成人の永久歯にビタペックスを使うと再治療時に除去困難になります
メタペックス(商品名:ビタペックス)は、1977年に石川らによって発表された水酸化カルシウム系根管充填材です。主成分は水酸化カルシウム30%、ヨードホルム40%、そしてシリコンオイル22.4%で構成されています。硫酸バリウムも造影剤として配合されており、X線撮影時に根管内の状態を明瞭に確認できます。
この製剤の最大の特徴は非硬化性であることです。パスタ状のまま根管内に留まり、時間が経過しても固まりません。この性質により、乳歯の根管充填に最適とされています。なぜなら、乳歯は永久歯の萌出に伴って生理的に歯根が吸収されるため、硬化しない充填材のほうが後継永久歯の萌出を妨げないからです。
水酸化カルシウムは強いアルカリ性(pH約12.5)を示し、細菌の増殖を抑制する効果があります。組織に対しては石灰化を促進する作用があるため、根尖部歯周組織の治癒に好影響を与えます。つまり、根の先端部分の炎症が治まりやすくなるということですね。
ヨードホルムは抗菌作用を持つ成分で、根管内の残存細菌に対して効果を発揮します。ただし、ヨードアレルギーのある患者や甲状腺疾患を持つ患者には使用できないという制約があります。治療前に必ず患者の既往歴を確認する必要があります。
シリコンオイルは溶媒として機能し、製剤に適度な流動性を付与しています。このおかげで注射器型の容器から根管内へスムーズに注入できます。しかし、このシリコンオイルこそが後述する問題の原因となるのです。油性のため体内では吸収されにくく、根管内に長期間残留する可能性があります。
ネオ製薬工業のビタペックス製品ページには、成分の詳細と操作性についての情報が掲載されています。
メタペックスとカルシペックスは、どちらも水酸化カルシウム製剤ですが、重要な違いがあります。
最も大きな相違点は溶媒です。
メタペックス(ビタペックス)がシリコンオイルを使用しているのに対し、カルシペックスは精製水を溶媒としています。
この溶媒の違いが、臨床上の特性に大きく影響します。カルシペックスは水溶性のためサラサラとした流動性があり、軽い力で根管内に充填できます。一方、メタペックスは油性のため粘度が高く、やや硬めのペースト状です。操作性の面ではカルシペックスのほうが扱いやすいと感じる術者が多いようです。
造影剤の違いも重要なポイントです。メタペックスはヨードホルムを造影成分として含んでいます。このヨードホルムは生体内で分解・吸収されるため、X線写真上で徐々に透過像が薄くなっていきます。このため「吸収された」と誤解されやすいのですが、実際には水酸化カルシウムとシリコンオイルは根管内に残留しています。
カルシペックスは硫酸バリウムを造影剤としており、これは分解されません。つまり、X線写真上でいつまでも明瞭に写り続けます。根尖孔外に溢出した場合の発見がしやすいという利点がある一方、それだけ溢出に対する警戒が必要だということですね。
使い分けの基準としては、乳歯にはメタペックスが第一選択となります。非硬化性で吸収される(正確には一部成分が吸収される)という特性が、永久歯への交換に適しているからです。成人の永久歯の根管治療においては、カルシペックスを根管貼薬として使用し、最終的な根管充填にはガッタパーチャを用いるのが標準的な術式です。
ただし、根尖病巣が大きい場合や、根尖部の組織修復を促したい症例では、成人でも一時的にメタペックスを使用することがあります。その場合は、後の再治療を考慮して除去しやすい状態で充填することが求められます。
日本歯科薬品の資料には、カルシペックスとビタペックスの造影性の違いと溢出リスクについて詳細な解説があります。
メタペックスの使用で最も警戒すべきリスクは、根尖孔外への溢出です。根管充填時に過剰な圧力をかけると、製剤が根の先端から歯周組織内に押し出されてしまいます。この溢出が重大な合併症を引き起こすことが、複数の症例報告で明らかになっています。
朝日大学の症例報告によれば、58歳女性の下顎左側第二大臼歯の根管治療中、ビタペックスが遠心根の根尖孔から多量に溢出し、下顎管内に迷入しました。その結果、左側下唇からオトガイ部にかけて知覚麻痺が発現したのです。下顎管は下歯槽神経が通る管で、ここに異物が入り込むと神経を圧迫します。
この患者は初診時、左側下唇部に「ピリピリ感」を訴え、触覚・痛覚ともに鈍麻していました。治療としてビタミンB12製剤の内服と低周波通電による理学療法が実施され、約6ヶ月後には知覚がほぼ正常に回復しましたが、患者のQOL(生活の質)に大きな影響を与えた期間があったことは否めません。
水酸化カルシウム製剤の根尖孔外溢出による有害事象は、これだけではありません。組織壊死、痛み、腫脹なども報告されています。特に問題なのは、ヨードホルムが吸収されてX線透過性が増すと、画像上では「吸収された」ように見えてしまうことです。しかし、実際には水酸化カルシウムやシリコンオイルが残留しており、組織への刺激が続いている可能性があります。
溢出を防ぐためには、作業長(根管の長さ)を正確に測定することが最重要です。デジタルX線やCT、根管長測定器(アペックスロケーター)を活用し、根尖孔の位置を的確に把握します。充填時には、注入器の先端を根管の全長の1/3から3/4程度の深さに留め、ゆっくりと圧をかけながらパスタを充填します。
根管口部から逆流してきたら、それが充填完了のサインです。それ以上に圧をかけると根尖孔外への溢出リスクが高まります。特に根尖病巣によって根尖孔が開大している症例では、より慎重な操作が求められます。このような症例では、MTAセメントで根尖孔を閉鎖してから充填する方法も検討すべきでしょう。
朝日大学の論文には、ビタペックスの下顎管内迷入による下唇麻痺症例の詳細な経過が記載されています。
メタペックスの適応は、乳歯と永久歯で明確に異なります。乳歯に対しては根管充填材として使用されますが、永久歯に対してはあくまで一時的な根管貼薬または暫間的な充填材として用いるべきです。この使い分けを理解していないと、後の治療で困難な状況を招きます。
乳歯の根管治療では、メタペックスが第一選択となる理由があります。乳歯の歯根は永久歯の萌出に伴って生理的に吸収されるため、硬化しない充填材が望ましいのです。永久歯が生えてくる際に、硬いガッタパーチャが残っていると萌出を妨げる障害物となってしまいます。メタペックスは非硬化性で、かつ一部成分が吸収されるため、永久歯交換期の障害になりにくいのです。
乳歯の根管は、永久歯と比較して複雑な形態をしています。側枝や副根管が多く、根尖孔も生理的吸収により開大していることがあります。このような複雑な形態に対しても、流動性のあるメタペックスは隅々まで到達しやすく、緊密な充填が可能です。レンツロ充填器を併用することで、より確実な充填が実現できます。
一方、永久歯の根管充填にメタペックスを使用すると、複数の問題が生じます。最も大きな問題は、再根管治療が必要になった際の除去困難性です。シリコンオイルは油性のため歯質に浸透しやすく、長期間経過すると根管壁に強固に付着します。通常のファイルやリーマーでは完全に除去できず、根管内に白い石灰化物として残存することがあります。
再根管治療の成功率は、旧充填材を完全に除去できるかどうかに大きく依存します。メタペックスが残留していると、新たな充填材の緊密な充填が妨げられ、根管内の無菌化が不十分になります。結果として、根尖病巣が治癒しない、あるいは再発するリスクが高まるのです。
永久歯でメタペックスを使用せざるを得ない状況もあります。例えば、根尖病巣が非常に大きく、まず組織の修復を促してから最終的な根管充填を行いたい場合です。このような症例では、メタペックスを数ヶ月間留置して根尖部の治癒を待ち、その後にビタペックスソルベントを用いて除去し、ガッタパーチャで再充填するという二段階アプローチが有効です。
根管治療専門医のサイトには、乳歯と永久歯の根管治療における材料選択の違いについて詳しい説明があります。
メタペックスを根管から除去する作業は、従来は非常に困難でした。しかし、2016年にネオ製薬工業から専用の「ビタペックスソルベント」が発売され、状況は大きく改善しました。このソルベントは、根管充填後一定期間経過したビタペックスの組成を考慮し、適切な油脂溶解作用を付与した製品です。
ビタペックスソルベントの主な成分は油脂溶解剤で、シリコンオイルを効果的に軟化させます。
使用方法は比較的シンプルです。
まず、リーマーやファイルで根管内のビタペックスを機械的にある程度除去します。その後、ソルベントを根管内に滴下し、数分間作用させてビタペックスを軟化させます。
軟化したビタペックスは、再びリーマーやファイルで容易に除去できるようになります。このプロセスを繰り返すことで、根管壁に付着したビタペックスも効率的に除去できます。超音波チップを併用すると、さらに除去効率が向上します。超音波振動により軟化したビタペックスが根管壁から剥離しやすくなるからです。
除去作業中は、大量の洗浄液で根管内を洗い流すことが重要です。次亜塩素酸ナトリウム溶液とEDTA溶液を交互に使用し、軟化したビタペックスと溶解した油分を根管外へ排出します。この洗浄を十分に行わないと、ソルベントや油分が根管内に残留し、新しい充填材の接着を妨げる可能性があります。
完全にビタペックスを除去できたかどうかの確認には、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)が有効です。根管内を拡大して観察することで、白い石灰化物の残存を視覚的に確認できます。X線写真だけではヨードホルムが吸収されて透過性が増しているため、残存の有無を正確に判断できない場合があります。
ソルベントを使用しても除去が困難な場合は、機械的な除去方法を強化する必要があります。ニッケルチタンファイルやロータリーファイルを使用して、根管壁を削りながらビタペックスを除去していきます。ただし、過度な削除は根管壁を薄くし、歯根破折のリスクを高めるため、慎重な判断が求められます。
最も重要なのは、最初の根管充填時に永久歯へのメタペックス使用を避けることです。どうしても使用する場合は、後の除去を考慮して最小限の量に留め、患者記録に明記しておきましょう。再治療を担当する術者が状況を把握しやすくなります。
ネオ製薬工業のビタペックスソルベント製品ページには、使用方法と注意事項が詳しく記載されています。

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