快削アルミのJIS規格と種類・選び方の完全ガイド

快削アルミのJIS規格(A2011・A2017など)を正しく理解できていますか?種類ごとの成分・切削性・耐食性の違いや、RoHS規制による材料選定の注意点まで、金属加工の現場で本当に役立つ知識を解説します。

快削アルミのJIS規格と種類・正しい選び方

快削アルミで最も切削性が高いA2011は、実はRoHS規制の対象外品として欧州向け製品に使うと納品拒否になります。


この記事の3つのポイント
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快削アルミのJIS規格とは

A2011はJIS H4040で規定される棒材の代表的快削合金。鉛(Pb)・ビスマス(Bi)添加で高い切削性を実現しているが、成分ゆえに使用場面を選ぶ。

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RoHS規制とA2011の関係

A2011に含まれる鉛がRoHS規制値(0.1wt%)を超えるため、欧州向け製品への使用は原則不可。代替材のCB156・CB256への切り替えが現場の急務。

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材料選定の正しい手順

切削性・耐食性・表面処理性・環境規制の4軸で評価することが重要。用途を確認せずにA2011を選ぶと、後工程でアルマイト処理や輸出対応が困難になる。


快削アルミのJIS規格(H4040)での定義と番号体系

快削アルミ合金の成分は、主にJIS H4040(アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線)で規定されています。 板材の成分規格はJIS H4000が対応しており、棒材とは別の規格番号が使われる点に注意が必要です。 sadoseimitsu(https://sadoseimitsu.com/column/1-6/)


アルミ合金は4桁の番号(例:A2011)で種類が区別され、最初の数字がグループを示します。 2000番台はAl-Cu系(アルミ-銅系)で、強度と切削性が高い代わりに耐食性はやや低い系統に区分されます。 ja.nc-net.or(https://ja.nc-net.or.jp/company/106127/product/detail/260759/)


番号体系の基本を押さえておくと、材料カタログや発注書を読む際に迷いません。以下にアルミ合金番号の大まかな区分をまとめます。


番号系 主な合金系 代表材 切削性 耐食性
1000系 純アルミ A1050、A1100
2000系 Al-Cu系 A2011、A2017
5000系 Al-Mg系 A5052、A5056
6000系 Al-Mg-Si系 A6061、A6262
7000系 Al-Mg-Zn系 A7075


JIS H4040では寸法許容差のグレードとして「普通級」と「特殊級」が用意されており、精密用途では特殊級を指定することで、より厳しい寸法管理が可能です。 つまり同じ材質番号でも、寸法精度の要求によって発注グレードを使い分けることが基本です。 kikakurui(https://kikakurui.com/h4/H4040-2015-01.html)


参考:棒材の規格全体像を確認できるJIS H4040の公式情報はこちら。


JISH4040:2015 アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線|kikakurui.com


快削アルミA2011の成分・切削性とJIS規格上の位置づけ

A2011はJIS H4040で規定される2000系快削合金の代表格です。 銅(Cu)を主成分とし、さらに鉛(Pb)を0.2〜0.6%、ビスマス(Bi)を0.2〜0.6% 添加することで、切り粉が短く細かく折れる「快削性」を実現しています。 tec-note(https://tec-note.com/960)


切削加工の難易度を示す指標として「被切削指数」があります。快削鋼SUM24Lを100としたときの比較で、A2011はこれと同等かそれ以上とされ、2000番台の中でもトップクラスの切削性を誇ります。 切削工具の摩耗が少なく、加工タクトを短縮できる点は量産現場での大きなメリットです。 sadoseimitsu(https://sadoseimitsu.com/column/1-6/)


これは使えそうです。


ただし、A2011の銅含有量の高さはそのまま弱点に直結します。湿気・塩分・水分にさらされる環境では腐食が進みやすく、同じ2000系のA2017と比較しても耐食性は劣ると評価されています。 屋外部品や水まわり部品への適用は、設計段階で慎重に検討する必要があります。 askk.co(https://www.askk.co.jp/contents/course/a2011.html)


また、A2011はアルマイト処理(陽極酸化)にも不向きです。 鉛・ビスマスなどの添加成分が酸化皮膜の形成を妨げるため、均一な皮膜が得られず、着色アルマイトはほぼ不可能とされています。 加工後に表面処理が必要な部品では、材料選定の段階で確認が条件です。 sanwa-p.co(https://www.sanwa-p.co.jp/faq/detail804.php)


参考:A2011のアルマイト処理に関する詳しい解説はこちら。


A2011に着色アルマイト処理は可能か?|三和メッキ工業株式会社


快削アルミとRoHS規制:A2011が使えない現場とは

多くの加工現場でA2011が「定番の快削アルミ」として使われてきました。しかし2006年7月に施行されたEUのRoHS指令(有害物質使用制限指令)により、状況は大きく変わっています。 blog.sakane-syoji(https://blog.sakane-syoji.com/cb156%E3%80%81cb256%E3%80%90%E9%89%9B%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%BF%AB%E5%89%8A%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E6%A3%92%E3%80%91%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/)


RoHS規制では鉛(Pb)の含有量を0.1wt%以下に制限していますが、A2011は切削性確保のために鉛を0.2〜0.6%含有します。 これはRoHS規制値の2〜6倍に相当し、適用除外規定(0.4wt%以下)でさえカバーしきれないケースがあります。 欧州向け電気・電子機器部品にA2011を使うと、納品後に規格不適合として製品回収・出荷停止につながるリスクがあります。 tec-note(https://tec-note.com/960)


厳しいところですね。


この問題への対応として、現在は以下の代替材が使われています。 senban1ban(https://senban1ban.com/e-office/modules/xoopsfaq/index.php?cat_id=4)


  • 🔧 CB156(UACJ製):Cu・Bi・Snを添加した鉛フリー快削アルミ。A2011と同等の切削性を持ち、最もA2011に近い代替材
  • 🔧 CB256(UACJ製):A2011とA2017の中間程度の切削性を持つ鉛フリー材
  • 🔧 A2017(ジュラルミン):強度を重視する場面での代替。切削性はA2011より若干劣るが、入手性は高い


RoHS対応が必要な案件かどうかを最初に確認し、対象であればCB156・CB256への切り替えを検討するのが最短の対処法です。 発注前に材料規格書(ミルシート)のPb含有量欄を必ず確認するひと手間が、後工程のトラブルを防ぎます。 blog.sakane-syoji(https://blog.sakane-syoji.com/cb156%E3%80%81cb256%E3%80%90%E9%89%9B%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%BF%AB%E5%89%8A%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E6%A3%92%E3%80%91%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/)


参考:CB156・CB256の特性とA2011との比較はこちら。


CB156、CB256【鉛フリー快削アルミ棒】について|阪根商事 非鉄金属ブログ


快削アルミA2017・A6262とJIS規格上の切削性比較

A2011が使えない場面や、耐食性も確保したい場面では、A2017やA6262が候補に上がります。それぞれのJIS規格上の特性を整理しておくことが、材料選定ミスを防ぐ基本です。


A2017(ジュラルミン) はAl-Cu系で、JIS H4040に規定される展伸材の定番材です。 引張強度はA2011より高く、切削性はA2011に次ぐレベルとされています。 鉛を含まないためRoHS対応には有利ですが、2000系であるため耐食性の低さはA2011と同様に課題です。 blog.sakane-syoji(https://blog.sakane-syoji.com/category/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E6%A3%92/)


材質 切削性 引張強度 耐食性 アルマイト RoHS対応
A2011 ◎(最良)
CB156 ◎(A2011同等)
A2017
A6262


A6262 はAl-Mg-Si系で、6000系の中では切削性が最も優れた合金として知られています。 A2011と比較すると切削性は劣りますが、耐食性・アルマイト処理性・RoHS対応のすべてを両立できる点で、屋外や表面処理が必要な部品には適した選択肢です。 alumi-world(https://www.alumi-world.jp/knowledge/chuui.html)


結論は「用途に合わせた4軸評価」が基本です。


切削タクトだけで材料を決めると、後工程のアルマイト処理で手戻りが発生したり、出荷直前にRoHS対応を求められて材料選定からやり直すことになります。初期の材料選定で4軸(切削性・耐食性・表面処理性・環境規制)を確認すれば、そのコストは数時間で済みます。


参考:アルミ合金の選定上の注意点(各合金の切削性・耐食性比較)はこちら。


アルミ合金の選定上のご注意|アルミワールド


快削アルミのJIS調質記号と熱処理が現場品質に与える影響

JIS規格では合金番号だけでなく、調質記号(質別)によって熱処理の状態も規定されています。同じA2017でも調質によって強度や寸法安定性が変わるため、調質記号の読み方は現場で必須の知識です。


代表的な調質記号は以下のとおりです。


  • 📋 F:製造のままの状態(熱処理なし)。強度は低め
  • 📋 T4:溶体化処理後に自然時効させたもの。A2011・A2017の棒材に多い
  • 📋 T6:溶体化処理後に人工時効処理したもの。強度が最も高くなる調質
  • 📋 T5:高温加工から冷却後に人工時効処理したもの。押出材などに使われる


A2011の棒材では調質T3が多く流通しており、溶体化処理後に冷間加工を加えて自然時効させた状態です。 T3調質品は加工硬化により強度が上がる一方、残留応力が生じやすいため、精密加工で寸法変化を嫌う場合は素材の段階で人工時効(エイジング)処理を追加することで安定した加工が得られます。 tec-note(https://tec-note.com/960)


意外ですね。


ミルシートには調質記号と一緒に引張強度・伸び・硬さの実測値が記載されています。 設計図面や加工指示書に調質の指定がない場合でも、ミルシートで実際の機械的性質を確認する習慣をつけておくと、加工不良や寸法不良を事前に防げます。調質記号だけ覚えておけばOKです。 yamaha-motor.co(https://www.yamaha-motor.co.jp/cf/data/jis/)


参考:A2011の機械的性質とJIS規格上の詳細データはこちら。


A2011とは?【強度・比重・ヤング率・硬度】機械的性質と代替材|tec-note.com