術前休薬ガイドライン抜歯の判断基準

歯科治療における術前休薬ガイドラインの最新情報をまとめました。抗血栓薬の休薬判断から出血リスク管理まで、歯科医従事者が知っておくべき重要なポイントを解説します。あなたの判断は本当に正しいでしょうか?

術前休薬ガイドライン基本

抗血栓薬服用中の抜歯では休薬すると約1%で血栓塞栓症が起きます。 odc-os(https://www.odc-os.com/naiyo-kessen.html)


💊 術前休薬の3つの重要ポイント
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抜歯時は継続が原則

日本循環器学会のガイドラインでは、抗血栓薬の継続下での抜歯が望ましいと明記されています

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出血リスクと血栓リスクの天秤

休薬による血栓塞栓症は低頻度ですが、発症すると重篤な症状になる可能性があります

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全身麻酔手術では休薬期間の設定が必要

薬剤ごとに1日前から14日前まで休薬期間が異なるため、個別の判断が求められます


術前休薬ガイドライン抜歯時の抗血栓薬継続原則

抗血栓薬とは、血液をさらさらにする薬の総称で、抗血小板薬と抗凝固薬の2種類に分類されます。以前は抜歯を行う際にはこれらの薬剤をすべて休薬して実施することが一般的でした。しかし現在ではその考え方は見直され、基本的には服用を中止しない方針になっています。 kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/3193/)


休薬すると重大なリスクが発生します。


米国のWahlの文献調査では、ワーファリンを中止した493例・542回の抜歯のうち、5例(約1%)で血栓塞栓症が発生しました。つまり抜歯時の休薬によって起こる血栓塞栓症の頻度は低いのですが、発症した場合症状が重篤になることがあるのです。こうした点から、日本循環器学会の抗凝固・抗血小板療法ガイドラインでは「抜歯時には抗血栓薬の継続が望ましい」と明記されています。 harimadent(https://harimadent.jp/knowledge_category/disease-medicine/)


欧米では抜歯に関して抗血栓薬は休薬してはならないというのが主流になっています。海外のガイドラインでは、PT-INRが2~4の治療域にあれば重篤な出血のリスクは非常に小さく、逆に血栓塞栓症リスクが増大するため、抗凝固薬は中止してはならないと述べられています。 harimadent(https://harimadent.jp/knowledge_category/disease-medicine/)


抜歯時の止血対策が重要になります。


適切な局所止血処置を行えば休薬が不要であることがわかってきました。国立循環器病研究センター病院では、抗血栓薬服用中の患者様の抜歯を循環器病学会などのガイドラインに従い、基本的に抗血栓薬の休薬なしに患者様の安心および止血管理目的に入院下で行っています。 ncvc.go(https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/treatment/dental/pro-22/)


術前休薬ガイドライン全身麻酔手術での休薬期間

外来で行う抜歯やインプラント等の外科処置については、休薬する薬は基本的にありません。一方で、全身麻酔手術では薬剤ごとに休薬期間の設定が必要になります。手術前休薬期間の目安は、あくまでも「目安」ですので、出血リスクと休薬による血栓症・塞栓症発症リスクに応じて判断してください。 dental-oral-surgery(https://www.dental-oral-surgery.com/general-anesthesia-surgery-discontinuation-internal-medicine/)


抗血小板薬の休薬期間は薬剤によって異なります。


アスピリンは2~3日前から休薬が目安です。クロピドグレルプラビックス)は7~14日前からの休薬が必要ですが、出血リスクが高くない場合は遅くとも5日前までには休薬すれば良いとされています。プラスグレルエフィエント)は14日前からの休薬が基本ですが、出血リスクが高くない場合は7日前までには休薬すれば良いとされています。 hsp.ehime-u.ac(https://www.hsp.ehime-u.ac.jp/medicine/wp-content/uploads/202108-1DInews2.pdf)


可逆的な作用を持つ薬は休薬期間が短いです。


シロスタゾールプレタール)は可逆的な抗血小板作用を持つため、2日前から3日前の休薬で済みます。ジピリダモール(ペルサンチン)も2~3日前からの休薬が目安です。 nms-anesthesiology(https://nms-anesthesiology.jp/wp/wp-content/uploads/2022/11/protocol13-2.pdf)


抗凝固薬DOACの休薬期間は腎機能で変わります。


リバーロキサバンイグザレルト)は1日前からの休薬で済みます。アピキサバンは術前4日前に中止することが推奨されていますが、血栓リスクが非常に高い場合はヘパリン置換を開始します。出血リスクが高い場合や完全止血を要する大手術時は2日以上の休薬が必要で、腎機能によって休薬期間が変わります。Ccr50mL/min以上では1~2日、30~49mL/minでは2~4日の休薬期間を設けます。 shinshuueda.hosp.go(https://shinshuueda.hosp.go.jp/files/000148817.pdf)


愛媛大学医学部附属病院の抗血小板薬・抗凝固薬の手術前休薬期間の目安一覧表(薬剤ごとの詳細な休薬期間が記載されています)


術前休薬ガイドライン2剤併用患者への対応

抗血小板薬と抗凝固薬の併用患者での抜歯は慎重な判断が必要です。これまでは2剤継続のまま抜歯が推奨されていましたが、2020年版のガイドラインでは患者間のばらつきがあり継続のまま抜歯を行う・行わないに関してガイドラインでの推奨はなくなりました。 dental-oral-surgery(https://www.dental-oral-surgery.com/antithrombotic-therapy/)


専門医療機関での抜歯が望ましいです。


2020年版では専門医療機関での抜歯が望ましいとされています。患者さんの全身状態や血栓リスク、出血リスクを総合的に評価する必要があるためです。これは高度な止血管理と緊急時の対応体制を備えた施設での処置を想定しています。 dental-oral-surgery(https://www.dental-oral-surgery.com/antithrombotic-therapy/)


休薬判断の優先順位があります。


まず実施する手技・手術の出血リスクを評価します。次に、それぞれの疾患と薬剤特性ごとに、中止できるか、いつから中止するかが決まります。血栓塞栓症の発症リスクが高い場合はアスピリン置換またはシロスタゾール置換を検討します。 jmedj.co(https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_18548)


術前休薬ガイドラインインプラント手術での麻酔選択

インプラント手術で使用される麻酔は、表面麻酔局所麻酔静脈内鎮静法・全身麻酔の4種類です。不安や緊張が強い方には、局所麻酔に加えて静脈内鎮静法が選択されることが多くなっています。 setaden(https://www.setaden.com/column/anesthesia/)


全身麻酔は特殊な状況で選択されます。


全身麻酔は入院する必要があり、手術中の呼吸管理も必須であるため通常の歯科医院で行うのは難しいです。しかし、設備の整った歯科医院では全身麻酔でインプラント手術を行うこともあります。完全に意識がなくなるので、患者さまの不安な気持ちに配慮できます。治療する本数が多く、長時間口を開けている必要があるケースなどでも用いられます。 isobe-dc(https://isobe-dc.com/tag/%E9%BA%BB%E9%85%94/)


麻酔選択と休薬判断は連動します。


局所麻酔でのインプラント手術の場合、外来での抜歯と同様に休薬は基本的に不要です。一方で全身麻酔を選択する場合は、先述の全身麻酔手術での休薬期間の設定が必要になります。つまり、麻酔方法によって術前の薬剤管理が大きく変わるということですね。 dental-oral-surgery(https://www.dental-oral-surgery.com/general-anesthesia-surgery-discontinuation-internal-medicine/)


術前休薬ガイドライン出血と血栓リスクの天秤

歯科医としてはワルファリンなどの服用を中止してから抜歯をしたほうが血は止まりやすくなるのですが、医科の先生は休薬によって血栓の原因になることがあるため、全身的な影響を考慮して休薬はしてほしくないということになります。この2つのリスクのバランスを取ることが術前休薬ガイドラインの本質です。 osugi-dc(https://osugi-dc.com/blog/oral-surgery/362/)


出血リスクは局所的に管理できます。


抜歯、白内障手術、体表の小手術で術後出血への対応が容易な場合等は、抗血小板療法などは継続下での実施が推奨されています。つまり適切な止血処置を施せば、出血リスクは十分にコントロール可能だということです。止血困難になることがありますが、基本的には服用を中止してもらうことはありません。 shinohara-shikaiin(https://shinohara-shikaiin.com/blog/%E6%8A%97%E8%A1%80%E6%A0%93%E7%99%82%E6%B3%95%E3%81%AE%E8%96%AC%E3%82%92%E6%9C%8D%E7%94%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E6%96%B9%E3%81%AE%E6%8A%9C%E6%AD%AF%E3%81%AB%E6%B3%A8%E6%84%8F/)


血栓リスクは全身に影響します。


休薬することで血栓を原因とする発作が起き、死亡することも報告されているため、抜歯を行う際には、一度主治医の先生と相談することをオススメします。DOACは抜歯の1、2日前から休薬が望ましいですが、休薬による血栓のリスクがあることも認識しておく必要があります。 ohnishi-dc(https://ohnishi-dc.com/%E6%8A%9C%E6%AD%AF%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%86%E3%81%A8%E3%81%8D%E3%81%AB%E6%B3%A8%E6%84%8F%E3%82%92%E8%A6%81%E3%81%99%E3%82%8B%E5%86%85%E7%A7%91%E7%9A%84%E8%96%AC%E5%89%A4)


冠動脈ステント留置患者は特に注意が必要です。


冠動脈ステント留置後2か月、冠動脈薬剤溶出性ステント留置後12か月、脳血行再建術後2か月などの患者では、抗血小板薬の休薬による血栓リスクが非常に高くなります。こうした患者では休薬期間5日間も考慮されますが、基本的には継続が望ましいとされています。 hospital.kawakita.or(https://hospital.kawakita.or.jp/data/pages/00/00/01/41/22/32a81b50b58db7c3cbc8ef9a79b1b70e-1756968665.pdf)


術前休薬ガイドライン女性ホルモン製剤の特殊性

女性ホルモン製剤は術前4週間からの休薬が必要になる場合があります。プレマリン(結合型エストロゲン)は術前4週間の休薬を医師の指示確認のもとで行います。メドロキシプロゲステロン(ヒスロンH)は術前4週間~術後1週の休薬が必要です。 shinshuueda.hosp.go(https://shinshuueda.hosp.go.jp/files/000148817.pdf)


静脈血栓塞栓症リスクが問題です。


日本産科婦人科学会のOC・LEPガイドライン2015年度版では、30分を超える手術や術後に不動を伴う手術では静脈血栓塞栓症リスクが上昇するため、少なくとも手術の4週間前から中止する必要があるとされています。これは経口避妊薬や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬を含む女性ホルモン製剤全般に当てはまります。 dental-oral-surgery(https://www.dental-oral-surgery.com/general-anesthesia-surgery-discontinuation-internal-medicine/)


薬剤によって添付文書の記載が異なります。


薬剤によって添付文書に記載されている休薬期間が異なりますので確認が必要となります。全身麻酔手術では特に注意が必要で、医師との連携が不可欠です。女性患者の術前問診では、ピルや女性ホルモン製剤の服用有無を必ず確認することが大切です。 dental-oral-surgery(https://www.dental-oral-surgery.com/general-anesthesia-surgery-discontinuation-internal-medicine/)


術前休薬ガイドライン抗がん剤の休薬判断

抗がん剤であるスチバーガ(レゴラフェニブ)投与中に手術が必要な場合は、手術実施前に少なくとも2週間の休薬期間を設けることを推奨されています。スーテント投薬後に外科手術を行う場合は、可能であれば最低でも1週間は休薬することが推奨されます。 kouritu-cch(https://www.kouritu-cch.jp/wordpress/wp-content/themes/themes/kouritu-cch-pc/pdf/drug-withdrawal-criteria-2.pdf)


抗がん剤は創傷治癒に影響します。


これらの分子標的薬は血管新生を阻害する作用があるため、創傷治癒が遅れる可能性があります。そのため歯科の外科処置でも、全身麻酔下での手術では特に休薬期間の設定が重要になります。14日という期間は、薬剤とその活性代謝物の体内からの排出を考慮した設定です。 kouritu-cch(https://www.kouritu-cch.jp/wordpress/wp-content/themes/themes/kouritu-cch-pc/pdf/drug-withdrawal-criteria-2.pdf)


主治医との連携が必須です。


抗がん剤治療中の患者さんに対する歯科治療では、必ず主治医と連携を取る必要があります。休薬による抗がん効果の低下と、手術時の出血・創傷治癒不全のリスクを天秤にかける判断は、歯科医単独では行えません。患者さんの全身状態、がんの進行度、治療スケジュールなど多くの要素を考慮する必要があります。


術前休薬ガイドライン糖尿病治療薬の特殊対応

手術が予定されている場合には、糖尿病治療薬は術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開することが糖尿病学会からのRecommendationとして示されています。一部の薬剤では2日前から休薬となっています。 osaka.hosp.go(https://osaka.hosp.go.jp/wp-content/themes/osaka-iryou/doc/department/dis/to_pharmacist/wash_out_period.pdf)


低血糖リスクと術後回復が問題です。


手術前後は絶食や食事制限があるため、糖尿病治療薬を通常通り服用すると重篤な低血糖を起こす危険性があります。特にSGLT2阻害薬やメトホルミンなどは、術前の休薬が重要です。これらの薬は添付文書にも手術時の休薬について記載されていることが多く、必ず確認が必要です。


歯科治療でも全身麻酔では注意が必要です。


外来での局所麻酔下の抜歯程度であれば、糖尿病治療薬の休薬は通常必要ありません。しかし全身麻酔下でのインプラント手術や顎骨手術など、術後の食事制限が予想される場合は、医科主治医と連携して休薬スケジュールを決める必要があります。


全身麻酔手術時に内服中止する薬について(歯科医療従事者向けの詳細な休薬リストと判断基準が掲載されています)


術前休薬ガイドライン実臨床での判断基準

休薬期間は手術日を含まない日数になります。記載のある休薬期間はあくまで目安です。主治医の指示がある場合はこの限りではありません。 shinshuueda.hosp.go(https://shinshuueda.hosp.go.jp/files/000148817.pdf)


出血リスクの階層化が重要です。


まず実施する手技・手術の出血リスクを評価します。低リスク(抜歯、白内障手術など)、中リスク(一般的な外科手術)、高リスク(完全止血を要する大手術)に分類し、それぞれに応じた休薬判断を行います。抜歯などの低リスク処置では継続が原則、高リスク手術では薬剤特性に応じた休薬が必要という考え方です。 jmedj.co(https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_18548)


血栓塞栓症の発症リスク評価も並行します。


冠動脈ステント留置患者や血栓塞栓症の2次予防などの理由で服用している場合には、休薬期間5日間も考慮されますが、基本的には継続が望ましいとされています。つまり血栓リスクが高い患者では、出血リスクがある程度高くても抗血栓薬を継続するという判断になります。 hospital.kawakita.or(https://hospital.kawakita.or.jp/data/pages/00/00/01/41/22/32a81b50b58db7c3cbc8ef9a79b1b70e-1756968665.pdf)


PT-INRの治療域管理が鍵です。


PT-INRが治療域であれば継続が可能で、アスピリンやクロピドグレルへの置換を考慮することもあります。ワーファリン服用患者では、術前にPT-INR値を測定し、治療域(通常2~3)にあることを確認してから処置を行うことが安全管理の基本です。 osaka.hosp.go(https://osaka.hosp.go.jp/wp-content/themes/osaka-iryou/doc/department/dis/to_pharmacist/wash_out_period.pdf)


術前休薬ガイドライン歯科医が知るべき最新知見

DOACは現時点では服用継続のままで口腔外科的処置を行うことが推奨されています。手術などに関する明確なエビデンスはなく、中和薬も一般的ではないため、現在意見の一致をみない部分もあります。 ohnishi-dc(https://ohnishi-dc.com/%E6%8A%9C%E6%AD%AF%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%86%E3%81%A8%E3%81%8D%E3%81%AB%E6%B3%A8%E6%84%8F%E3%82%92%E8%A6%81%E3%81%99%E3%82%8B%E5%86%85%E7%A7%91%E7%9A%84%E8%96%AC%E5%89%A4)


DOAC休薬の判断は施設によって異なります。


DOACは抜歯の1、2日前から休薬が望ましいとする施設もありますが、DOAC休薬による血栓のリスクがあることも認識しておく必要があります。最新のガイドラインに基づいて適切な周術期管理を行えば、経過は良好なままDOACの服用継続が実現できます。 carenet(https://www.carenet.com/pharmacist/teian/cg002441_064.html)


歯科医からの薬剤師への介入も重要です。


歯科治療に伴う直接経口抗凝固薬(DOAC)の休薬期間について、最新のガイドラインに基づいて薬剤師が介入した事例も報告されています。チーム医療の観点から、歯科医・医科医・薬剤師が連携して患者さんの安全を守る体制が求められています。休薬期間を適正化することで、不要な血栓リスクを回避できます。 carenet(https://www.carenet.com/pharmacist/teian/cg002441_064.html)


エビデンスの蓄積が進んでいます。


抗血栓療法中の患者の抜歯を含む観血的処置時には、今までは休薬が可能であれば休薬した後に行っていましたが、抗血栓療法の中断はリスクが大きくほとんどの抜歯例では適切な局所止血処置を行えば休薬が不要であることがわかってきました。つまりエビデンスに基づいた実践が、患者さんの安全性を高めているということですね。 odc-os(https://www.odc-os.com/naiyo-kessen.html)


抜歯時の抗凝固療法に介入してDOACの休薬期間を適正化した薬剤師による実践事例(最新のガイドラインに基づく周術期管理の参考になります)