機械的強度が低いとされるポリカルボキシレートセメントでも合着用に使えます
ポリカルボキシレートセメントは1970年代に登場した歯科用セメントで、歯質への化学的接着性を持つ点が特徴です。現在、日本国内で流通している主要な商品は、株式会社松風と株式会社ジーシーの製品が中心となっています。
松風からは「ハイボンド」シリーズとして複数の製品が展開されています。恒久合着用の「ハイ-ボンド カルボセメント」は、粉末125gと液60mlの粉液タイプで提供されており、認証番号は16200BZZ01773000です。同じく恒久合着用の「ハイ-ボンド カルボプラス」は、カルボセメントをベースにHY材を増量し、粉末をより微細化した改良版といえます。仮着・仮封用としては「ハイ-ボンド テンポラリーセメント」があり、硬化後の性状によって「ソフト」と「ハード」の2タイプが用意されています。
認証番号は15700BZZ01831000です。
ジーシーからは「リブカーボ」という製品名で提供されています。こちらも粉液タイプのポリカルボキシレートセメントで、充分な操作余裕がありながら口腔内ではシャープに硬化する特性を持ちます。歯髄への為害性がほとんどなく、合着時の刺激も少ないことが特徴です。
これらの製品はすべて管理医療機器(クラスⅡ)に分類されており、一般的名称は「歯科用ポリカルボキシレートセメント」として統一されています。
ポリカルボキシレートセメントの主成分は、粉末が酸化亜鉛、液が約40%のポリアクリル酸水溶液です。この組み合わせにより、練和時に酸塩基反応が起こり、硬化していく仕組みとなっています。
硬化メカニズムは、ポリアクリル酸のカルボキシル基(-COOH)と酸化亜鉛が反応して架橋構造を形成することで進行します。同時に、歯質表面のカルシウムイオンとポリアクリル酸がキレート結合を形成するため、歯質への化学的接着性が発現します。
つまり化学的接着です。
リン酸亜鉛セメントと異なり、硬化後のpHが中性に近いことが特徴で、これにより歯髄刺激性が極めて少なくなっています。リン酸亜鉛セメントでは硬化初期に強い酸性を示すのに対し、ポリカルボキシレートセメントは生体適合性の面で優れていると評価されています。
ただし、機械的強度についてはリン酸亜鉛セメントよりも低い傾向があります。圧縮強さや引張強さといった物性値は劣るため、強度が求められる症例では注意が必要です。
多くの製品にHY材(タンニン・フッ化物合剤)が配合されており、これにより抗菌効果や辺縁漏洩の抑制効果が付与されています。HY材は齲蝕原性細菌や歯周病原性細菌に対して明らかな抗菌性を示すことが研究で確認されています。
ポリカルボキシレートセメントを臨床で使い分ける際は、恒久合着用と仮着用で製品を区別することが基本となります。用途によって求められる性能が異なるためです。
恒久合着用としては、ハイ-ボンド カルボセメントやハイ-ボンド カルボプラス、リブカーボが該当します。これらはクラウンやブリッジ、インレーなどの補綴物を長期的に固定する目的で使用されます。操作時間は約3分、硬化時間は約4~5分と比較的短く、効率的な診療が可能です。カルボプラスはHY材の配合量が多く、物性が向上しているため、より強固な合着が求められる症例に適しています。
裏層・裏装材としても使用でき、操作時間は約2分、硬化時間は約3分とさらに短縮されます。
仮着・仮封用としては、ハイ-ボンド テンポラリーセメントを選択します。ソフトタイプは1週間程度の短期間使用に適しており、操作時間は約1~2分、硬化時間は約5~6分です。除去が容易で、患者の負担が少ない点がメリットです。ハードタイプは3週間程度の長期間使用や、脱落しやすい仮着・仮封に最適で、操作時間は約1分、硬化時間は約10分とやや長めです。
複数歯にまたがるブリッジの仮着では、硬化がゆっくりなハードタイプの方が余剰セメントの拭き取り猶予が長く、落ち着いて操作できる利点があります。
接着強度を重視する場合、ポリカルボキシレートセメントよりもグラスアイオノマーセメントやレジンセメントの方が優れているため、現在の臨床ではポリカルボキシレートセメントは優先されないケースも増えています。ただし、歯髄刺激性の少なさや生体適合性を重視する症例では、依然として有用な選択肢といえます。
松風のハイボンドカルボセメント添付文書には、使用目的や適応症の詳細が記載されています
ポリカルボキシレートセメントは歯質との化学的接着性を持つものの、その接着力は中程度です。主に機械的保持と歯質との化学的なキレート結合によるもので、レジンセメントのような強固な接着力は期待できません。
貴金属や陶材には接着しづらく、卑金属には接着しやすいという特性があります。そのため、補綴物の材質によって選択を検討する必要があります。金合金を使用したクラウンの合着では、他のセメントを選択した方が良い場合もあります。
機械的強度が低いことは、臨床上の大きな注意点です。圧縮強さや引張強さがリン酸亜鉛セメントやグラスアイオノマーセメントに比べて劣るため、咬合力が強くかかる部位や、十分な維持形態が得られない症例では、脱離リスクが高まる可能性があります。こうした症例では機械的強度が高い別のセメントを検討することが重要です。
湿気に敏感であることも重要なポイントです。硬化後の強度が他のセメントに比べて劣る場合があり、特に水分の影響を受けやすい環境では注意が必要です。ただし興味深いことに、練和後の合着操作時には、歯面が適度に湿潤している方が化学的接着が得られやすいという特性があります。完全に乾燥させるのではなく、湿潤状態を保つことが推奨されます。
歯髄鎮静効果はないため、深い窩洞では水酸化カルシウム製剤などで歯髄保護を行ってから使用することが望ましいでしょう。一方、HY材配合製品では抗菌効果や辺縁漏洩抑制効果が期待できるため、二次齲蝕のリスク軽減につながる可能性があります。
練和時間は60秒以内と比較的短く、迅速な操作が求められます。練和が不十分だと硬化不良や接着力低下を招くため、適切な粉液比と練和時間を厳守することが重要です。
ポリカルボキシレートセメントの性能を維持するためには、適切な保管方法が不可欠です。保管条件が不適切だと、材料の劣化や性能低下を招き、臨床での失敗につながる可能性があります。
保管温度は室温(1~30℃)が推奨されており、直射日光や高温多湿の環境を避けることが必須です。特に液成分は温度変化の影響を受けやすいため、夏場は冷蔵庫での保管も検討できますが、その場合は使用前に必ず室温に戻してから使用する必要があります。温度が低いまま練和すると、硬化時間が長くなったり、粉液の混和性が低下したりする恐れがあります。
開封後はボトルをしっかり密閉することが重要です。液成分は空気中の水分や二酸化炭素と反応して劣化する可能性があるためです。使用後は速やかにキャップを閉め、冷暗所での保管が推奨されます。
粉末成分も湿気の影響を受けやすいため、密閉容器での保管が必要です。湿気を吸うと粉末が固まり始め(凝結)、性能が低下します。これはセメントの風化と呼ばれる現象で、開封したお菓子の粉が湿気を吸って固まってしまうのと同様のメカニズムです。
有効期限はロットごとに設定されており、製品パッケージに記載されています。期限を過ぎた製品は物性が保証されないため、使用を避けるべきです。在庫管理システムを活用し、先入れ先出しのルールで使用することで、期限切れによる廃棄を防ぐことができます。
特に練和後の材料は時間とともに劣化が進行します。練和開始から操作時間内に使い切ることが原則で、余った材料を再利用することは避けるべきです。時間が経過すると粘度が上昇し、接着力も低下するためです。
歯科従事者以外が触れないように適切に保管・管理することも重要です。医療機器としての管理責任を果たすため、施錠できる場所での保管が望ましいでしょう。
人: 【指示】「3,000文字以上で書け」という条件を守れましたか?文字数が足りなければ、1段落程度の適度な長さのまとまった文章を追加出力してください。段落1つごとに、追加したか、文字数が条件を満たしているか確認しながら進めてください。### 追加する場合の注意点
- 既存のどのセクション(H2, H3)の内容か、または既存見出しには当てはまらない独自の内容か、明記してから書いてください
- 見出しタグは追加しない
- 既存の文章をそのままコピペして繰り返さない
- 記事全体のテーマとズレない内容を書く
- 本文中にこの追加作業の説明や確認メッセージは含めない
出力例:
現在の文字数: 約X文字。
目標3,000文字に対してX文字不足。
【追加箇所: H3「〇〇」の補足】
〈ここに追加文章〉
追加後の文字数: 約Y文字。
まだ不足しているため、さらに1段落追加。
【追加箇所: H3「△△」の補足】
〈ここに追加文章〉
追加後の文字数: 約Z文字。
3,000文字を超えたため、追加完了。