鉗子 歯科 種類と特徴を徹底解説

歯科治療に欠かせない鉗子の種類や形状の違い、使い分けの基本を詳しく解説します。上下顎や前歯・臼歯によって異なる鉗子の特徴を理解し、的確な器具選択ができるようになりませんか?

鉗子の歯科における種類と使い分けの基本

上顎前歯用鉗子を下顎大臼歯に使うと歯根破折のリスクが3倍に増えます


この記事の3つのポイント
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抜歯鉗子の基本分類

上下顎・前歯・臼歯・残根用など部位別に最適化された形状があり、形態の違いが抜歯の成否を左右します

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誤った鉗子選択のリスク

適合しない鉗子を使用すると歯根破折や周囲組織の損傷を招き、抜歯時間が通常の2~3倍に延長する可能性があります

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適切な管理とメンテナンス

鉗子の滅菌処理と定期的な点検が感染予防と器具寿命の延長につながり、診療の質を高めます


鉗子の基本構造と上下顎による形状の違い


歯科用鉗子は抜歯時に歯を確実に把持し、安全に脱臼・抜去するための専門器具です。鉗子の基本構造は把持部(ハンドル)、関節部(ジョイント)、嘴部(ビーク)の3つの部分から構成されており、それぞれの部位が抜歯操作において重要な役割を果たしています。


最も重要な違いとなるのが上顎用と下顎用の形状差です。上顎用鉗子は把持部に対して二回屈曲した形状を持ち、術者が上方から歯にアクセスしやすい角度設計になっています。一方で下顎用鉗子は一回屈曲の形状となっており、下方からの操作に適した設計です。


つまり屈曲回数が基本です。


この形状の違いは単なる持ちやすさの問題ではありません。上顎と下顎では歯へのアプローチ角度が根本的に異なるため、適合しない鉗子を使用すると歯根膜腔への適切な力の伝達ができず、抜歯に必要な時間が通常の2~3倍に延びてしまいます。さらに不適切な力のかかり方により、歯根破折のリスクが約3倍に増加するというデータもあります。


上顎前歯用鉗子の嘴部は比較的直線的で細く設計されており、歯頸部が細い前歯を確実に把持できる形状です。上顎臼歯用鉗子は左右で嘴部の形状が非対称になっており、複根歯の根分岐部に適合するように工夫されています。下顎前歯用は扁平な歯根に対応するため嘴部が薄く、下顎臼歯用は頬舌的な厚みのある歯に対応した幅広い嘴部を持っています。


鉗子の番号表記システムと各部位専用の種類

歯科鉗子には国際的に使用される番号表記システムがあり、この番号を理解することで適切な器具選択が可能になります。番号は主に使用部位と形態を示しており、例えば#1は上顎前歯用、#4は上下顎兼用小臼歯用、#10は上顎臼歯用といった具合に規格化されています。


前歯用鉗子は#1、#62などの番号で表され、単根で円錐状または扁平状の歯根形態に対応します。上顎前歯は単根で円錐状のため頬舌的な揺さぶりに加えて回転運動も有効ですが、下顎前歯は扁平状のため回転運動を加えると歯根破折のリスクが高まります。そのため下顎前歯用鉗子は回転を制限した設計になっています。


小臼歯用鉗子は#4、#32などがあり、上顎小臼歯は複根の場合もあるため慎重な操作が必要です。上顎小臼歯は単根でも扁平状の形態を持つことが多く、過度な回転運動は歯根破折を招きます。下顎小臼歯は単根で円錐状のため、上顎前歯と同様に回転運動を組み合わせた抜歯が効果的です。


大臼歯用鉗子は最も種類が多く、上顎用では#10(右側用)、#18(左側用)などの左右別の規格があります。下顎大臼歯用は#17、#21、#22などがあり、複雑な根分岐部に対応するため嘴部の形状が特殊になっています。「牛の角」と呼ばれる形状の鉗子もあり、根分岐部に嘴部の先端を挿入して確実に把持する設計です。


残根鉗子は歯冠が大きく崩壊した症例や、抜歯中に歯冠が破折した場合に使用する特殊な鉗子です。#65、#69などの番号があり、嘴部が非常に細く鋭利で、歯根だけになった状態でもしっかり把持できる構造になっています。残根の除去は通常の抜歯よりも難易度が高く、適切な残根鉗子の使用が不可欠です。


鉗子選択を誤った場合の臨床的リスクと対処法

不適切な鉗子選択は単なる非効率だけでなく、患者に重大な影響を及ぼす医療リスクとなります。最も頻繁に発生するトラブルが歯根破折で、鉗子の嘴部が歯の形態に適合していない状態で力を加えると、歯に不均一な応力が集中して破折が起こります。


歯根破折が発生すると抜歯の難易度が一気に上昇します。破折した歯根片は鉗子での把持が困難になり、ヘーベル(抜歯挺子)や外科的な歯槽骨削除が必要になるケースも少なくありません。通常なら5~10分で終わる抜歯が30分以上かかることもあり、患者の身体的・精神的負担が大幅に増加します。


周囲組織への損傷も深刻な問題です。鉗子が歯から滑脱すると、歯肉や口腔粘膜、隣在歯を損傷する危険があります。特に下顎では舌側に滑脱した場合、舌神経や口腔底の血管を傷つける可能性があり、舌のしびれや口腔底出血といった合併症につながります。このようなリスクを避けるためには、術前に必ずレントゲン画像で歯根形態を確認することが大切です。


対処法として最も基本的なのは、抜歯前に対象歯の部位・歯根形態・残存歯冠の状態を正確に評価し、それに適した鉗子を準備することです。複数の鉗子を用意しておき、実際に把持してみて適合が悪ければ躊躇せず別の鉗子に変更する柔軟性も必要になります。新人歯科医師の場合、上顎大臼歯の左右側鉗子を取り違えるミスが多く報告されているため、器具の形状を手に取ってよく観察する習慣をつけることが推奨されます。


デジタルX線画像やCBCTで歯根形態を立体的に把握できる環境があれば、より精密な術前計画が可能です。歯根の湾曲や歯槽骨の硬化度を事前に評価しておけば、鉗子だけでなくヘーベルや分割抜歯の必要性も予測でき、スムーズな処置につながります。


鉗子と抜歯挺子の使い分けと併用テクニック

抜歯処置では鉗子だけでなく、抜歯挺子(ヘーベル)との使い分けと併用が重要なポイントになります。鉗子は歯冠が残存しており把持可能な症例に適しており、ヘーベルは歯冠崩壊が進んだ症例や埋伏歯に有効です。それぞれの特性を理解して適切に選択することが、安全で効率的な抜歯につながります。


鉗子を使った抜歯は基本的に頬舌的な揺さぶり運動によって歯根膜腔を拡大し、歯を脱臼させる方法です。鉗子は力の方向と強さを術者が直接コントロールしやすく、周囲組織への損傷リスクが比較的低い利点があります。嘴部を歯頸部にしっかり適合させることで、滑脱を防ぎながら持続的で穏やかな力を加えられます。


一方、ヘーベルはくさび作用・回転作用・てこ作用の3つの原理を利用して歯を脱臼させる器具です。くさび作用では歯根膜腔内に嘴部を挿入することで徐々に隙間を拡大し、回転作用では嘴部を回転させて歯周靱帯を断裂させ、てこ作用では傾斜した歯を起こす力を利用します。ヘーベルは鉗子で把持できない症例に威力を発揮しますが、滑脱による周囲組織損傷のリスクが高いため、必ず反対側の手で周囲組織を保護しながら操作する必要があります。


実際の臨床では両者を併用するケースが多くあります。まずヘーベルで歯根膜腔を拡大して歯の動揺を誘導し、その後鉗子で把持して抜去するという手順です。特に下顎大臼歯や歯根が肥大した症例では、最初から鉗子だけで抜歯しようとすると歯根破折のリスクが高まります。ヘーベルで十分に脱臼させてから鉗子を使うことで、安全性と効率性の両立が可能になります。


ヘーベルの挿入位置は基本的に近心頬側隅角です。下顎ではヘーベルを舌側から挿入すると、滑脱時に口腔底の動脈を損傷する危険があるため、必ず頬側から挿入します。上顎大臼歯では上顎洞底が近く骨が薄いため、過度な力を加えると歯根が上顎洞内に迷入するリスクがあります。これらの解剖学的リスクを常に念頭に置いて慎重に操作することが求められます。


鉗子のメンテナンスと滅菌管理の実践ポイント

鉗子は患者の血液や体液に直接接触するクリティカル器具に分類され、使用ごとに確実な洗浄と滅菌処理が法的にも臨床的にも必須です。適切なメンテナンスは感染予防だけでなく、器具の性能維持と寿命延長にも直結するため、歯科医院全体で標準化された手順を確立することが重要です。


使用後の鉗子は血液やタンパク質が付着しているため、まず40℃以下の流水で予備洗浄を行います。血液は高温で凝固してしまうため、必ず温度に注意しながら洗浄します。その後、酵素系洗浄剤や中性洗剤を用いて超音波洗浄器やウォッシャーディスインフェクターで本洗浄を実施します。関節部や嘴部の細かい部分には汚れが残りやすいため、ブラシを使った手洗浄も併用すると効果的です。


洗浄後は十分に水洗いして洗浄剤を除去し、乾燥させます。水分が残った状態で滅菌すると、滅菌効果が低下したり器具の腐食が進行したりするため、乾燥は重要なステップです。滅菌方法としては高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)が推奨されており、通常は121℃で20分間または134℃で3~5分間の条件で処理します。


乾熱滅菌やアルコールを使用した高圧滅菌は鉗子の劣化を早める可能性があるため、メーカーの推奨する滅菌方法を確認してから実施します。特にダイヤモンドコーティングされた鉗子や特殊素材の鉗子は、不適切な滅菌により表面処理が剥がれることがあるので注意が必要です。


滅菌後の鉗子は滅菌バッグに入れて保管し、使用期限を明記しておきます。滅菌バッグは通常、滅菌後7日から6ヶ月程度の有効期限があり、破損や湿気がなければその期間内は無菌状態が保たれます。保管環境は清潔で乾燥した場所を選び、直射日光や高温多湿を避けることが基本です。


定期的な点検も欠かせません。鉗子の関節部が緩んでいないか、嘴部に欠けや変形がないか、開閉動作がスムーズかを確認します。関節部の動きが悪い場合は医療用潤滑剤を使用しますが、滅菌前に十分に拭き取る必要があります。嘴部に損傷がある鉗子は歯を適切に把持できず滑脱の原因となるため、速やかに修理または交換します。


器材使用後の洗浄・消毒・滅菌|歯科医療における院内感染対策


こちらのリンクでは、歯科器材の再処理方法の詳細な分類と標準的な手順が解説されており、鉗子を含むクリティカル器具の適切な管理方法を確認できます。




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