軟質リライン材種類と選択基準、適応症と耐久性

軟質リライン材には、アクリル系とシリコーン系の2種類があり、それぞれ特性が異なります。適応症や耐久性、保険適用の違いを理解することが、患者満足度の向上につながります。あなたの診療で、材料選択の基準は明確ですか?

軟質リライン材種類と特性

アクリル系軟質リライン材は半年で交換が必要です。


📊 軟質リライン材の3つの重要ポイント
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材料の種類による性質の違い

アクリル系は粘弾性、シリコーン系は弾性を持ち、緩圧効果が異なります

交換時期の違い

アクリル系は半年から1年、シリコーン系は1.5年以上使用可能です

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保険適用の条件

間接法のみ保険適用で、適応症は高度顎堤吸収や粘膜菲薄の患者に限定されます


軟質リライン材の主な分類と材料特性


軟質リライン材は、主にアクリル系とシリコーン系の2種類に分類されます。どういうことでしょうか?


アクリル系軟質リライン材は、アクリルレジンに可塑剤を配合した材料で、粘弾性という独特な性質を持っています。粘弾性とは、ゴムと粘土が混ざったような性質で、咀嚼力がかかると変形してゆっくりと元に戻る特徴があります。この性質により、口腔粘膜と同程度の弾性率を有し、咀嚼時の圧力を時間をかけて分散させる緩圧効果が得られます。代表的な製品には、亀水化学工業の「FDソフト」やニッシンの「ソフテン」などがあります。


一方、シリコーン系軟質リライン材は、付加型シリコーンを主成分とした材料で、弾性のゴムのような性質を持っています。ジーシーの「リラインⅡ」は、ソフト、エクストラソフト、エクストラエクストラソフトの3種類の硬さを用意しており、症例に応じた使い分けが可能です。シリコーン系は経時的な物性変化が小さく、高い耐久性を示すことが特徴です。


材料の違いによる臨床的な意味は大きいです。アクリル系は咀嚼圧に対する緩圧効果が高く、顎堤吸収が進行した症例に適していますが、可塑剤が徐々に流出するため粘弾性が変化し、半年から1年程度で交換が必要になります。対してシリコーン系は耐久性に優れ、1.5年以上の使用が可能ですが、弾性的な性質のため、アクリル系ほどの緩圧効果は得られません。


リラインとリベースの臨床指針2023によると、アクリル系軟質リライン義歯は硬質リライン義歯と比較して約2倍早くリラインまたは義歯新製に至る傾向があることが報告されています。


つまりアクリル系は耐久性が低いということですね。


材料選択時には、患者の顎堤状態、疼痛の程度、経済的な状況、メンテナンス頻度などを総合的に判断する必要があります。高度顎堤吸収で強い疼痛がある場合はアクリル系を、長期使用を希望する場合はシリコーン系を選択するのが一般的です。


日本補綴歯科学会「軟質リライン材によるリラインのガイドライン2023」には、材料選択の詳細なエビデンスが記載されています


軟質リライン材の適応症と選択基準

軟質リライン材の適応症は、硬質材料では疼痛の改善が困難な症例に限定されています。


保険適用における適応症は、2016年の診療報酬改定で明確に定義されました。対象となるのは、顎堤の吸収が著しい、または顎堤粘膜が菲薄であるなど、硬質材料による床裏装では症状の改善が困難である下顎総義歯患者です。上顎義歯の場合は、顎堤形成手術を行った患者で、手術後6ヶ月以内の場合に限り適用されます。


具体的な適応症としては、以下のような症例が挙げられます。高度顎堤吸収により義歯床下粘膜が直接骨面に接触し、咀嚼時に疼痛を訴える症例では、軟質リライン材の使用が有効です。歯槽骨の鋭縁による疼痛がある症例や、粘膜下組織が菲薄で弾性に乏しい症例も適応となります。顎堤形態不正により義歯の維持安定が困難な症例では、軟質リライン材によって適合性の改善が期待できます。


選択基準は明確です。一般には硬質材料を用い、緩圧が必要な場合に軟質材料を用いるのが原則です。下顎位と咬合関係が適切であり、義歯床粘膜面の適合のみが不良な場合がリラインの適応となります。咬合関係に問題がある場合は、新義歯製作を検討すべきです。


材料の選択では、アクリル系とシリコーン系の特性を考慮します。アクリル系は粘弾性的性質により咀嚼圧の緩圧効果が高いため、高度顎堤吸収で疼痛が強い症例に適しています。シリコーン系は弾性的性質で耐久性が高いため、長期使用を希望する症例や、頻繁な来院が困難な患者に適しています。


禁忌症も理解が必要です。義歯床と軟質リライン材の接着不良が予想される症例、口腔衛生管理が不十分で微生物汚染のリスクが高い症例、金属床義歯など軟質リライン材との接着が困難な症例では、適用を慎重に判断する必要があります。


日本歯科医学会「リラインの指針」には、適応症の詳細な判断基準が示されています


軟質リライン材の耐久性と交換時期の目安

軟質リライン材の適正な厚みは1.8mm以上が必要です。


軟質リライン材の耐久性は、材料の種類によって大きく異なります。アクリル系軟質リライン材は、日々の義歯洗浄の有無に大きく左右されますが、通常、半年から1年程度で交換が必要です。これは、材料に含まれる可塑剤が徐々に流出し、粘弾性が変化して硬化するためです。専用の義歯洗浄剤「クリーンソフト」などを併用することで、半年から1年近くの耐久性を維持できることが報告されています。


シリコーン系軟質リライン材は、アクリル系よりも高い耐久性を示します。リラインとリベースの臨床指針によると、早い場合でも1.5年ほどで軟質リライン材の交換が必要であると記載されています。シリコーン系は経時的劣化が少なく、物性の変化が小さいため、長期間の使用が可能です。


耐久性に影響する重要な因子が厚みです。リラインとリベースのガイドラインによると、適切な被圧縮性を維持するためには、最低1.8mmの厚さが必要であることが示されています。厚さ2mm程度がベストとされ、1mm以上は必ず確保する必要があります。厚みが不足すると、緩圧効果が発揮されず、義歯床下粘膜への圧迫による疼痛が改善されません。


厚みの確保が困難ということですね。直接法では一定の厚みを確保できなかったり、厚みの確保のために咬合高径が変化するリスクがあります。そのため、保険適用では間接法のみが認められています。間接法では、リライン前に義歯床粘膜面をリライン材の厚み分だけ削除することで、適正な厚みを確保できます。


交換時期の判断には、視覚的・触覚的な評価が重要です。軟質リライン材の硬化、表面の粗造化、変色、剥離、亀裂などが認められた場合は交換が必要です。患者が咀嚼時の疼痛を訴えるようになった場合も、材料の劣化を疑うべきです。


高度のドライマウスなどで口腔内環境が不良な場合は、耐久性がさらに低下する可能性があります。定期的な口腔内検査と義歯の評価を行い、適切なタイミングで交換することが、患者満足度の維持につながります。


軟質リライン材の保険適用と施術方法の違い

軟質リライン材は直接法では保険適用されません。


2016年の診療報酬改定により、軟質リライン材を用いた有床義歯内面適合法が保険適用となりました。


しかし、その適用には厳格な条件があります。


最も重要な制限が、間接法のみの適用という点です。直接法では算定できないため、注意が必要です。


保険点数は、有床義歯内面適合法「軟質材料を用いる場合」として設定されています。届出を行った保険医療機関において実施が可能で、顎堤の吸収が著しいまたは顎堤粘膜が菲薄である下顎総義歯患者、あるいは顎堤形成手術を行った患者で手術後6ヶ月以内の場合に算定できます。


直接法と間接法の違いを理解することが重要です。直接法は、口腔内で直接圧接や筋圧形成を行いながら処置する方法で、診療室で完結するため広く用いられています。しかし、モノマーや重合反応熱により顎堤粘膜を刺激する場合があり、唾液を巻き込むため辺縁が剥がれやすいという問題があります。


間接法は、ダイナミック印象などを行った後に義歯を預かって技工室で行う方法です。ジグによる方法とフラスク埋没による方法があり、より精密な処置が可能です。厚みのコントロールが容易で、均一な厚さの軟質リライン層を付与できるため、保険適用の条件とされています。


間接法のメリットは他にもあります。重合時の熱による粘膜刺激がなく、患者の負担が少ないです。技工操作を専門の技工士が行うことで、軟質リラインのばらつきが最小限になります。義歯床との接着も確実で、長期的な予後が良好です。


間接法での製作方法には、埋没法とリライニングジグ法があります。埋没法は従来からの方法で、フラスク埋没により重合を行います。リライニングジグ法は、専用のジグを使用してダイナミック印象を再現する方法で、より効率的な製作が可能です。


施設基準として、厚生労働大臣が定める基準に適合している保険医療機関であることが必要で、地方厚生局長等への届出が必須となります。


つまり届出が必要ということですね。


軟質リライン材の洗浄管理と患者指導のポイント

義歯用ブラシでの清掃は軟質リライン材を劣化させます。


軟質リライン材の耐久性を維持するには、適切な洗浄管理が不可欠です。しかし、通常の義歯と同じ清掃方法では、軟質リライン材を傷つけ、耐久性を著しく低下させる可能性があります。


アクリル系軟質リライン材では、専用の義歯洗浄剤の使用が必須です。亀水化学工業の「FDソフト」の場合、必ず軟質レジン専用の義歯洗浄剤「クリーンソフト」で毎日洗浄する必要があります。一般市販の義歯洗浄剤を使用すると、内部に気泡を発生させ、面荒れの原因となることが報告されています。専用洗浄剤の使用により、義歯洗浄力は他社市販酵素系の数十倍もあり、軟質リライン材の耐久性が大幅に向上します。


シリコーン系軟質リライン材の清掃には、スポンジと中性過酸化物系義歯洗浄剤の併用が推奨されます。研究によると、義歯用ブラシでの機械的清掃は、シリコーン系軟質リライン材の接着性を低下させることが明らかになっています。スポンジによる機械的清掃と中性過酸化物義歯洗浄剤の併用では、表面粗さの増加が最小限に抑えられることが確認されています。


煮沸消毒は絶対に避けるべきです。軟質リライン材は熱に弱く、煮沸により変形や物性変化を起こします。また、義歯洗浄剤を溶かした熱湯への浸漬も同様に禁忌です。


水またはぬるま湯での洗浄が基本となります。


患者指導では、以下の点を明確に伝える必要があります。食後は必ず義歯を外し、流水下で食物残渣を除去することが基本です。1日1回は専用の義歯洗浄剤に浸漬し、化学的清掃を行います。機械的清掃は、義歯用ブラシではなく、ガーゼやスポンジでやさしく清掃するよう指導します。


夜間の取り扱いも重要です。就寝時は義歯を外し、水または専用洗浄剤の溶液に浸漬して保管します。乾燥させると変形の原因となるため、必ず水中保管を徹底します。


定期健診の重要性を説明することも必要です。軟質リライン材は経時的に劣化するため、3ヶ月から6ヶ月ごとの定期検診で、材料の状態、義歯の適合、口腔粘膜の状態を評価します。劣化の兆候が認められた場合は、早期に交換することで、疼痛の再発を防ぎます。


口腔衛生管理が不十分な患者や、指導に従えない患者では、軟質リライン材の使用を慎重に判断する必要があります。微生物汚染のリスクが高く、誤嚥性肺炎などの全身疾患につながる可能性があるためです。


「シリコーン系軟質裏装材はスポンジと中性過酸化物洗浄剤で清掃」には、具体的な清掃方法のエビデンスが示されています






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