カルバペネム系抗生物質一覧と種類、特徴の徹底解説

カルバペネム系抗生物質の種類と特徴、使い分けを歯科医療従事者向けに詳しく解説。イミペネム、メロペネム、ドリペネムなど各薬剤の違いや注意点、副作用まで網羅しています。併用禁忌は把握していますか?

カルバペネム系抗生物質一覧と種類

てんかん薬を服用中の患者にカルバペネムを投与すると、発作が再発します。


この記事の3つのポイント
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国内使用可能な6種類を完全網羅

イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ビアペネム、エルタペネム、テビペネムの特徴と使い分けを解説

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併用禁忌とバルプロ酸の関係

全カルバペネム系とてんかん治療薬バルプロ酸は併用禁忌、血中濃度が急激に低下し発作が再発するリスクあり

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AMR対策における位置づけ

最後の切り札として慎重な使用が求められ、歯科外来での安易な処方は耐性菌増加を招く


カルバペネム系抗生物質の全種類と商品名


カルバペネム系抗生物質は、国内で使用できる薬剤が限られています。現在、日本で承認されているカルバペネム系は6種類のみです。注射薬が5種類、経口薬が1種類という内訳になっています。それぞれの薬剤には異なる商品名がつけられており、臨床現場では両方の名称が使われます。


注射薬として使用されるのは、イミペネム・シラスタチン(商品名:チエナム)、メロペネム(商品名:メロペン)、ドリペネム(商品名:フィニバックス)、ビアペネム(商品名:オメガシン)、パニペネム・ベタミプロン(商品名:カルベニン)の5つです。これらはすべて点滴静注で投与される形態となっています。


経口薬としてはテビペネムピボキシル(商品名:オラペネム小児用細粒)があります。世界初の経口カルバペネム系抗菌薬として2009年に承認されましたが、適応は小児に限定されています。成人向けの経口カルバペネムは国内では使用できません。


各薬剤は薬価も異なります。例えばメロペネム点滴用バイアル0.5gは約1,500円前後、チエナム点滴静注用0.5gは約2,000円前後です。後発医薬品も複数のメーカーから発売されており、先発品より安価に入手できます。


つまり選択肢は限られているということですね。


カルバペネム系の特徴とスペクトラム

カルバペネム系抗生物質は、β-ラクタム系抗生物質の中でも特に広域な抗菌スペクトラムを持つ薬剤群です。構造的には、通常のペニシリン系やセフェム系に存在する硫黄原子が炭素原子に置換されたカルバペネム骨格を持っています。この構造的特徴により、多くのβ-ラクタマーゼに対して安定性を示します。


抗菌スペクトラムの広さが最大の特徴です。グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌、嫌気性菌のほぼすべてに抗菌活性を示します。具体的には、ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、バクテロイデス属など、臨床的に重要な細菌の大半をカバーします。


効かない菌を覚える方が早いです。


カルバペネムが無効な菌としては、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、カルバペネム耐性緑膿菌、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)、Stenotrophomonas maltophilia、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ、リケッチアなどが挙げられます。これらの菌種には別の抗菌薬を選択する必要があります。


作用機序は細胞壁合成阻害です。細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカン層の合成に関与するPBP(ペニシリン結合タンパク質)に結合し、細胞壁合成を阻害することで殺菌的に作用します。時間依存性の抗菌薬であるため、血中濃度をMIC(最小発育阻止濃度)以上に保つ時間が重要になります。


投与回数は1日3~4回が基本です。


MSDマニュアル家庭版のカルバペネム系解説では、作用機序や適応症について詳しく説明されています。カルバペネム系の基礎知識を確認する際の参考リンクとして有用です。


カルバペネム系各薬剤の違いと使い分け

同じカルバペネム系でも、薬剤ごとに微妙な違いがあります。臨床現場では、これらの特性を理解して使い分けることが求められます。


イミペネム・シラスタチンは、1987年に国内で最初に承認されたカルバペネム系です。グラム陽性菌への活性が比較的強い傾向があります。ただし中枢神経系への移行性が高く、痙攣発作のリスクが他のカルバペネムより高いため、髄膜炎には使用されません。腎臓のデヒドロペプチダーゼにより分解されるため、その阻害剤であるシラスタチンと配合されています。


メロペネムは、最も広く使用されているカルバペネム系です。グラム陰性桿菌への活性がイミペネムより強く、緑膿菌にも優れた効果を示します。中枢神経系への移行も良好で、痙攣のリスクがイミペネムより低いため、髄膜炎にも使用できます。ただし腸球菌への活性はイミペネムに劣ります。


ドリペネムは、緑膿菌への活性がメロペネムよりさらに強化されています。グラム陰性桿菌が原因菌として疑われる重症感染症で選択されることがあります。ただし、供給制限の影響を受けやすい薬剤でもあります。


ビアペネムは、パニペネムの改良型として開発されました。他のカルバペネムと同様の広域スペクトラムを持ちますが、臨床での使用頻度は比較的低めです。


エルタペネムは、緑膿菌への活性がない代わりに半減期が長く、1日1回投与が可能です。ただし国内では2024年時点で承認されていません。海外文献を読む際に名前を見かけることがあります。


結論は施設の採用薬を使うことです。


各カルバペネム間で臨床的な有効性に大きな差はありません。多くの施設では、コストや供給安定性を考慮して1~2種類のカルバペネムを採用しています。採用されている薬剤の特性を把握しておくことが実践的です。


カルバペネム系と併用禁忌薬の重要知識

カルバペネム系には絶対に避けなければならない併用禁忌があります。てんかん治療薬のバルプロ酸ナトリウム(商品名:デパケン、セレニカ、バレリン、ハイセレニンなど)との併用は、全カルバペネム系で禁忌に指定されています。


併用による最大のリスクは、てんかん発作の再発です。カルバペネム系抗菌薬とバルプロ酸を併用すると、バルプロ酸の血中濃度が急激に低下します。有効血中濃度は通常40~120μg/mLですが、カルバペネムとの併用により、この濃度を大幅に下回る事例が報告されています。血中濃度の低下により、それまで抑制されていたてんかん発作が再発する危険性があります。


どういうことでしょうか?


機序はバルプロ酸の代謝促進と考えられています。カルバペネム系がバルプロ酸のグルクロン酸抱合を促進し、抱合体の排泄を加速させることで血中濃度が低下すると推測されています。投与開始後数日以内に血中濃度が低下し、発作が起こることが特徴です。


添付文書では明確に併用禁忌と記載されています。医療安全の観点から、バルプロ酸を服用している患者には、どうしても必要な場合を除き、カルバペネム系以外の抗菌薬を選択すべきです。歯科領域であれば、ペニシリン系やセフェム系、マクロライド系など代替薬が複数あります。


やむを得ず併用する場合の対応も知っておく必要があります。重症感染症でカルバペネム以外に選択肢がない場合、バルプロ酸から別の抗てんかん薬への切り替えを検討します。切り替えが困難な場合は、バルプロ酸の血中濃度を頻回に測定しながら慎重に投与し、発作の徴候を厳重に監視します。


この情報は命に関わるものです。


全日本民医連の副作用モニター情報では、バルプロ酸とカルバペネムの併用禁忌について、実際の症例を含めた詳細な解説があります。


医療安全の観点から必読の内容です。


カルバペネム系の副作用と中枢神経への影響

カルバペネム系抗生物質には特有の副作用リスクがあります。


最も注意すべきは中枢神経系への影響です。


痙攣や意識障害といった中枢神経症状が起こりやすいことが知られています。頻度は非常に稀ですが、一度発症すると重篤になる可能性があります。特にてんかんの既往歴がある患者、中枢神経系障害を有する患者、高齢者、腎機能障害患者では発症リスクが高まります。


なぜ中枢神経症状が起こるのか。カルバペネム系はGABA受容体に対する阻害作用を持っています。GABAは脳内で抑制性の神経伝達物質として働いており、その受容体が阻害されると神経細胞の興奮が増大し、痙攣が誘発されます。特にイミペネムはGABA受容体阻害作用が強いため、痙攣のリスクが高いとされています。


髄膜炎ではリスクが上がります。


髄膜炎の患者では、血液脳関門の透過性が亢進しているため、カルバペネムが中枢に移行しやすくなります。疾患の自然経過による痙攣なのか、薬剤性なのかの判断が難しい場合もありますが、慎重な投与と監視が必要です。


消化器症状も比較的多く見られます。下痢、嘔気、嘔吐などが報告されており、下痢の頻度は5~10%程度とされています。これは腸内細菌叢への影響によるものと考えられます。広域スペクトラムのため、病原菌だけでなく正常な腸内細菌も抑制してしまうことが原因です。


腎障害のリスクもあります。頻度は非常に稀ですが、急性腎不全などの重篤な腎障害が報告されています。腎機能障害がある患者では、カルバペネムの血中濃度が上昇しやすく、中枢神経症状や腎障害のリスクが高まるため、投与量の調整が必要です。


過敏症状として発疹、蕁麻疹、紅斑、かゆみなどが起こることがあります。ペニシリン系やセフェム系にアレルギーがある患者では、カルバペネム系にも交差反応を示す可能性があるため、慎重投与が必要です。


重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、偽膜性大腸炎、急性腎不全、無顆粒球症、血小板減少などが添付文書に記載されています。これらは極めて稀ですが、発現した場合は重篤です。


副作用のモニタリングが重要です。投与中は定期的に血液検査(腎機能、肝機能、血球数)を実施し、異常の早期発見に努めます。患者には痙攣、意識障害、激しい下痢、発疹などの症状が現れたらすぐに連絡するよう説明しておきます。


歯科領域におけるカルバペネム系の適正使用

歯科領域でのカルバペネム系の位置づけは特殊です。通常の歯科外来診療では、カルバペネム系を使用する機会はほとんどありません。


歯性感染症の第一選択薬ではありません。軽度から中等度の歯性感染症では、ペニシリン系(アモキシシリンなど)やセフェム系(セフカペンピボキシルなど)が第一選択となります。歯周組織炎ではマクロライド系(アジスロマイシンなど)も使用されます。これらの狭域~中等度スペクトラムの抗菌薬で十分に対応できるケースがほとんどです。


使用が検討されるのは重症例のみです。具体的には、壊死性筋膜炎、広範囲の頬部蜂窩織炎、降下性壊死性縦隔炎など、生命を脅かす可能性のある重篤な歯性感染症において、入院治療の一環としてカルバペネム系が選択されることがあります。この場合も、クリンダマイシン(CLDM)との併用が推奨されます。


外来でのカルバペネム使用は避けるべきです。


特に経口カルバペネムのオラペネムは、小児用として承認されていますが、感染症専門家の多くが外来での使用に警鐘を鳴らしています。安易な使用は、将来的にカルバペネム耐性菌を増やすリスクがあるためです。最後の切り札を温存するためにも、外来での使用は最小限に留めるべきです。


AMR(薬剤耐性)対策の観点からも慎重な使用が求められます。厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き 歯科編」では、歯科領域における抗菌薬の適正使用について詳しく述べられています。カルバペネム系については、特に慎重な使用が必要な薬剤として位置づけられています。


歯科医師が知っておくべきポイントがあります。重症の歯性感染症で入院加療が必要と判断した場合、速やかに口腔外科や総合病院に紹介することです。紹介先でカルバペネム系が使用される可能性がありますが、その判断は感染症治療に精通した医師に委ねるべきです。


予防投与では使用しません。抜歯などの観血的処置における予防的抗菌薬投与で、カルバペネム系を選択することはありません。予防投与の第一選択はアモキシシリンやセファゾリンなどの狭域スペクトラム薬です。


耐性菌出現のリスクを理解する必要があります。カルバペネム系の過剰使用は、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)の出現を促進します。CREは感染症法で5類全数報告疾患に指定されており、公衆衛生上の重大な脅威です。一医療機関での不適切な使用が、地域全体の耐性菌問題につながる可能性があります。


これは社会的責任の問題です。


日本歯周病学会の「歯周病患者における抗菌薬適正使用のガイドライン2020」では、歯科領域での抗菌薬使用における原則が詳しく解説されています。AMR対策を意識した処方の参考になる内容です。


カルバペネム系は最終手段として温存すべき抗菌薬です。日常の歯科診療では、まず狭域スペクトラムの抗菌薬から検討し、段階的に選択していく姿勢が重要です。患者の全身状態、感染の重症度、培養結果などを総合的に判断し、本当に必要な場合にのみ使用するという原則を守ることが、将来の医療を守ることにつながります。


Please continue.






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