りを行い、上顎全体を前後・上下に移動させる手術です。フリーになった上顎骨をマイクロチタンプレートで固定し、咬合位を整えます。
主な適応は出っ歯(上顎前突)・ガミースマイル・上顎後退・中顔面の縦方向の過成長・上顎の左右非対称などです。とくにガミースマイルは、笑ったときに歯ぐきが3mm以上露出する状態を指し、ルフォーで上顎を上方へ移動することで改善できます。これは使えそうです。
ただし、ルフォーが単独で施行される症例は実際にはほとんどありません。 上顎だけを動かすと咬合平面が変化し、下顎との噛み合わせが崩れるためです。つまり、ルフォー+SSROの両顎手術として組み合わせるのが標準的な対応です。 ritz-tokyo(https://www.ritz-tokyo.jp/maxillofacial/lefort-i_and_ssro/)
手術の手順は以下のとおりです。
口唇周囲の感覚鈍麻は術後6ヶ月程度続くことがあり、患者への事前説明が欠かせません。 術前に十分なインフォームドコンセントを行うことが条件です。 sakai-keisei.gr(https://sakai-keisei.gr.jp/menu/ope/ago/lefort_ssro/)
両術式の違いを正確に把握しておくことは、治療計画立案と患者説明の両面で不可欠です。意外ですね、「両方とも骨を切る手術」として一括りにされがちですが、適応・対象骨・手術難度はまったく異なります。
| 項目 | SSRO(下顎枝矢状分割術) | ルフォーⅠ型骨切り術 |
|---|---|---|
| 対象骨 | 下顎骨 | 上顎骨・上歯槽骨 |
| 主な適応 | 受け口・下顎前突・開咬・小下顎症 | 出っ歯・ガミースマイル・上顎前突・上顎後退 |
| 移動方向の自由度 | 前後・上下・左右(3軸) | 主に前後・上下方向 |
| 主なリスク | 下歯槽神経損傷・不適切骨折 | 上歯槽神経損傷・血管損傷・左右非対称残存 |
| 単独施行 | 単独でも施行可能 | 単独施行はまれ(咬合不全リスクが高い) |
| 手術時間の目安 | 2〜5時間(全身麻酔) | |
| 術後腫れが引くまで | 約2ヶ月 | |
| 自費診療の費用目安 | 165万円〜 |
両術式ともに全身麻酔・入院が必須です。 費用はSSRO単独・ルフォー単独がそれぞれ165万円、両顎手術(ルフォー+SSRO)では297万円(モニター価格231万円)前後が相場とされています(消費税込)。両方セットで受ける場合は費用と入院期間を含めた総合的な説明が必要です。 sakai-keisei.gr(https://sakai-keisei.gr.jp/menu/ope/ago/lefort_ssro/)
歯科矯正との連携については、術前矯正で歯並びをデコンペンセーション(代償性傾斜の除去)し、術後矯正で細かな咬合調整を行うのが原則です。矯正歯科との連携体制が不十分なクリニックでは、術後に噛み合わせが安定せず長期の追加矯正を要するリスクがあります。
骨格性不正咬合の多くは、上顎と下顎の両方に問題を抱えた複合症例です。SSROのみで下顎を大きく後退させると、上顎との咬合バランスが取れず、結果的に術後の噛み合わせが崩れます。厳しいところですね。
両顎手術(LeFort I + SSRO)では、ルフォーで上顎を適切な位置に移動してから、SSROで下顎を上顎に合わせる順序で手術が進みます。 先に上顎を基準点にすることで、下顎の移動量と方向を精密に設定できる点が、単独術式との大きな違いです。 sakai-keisei.gr(https://sakai-keisei.gr.jp/menu/ope/ago/lefort_ssro/)
口元の突出感(いわゆる「ゴボ口」「ロゴボ」)のように、上下の歯槽骨が同時に前突している症例では、SSROとルフォーを組み合わせた両顎手術が最も根本的な解決策になります。 セットバック手術と比較した場合、移動できる骨の量と咬合の安定性という点で両顎手術のほうが優れています。 ritz-tokyo(https://www.ritz-tokyo.jp/maxillofacial/lefort-i_and_ssro/)
治療計画の立案では、セファロ分析・3D-CTによる骨格評価・VSP(バーチャル外科計画)ツールの活用が、術後のシミュレーション精度を高めます。特に複合症例では複数のスペシャリストが関わるチーム医療が重要です。
参考:両顎手術の適応と術式の詳細について(酒井形成外科)
https://sakai-keisei.gr.jp/menu/ope/ago/lefort_ssro/
術後のインフォームドコンセントで、神経麻痺の「期間」を具体的に説明できているかが重要です。SSRO術後の下唇・下顎皮膚の知覚鈍麻は6ヶ月以上続くケースが報告されており、患者が「麻痺が残った」と誤解してクレームになる事例も少なくありません。 口腔内の感覚異常は術後6ヶ月が回復の目安、と伝えておくことが基本です。 sakai-keisei.gr(https://sakai-keisei.gr.jp/menu/ope/ago/lefort_ssro/)
ルフォー術後の上歯槽神経領域(上唇・鼻翼周囲)の感覚鈍麻も同様です。これらは多くの場合、時間経過とともに改善しますが、永続性の感覚異常が残る可能性もゼロではありません。患者には「必ず治る」ではなく「多くの場合、6ヶ月程度で改善する」という表現が正確です。
術後矯正が想定より長期化するケースも見落とされやすいリスクです。骨の移動量が大きい症例では、術後矯正が1年以上に及ぶことがあります。治療全体のタイムラインを事前に示しておくことで、患者の不満を防ぐことができます。術後矯正の期間目安を明示しておくことが原則です。
患者への説明に使える資料として、日本顎変形症学会の治療ガイドラインや、口腔外科学会の手術説明資料を活用すると、説明の標準化と記録の充実につながります。これだけ覚えておけばOKです。
参考:SSROとルフォーの違いについて(オルソペディア)
https://orthopedia.jp/method-of-treatment/56586/

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